梅雨が明けると、飲食店にとっては書き入れ時の夏がやってきます。ところが「夏は賑わっているのに、秋になると閑散としてしまう」というご相談を、毎年この時季になると受けます。
繁閑の波は業種柄ある程度仕方ない部分もありますが、常連のお客さんが多い店は、この波が小さいんですよね。売上の底が上がっているイメージです。逆に言えば、常連客を意図的に増やしていくことができれば、売上の安定感はかなり変わってきます。
私はこれまで833件(飲食店だけで610件)の店舗指導に携わってきました。その経験の中で気づいたことがあります。常連のお客さんが自然と増えていく飲食店には、業態や立地に関係なく、共通する「3つの習慣」があるということです。
今回はその3つを、できるだけ具体的にお伝えしていきます。
📋 この記事でわかること
- 常連客が増える飲食店に共通する3つの習慣の中身
- 「来てくれたお客さん」を「また来てくれるお客さん」に変える考え方
- 習慣を仕組みに落とし込む具体的なアクション
- リピート率を高めるために今日からできること
こんな方におすすめ
- ✅ 新規集客には力を入れているが、リピーターがなかなか増えない方
- ✅ 忙しい時期と暇な時期の波が大きく、売上が安定しない方
- ✅ 常連のお客さんを増やすために何をすればいいか整理したい方
- ✅ 値引きやクーポンに頼らず、長く通ってもらえる店にしたい方
- ✅ 飲食店の再来店の仕組みを具体的に知りたい方

なぜ「常連客が増える飲食店」と「増えない飲食店」に分かれるのか
まず前提として確認しておきたいのですが、「料理が美味しいから常連が増える」というのは、半分正解で半分違います。
美味しいのは前提です。でも美味しいだけでは常連は生まれません。なぜなら、お客さんは「美味しかったな」と思っても、次に行こうとするときに他の選択肢と競争しているからです。忘れられてしまうんですよね。
特に飲食店は選択肢が多い。同じ商圏に似た業態の店が複数あって、Googleで検索すれば次々と代替候補が出てくる時代です。お客さんの頭の中に「あの店にまた行こう」という気持ちを残し続けるためには、美味しさ以外の働きかけが必要になります。
その働きかけを「習慣」として持っている店が、常連を増やし続けているというのが、私がこれまでの指導の中で繰り返し確認してきた事実です。
「常連客は、店が作るものではなく、仕組みが作るものです。気合いで生まれた常連は気合いが切れると来なくなる。仕組みで生まれた常連は仕組みが続く限り来続ける。」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント・中小企業診断士)
習慣①「来てくれた事実」を記録して、接点を繋ぎ続ける
常連のお客さんが多い飲食店の最初の習慣は、「来店の事実をきちんと記録し、その後の接点を意図的に作り続けること」です。
私が指導してきた店で共通しているのは、「来てくれたお客さんに何もしない」という状態を放置していないということです。一回来てくれて美味しいと言ってもらっても、その後何の接点もなければ、お客さんの頭の中での優先順位はどんどん下がっていきます。
具体的にどうするか。もっとも効果が長持ちするのは、ハガキDMとニュースレターの組み合わせです。地味に聞こえるかもしれませんが、これが効く理由は「物理的に手元に届くから」です。メールやSNSは埋もれてしまいますが、手書きに近い温度感のあるハガキは、受け取った人の記憶に残ります。
もちろん、LINE公式アカウントを活用して定期的にメッセージを届けるのも有効です。重要なのはツールの種類ではなく、「来てくれたお客さんへの接点が途切れない状態を作る」という習慣そのものです。
チェックポイント①:最後に来てくれたお客さんに、その後何かアクションをしたか
先月来てくれたお客さんに、今月何かしらの接点を作れていますか?ポイントカードに名前と連絡先を書いてもらうだけでも、接点を作る土台になります。
✅ ポイント:「来店してもらうこと」がゴールになっていると、再来店は運任せになります。来店はスタートです。その後の接点設計こそが常連育成の本体です。
習慣②「また来たい理由」を言語化して、お客さんに手渡す
2つ目の習慣は、「また来たい理由を、お客さんの代わりに言語化して渡すこと」です。
これは少しわかりにくいかもしれないので、具体例を出します。
たとえば、あなたの店に「こだわりのだし」を使った料理があるとします。食べたお客さんは「美味しい」と感じる。でも多くの場合、なぜ美味しいのかを言葉として持っていません。その理由が言語化されていないと、人に伝えることもできないし、自分の中で「また行く理由」として強く残りにくいんです。
ここにPOPやメニューの説明文の力が出てきます。「北海道産の昆布と枕崎の本枯れ節を使った二番だし」という一文があるだけで、お客さんは「なるほど、だから美味しいのか」と腑に落ちる。そしてその言葉が記憶に残る。
常連客を増やしている店は、料理の背景にある「価値」を伝えることを習慣にしています。POPで伝える、メニュー説明で伝える、店主のコメントをニュースレターで届ける——どんな形でも構いません。「なぜこれが美味しいのか」をお客さんに渡し続けているんです。
❌ よくあるパターン:料理は美味しいのに、何も説明しない
- お客さんに「また来る理由」が蓄積されない
- 他店との差が見えず、比較されて価格だけで判断される
- 「また行こう」と思っても、次の候補が出てきた瞬間に忘れられる
✅ 推奨アプローチ:料理・食材・こだわりを「言葉」にして渡す
- POPや短いメニューコメントで食材・製法の背景を伝える
- ニュースレターや卓上カードで店主の想いや季節のこだわりを共有する
- 「ここにしかない理由」が積み上がり、値下げなしで選ばれ続ける土台ができる
✓ ここまでのポイント
- 常連客は気合いではなく仕組みで増える。来店後の接点設計が全体の核になる
- 「また来たい理由」はお客さんの頭の中に自然には生まれない。店側が言葉にして渡す必要がある
「チラシや広告で新規客を集めることも大切ですが、一度来てくれたお客さんを大切にする仕組みがない店は、ザルで水を汲んでいるようなものです。注いでも注いでも残らない。」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント・中小企業診断士)
習慣③ 「来てくれる頻度」を意図的に高める設計をしている
3つ目の習慣は少し経営的な話になりますが、「来店頻度を意図的に高める設計を持っていること」です。
私が店舗指導の中でよく使う売上の分解式があります。
売上 = 客数 × 客単価 × 来店頻度
この3つのどこに力を入れるかで、経営の安定度がまったく変わります。新規集客(客数を増やす)にだけ注力している店は、常に新しいお客さんを探し続けなければなりません。コストも時間もかかる。
一方で、来店頻度を少し上げるだけで、売上の数字は意外なほど動きます。月に1回来ていたお客さんが月に1.5回になる。これが50人いれば、毎月25回分の来店が増える計算になります。
来店頻度を高めるための設計として、私が指導の現場でよく取り入れているのは以下のようなアプローチです。
チェックポイント②:来店頻度を高めるための「仕掛け」が店の中にあるか
「来月の〇〇フェアのご案内」を帰り際に渡す、スタンプカードを活用して次回の来店目的を作る、「次の季節メニューは〇月から」という一言をLINEで届ける——来店の理由を、次の来店前に作っておくことがポイントです。
✅ ポイント:来店頻度を高めるのは「特典」だけではありません。「次に来る楽しみ」を具体的に伝えることが、一番コストがかからない頻度向上策です。
チェックポイント③:「常連になりたくなる体験」が積み重なっているか
常連のお客さんに「なぜここに来続けるんですか?」と聞いてみると、「特別感がある」「スタッフに顔を覚えてもらっている」「ここに来ると自分の話を聞いてもらえる」という答えが返ってくることが多いです。料理だけではないんですよね。
✅ ポイント:「記憶されているお客さん」はリピーターになりやすい。名前を覚える、好みを覚える、前回のエピソードを覚えているスタッフがいる店は、それだけで競合に対する圧倒的な優位性になります。
「リピート率38%から71%まで上がりました。LINE集客を整えてフォローアップの流れを作ったことで、月商が年間で1.6倍になっています。」
美容室オーナー(2店舗経営)
3つの習慣を「仕組み」に変えると、売上の底が上がる
ここまでお伝えした3つの習慣を改めて整理します。
常連客が増える飲食店の3つの習慣
習慣① 来店後の接点を途切れさせない(ハガキDM・LINE・ニュースレター)
来てくれたことをゴールにせず、その後も定期的に「店の存在」を届け続ける。
習慣② 「また来たい理由」を言語化してお客さんに渡す(POP・メニュー説明・ニュースレター)
料理の背景にある価値を言葉にして、お客さんの中に「この店を選ぶ理由」を積み上げる。
習慣③ 来店頻度を高める設計を持つ(次回来店の理由を事前に作る)
売上を「客数×客単価×来店頻度」に分解し、頻度を意図的に上げる仕掛けを作る。
この3つに共通しているのは「派手さ」がないということです。どれも地味です。でもこれを「すぐに」「継続して」やり切れるかどうかが、常連客の数として如実に表れてきます。
大きな販促キャンペーンを一回打つより、小さな接点を毎月続けるほうが、常連育成という観点では圧倒的に効きます。これは21年の指導経験の中で、何度も確認してきたことです。
「チラシとGoogle広告を組み合わせて新規客が約2倍になり、客単価も1,400円アップしました。月商も350万円から620万円まで上がっています(6ヶ月)。」
居酒屋オーナー
まとめ:常連客は「偶然来る」のではなく「仕組みで育てる」もの
「味には自信があるのにリピーターが増えない」という悩みの本質は、多くの場合、味の問題ではありません。来店後の接点設計が抜けていること、価値を言語化していないこと、来店頻度を高める仕掛けがないこと——この3点が揃って初めて、「常連が増える飲食店」になっていきます。
もし今「新規集客ばかりに力を入れていて、既存客へのアプローチができていない」と感じているなら、今月から一つだけでも始めてみてください。来店してくれたお客さん10人にハガキを送ること。メニューに一行、食材の説明を加えること。小さなことから積み上げていくと、半年後・一年後の売上の底が確実に変わってきます。
私が主宰する増益繁盛クラブでは、こうした「地味な販促を継続して仕組みにする」ためのサポートを、全国の飲食店・美容室・小売店オーナーの方々と一緒に取り組んでいます。北海道から沖縄、海外からご参加の方もいらっしゃいます。
今すぐ大きな決断をしなくても大丈夫です。まずは情報収集から始めていただければと思います。
常連を増やして売上の安定を作っていきたい方は、ぜひ一度のぞいてみてください。お待ちしています。