飲食店経営が苦しい時にまずやるべき3つのこと。新規集客の前に見直す場所
「料理には自信がある。でも売上が上がらない」
「忙しいのに、なぜか手元にお金が残らない」
「ホットペッパーに出稿してみたけど、クーポン客ばかりでリピートしない」
「前月より客数は増えたのに、利益が減っている気がする」
これ、思い当たることがありますよね。
飲食店経営が苦しくなってきたとき、多くのオーナーさんが最初に手を伸ばすのが「新規集客」です。グルメサイトに追加出稿する、チラシを撒く、SNS広告を試してみる。でも、そこにお金と時間をかける前に、見直すべき場所が別にあります。
今回は、20年以上にわたって飲食店経営者と向き合ってきた中小企業診断士・ハワードジョイマンが、実際の経営者との対話の中で繰り返し出てきた「本当に最初にやるべきこと」を3つに絞って整理します。月商130万円から230万円に成長した焼き鳥店や、前年比151万円の売上増を達成した地方のパスタ店。こうした結果を出した店に共通していたのは、新規集客を強化する前に、ある大事なことをやっていたという事実です。

まず「売上の穴」がどこにあるかを特定する
以前、静岡市内で居酒屋を経営するオーナーさんとこんな会話をしました。
「ジョイマンさん、もう新規集客に力を入れるしかないと思うんですよ。客数が足りないんで」
私は聞き返しました。「本当に客数が足りないんですか? 今来てくれているお客さん、何人に1人がドリンクを追加注文していますか?」
オーナーさんは少し黙って、「……正直、把握してないです」と答えました。
これが典型的なパターンです。売上を「客数×客単価」という2つの数字でしか見ていないため、どこに穴があるのかがわからない。
売上は本来、7つの軸で動いています。①入店率、②購入率、③購入点数、④客単価、⑤来店回数、⑥来店タイミング、⑦新規客。この7つのうち、新規集客に直結するのは⑦だけです。
苦しい時にいきなり⑦に全力を注いでも、①〜⑥に穴が空いていれば、せっかく来てくれた新規のお客さんも利益に変わらず出ていくだけです。
まず自店の7つの軸を確認してください。「来てくれたお客さんが追加注文しているか(②購入率・③購入点数)」「もう一品頼んでもらえているか(④客単価)」「次回また来てくれているか(⑤来店回数)」。ここに手を打てるなら、新規集客より先にそちらをやる。これが経営が苦しい時の正しい優先順位です。
「値引き」で集めた客が、経営をさらに苦しくしている
あるイタリアンレストランのオーナーさんが、半年かけてグルメサイトのクーポンを強化した結果、席は埋まるようになったのに利益が出なくなった、という相談をくれたことがあります。
原因ははっきりしていました。クーポン目当てで来た客は、ドリンクを最低限しか頼まない。物販には反応しない。「このデザート、前回と内容が違う」とクレームが来る。一方で、クーポンなしで普通に来てくれる常連さんは、コース料理の上のプランを選んでくれて、ワインも追加してくれる。
値引き客と優良客では、そのお客さんが生涯にわたってお店にもたらす価値に7倍以上の差があります。値引きで集めた客が多い店ほど、忙しさの割に手元に残るお金が少なくなっていくのはこのためです。
では値引きをやめたら客が来なくなるのか、というと、そうはなりません。やめ方が大事なのです。
値引きをやめる前に、「価値で選ばれる仕組み」を先に作る。具体的には、メニュー表の書き方を変えます。「本日の鮮魚」ではなく「駿河湾の一本釣り真鯛、仕入れは週3日だけ」。「シェフのおすすめパスタ」ではなく「朝6時から仕込む3種のトマトソース、1日20食限定」。
手間と時間と背景を言葉にする。これだけで、同じ料理が「高いのに売れる」に変わります。値引きをやめて価値を伝える仕組みができれば、残るお客さんが変わります。残ったお客さんの質が上がるから、利益も変わる。
経営が苦しい時に値引きをさらに強化するのは、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。まず穴を塞ぐ。これが2つ目にやるべきことです。
「次回いつ来てもらうか」をお客さん任せにしない
飲食店経営が苦しい時、売上の予測が立てられないことがさらに不安を増幅させます。「今月は来るかもしれない、来ないかもしれない」という状態では、仕入れも人員配置も後手後手に回ります。
ここで使えるのが「未来計画表」という考え方です。
来店されたお客さんに、その場で次回の来店タイミングを一緒に決めてもらう。「今日はコースでしたね。次は来月の誕生日前後はいかがですか?」「3ヶ月後に同窓会があるとおっしゃってましたが、その前に一度個室の下見にいらっしゃいませんか?」
美容室では「おしゃれ計画表」として活用されていますが、飲食店でも同じ発想は使えます。誕生日・記念日・季節のイベント・接待の予定を把握して、「次にこの店を使う理由」を一緒に育てていく。
あるとんかつ専門店では、会計時に「次は○月ごろ、旬のカキフライが出ますので、ご予約はいかがですか」と声をかける習慣を全スタッフで統一しただけで、2ヶ月後・3ヶ月後の予約が安定して入るようになりました。これは新規集客ではなく、既存客の来店回数を増やすアプローチです。客数が変わらなくても、来店回数が1.2倍になれば売上は1.2倍になります。
次回来店の仕組みがないお店は、常に「また一から新規集客」を繰り返す構造から抜け出せません。苦しい時ほど、今目の前にいるお客さんとの関係を深めることに集中してください。
3つをまとめると、「今いるお客さんを大切にする」ということ
整理しましょう。飲食店経営が苦しい時にまずやるべき3つのことは、次の通りです。
- 売上の7つの軸を確認して、穴がどこにあるかを特定する(新規集客より先にやること)
- 値引きをやめて、価値を言葉にする仕組みを作る(メニュー表の書き方を変えるだけで動ける)
- 次回来店を「お客さん任せ」にしない仕組みを入れる(未来計画表・次回予約の仕組み化)
この3つに共通しているのは、「今すでに来てくれているお客さんに、もっとちゃんと向き合う」という発想です。
新規集客は大事です。でも、新規を集める前に「今来てくれているお客さんをリピートにつなげられているか」「客単価を上げられているか」「価値を正しく伝えられているか」が整っていなければ、広告費をかけても利益には変わりません。
月商130万円から230万円に成長した焼き鳥店も、赤字から脱却して年商2倍になった美容室も、最初に手をつけたのは派手な新規集客施策ではありませんでした。今あるお客さんとの関係を深めて、価値の伝え方を整えて、来店の仕組みを作った。その積み重ねが、数字を変えていきました。
2週間で3つだけ実行する、というのが私のやり方です。全部一度にやろうとすると頭がパンクするので、今週は「メニュー表の一番売りたい料理の説明文を書き直す」だけでいい。それだけで、1ヶ月後の数字は変わり始めます。
まとめ:苦しい今だからこそ、打ち手の順番を間違えない
「経営が苦しい」という状況は、焦りを生みます。焦るから、すぐ効きそうな「新規集客」に走る。でも多くの場合、その前にやるべきことがあります。
7つの軸で自店の穴を特定すること。値引きではなく価値を言葉にすること。次回来店の仕組みをお客さん任せにしないこと。
この3つを今週から動かしてみてください。「とにかくやってみる」が最初の一歩です。
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