梅雨が明けて、夏の日差しが強くなってきましたね。この時期、飲食店の経営者の方から「夏は暇になるから、キャンペーンでも打とうと思って…」という相談が増えます。
その気持ち、すごくよくわかります。でも、ちょっと待ってほしい。そのキャンペーン、値引きが前提になっていませんか?
今回は、ある飲食店オーナーとのやりとりをベースに、「安売りで集めたお客さんに振り回される日々」から、「価値を伝えて選ばれる店」に変わった話をお伝えしたいと思います。実際に私がコンサルティングの中で何度も繰り返してきた対話のエッセンスです。
📋 この記事でわかること
- 値引き集客が「疲弊のスパイラル」を生む構造的な理由
- 「価値を伝える」とは具体的に何をすることなのか
- 安売りから抜け出した飲食店が実際に何を変えたのか
- 今日から始められる「価値で選ばれる店」への最初の一歩
こんな方におすすめ
- ✅ クーポンや割引に頼らないと新規客が取れないと感じている飲食店オーナー
- ✅ 忙しく働いているのに利益が手元に残らないと悩んでいる方
- ✅ 客単価を上げたいけれど、お客さんに嫌われそうで踏み切れない方
- ✅ 「味には自信があるのに、なぜ選ばれないのか」と感じている経営者の方
- ✅ 値下げに頼らない、長く繁盛し続ける経営基盤を作りたい方

「安くしないと来てくれない」は本当か?──ある居酒屋オーナーとの対話
その方(40代・男性、地方都市で居酒屋を営む経営者)と最初に話したのは、ちょうど3年前のことでした。月商はおよそ350万円。数字だけ見れば悪くない。でも顔が疲れていた。
「ジョイマンさん、うちのエリアはね、とにかく価格に敏感なんですよ。安くしないと来てくれない。だから食べログとホットペッパーでクーポン出し続けてる。止めたら客が来なくなる気がして怖くて」
この言葉、何十回聞いたかわかりません。
私がそのとき聞き返したのはこうです。「そのクーポンで来てくれたお客さん、何回リピートしていますか?」
しばらく間があって、「…来ない人が多いですね」と。
そうなんです。価格で来たお客さんは、価格で去ります。これは理屈じゃなくて、構造の話です。クーポン客は「お得な店」を探しているのであって、「あなたの店」を探しているわけじゃない。だからクーポンをやめた瞬間に消える。
「値引きは集客じゃない。値引きは、自分の利益を削って一時的に人を集めているだけ。本当の集客は、あなたの店の価値を知ってもらって、また来たいと思ってもらうことです」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)
「価値を伝える」とは、何を・どこで・どうやって伝えることなのか
「価値を伝えましょう」と言うと、多くの経営者の方が「SNSに投稿すること?」と思います。それも一つですが、私が最初に取り組んでもらったのは、もっと地味なことでした。
POPです。
そのオーナーの居酒屋には、名物の手羽先がありました。毎朝仕入れた国産の鶏を使って、秘伝のタレで3時間かけて仕込んでいる。でもメニューには「手羽先 380円」としか書いていなかった。
私は言いました。「その3時間の仕込みを、メニューに書きましょう。仕入れ先の産地も書く。なぜそのタレを使っているのか、一言でいいから書く」と。
値段は変えない。380円のまま。ただ、伝える情報を増やしただけ。それだけで、手羽先の注文数が増え始めた。「これ、どんなタレですか?」と聞いてくれるお客さんが増えた。会話が生まれた。
価値を伝えるというのは、要するに「なぜこれがこの価格なのか」「なぜあなたはこれを食べるべきなのか」を、お客さんが自分で納得できる形で示すことです。説得じゃなくて、情報提供。
❌ よくあるパターン:メニューに品名と価格だけ書いてある
- お客さんは価格だけを比較材料にするしかない
- 結果として「高い・安い」だけで判断される
- 価格競争に巻き込まれ、値引きしないと選ばれない構造ができあがる
✅ 推奨アプローチ:品名・価格に「背景・こだわり・理由」を加える
- お客さんが「なるほど、だからこの値段なんだ」と腹落ちする
- 価格ではなく「この店の価値」で選んでもらえるようになる
- スタッフとの会話が生まれ、リピート率が上がりやすくなる
✓ ここまでのポイント
- 値引きで集まるお客さんは「価格目的」であり、値引きをやめると去る。これは構造的な問題
- 「価値を伝える」とは、POPやメニューに背景・こだわり・理由を書き加えるという、地味で具体的な作業のこと
- 価格を変えなくても、伝え方を変えるだけで注文数・会話・リピートが変わることがある
転機はどこにあったか──「値上げしたら客が増えた」という逆説
3ヶ月後、そのオーナーから連絡がきました。「ジョイマンさん、試しに手羽先を430円にしてみたんですよ。怖かったけど」
結果は?「クレームは一件もなかった。むしろ売上が上がった」
なぜか。価値の伝え方が変わっていたからです。430円という価格が、3時間の仕込みと国産鶏という情報と並ぶと「それなら納得」になる。380円だったときは「手羽先380円、高くない?」と思われていたかもしれない。
これが「価値で選ばれる」ということの本質です。価格が上がっても、価値の説明がそれを上回れば、お客さんは選んでくれる。
「チラシ+Google広告で新規のお客さんが約2倍になり、客単価も1,400円アップしました。半年でここまで変わるとは正直思っていませんでした」
居酒屋オーナー(月商350万円→620万円・6ヶ月)
もちろん、POPだけで全部が解決したわけじゃありません。並行して、Googleビジネスプロフィールの整備、ハガキDMで既存客への再来店促進、チラシによる商圏内の新規客獲得も進めていきました。
ただ、最初の「安売りをやめる」という決断がなければ、何をやっても焼け石に水だった。安売りをしたまま広告を打つと、安売り目的の客だけが集まるからです。
「価値で選ばれる店」になるための、今日からできる3つの診断
チェックポイント1:メニューに「なぜこの価格か」が書いてあるか
今すぐメニューを開いて確認してください。品名と価格だけが並んでいませんか? 素材の産地・仕込みの手間・シェフのこだわりが一言も書いていないなら、お客さんは価格しか比較できません。
✅ ポイント:一番の看板メニューから始め、背景を3行以内で書き添えてみる。それだけで注文頻度と会話量が変わります。
チェックポイント2:クーポンなしで来てくれたお客さんの割合を把握しているか
食べログやホットペッパーの来店データを見てください。クーポン使用率が70%を超えているなら、すでに「クーポン依存」の構造に入っています。クーポンをやめたときのシミュレーションができていますか?
✅ ポイント:クーポン客とリピート客の来店頻度を分けて把握する習慣を作ること。数字を見ないまま恐れているより、現実を直視するほうが打ち手が見えてきます。
チェックポイント3:既存客への接点(DMやニュースレター)が仕組み化されているか
新規客を値引きで獲得し続ける構造から抜け出すには、既存客をリピートさせる仕組みが必要です。ハガキDMやLINE配信で、クーポンなしの接点を持てていますか?
✅ ポイント:「また来たくなる理由」を届けることが再来店の仕組みの核。値引きでなく、季節の新メニュー情報や店主の近況でも、関係が続くお客さんは必ずいます。
まとめ──地味な打ち手を続けることが、一番遠回りに見えて一番近い
安売りから抜け出すのは、一夜にして変わるドラマチックな話じゃありません。POPに一行書き加える。メニューを一品見直す。既存客にハガキを一枚送る。そういう地味な積み重ねが、半年後・一年後に「あの店、なんかいつも混んでるな」という評価に変わっていきます。
私自身、独立当初に貯金を使い果たし、家族に借金をして再起した経験があります。そのときに学んだのは、「お金をかけずに売上を伸ばそう」という発想は最も遠回りだということ。必要な投資をして、顧客を創造していく。その考え方に切り替えてから、売上が立ち始めました。
あなたの店にも、まだ伝えられていない価値が必ずあります。それを言葉にして、届ける仕組みをつくること。それが「価値で選ばれる店」への道です。
増益繁盛クラブでは、飲食店・美容室・小売店の経営者の方を対象に、客数・客単価・来店頻度の3系統から売上を整理し、紙・ネット・AIを組み合わせた販促の仕組みづくりをご一緒しています。指導実績は833件以上、業界経験21年。伴走者として、あなたの隣を歩かせてください。
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