3.儲かる販促と利益アップ

飲食店のアップセルを、押し売りにせず進める方法

少し前のことです。増益繁盛クラブの会員さんから、こんな相談をいただきました。

「ジョイマンさん、うちのスタッフがどうしてもアップセルの声かけができないんですよ。練習させても『お客さんに嫌われそうで怖い』って言って、結局やらない。自分でやろうと思っても、なんか押し売りみたいで気が引けてしまって」

その方は地方都市で居酒屋を経営していて、料理の腕はたしかで常連さんからの評判もいい。でも月商の壁をなかなか超えられない。その理由を一緒に掘り下げていったら、「客単価がほぼ動いていない」という事実が浮かびあがってきました。

来てくれるお客さんの数は悪くない。でも、一人当たりの購入金額が数年間ほとんど変わっていない。これはアップセルの問題というより、そもそも「アップセルとは何か」「なぜ押し売りになるのか」の理解が整理されていなかっただけだったんです。

今日は、その時のやり取りをベースに、飲食店でアップセルを自然に進めるための考え方と具体的な方法をお話しします。

📋 この記事でわかること

  1. アップセルが「押し売り」に感じられる本当の原因
  2. 客単価を自然に上げるメニュー設計とPOPの使い方
  3. スタッフが抵抗なく声かけできるようになる仕組みの作り方
  4. アップセルを「売る行為」ではなく「提案」に変えるマインドの転換

こんな方におすすめ

  • ✅ お客さんへの声かけが「押し売りになりそうで怖い」と感じている飲食店オーナー
  • ✅ 客単価が数年間ほぼ横ばいで、どこから手をつければいいかわからない方
  • ✅ スタッフにアップセルをお願いしても、なかなか実践してもらえない方
  • ✅ 値下げやクーポンに頼らず、自然に売上を上げる方法を探している方
  • ✅ 仕組みとしてアップセルを定着させたい経営者の方
飲食店のアップセルを、押し売りにせず進める方法 | 増益繁盛クラブ、繁盛店研究所/増益繁盛クラブ(運営法人:有限会社繁盛店研究所、株式会社繁盛店研究出版、株式会社日本中央投資会/繁盛店グループ)

「押し売り」に感じる理由は、提案のタイミングと中身にある

アップセルが押し売りになる理由は、シンプルです。

お客さんが欲しいと思っていないものを、こちらの都合で勧めているからです。

たとえば、お客さんがビールを一杯飲み終えた瞬間に「もう一杯いかがですか?」と声をかける。お客さんがまだ料理を食べている最中に「デザートはどうですか?」と割り込む。これは確かに押し売りに近い。タイミングが合っていないし、お客さんの状況を読めていない。

でも逆に考えると、アップセルとは「お客さんがもう少し欲しいと思っているタイミングで、ぴったりな提案をする」ことです。これができれば、押し売りどころか「ありがとう、それください」になる。

その居酒屋のオーナーと話しながら、まず整理したのはこの部分でした。「アップセル=売りつける」という思い込みを外すことが、最初の一歩です。

「売りたいから勧めるのではなく、お客さんにとって今夜が少しだけ豊かになるものを提案する。その順番を間違えると、どんな言葉も押し売りに聞こえてしまいます」

ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)

メニュー設計で「声をかけなくても売れる状態」を作る

じつは、アップセルの理想形は「スタッフが声をかけなくても、お客さん自身が追加注文をしたくなる」状態です。これを作るのが、メニュー設計とPOPの役割です。

先ほどの居酒屋でやったことをご紹介します。

チェックポイント①:看板メニューと相性のいい「ペアリング提案」ができているか

その店には人気の唐揚げがありました。でもメニューには唐揚げの説明だけ。「このお店のイチオシ日本酒と一緒に食べると最高です」という一言がどこにもなかった。

✅ ポイント:人気メニューのページか近くに、「これと一緒に飲むなら◯◯がおすすめ」という一行を入れるだけで、お客さん自身がペアリングを選び始めます。声かけゼロのアップセルです。

チェックポイント②:テーブルPOPで「今夜の締め」を提案できているか

お酒が進んで料理も一通り食べた頃、お客さんはなんとなく「締め」を探します。このタイミングを狙ったPOPをテーブルに置いていない店が多い。「〆の一杯に、店主おすすめの◯◯。今夜を最高の夜にしてください」という短いコピーのPOPを置いただけで、締めのドリンク注文が増えた店を私はいくつも見てきました。

✅ ポイント:POPは「押し付け」ではなく「読み物」として置く。お客さんが暇なタイミングに目に入る場所(メニュー裏、卓上スタンドなど)に置くのがコツです。

チェックポイント③:メニューに「松竹梅」の価格帯が設計されているか

客単価が横ばいの店に共通しているのが、メニューの価格帯が狭いことです。全部800円〜1,200円に集中していると、お客さんは「どれも同じくらい」と判断して、高い方を選ぶ理由がない。

✅ ポイント:意図的に「特別な一皿」として2,000円〜3,000円の品を数品だけ設ける。全員が注文しなくてもいい。注文した人が満足し、周りのお客さんの目に触れれば、それだけで客単価の引き上げに機能します。

✓ ここまでのポイント

  • アップセルが押し売りになる原因は「タイミング」と「提案の中身」がずれているから
  • スタッフが声をかけなくても売れる仕組みをメニューとPOPで作ることが先決
  • 「松竹梅」の価格設計で、お客さんが自然に上の選択肢を選びやすくする

スタッフが自然に声かけできる「仕組み」の作り方

とはいえ、やはり人の声かけは強い。POPやメニューを整えた上で、スタッフが自然に提案できる状態を作れると、客単価はさらに上がります。

「でも、うちのスタッフは声かけを嫌がるんですよ」という声をよく聞きます。でもこれは、スタッフの性格の問題ではないことが多い。

声かけが怖い理由のほとんどは、「何を言えばいいかわからない」「断られたときにどうすればいいかわからない」この二つです。つまり、台本と練習の問題です。

アップセル STEP 1

一言フレーズを3パターンだけ決める

「本日のおすすめデザートは◯◯です。甘いものがお好きでしたらぜひ」「唐揚げには◯◯の日本酒が合いますよ」「お食事はお決まりですか?今日は◯◯が入ってますよ」この程度でいい。長いトークは必要ありません。スタッフが暗記できて、実際の場面で言いやすい短い言葉を3パターンだけ決め、それだけを使う。

⚠️ よくある失敗:フレーズをたくさん作りすぎて、スタッフが何を言えばいいか迷い、結局何も言わなくなる。

アップセル STEP 2

「断られることを前提」にした練習をする

ロールプレイで、断られる練習をする。「結構です」と言われたら「ありがとうございます、ごゆっくりどうぞ」と笑顔で返す。これだけです。断られても何も失わないと体験すると、スタッフの怖さが半分以下になります。

⚠️ よくある失敗:「なぜ断られたのか」を細かく分析させてスタッフが委縮する。最初は断られることへの耐性を作ることが優先です。

アップセル STEP 3

声かけを「数字で可視化」して習慣にする

一日何回声かけしたか、そのうち何回注文につながったかを簡単に記録する。目的は「追いかけること」ではなく、スタッフ自身が「今日は5回声かけできた」という達成感を持てるようにすること。数字が見えると、行動が続きやすくなります。

⚠️ よくある失敗:注文数だけを目標にすると、断られることへのプレッシャーが増す。声かけ回数を評価する設計にする。

「スタッフに『アップセルをしろ』と言うより先に、『何を言えばいいか』『断られたらどうするか』を仕組みにすることが、経営者の仕事です。感覚や根性で動かそうとすると、必ずやる気のある人だけが頑張って疲れます」

ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)

アップセルは「価値を届ける行為」だというマインドの転換

最後に、一番大切なことをお伝えします。

アップセルへの抵抗感は、「お客さんに余計なお金を使わせる」という罪悪感から来ています。でも本当にそうでしょうか。

あなたの店の唐揚げが美味しくて、それに合う日本酒を知っているとする。それをお客さんに伝えないことは、「余計なことをしない」ではなく、「知っていたのに教えなかった」です。

お客さんは、あなたの店を信頼して来ています。その信頼に応えるのは、良い料理を出すことだけではない。「今夜の食事をもう少し豊かにする提案をする」ことも含まれる。これがアップセルの本質です。

私自身、コンサルタントとして独立した当初、「自分のサービスを勧めることへの抵抗感」に悩んだ時期がありました。でもある時気づいたんです。「自分が本当に役に立てると信じているなら、それを伝えないのは相手に対して失礼だ」と。それから、提案への抵抗感がすっと消えました。

飲食店のアップセルも同じです。自分の料理や商品に自信を持っているなら、それを積極的に伝えることは「押し売り」ではなく「サービス」です。

「チラシとGoogle広告で新規客が約2倍になり、客単価も1,400円上がりました。最初は『値段を上げたら来なくなる』と思っていたのですが、価値を伝えれば選んでもらえると実感しています」

居酒屋オーナー(月商350万円→620万円・6ヶ月)

まとめ:アップセルは「仕組み」と「マインド」の両輪で動く

今日お伝えしたことを整理します。

飲食店のアップセルを押し売りにしないためのポイントは、大きく三つです。

一つ目は、メニュー設計とPOPで「声をかけなくても売れる状態」を先に作ること。
二つ目は、スタッフが使える「一言フレーズ」と「断られた後の返し方」を仕組みとして整えること。
三つ目は、「アップセル=価値を届ける行為」というマインドに切り替えること。

どれか一つだけでも、今日から始められることがあるはずです。地味な積み重ねですが、客単価が1,000円変わると、月商はお客さん一人増やさなくても大きく動きます。それが「仕組みで利益を作る経営」の入り口です。

客単価の設計や、アップセルの仕組みを一緒に考えたい方は、まず以下からどうぞ。全国の飲食店・美容室・小売店オーナーと一緒に、繁盛し続ける店づくりを進めています。お気軽にのぞいてみてください。

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あなたの「今夜の一手」が、来月の客単価を変えます。一緒にやっていきましょう。

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ハワードジョイマン

プロフィール

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

生い立ちと異色の経歴

1975年、静岡県清水市(現:静岡市清水区)生まれ。自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしている環境から、幼少期より受付に立ち、商売の基礎を肌で感じながら育つ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を開始。活動中には九州松早グループが運営するファミリーマートのCMにも出演する。その後、父の急逝を機に大学卒業後、清水市役所へ奉職。

市役所勤務から独立へ

市役所在職中に中小企業診断士の取得を決意。昼は公務員として働き、夜は受験勉強、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの修行を重ねるという生活を継続。6年間の猛勉強の末、難関の中小企業診断士資格を取得する。

資格取得を機に7年勤めた市役所を退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立し、独立を果たす。

「笑人の繁盛術」による圧倒的な実績

お笑い芸人時代の経験を活かし、小売店・飲食店・美容室・整体院などの集客や販促に、お笑い芸人の思考法や漫才の手法を導入。独自のメソッド「笑人の繁盛術」を用いたコンサルティングにより、クライアントの業績を次々と向上させる。

専門用語を使わない分かりやすい内容のメールマガジンは、読者数1万人を突破。多くの業績アップ報告が寄せられている。また、会員制サポート「増益繁盛クラブ」は、日本全国(北海道〜沖縄)のみならずアメリカからの参加者もおり、その活動はテレビ番組『ガイアの夜明け』でも取り上げられ大きな注目を浴びた。

多角的な活動と信念

現在は、プロのコンサルタントが購読する専門誌『企業診断』(同友館)での連載も手がけ、「コンサルタントのコンサルタント」としても高い評価を得ている。また、自身の経験から確立した株式投資メソッドを伝えるコミュニティ「株研」も運営。

多忙を極める現在も、毎月1回の先祖への墓参りを欠かさない。家族をこよなく愛するマーケッターである。

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