「値上げしたいけど、お客さんが離れそうで怖い」
「客単価を上げたいのに、どうメニュー表を変えればいいかわからない」
「スタッフに追加提案をさせたいけど、勧めにくそうにしていて結局やってくれない」
飲食店を経営していると、こういう悩みって本当によく出てきますよね。料理の腕は確かで、お客さんにも満足してもらっている。でも、客単価がなかなか上がらない。
実はこの悩み、「値上げするかどうか」の問題じゃないんです。メニュー表の「見せ方」を変えるだけで、今日から客単価が上がる構造を作れるんですよね。その核心となるのが、ジョイマンが提唱する「見せ球の当て玉」戦略です。
今回は、この戦略を実際に使って客単価を大きく伸ばした飲食店の事例を深掘りしながら、あなたのお店でも今週から再現できるポイントを具体的にお伝えします。

「当て玉」を知らないと、値上げは永遠に怖いまま
まず前提として一つ確認させてください。あなたのメニュー表に、今一番高い商品はいくらですか?
多くの飲食店のメニュー表を見ると、価格帯がほぼ横並びになっています。たとえば、居酒屋なら料理が500〜1,500円、ドリンクが400〜800円くらいで揃っている。このメニュー構成のままで「客単価を上げたい」と思っても、正直なところ、できることはほとんどありません。
なぜか。お客さんの目線で考えてみてください。選択肢の価格帯が均一だと、人は自然と中間か低価格を選びます。「まあ、これくらいで十分かな」という判断が働くんですよね。これは人間の心理として当たり前のことです。
ここで登場するのが「見せ球の当て玉」という考え方です。意図的に「超高額なメニュー」をメニュー表に置くことで、既存の商品が相対的に安く・お得に見える効果を生み出す。これが当て玉の本質です。
1万円のプリンをメニューに載せると、隣の2,000円のデザートコースが急に「これなら手が届く」と感じられる。これは理屈ではなく、人の感覚として自然に起きることです。
実例:スペイン料理店で「イベリコ豚1本キープ」を40万円の商品にした話
実際に、この当て玉戦略を使ってうまくいった事例があります。ある都市部のスペイン料理店(席数30席・月商600万円前後)での話です。
初期の課題
このお店、料理のクオリティは高く常連さんも多い。でも、客単価が7,000〜8,000円あたりで頭打ちになっていました。「もう少し上げたいけど、今のメニューをそのまま値上げするのは怖い」とオーナーさんが悩んでいた状態です。スタッフが追加提案をしようとしても、結局「また今度でいいや」とお客さんに流されてしまう。
実施した施策
ここで取り入れたのが、「イベリコ豚1本まるごとキープサービス」を40万円の商品として設計するという発想です。
イベリコ豚の一頭分の部位を特定の常連グループのために「キープ」し、来店のたびに少しずつ調理して出す。ワインのボトルキープと同じ発想ですが、スケールがまったく違う。40万円という価格設定と同時に、それにまつわるストーリーをメニュー表に落とし込みました。「スペイン・エクストレマドゥーラ州の樫の木の森でどんぐりだけを食べて育ったイベリコ豚」という文章と、産地の写真を添えたPOPを作成。
この商品自体は最初から「売れること」を期待していません。あくまで「当て玉」です。目的は、このキープサービスが目に入ることで、通常のコースや単品が「なんだ、これくらいの値段なら全然大丈夫」と感じてもらえるようにすること。
結果(数字の変化)
このキープサービスを設置してから3ヶ月で、お店の客単価は7,500円前後から9,200円前後まで上がりました。コースのアップグレードを選ぶお客さんの割合が増え、デザートやワインの追加注文も自然に増えています。
そして、実際に40万円のキープサービスを申し込んだグループも出てきた。これはオーナーさんも正直驚いていましたが、「置いておくだけで売れた」という体験は、経営者としての発想を大きく変えてくれます。
再現性のあるポイント
この事例から学べる再現できるポイントはシンプルです。
- 今あるメニューの最高値の3〜5倍の価格帯の商品を1つ作る
- それを売ることが目的ではなく、「存在させること」が目的と割り切る
- 当て玉には必ずストーリー(素材の産地・製法・手間)を添える
当て玉が効く理由は、人は「絶対値」ではなく「相対値」で価格を判断するからです。周りに比べて高いか安いか、で判断する。これを意図的に設計するのが当て玉の役割です。
「新商品は既存商品より20%高く」——単価を上げ続ける店内ルール
当て玉戦略と合わせてぜひ取り入れてほしいのが、「新商品は既存商品より20%以上高く設定する」という店内ルールです。
これ、シンプルに聞こえますが、徹底してやっている飲食店はほとんどありません。新メニューを開発するとき、「近隣の相場に合わせよう」「既存のラインナップに合わせよう」と考えてしまう。その結果、新商品を出すたびに、メニュー全体の価格帯が横ばいのままになっていく。
このルールを入れると、半年・1年と経つうちにメニュー表の価格帯が自然に上がっていきます。お客さんも段階的に高単価に慣れていく。一気に値上げするのではなく、少しずつ「当たり前の価格帯」を引き上げていく作戦です。
たとえば、今の最高値コースが8,000円なら、次に出すコースは9,600円以上に設定する。それだけでいい。「何か特別な理由が必要では?」と思うかもしれませんが、新商品には必ず「新しい価値」があるはずで、それが20%アップの理由になります。
当て玉はメニュー表だけじゃない——POPと店内演出で効果を3倍に
「見せ球の当て玉」の効果を最大化するには、メニュー表に置くだけでなく、店内のPOPや演出と組み合わせることが大事です。
たとえば、高額商品の当て玉には次の3つの要素を必ず入れてください。
① 手間と時間を数字で書く
「仕込みに48時間かけた」「年間3,000皿だけ提供できる季節限定」など。時間や数量が見えると、価格の根拠が伝わります。「高い」ではなく「それだけの手間がかかっているんだ」に変わる。
② お客さんの声をビフォーアフターで掲示する
「初めて食べたとき、こんな体験は人生で初めてだと思いました(常連・○○様)」のような一言が、当て玉の横にあるだけで説得力がまったく変わります。
③ 「誰のための商品か」を明記する
「大切な記念日に特別な一皿を」「接待で絶対に喜ばれる体験をお探しの方へ」のように、対象を絞ることで逆に選ばれやすくなります。万人向けに書こうとすると、誰にも刺さりません。
ちなみに、スタッフが追加提案をしにくいという悩みも、当て玉があることで解消されやすくなります。「一番高いコースはこちらなんですが、多くの方はこのコースを選ばれています」という文脈で話せるので、無理に押し売りしている感じがなくなる。スタッフも提案しやすくなるんですよね。
まとめ:今週から「当て玉」を1つ作るだけで客単価の天井が変わる
今回お伝えした内容を整理します。
- 客単価アップは「値上げするかどうか」の問題ではなく、メニュー表の「見せ方」の設計の問題
- 今の最高値の3〜5倍の「当て玉」をメニューに置くだけで、既存メニューが相対的に安く見え、自然と上位商品が選ばれやすくなる
- 新商品は必ず既存商品より20%以上高くする店内ルールで、単価の天井を少しずつ引き上げ続ける
- 当て玉にはストーリー・手間・お客さんの声を添えて、POP・店内演出と組み合わせると効果が倍増する
「2週間で3つだけ実行する」のが私のいつものスタンスですが、今回はまず「当て玉を1つ作る」これだけを今週中にやってみてください。メニュー表に1行追加するだけでいい。それだけで客単価の景色が変わります。
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