「お店を繁盛させるには、とにかく新しいお客様を呼ばなければ!」
そう信じて、あなたは毎日、慣れないSNSを更新し、けして安くはない広告費を払い、頭を悩ませてチラシを作っているのではないでしょうか。
その努力は、本当に尊いものです。しかし、もし、その努力が、利益を最大化するどころか、むしろ、あなたのお店の体力を静かに奪っているとしたら…?
前回の記事で、経営には「正しい順序」があり、それは「①店内販促 → ②再来店対策 → ③新規客対策」である、という「利益倍増の黄金の3ステップ」についてお話ししました。
今回は、なぜ、ほとんどの経営者が真っ先に飛びついてしまう「新規集客」から手をつけてはいけないのか、その理由をさらに深掘りし、利益を最大化するための「最初の打ち手」がいかに重要であるかをお伝えします。
「穴の空いたバケツ」に、あなたは水を注ぎ続けますか?
想像してみてください。あなたの目の前に、大きな穴がいくつも空いたバケツがあります。
あなたはそのバケツを、必死になって井戸と往復し、水で満たそうとしています。
しかし、いくら水を注いでも、水は次から次へと穴から漏れ出し、バケツは一向に満たされません。
この、あまりにも無謀で、骨の折れる作業。実は、これこそが、「儲かる仕組み」ができていないうちから、新規集客に手を出してしまうことの、本質なのです。
- バケツ = あなたのお店
- 水 = お客様(そして、お客様がもたらす売上)
- 穴 = お客様がリピートしない、客単価が低い、といった「儲からない仕組み」
- 水を注ぐ行為 = 新規集客
穴が空いたままのバケツ(=儲からない仕組みの店)に、いくら新しい水(=新規客)を注ぎ込んでも、そのほとんどは、ただただ流れ出ていくだけ。そして、あなたの手元には、疲労感と、多額の広告費の請求書だけが残されるのです。
賢明なあなたなら、まず何をすべきか、もうお分かりですよね?
そうです。新しい水を汲みに行く前に、まず、バケツの穴を塞ぐことです。
利益改善の「最強のレバレッジ」は、足元に眠っている
経営における「バケツの穴を塞ぐ」行為。それこそが、黄金のステップの第一歩である「店内販促(客単価UP)」なのです。
なぜ、客単価UPが、利益を最大化するための「最初の打ち手」として、これほどまでに強力なのでしょうか?
その理由は、客単価UPが、最も「レバレッジ」の効く施策だからです。
レバレッジとは、「てこの原理」のこと。小さな力で、大きな成果を生み出すことを意味します。
- 追加コストが、ほぼゼロ: 新規客を一人呼ぶためには、数千円、場合によっては数万円の広告費がかかります。しかし、今、目の前にいるお客様に「ご一緒に、デザートはいかがですか?」と尋ねるのに、コストは1円もかかりません。
- 成功確率が、圧倒的に高い: あなたのお店を全く知らない人に商品を買ってもらうのと、すでにあなたのお店で食事をしようと決めている人に「もう一品」勧めるのとでは、どちらが簡単でしょうか?答えは明白です。すでに来店しているお客様は、あなたのお店と商品に対して、最もポジティブな心理状態にあるのです。
- 利益率が、劇的に改善する: 例えば、原価300円のデザートを、800円で追加注文してもらえたとします。この場合、500円の「粗利益」が、ほぼそのまま、あなたのお店の利益に上乗せされます。このインパクトは、新規客を一人呼ぶこととは、比べ物になりません。
たった一言、メニューに一工夫加えるだけで、あなたのお店の利益は、劇的に改善する可能性を秘めているのです。
多くのお店の経営者は、この、足元に眠っている「莫大な宝の山」に気づかず、遠くの、そして、手に入るかどうかも分からない宝を求めて、危険な航海に出てしまっているのです。
まずは「蛇口」を閉めよ。話はそれからだ。
利益が漏れ出している「穴」を放置したまま、売上という名の「水」を注ぎ込んでも、経営は一向に楽になりません。
もし、あなたが本気で、この負のスパイラルから抜け出したいと願うなら、今すぐ、その無駄な努力をやめる決断をしてください。
そして、そのエネルギーと情熱のすべてを、「バケツの穴を塞ぐこと」、すなわち、「客単価を上げるための仕組み作り」に集中させるのです。
それは、遠回りに見えるかもしれません。しかし、これこそが、あなたのお店を、盤石な「儲かる体質」へと生まれ変わらせる、唯一にして、最短の道なのです。
次の記事では、お客様が、あなたのお店のことを「忘れたくても、忘れられなくなる」、そして、何度も通いたくなってしまう、魔法のような「再来店対策」の仕組みについて、詳しく解説していきます。
まずは、バケツの穴を、完璧に塞ぐことから。あなたの本当の戦いは、そこから始まるのです。