先日、こんな相談をいただきました。
静岡市内で居酒屋を経営している40代のオーナーさんからのお話でした。「ジョイマンさん、うちのスタッフがまた辞めました。今年で3人目です。給料も上げたし、シフトも配慮したのに、なんで辞めていくのか正直わからなくて……」と。
話を聞いていくと、そのお店には明確なパターンがありました。売上の7割以上がオーナーさんの接客から生まれていて、他のスタッフは「お皿を運ぶ人」になっていた。スタッフが自分の指名客を持てず、売上に貢献している実感が持てない状態が続いていたんです。
辞めた理由を聞いたら「自分がここで働く意味がわからなくなった」という言葉が返ってきたそうです。
これ、給料の問題じゃないですよね。
📋 この記事でわかること
- 飲食店の離職率が改善しない「本当の原因」
- スタッフの売上を伸ばすための具体的な仕組みの作り方
- オーナーの指名客をスタッフに自然に引き継ぐ方法
- 定着率が上がり始める「チームの変化」をどう作るか
こんな方におすすめ
- ✅ スタッフが毎年入れ替わってしまって疲弊しているオーナーさん
- ✅ 給料を上げても離職が止まらず、原因がわからない方
- ✅ 自分が現場に立たないと売上が落ちる構造から抜け出したい方
- ✅ スタッフに「成長している実感」を持ってもらいたいと思っている方
- ✅ 採用コストを下げて、働きがいのあるお店を作りたい方

離職率が高いお店に共通する「構造的な問題」
離職の原因として真っ先に挙げられるのが「給料が低い」「休みが少ない」ですが、条件を改善しても定着率が上がらないお店があります。それはなぜか。
原因は3つに絞られます。
① 自分がこの店で何のために働いているかわからない
オーナーの想いや経営の方向性がスタッフに共有されていない。「とにかく元気よく接客して」「売上を意識して」とざっくりした指示だけが飛んでいて、スタッフは自分の仕事の意味が見えない。
② 成長している実感がない
オーナーの指名客ばかりが突出していて、他のスタッフに「自分も売上に貢献できた」という体験が生まれない。承認される機会が少なく、「自分はこの店の主力になれない」と感じて辞めていく。
③ オーナーの考えが見えない
評価基準が曖昧で、何をすれば褒められるのか、何をすれば叱られるのかが読めない。これが積み重なると「居場所感のなさ」になります。
この3つが揃ったお店では、どれだけ時給を上げても、スタッフはいずれ「条件のいい別の店」に流れていきます。条件で集めた人は条件で去っていく、ということです。
「スタッフの売上が伸びない」のは、仕組みがないからです
オーナーさんの指名客が多い理由を聞くと、だいたい「自分が長年積み上げてきた信頼があるから」「常連さんがうちを気に入ってくれているから」とおっしゃいます。
それは本当にそうなんです。でも問題は、その「信頼と関係性」がオーナーの頭の中だけにある状態になっていること。スタッフが同じようにお客さんに関わろうとしても、どう接していいかわからない。
これは能力の問題ではなく、仕組みの有無の問題です。
たとえば、私がクライアントさんにおすすめしているのが「未来計画表」というツールです。
お客さんの次回来店ペース・好みのメニュー・特別な記念日・おすすめしたいメニューを一枚のシートに落とし込んで、スタッフ誰でも見られる状態にする。接客の標準ツールとして使えるようにすることで、オーナーがいなくても「あのお客さんは次に来た時にこれを勧めよう」という動きができるようになります。
これだけで、スタッフが「自分もお客さんに価値を届けられた」という体験を積み始めます。
「スタッフの売上が伸びると、スタッフは成長を実感できる。成長を実感できると、辞めなくなる。辞めなくなると、採用コストが消える。採用コストが消えると、利益が残る。離職率改善は実は、最もコスパのいい利益アップ策なんです。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・販促アイデア100選)
オーナーの指名客をスタッフに引き継ぐ3つのステップ
「自分の常連さんをスタッフに任せるのが怖い」というオーナーさんは多いです。それは自然な感情だと思います。でも、そのままにしておくと、オーナーが1日休んだだけで売上が落ちる構造がずっと続きます。
順番を追って説明しますね。
引き継ぎ STEP 1
オーナーの接客をスタッフが「見る」機会を作る
最初は「なぜあの常連さんはうちをリピートしているのか」をスタッフに観察させることから始めます。注文の取り方、声のかけ方、メニューのどこを説明しているか——これを言語化してもらうだけで、スタッフの接客意識が変わります。
⚠️ よくある失敗:「見ておいて」とだけ伝えて終わり。観察後に「気づいたことを教えて」と必ず聞くセットにしてください。
引き継ぎ STEP 2
未来計画表にお客さんの情報を落とし込む
常連さんとの会話で出てきた「次回来たい時期」「気になっているメニュー」「誕生日や記念日」を未来計画表に記録する習慣をつける。オーナーが書いたものをスタッフが見て学ぶ段階から、徐々にスタッフ自身が書けるようにしていきます。
⚠️ よくある失敗:ツールだけ作って運用ルールがない。「誰が・いつ・どこに書く」まで決めないと形骸化します。
引き継ぎ STEP 3
スタッフが担当したお客さんの「感謝の声」を可視化する
スタッフが対応したお客さんから「ありがとう」「また来るね」という言葉をもらった時、それを朝礼などで共有する場を作る。数字だけでなく「自分の接客がお客さんに届いた」という体験が、スタッフの定着に直結します。
⚠️ よくある失敗:良い接客があっても素通り。「今日これ良かったよ」と口頭で伝えるだけでもいいので、承認のタイミングを意図的に作ることが大事です。
✓ ここまでのポイント
- 離職の本質的な原因は「給料」ではなく「売上が伸びない・成長実感がない・居場所感がない」の3つ
- スタッフの売上を伸ばすには、オーナーの頭の中にある接客の知恵を「未来計画表」などの仕組みに落とし込むことが先決
- 引き継ぎは「見る→記録する→感謝を可視化する」の3ステップで段階的に進める
「売上が伸びる体験」が定着率を変えた実例
「ジョイマンさんのアドバイスで未来計画表を導入してから、スタッフが自分から『次回のご来店ペース』をお客さんに提案するようになりました。月商が130万円から230万円に伸びましたが、それよりも『スタッフが辞めなくなった』のが一番の変化です。採用の手間もコストもほとんどかからなくなりました。」
焼き鳥店オーナー(40代・男性)
この焼き鳥店のオーナーさんが言っていたのは「売上が上がったことより、スタッフの顔が変わった」ということでした。
自分の担当したお客さんがリピートしてくれる体験が積み重なって、スタッフが「このお店で働いていてよかった」と感じ始めた。その感情の変化が、離職率の改善につながったんです。
現在、私が主宰する「増益繁盛クラブ」には全国500社を超える飲食店・美容室オーナーが参加しており、累計1,000店舗以上がこうした仕組みを実践して成果を出してきました。
共通しているのは「スタッフの成長体験」と「定着率の改善」がセットで起きているということです。
スタッフが「辞めない店」になるためにオーナーがすべきこと
ここまで読んでくれた方なら、もう気づいていると思います。
離職率を下げたいなら、まずオーナーが「自分がいなくても売上が立つ仕組み」を作ることに本気で向き合う必要がある。これを後回しにしている限り、採用→育成→離職のサイクルが止まりません。
具体的にやること、3つに絞って伝えます。
① なぜこの店をやっているのかを言語化してスタッフに伝える
経営の方針を文字にして、全スタッフと共有する。これがスタッフの「ここで働く意味」を生みます。毎月の朝礼でも、SNSの投稿でも、形はなんでもいい。とにかく伝える回数を増やしてください。
② スタッフに考えてもらう時は、テーマを1つに絞る
「なにか売上上げるアイデアない?」という質問では誰も動けません。「今週、来てくれたお客さんに追加で一品すすめるとしたら何を?」のように、テーマを具体的に絞る。答えやすい質問に変えるだけで、スタッフの発言量がガラッと変わります。
③ 「新商品は既存商品より20%以上高く」のルールをスタッフ全員で共有する
これは単純なようで大事なルールです。このルールが店のルールとして共有されていると、スタッフが「提案する価値のある仕事」をしている感覚を持ちやすくなります。値引きではなく価値で選ばれる接客が、スタッフの誇りになるんです。
❌ よくあるパターン:待遇改善だけで離職率を下げようとする
- 時給を上げても「このお店での自分の役割」が見えない状態は変わらない
- 採用コストがかかり続け、教育のサイクルが回らない
- オーナーが現場から抜けられず、経営を考える時間がゼロになる
✅ 推奨アプローチ:スタッフの売上が伸びる仕組みを先に作る
- 未来計画表・ご利益中心のメニュー提案・承認の仕組みをセットで導入する
- スタッフが「自分の貢献」を実感できる機会を意図的に設計する
- オーナーの頭の中の知恵を標準ツールに落とし込んで、誰でも使えるようにする
まとめ:離職率の改善は「人の問題」ではなく「仕組みの問題」
スタッフが辞めていく理由を「人材不足の時代だから」「今の若い子はすぐ辞めるから」で片付けてしまうと、何も変わりません。
離職率の改善は、仕組みの問題です。
スタッフの売上が伸びる仕組みを作った瞬間、お店の雰囲気が変わり始めます。スタッフが自分の成長を実感できると、居場所感が生まれる。居場所感が生まれると、辞めない。辞めないと、採用コストが下がる。採用コストが下がると、利益が残る。
この好循環を作るために、今日から1つだけ動いてみてください。
まず「未来計画表」を1枚作って、明日のお客さんに使ってみる。それだけで十分です。2週間で3つ実行するだけで、年間72の打ち手を打てる経営者になれます。
もし「うちのお店の場合、何から手をつければいいか」を具体的に聞いてみたい方は、以下からお気軽にご相談ください。全国500社超のオーナーさんと一緒に、実践を積み重ねてきた経験を元に一緒に考えます。
スタッフが誇りを持って働けるお店を、一緒に作っていきましょう。
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