1. 成長意欲が「危険」に変わる瞬間
多くの店舗経営者は「もっと成長したい」と願います。
売上アップ、客数増加、新店舗出店…。
しかし、その成長意欲が間違った方向に傾くと、自分やお店を追い詰める原因になってしまいます。
仏教ではこれを「渇愛(かつあい)」と呼びますが、ここでは難しい言葉は避け、“間違った成長欲”と呼びましょう。
2. 間違った成長欲の3つのパターン
(1) 「もっと欲しい」
- 利益構造を整えないまま売上拡大に走る
- 値引きやキャンペーンで数字を作る
- 安定前に多店舗展開し、資金繰りが悪化
(2) 「失いたくない」
- 利益を圧迫している常連客を手放せない
- 不採算メニューを残し続ける
- 過去の成功体験にしがみつく
(3) 「こうでなければならない」
- 業態やメニューの変更を拒む
- オーナーが現場に立つべきという思い込み
- 「値下げしないと客が来ない」という固定観念
これらは一時的には安心感や達成感を与えますが、すぐに新しい欲求が生まれ、永遠に満たされない状態をつくります。
3. 正しい成長意欲とは何か
正しい成長意欲は、欠乏感や不安からくる動きではなく、目的と価値に基づいた持続可能な発展です。
正しい成長意欲の条件
- 明確な目的がある
─ 数字と理想像が具体的(例:年商○○円・粗利率○○%・週休○日) - 数字で裏付ける
─ 感覚ではなく、利益率や資金計画に基づいて判断 - 持続可能性を優先
─ 心身が長く続けられるペース配分 - 顧客価値が軸にある
─ 儲けだけでなく、お客様の体験向上が動機
4. 間違った成長と正しい成長の違い
項目 | 間違った成長欲 | 正しい成長意欲 |
出発点 | 欠乏感・焦り | ビジョン・目的 |
ゴール | 増やすこと自体 | 理想の実現 |
判断軸 | 感情・勢い | 数字と価値基準 |
心の状態 | 常に比較と不安 | 安定と納得感 |
結果 | 短期的な拡大 | 長期的な繁栄 |
5. 実例で見る違い
- 間違った成長
1号店が黒字化していないのに、勢いで2号店を開店 → 人手不足・資金繰り悪化で閉店 - 正しい成長
1号店で3年間粗利率30%維持 → その利益の一部を使い、スタッフ主導の2号店をオープン
6. 正しい成長意欲を保つ4つの習慣
- 年1回のビジョン再確認(数字・生活・理想像)
- 四半期ごとの利益率チェック
- やめるリストの更新(成長を妨げる要因を排除)
- 外部の視点を取り入れる(独りよがりの拡大を防ぐ)
まとめ
経営者にとって「成長意欲」は大切な推進力ですが、その根っこが不安や執着であれば、ゴールのないマラソンに走らされるだけです。
正しい成長意欲は、目的の明確化・数字での裏付け・持続可能性・顧客価値という4つの条件を満たすこと。
これがあれば、お店は長く愛され、経営者自身も豊かに働き続けられます。
今日の話があなたの経営者としてのスタンスや店舗経営に役立つと幸いです。
ハワードジョイマン
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