9.お客様は、あなたのお店を忘れる天才です。忘れられないための仕組みづくり

「いやー、美味しかった!また来ますね!」

お客様から、そう声をかけられ、あなたは満足感と喜びで胸がいっぱいになる。
「よし、これで、また一人、常連さんが増えたぞ」

しかし、そのお客様が、再びあなたのお店に姿を現すことは、ほとんどありません。

なぜ、あんなに満足してくれていたはずなのに…?
なぜ、「また来る」という約束は、守られないのか?

それは、お客様が嘘をついたわけではありません。あなたのお店が、嫌いになったわけでもありません。

理由は、ただ一つ。

お客様は、あなたのお店のことを、すっかり忘れてしまったのです。

衝撃的な事実ですが、これが現実です。お客様は、あなたのお店のことなど、これっぽっちも覚えていてはくれません。彼らは、あなたのお店を「忘れる天才」なのです。

事実、あなたも2日前に食べた夕食を覚えてますか?

思い出すのに苦労しませんか?

あなた自身が食べたたった2日前の食事でさえ覚えてないのに
お客さんにはウチのお店のことは覚えていろだなんて
そんな虫の良い話などないのです。

この記事では、この残酷な現実を直視し、その上で、お客様にあなたのお店を「忘れさせない」ための、そして、何度も通いたくなる「リピートの仕組み」を構築する方法について、具体的にお伝えします。

なぜ、お客様は「忘れる」のか?情報過多という現代病

現代社会は、情報で溢れかえっています。

朝起きてから夜寝るまで、私たちは、スマホの通知、テレビCM、街中の広告、SNSのタイムライン…と、膨大な量の情報シャワーを浴び続けています。

その中で、昨日食べたランチのお店のことを、一週間後、一ヶ月後まで、鮮明に覚えている人が、一体どれだけいるでしょうか?

よほど、強烈なインパクト(良い意味でも、悪い意味でも)がない限り、ほとんどの記憶は、新しい情報によって、あっという間に上書きされ、忘れ去られていくのです。

あなたのお店も、その例外ではありません。

あなたが、どれだけ素晴らしい料理やサービスを提供したとしても、お客様の記憶の中に留まり続けることは、極めて困難な時代なのです。

「お客様の記憶力」に期待する経営は、もはや、ギャンブルに等しい、と言えるでしょう。

「また来てくださいね」は、呪いの言葉

では、どうすれば、お客様に忘れられずに済むのでしょうか?

多くのお店がやってしまいがちなのが、お会計の際に、ただ「また来てくださいね!」と声をかけるだけの、「神頼みリピート戦略」です。

もちろん、言わないよりはマシかもしれません。しかし、これだけでお客様が戻ってくるほど、ビジネスは甘くありません。

なぜなら、この言葉は、リピートするかどうかの判断を、完全に「お客様任せ」にしてしまっているからです。

  • いつ行くか?(タイミング)
  • 誰と行くか?(同伴者)
  • 何のために行くか?(動機)

これらの、リピートを構成する重要な要素を、すべてお客様の「気分」や「偶然」に委ねてしまっているのです。

これでは、ザルで水をすくうように、お客様が次々とこぼれ落ちていくのも、当然の結果と言えるでしょう。

忘れさせないための「仕組み」を設計する

繁盛しているお店は、お客様の「記憶力」や「偶然」に頼るような、不確実な経営はしません。

彼らは、お客様が「忘れたくても、忘れられない」ような、そして、「また行かざるを得ない」ような、リピートするための「仕組み」を、意図的に、そして、戦略的に設計しているのです。

その仕組みは、決して難しいものではありません。あなたのお店でも、明日からすぐに始められることばかりです。

仕組み1:次回の「予約」を取ってしまう

最も強力で、最もシンプルなリピート対策。それは、お客様が帰る前に、その場で、次回の予約を取ってしまうことです。

  • 美容室の例: 「お客様の髪質ですと、次は1ヶ月半後くらいにカラーとトリートメントをするのがベストですよ。今、ご予約いただければ、ご希望の日時を押さえておきますが、いかがなさいますか?」
  • 飲食店の例: 「来月は、お客様のお誕生日ですよね。もしよろしければ、お席だけでも、先に押さえておきましょうか?ささやかですが、お店からプレゼントもご用意させていただきます」

ポイントは、「お客様のためを思って」提案することです。そうすることで、お客様は「売り込まれた」と感じることなく、自然な流れで、次の来店を約束してくれるのです。

仕組み2:再来店の「きっかけ」を提供する

その場で次回の予約が取れなかったとしても、諦める必要はありません。
お客様が、「また行こう」と思い出すための「きっかけ」を、こちらから提供すれば良いのです。

  • 未来のクーポン券: 「本日のお会計が5,000円以上でしたので、来月末まで使える1,000円割引券をプレゼントします」→ 財布の中にあるこの券が、あなたのお店を思い出させます。
  • ポイントカード: 「あとスタンプが2つ貯まると、5,000円のディナーセットが無料になりますよ」→ 「あと少しでゴール」という状況は、人を強く動機付けます(ゴール勾配効果)。

仕組み3:定期的に「思い出させる」

お客様との接点が、来店時だけ、というのは、あまりにもったいないことです。
お店の外にいるお客様に対しても、定期的にアプローチし、あなたのお店のことを「思い出させる」努力が必要です。

  • LINE公式アカウント: 「LINEのお友達限定で、今週末だけ使える、生ビール1杯無料クーポンを配信します!」→ スマホに直接届くメッセージは、開封率が非常に高い、強力なツールです。
  • ニュースレター(手書きのハガキなど): 「〇〇様、先日はご来店ありがとうございました。季節の変わり目ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか?」→ デジタル時代だからこそ、アナログな、心のこもったコミュニケーションが、お客様の心を強く打ちます。

あなたは、お客様の「記憶」と戦わなければならない

「利益倍増の黄金の3ステップ」の2番目、「再来店対策」。

その本質は、お客様の「忘却」という、強力な敵との戦いです。

この戦いに勝利することなくして、あなたのお店の安定経営は、あり得ません。

まずは、今、あなたのお店で実践できる「仕組み」が何なのかを、考えてみてください。
そして、一つでも良いので、今日から、その仕組み作りをスタートさせてください。

次の記事では、いよいよ、黄金のステップの最終段階、「新規集客」についてお話しします。
「バケツの穴」を塞ぎ、「リピートの仕組み」を構築したあなたにとって、新規集客は、もはや「苦行」ではなく、楽しい「ゲーム」に変わっているはずです。

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ハワードジョイマン

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント 中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345) 絵本作家(構想・シナリオ担当) ・有限会社繁盛店研究所 取締役 ・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役 ・株式会社日本中央投資会 代表取締役 ・繁盛店グループ総代表 1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区) 自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。 大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。 市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。 取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。 お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。 こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。 発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。 会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。 コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。 独自の株式投資経験から株式投資メソッドを確立し、株式投資コミュニティ「株研」も運営する。 どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。