8.なぜ、新規集客から始めてはいけないのか?利益を最大化する最初の打ち手

「お店を繁盛させるには、とにかく新しいお客様を呼ばなければ!」

そう信じて、あなたは毎日、慣れないSNSを更新し、けして安くはない広告費を払い、頭を悩ませてチラシを作っているのではないでしょうか。

その努力は、本当に尊いものです。しかし、もし、その努力が、利益を最大化するどころか、むしろ、あなたのお店の体力を静かに奪っているとしたら…?

前回の記事で、経営には「正しい順序」があり、それは「①店内販促 → ②再来店対策 → ③新規客対策」である、という「利益倍増の黄金の3ステップ」についてお話ししました。

今回は、なぜ、ほとんどの経営者が真っ先に飛びついてしまう「新規集客」から手をつけてはいけないのか、その理由をさらに深掘りし、利益を最大化するための「最初の打ち手」がいかに重要であるかをお伝えします。

「穴の空いたバケツ」に、あなたは水を注ぎ続けますか?

想像してみてください。あなたの目の前に、大きな穴がいくつも空いたバケツがあります。
あなたはそのバケツを、必死になって井戸と往復し、水で満たそうとしています。

しかし、いくら水を注いでも、水は次から次へと穴から漏れ出し、バケツは一向に満たされません。

この、あまりにも無謀で、骨の折れる作業。実は、これこそが、「儲かる仕組み」ができていないうちから、新規集客に手を出してしまうことの、本質なのです。

  • バケツ = あなたのお店
  • = お客様(そして、お客様がもたらす売上)
  • = お客様がリピートしない、客単価が低い、といった「儲からない仕組み」
  • 水を注ぐ行為 = 新規集客

穴が空いたままのバケツ(=儲からない仕組みの店)に、いくら新しい水(=新規客)を注ぎ込んでも、そのほとんどは、ただただ流れ出ていくだけ。そして、あなたの手元には、疲労感と、多額の広告費の請求書だけが残されるのです。

賢明なあなたなら、まず何をすべきか、もうお分かりですよね?

そうです。新しい水を汲みに行く前に、まず、バケツの穴を塞ぐことです。

利益改善の「最強のレバレッジ」は、足元に眠っている

経営における「バケツの穴を塞ぐ」行為。それこそが、黄金のステップの第一歩である「店内販促(客単価UP)」なのです。

なぜ、客単価UPが、利益を最大化するための「最初の打ち手」として、これほどまでに強力なのでしょうか?

その理由は、客単価UPが、最も「レバレッジ」の効く施策だからです。

レバレッジとは、「てこの原理」のこと。小さな力で、大きな成果を生み出すことを意味します。

  • 追加コストが、ほぼゼロ: 新規客を一人呼ぶためには、数千円、場合によっては数万円の広告費がかかります。しかし、今、目の前にいるお客様に「ご一緒に、デザートはいかがですか?」と尋ねるのに、コストは1円もかかりません。
  • 成功確率が、圧倒的に高い: あなたのお店を全く知らない人に商品を買ってもらうのと、すでにあなたのお店で食事をしようと決めている人に「もう一品」勧めるのとでは、どちらが簡単でしょうか?答えは明白です。すでに来店しているお客様は、あなたのお店と商品に対して、最もポジティブな心理状態にあるのです。
  • 利益率が、劇的に改善する: 例えば、原価300円のデザートを、800円で追加注文してもらえたとします。この場合、500円の「粗利益」が、ほぼそのまま、あなたのお店の利益に上乗せされます。このインパクトは、新規客を一人呼ぶこととは、比べ物になりません。

たった一言、メニューに一工夫加えるだけで、あなたのお店の利益は、劇的に改善する可能性を秘めているのです。

多くのお店の経営者は、この、足元に眠っている「莫大な宝の山」に気づかず、遠くの、そして、手に入るかどうかも分からない宝を求めて、危険な航海に出てしまっているのです。

まずは「蛇口」を閉めよ。話はそれからだ。

利益が漏れ出している「穴」を放置したまま、売上という名の「水」を注ぎ込んでも、経営は一向に楽になりません。

もし、あなたが本気で、この負のスパイラルから抜け出したいと願うなら、今すぐ、その無駄な努力をやめる決断をしてください。

そして、そのエネルギーと情熱のすべてを、「バケツの穴を塞ぐこと」、すなわち、「客単価を上げるための仕組み作り」に集中させるのです。

それは、遠回りに見えるかもしれません。しかし、これこそが、あなたのお店を、盤石な「儲かる体質」へと生まれ変わらせる、唯一にして、最短の道なのです。

次の記事では、お客様が、あなたのお店のことを「忘れたくても、忘れられなくなる」、そして、何度も通いたくなってしまう、魔法のような「再来店対策」の仕組みについて、詳しく解説していきます。

まずは、バケツの穴を、完璧に塞ぐことから。あなたの本当の戦いは、そこから始まるのです。

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ハワードジョイマン

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント 中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345) 絵本作家(構想・シナリオ担当) ・有限会社繁盛店研究所 取締役 ・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役 ・株式会社日本中央投資会 代表取締役 ・繁盛店グループ総代表 1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区) 自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。 大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。 市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。 取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。 お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。 こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。 発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。 会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。 コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。 独自の株式投資経験から株式投資メソッドを確立し、株式投資コミュニティ「株研」も運営する。 どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。