「値上げをしたら、お客様が離れていってしまう…」
この、呪いのような言葉が、あなたの頭の中に、こびりついて離れないのではないでしょうか。
その結果、あなたは、原材料費が高騰しても、周りの競合が値上げをしても、ただひたすらに価格を据え置き、自らの利益を削り、魂をすり減らし続けている…。
もし、そうだとしたら、あなたは、経営における、最も重要で、そして、最も根本的な「間違い」を犯しています。
その間違いとは、価格を「コスト」や「競合」を基準に決めている、ということです。
前回の記事で、「増益繁盛メソッド」の全体像と、その心臓部である「5つのエンジン」についてお話ししました。今回からは、そのエンジンを一つずつ、具体的に掘り下げていきます。
最初のテーマは、全ての基本となる「利益改善エンジン」。そして、その核心をなす「値決め」の技術です。
この記事を読み終えた時、あなたは、値上げに対する恐怖から完全に解放され、むしろ、お客様に「ありがとう」と感謝されながら、堂々と、適正な価格で、自らの価値を提供できるようになっていることをお約束します。
あなたは、何を「売って」いますか?
突然ですが、あなたに質問です。
- ラーメン屋の店主は、何を売っていますか? → 「ラーメン」
- 美容師は、何を売っていますか? → 「カットやカラー」
- コンサルタントは、何を売っていますか? → 「アドバイス」
もし、あなたが、このように答えたのなら、それが、あなたの利益が、いつまで経っても増えない、根本的な原因です。
なぜなら、お客様は、「モノ」そのものを買っているのではないからです。
お客様が、本当に、お金を払ってでも手に入れたいと願っているのは、その「モノ」を通じて得られる、特定の「感情」や「体験」、そして、「未来の変化」なのです。
- お客様は、「ラーメン」という小麦とスープの塊が欲しいのではありません。そのラーメンをすすることによって得られる「幸福感」や「満足感」、「懐かしい思い出」に、お金を払っているのです。
- お客様は、「髪を切る」という作業が欲しいのではありません。新しいヘアスタイルになることで得られる「自信」や「ワクワクする気持ち」、「新しい自分に生まれ変わる」という体験に、お金を払っているのです。
- お客様は、「アドバイス」という情報が欲しいのではありません。そのアドバイスを実行することで得られる「問題解決」や「目標達成」、「明るい未来」に、お金を払っているのです。
これを、マーケティング用語で「ベネフィット」と言います。
そして、驚くべきことに、お客様が感じる「価値(ベネフィット)」は、あなたが提供している「モノ(商品)」の原価とは、全く、何の関係もありません。
「松竹梅」の法則:お客様は、なぜ「竹」を選ぶのか?
あなたが、もし、たった1種類の商品しか、お客様に提示していないとしたら、それは、莫大な利益の機会を、自らドブに捨てているようなものです。
人間の心理には、非常に面白い特徴があります。
それは、3つの選択肢を提示されると、無意識のうちに「真ん中」を選んでしまう、というものです。これを、「ゴルディロックス効果」、あるいは、日本では「松竹梅の法則」と呼びます。
- 梅:1,000円のランチ(一番安い。でも、ちょっと物足りないかも…)
- 竹:1,500円のランチ(梅より高いけど、デザートも付いてる。一番、無難かな)
- 松:2,500円のランチ(最高級。でも、今日のランチに、そこまでお金をかけるのは…)
この場合、ほとんどのお客様が、お店が「売りたい」と思っている「竹」のランチを、自らの意思で、納得して選んでくれるのです。
もし、あなたが、1,000円のランチしか用意していなかったら、あなたのお店の客単価は、永遠に1,000円のままです。
しかし、ここに、絶妙な価格設定の「松」と「梅」を用意するだけで、お客様は、喜んで、1,500円を支払ってくれるようになります。そして、中には、特別な日だからと、「松」を選んでくれるお客様も現れるでしょう。
あなたは、お客様に、「選ぶ楽しみ」と「自己決定の満足感」を提供しながら、同時に、お店の利益を、劇的に向上させることができるのです。
価格を「上げる」のではない。価値を「伝える」のだ。
「値決めは、経営なり」
これは、経営の神様、稲盛和夫氏の言葉です。
あなたの商品やサービスの価格は、あなたが、自らの仕事に対して、どれほどの「価値」を感じているのか、その「覚悟」の現れでもあります。
安易な値下げは、あなた自身の価値を、自ら貶める、愚かな行為です。
あなたが、本当に向き合うべきは、「いくらにしようか?」という、価格の数字そのものではありません。
「この商品やサービスは、お客様の人生を、どのように、どれだけ豊かにすることができるのか?」
この問いに対して、深く、深く、向き合い、そして、そこで見つけ出した「価値」を、お客様に、正しく、そして、情熱を持って「伝える」努力をすることです。
その「価値」が、お客様に、正しく伝わった時。
お客様は、あなたの提示する価格を、驚くほど、すんなりと受け入れてくれるでしょう。
なぜなら、彼らは、もはや、その価格を「値段」としてではなく、自らの「明るい未来」を手に入れるための、「投資」として、認識しているからです。
次の記事では、「増益繁盛メソッド」の2番目のエンジンである、「店内販促エンジン」について、詳しく解説します。
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