「いやー、美味しかった!また来ますね!」
お客様から、そう声をかけられ、あなたは満足感と喜びで胸がいっぱいになる。
「よし、これで、また一人、常連さんが増えたぞ」
しかし、そのお客様が、再びあなたのお店に姿を現すことは、ほとんどありません。
なぜ、あんなに満足してくれていたはずなのに…?
なぜ、「また来る」という約束は、守られないのか?
それは、お客様が嘘をついたわけではありません。あなたのお店が、嫌いになったわけでもありません。
理由は、ただ一つ。
お客様は、あなたのお店のことを、すっかり忘れてしまったのです。
衝撃的な事実ですが、これが現実です。お客様は、あなたのお店のことなど、これっぽっちも覚えていてはくれません。彼らは、あなたのお店を「忘れる天才」なのです。
事実、あなたも2日前に食べた夕食を覚えてますか?
思い出すのに苦労しませんか?
あなた自身が食べたたった2日前の食事でさえ覚えてないのに
お客さんにはウチのお店のことは覚えていろだなんて
そんな虫の良い話などないのです。
この記事では、この残酷な現実を直視し、その上で、お客様にあなたのお店を「忘れさせない」ための、そして、何度も通いたくなる「リピートの仕組み」を構築する方法について、具体的にお伝えします。
なぜ、お客様は「忘れる」のか?情報過多という現代病
現代社会は、情報で溢れかえっています。
朝起きてから夜寝るまで、私たちは、スマホの通知、テレビCM、街中の広告、SNSのタイムライン…と、膨大な量の情報シャワーを浴び続けています。
その中で、昨日食べたランチのお店のことを、一週間後、一ヶ月後まで、鮮明に覚えている人が、一体どれだけいるでしょうか?
よほど、強烈なインパクト(良い意味でも、悪い意味でも)がない限り、ほとんどの記憶は、新しい情報によって、あっという間に上書きされ、忘れ去られていくのです。
あなたのお店も、その例外ではありません。
あなたが、どれだけ素晴らしい料理やサービスを提供したとしても、お客様の記憶の中に留まり続けることは、極めて困難な時代なのです。
「お客様の記憶力」に期待する経営は、もはや、ギャンブルに等しい、と言えるでしょう。
「また来てくださいね」は、呪いの言葉
では、どうすれば、お客様に忘れられずに済むのでしょうか?
多くのお店がやってしまいがちなのが、お会計の際に、ただ「また来てくださいね!」と声をかけるだけの、「神頼みリピート戦略」です。
もちろん、言わないよりはマシかもしれません。しかし、これだけでお客様が戻ってくるほど、ビジネスは甘くありません。
なぜなら、この言葉は、リピートするかどうかの判断を、完全に「お客様任せ」にしてしまっているからです。
- いつ行くか?(タイミング)
- 誰と行くか?(同伴者)
- 何のために行くか?(動機)
これらの、リピートを構成する重要な要素を、すべてお客様の「気分」や「偶然」に委ねてしまっているのです。
これでは、ザルで水をすくうように、お客様が次々とこぼれ落ちていくのも、当然の結果と言えるでしょう。
忘れさせないための「仕組み」を設計する
繁盛しているお店は、お客様の「記憶力」や「偶然」に頼るような、不確実な経営はしません。
彼らは、お客様が「忘れたくても、忘れられない」ような、そして、「また行かざるを得ない」ような、リピートするための「仕組み」を、意図的に、そして、戦略的に設計しているのです。
その仕組みは、決して難しいものではありません。あなたのお店でも、明日からすぐに始められることばかりです。
仕組み1:次回の「予約」を取ってしまう
最も強力で、最もシンプルなリピート対策。それは、お客様が帰る前に、その場で、次回の予約を取ってしまうことです。
- 美容室の例: 「お客様の髪質ですと、次は1ヶ月半後くらいにカラーとトリートメントをするのがベストですよ。今、ご予約いただければ、ご希望の日時を押さえておきますが、いかがなさいますか?」
- 飲食店の例: 「来月は、お客様のお誕生日ですよね。もしよろしければ、お席だけでも、先に押さえておきましょうか?ささやかですが、お店からプレゼントもご用意させていただきます」
ポイントは、「お客様のためを思って」提案することです。そうすることで、お客様は「売り込まれた」と感じることなく、自然な流れで、次の来店を約束してくれるのです。
仕組み2:再来店の「きっかけ」を提供する
その場で次回の予約が取れなかったとしても、諦める必要はありません。
お客様が、「また行こう」と思い出すための「きっかけ」を、こちらから提供すれば良いのです。
- 未来のクーポン券: 「本日のお会計が5,000円以上でしたので、来月末まで使える1,000円割引券をプレゼントします」→ 財布の中にあるこの券が、あなたのお店を思い出させます。
- ポイントカード: 「あとスタンプが2つ貯まると、5,000円のディナーセットが無料になりますよ」→ 「あと少しでゴール」という状況は、人を強く動機付けます(ゴール勾配効果)。
仕組み3:定期的に「思い出させる」
お客様との接点が、来店時だけ、というのは、あまりにもったいないことです。
お店の外にいるお客様に対しても、定期的にアプローチし、あなたのお店のことを「思い出させる」努力が必要です。
- LINE公式アカウント: 「LINEのお友達限定で、今週末だけ使える、生ビール1杯無料クーポンを配信します!」→ スマホに直接届くメッセージは、開封率が非常に高い、強力なツールです。
- ニュースレター(手書きのハガキなど): 「〇〇様、先日はご来店ありがとうございました。季節の変わり目ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか?」→ デジタル時代だからこそ、アナログな、心のこもったコミュニケーションが、お客様の心を強く打ちます。
あなたは、お客様の「記憶」と戦わなければならない
「利益倍増の黄金の3ステップ」の2番目、「再来店対策」。
その本質は、お客様の「忘却」という、強力な敵との戦いです。
この戦いに勝利することなくして、あなたのお店の安定経営は、あり得ません。
まずは、今、あなたのお店で実践できる「仕組み」が何なのかを、考えてみてください。
そして、一つでも良いので、今日から、その仕組み作りをスタートさせてください。
次の記事では、いよいよ、黄金のステップの最終段階、「新規集客」についてお話しします。
「バケツの穴」を塞ぎ、「リピートの仕組み」を構築したあなたにとって、新規集客は、もはや「苦行」ではなく、楽しい「ゲーム」に変わっているはずです。