5.人生戦略

効率化により失われるもの

最近、気になることがある。

「すぐに答えを教えてください」
「やればすぐ結果が出ますか?」
「効率よく、短期間で売上を上げたい」

こういった言葉を口にする経営者が、以前より明らかに増えている。

気持ちはわかる。
毎日が忙しく、余裕もない。
早く結果を出して、楽になりたい。

その焦りは、決して責められるものではない。

ただ、私はこの風潮に、ひとつの危惧を感じている。


── 日本の発酵文化が教えてくれること 味噌と醤油は、急いでも作れない

日本には、世界に誇る発酵調味料がある。
味噌と醤油だ。

大豆を蒸し、麹を加え、塩を混ぜ、樽に仕込む。
そこから先は——ただ、待つ。

最低でも数ヶ月。
本物の蔵元なら、1年、2年、それ以上の時間をかける。

その間、職人にできることは限られている。
温度を管理する。かき混ぜる。状態を見守る。

しかし「もっと早く仕上げろ」と急かしても、発酵の速度は変わらない。
熟成には、時間が必要だからだ。

そして、その時間の中でこそ——

アミノ酸が生まれ、
旨味の層が重なり、
複雑な風味の深さが宿る。

あの芳醇な香り。舌の上でひろがるコク。後から追いかけてくる余韻。

これは、急いで作ったものには、絶対に出せない。
── 合理化の落とし穴 「効率化」が奪うもの

現代の食品製造では、化学的な手法によって「それっぽい味」を短期間で再現することもできる。

コストが下がり、スピードが上がる。一見、合理的に見える。

しかし、そうして作られたものは、本物の熟成が持つ「奥行き」を持たない。

表面的には似ている。でも、何かが違う。
食べる人は、どこかでそれを感じている。

経営も、まったく同じではないか——
私は、そう思っている。

── 3つの罠 「すぐ結果」を求めることが、なぜ危険なのか

「早く・簡単に・すぐに」を求める経営者は、ある種の罠にはまりやすい。

1
深さのない知識

表面的な手法だけを拾い集め、本質的な理解のないまま実行する。うまくいかなければ、また別の手法を探す。その繰り返しで、年だけが経っていく。

2
土台のない成長

たとえ運よく短期間で売上が上がったとしても、その裏側に「なぜうまくいったのか」という理解が伴っていなければ——環境が変わった瞬間に、崩れる。

3
焦りが生む判断ミス

すぐ結果が出ないと感じると、焦って次の手を打ちたくなる。落ち着いていれば選ばなかったものを選び、続けていれば実れたものを途中で手放す。熟成の途中で、樽を開けてしまうのだ。

── 時間をかけることの意味 本物の経営力は、時間をかけてしか育たない

お客さんとの信頼関係。
スタッフが自分で動く仕組み。
地域の中での確かな評判。
繰り返し来てくれるリピーターの層。

これらはすべて、「すぐに答えを教えてください」では、絶対に手に入らないものだ。

日々の積み重ねの中で、少しずつ、少しずつ、醸成されていくものだからだ。

最近うまくいっている店には、共通点がある。

地道に基礎を固め、焦らずに顧客と向き合い、短期の結果より長期の関係を大切にしている。

派手な手法は使っていない。
でも、確かに根を張っている。

── 自分に問いかけてほしい あなたは、大丈夫ですか?

この記事を最後まで読んでくれたあなたに、正直に聞かせてほしい。

「すぐに答えを出さなければ」という焦りの中で、本来じっくり育てるべきものを、急いで刈り取ろうとしていないか?
「効率化」という言葉を免罪符にして、本当は省いてはいけないプロセスを省いていないか?
手っ取り早い情報ばかりを探し続けて、「自分の頭で深く考える時間」を失っていないか?

味噌や醤油の旨さは、手間と時間の賜物だ。

経営の深みもまた、同じところから生まれる。

「すぐに」ではなく「確かに」。
「効率よく」ではなく「本質的に」。

そういう経営を、私は一緒にやっていきたいと思っている。

ジョイマン
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ハワードジョイマン

プロフィール

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

生い立ちと異色の経歴

1975年、静岡県清水市(現:静岡市清水区)生まれ。自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしている環境から、幼少期より受付に立ち、商売の基礎を肌で感じながら育つ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を開始。活動中には九州松早グループが運営するファミリーマートのCMにも出演する。その後、父の急逝を機に大学卒業後、清水市役所へ奉職。

市役所勤務から独立へ

市役所在職中に中小企業診断士の取得を決意。昼は公務員として働き、夜は受験勉強、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの修行を重ねるという生活を継続。6年間の猛勉強の末、難関の中小企業診断士資格を取得する。

資格取得を機に7年勤めた市役所を退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立し、独立を果たす。

「笑人の繁盛術」による圧倒的な実績

お笑い芸人時代の経験を活かし、小売店・飲食店・美容室・整体院などの集客や販促に、お笑い芸人の思考法や漫才の手法を導入。独自のメソッド「笑人の繁盛術」を用いたコンサルティングにより、クライアントの業績を次々と向上させる。

専門用語を使わない分かりやすい内容のメールマガジンは、読者数1万人を突破。多くの業績アップ報告が寄せられている。また、会員制サポート「増益繁盛クラブ」は、日本全国(北海道〜沖縄)のみならずアメリカからの参加者もおり、その活動はテレビ番組『ガイアの夜明け』でも取り上げられ大きな注目を浴びた。

多角的な活動と信念

現在は、プロのコンサルタントが購読する専門誌『企業診断』(同友館)での連載も手がけ、「コンサルタントのコンサルタント」としても高い評価を得ている。また、自身の経験から確立した株式投資メソッドを伝えるコミュニティ「株研」も運営。

多忙を極める現在も、毎月1回の先祖への墓参りを欠かさない。家族をこよなく愛するマーケッターである。

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