「息子に継いでほしいけど、今の状態じゃ言えない」
「娘には苦労させたくないから、別の道を歩んでほしいと思ってしまう」
「後継者候補の甥っ子に声をかけたら、やんわり断られた」
飲食店を20年、30年と続けてきたオーナーさんから、こういう話を聞くことが本当に多いんですよ。
創業した本人にとっては人生そのものの店。でも、いざ「継いでくれ」と言おうとすると、口が重くなる。なぜかというと、自分の目に映る「今の店の姿」に、自信が持てないから。
休みは週1日あるかないか。売上は横ばいか微減。毎月の支払いを見るたびにため息が出る。そんな状態の店を「継いでほしい」とは、とても言えない──。
今日は、そういうオーナーさんに向けて書きます。後継者が「継ぎたい」と言い出すために、本当に必要なことって何なのか、という話です。
📋 この記事でわかること
- 後継者が「継ぎたくない」と感じる本当の理由
- 子どもや身近な人が自ら手を挙げる店になるための条件
- 売上・利益・働き方を変えた飲食店の具体的な変化
- 後継者問題を「経営課題」として解決するアプローチ
こんな方におすすめ
- ✅ 子どもや身内に店を継がせたいと考えている飲食店オーナー
- ✅ 「今の状態では継がせられない」と感じて一人で抱え込んでいる方
- ✅ 売上は立っているが利益が残らず、経営に将来性を感じられない方
- ✅ 後継者問題の前に、まず店の体力を上げたいと思っている方
- ✅ 自分が倒れたら店が終わる、という不安を抱えている方

「継ぎたくない」は、店への評価じゃない
ちょっと、こんな話から始めさせてください。
数年前、ある会員さん(静岡県内で居酒屋を営む60代の男性オーナー)から相談を受けました。月商は350万円前後で推移していて、決して廃業寸前というわけじゃない。でも、毎月末になると「今月も全然残らなかった」と頭を抱えていた。
その方には、東京で会社員をしている息子さんがいました。料理好きで、父親の店の味は誰より知っている。でも「戻ってこい」とは言えない。なぜなら、自分が毎日何時に起きて何時に寝ているか、息子は全部見ている。「あの生活を継がせるのか」という罪悪感があったそうです。
ここで大事なことをひとつ。
息子さんが「継ぎたくない」と思っているとしたら、それは料理が嫌いだからでも、父親の店が嫌いだからでもないことが多い。「あの働き方は無理だ」「先が見えない」という感覚が先に来るんです。
つまり、後継者問題の本質は後継者候補の問題ではなく、店の経営課題なんですよね。
「子どもに継いでほしいなら、まず自分が『この店は面白い』と胸を張れる状態にすることが先です。継いでほしい気持ちと、継がせられる状態は、別物ですから」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント・中小企業診断士)
「継ぎたい」と言い出す店には、3つの共通点がある
私はこれまで累計1,000店舗以上の飲食店・美容室・小売店の経営支援に関わってきました。その中で、後継者が自ら手を挙げた店、あるいは外部から「あの店で働きたい」という人が集まった店には、共通する特徴があります。
チェックポイント①:利益がちゃんと残っているか
売上が500万円あっても、手元に残るのが10万円以下では「継いでも生活できない」という現実があります。後継者候補にとって店は「生活の場」でもある。月々の利益が家族を養える水準に達しているかどうか、これが大前提です。
✅ ポイント:売上より先に「利益」を見直す。原価率・人件費率・家賃比率の3つを数字で把握し、まず利益構造を改善することが先決です。
チェックポイント②:オーナーの「顔色」が穏やかか
毎日疲れ果てて帰宅し、食卓でため息をついているオーナーの姿を見て育った子どもが「あの仕事がしたい」と思うでしょうか。逆に、仕事の話をするときに目が輝いていて、たまに「今日こんな面白いことがあった」と話せているなら、子どもの受け取り方は全然違う。
✅ ポイント:働き方の仕組み化・自動化で「休める店」を作ることが、オーナー自身の表情を変え、後継者候補の見方を変えます。
チェックポイント③:「自分がいなくても回る」仕組みがあるか
オーナー一人の技術・人脈・体力で売上が成立している店は、後継者から見ると「引き継げない」んです。「あの人だから来てくれるお客さんばかりで、自分では無理」という壁が見えてしまう。
✅ ポイント:店内POP・LINE集客・Google広告など「仕組みが集客する」状態を作ることで、初めて「引き継げる店」になります。
✓ ここまでのポイント
- 後継者問題の本質は「候補者の意欲」ではなく「店の経営状態」にある
- 利益が残る・休める・仕組みで回る、の3条件が揃って初めて「継ぎたい」が生まれる
- オーナー自身が「この店は面白い」と言える状態を作ることが最初の一歩
実際に変わった話をします
冒頭で紹介した静岡の居酒屋オーナーさん、その後どうなったか。
増益繁盛クラブに入会して、まずやったのは「売上を追うのをやめる」ことでした。え?と思うかもしれませんが、まず利益から逆算して「月いくら手元に残すか」を決めた。その数字から必要な売上・客数・単価を計算し直したんです。
次に、店内にPOPを貼り始めました。最初は手書きで3枚。「この日本酒、漁師の親父が選んだ理由があります」という一文と、うんちくを書いただけ。でも、それだけでお酒の注文が増え、客単価が少しずつ上がっていった。
そしてLINE公式アカウントを作って、来店したお客さんに友だち追加してもらう仕組みを作った。月1〜2回、季節のおすすめや「今月だけの限定メニュー」を配信するようにしたら、リピートが目に見えて増えました。
6ヶ月後、月商は620万円に届いていました。客単価は1,400円上がり、手元に残るお金も変わっていた。
そして、ある日息子さんから電話がかかってきたそうです。「親父、最近なんか変わった? LINE見てたら、なんかちゃんとしてきたじゃん」と。
オーナーさんが言っていた言葉が印象的でした。「息子に声をかけたんじゃないんです。向こうから聞いてきたんです、『俺、戻っていいか』って」と。
「チラシとGoogle広告を組み合わせて、新規客が約2倍になりました。客単価も1,400円上がって、月商が350万円から620万円になったのが6ヶ月です。正直、自分でもびっくりしています」
居酒屋オーナー(60代・男性)
「継いでほしい」と言う前に、やることがある
後継者に「頼む、継いでくれ」と頭を下げる前に、やるべきことがあります。それは、店を「継ぎたい」と思える状態に変えることです。順番を間違えると、関係がこじれるだけです。
具体的な流れで言うとこんな感じです。
後継者が動き出す店づくり STEP 1
利益を「見える化」する
まず自分の店が月いくら手元に残っているか、正確に把握します。ここが曖昧なままでは何も変わりません。売上・原価率・人件費率・家賃比率を一覧にしてみてください。
⚠️ よくある失敗:「なんとなく黒字だと思っていた」で終わること。数字を直視するのは怖いですが、直視した人だけが変われます。
後継者が動き出す店づくり STEP 2
「仕組みで集客する」最初の一手を打つ
店内POPを3枚作る、LINE公式アカウントを開設して来店客に友だち追加してもらう、Googleマップの口コミ返信を丁寧にする──こういった小さな一手が積み重なって「仕組み」になります。特別な才能は要りません。
⚠️ よくある失敗:一気に全部やろうとしてどれも中途半端になること。まず「これだけ」という1つを選んで、1ヶ月続けてみてください。
後継者が動き出す店づくり STEP 3
「オーナーがいなくても回る」部分を少しずつ増やす
全部をすぐに仕組み化するのは無理です。でも、週1日だけ休める、月1回は早上がりできる、そういう「小さな余白」を作ることが始まりです。その余白が、後継者候補の目に「あ、この店なら継げるかも」と映ります。
⚠️ よくある失敗:「仕組みができてから休む」と思っていつまでも休まないこと。先に休む時間を決めて、そのために仕組みを作る、という順番の方がうまくいきます。
❌ よくあるパターン:「続けることが誠実さだ」と信じて、限界まで一人で走り続ける
- オーナーの体力・気力が限界を迎えたとき、後継者は準備ができていない
- 「大変な店」という印象だけが残り、候補者が遠ざかる
- 突然の廃業・閉店になるリスクがある
✅ 推奨アプローチ:利益・仕組み・余白の3つを少しずつ整えながら、「継いだら面白い」と思える状態を意識的に作る
- 後継者候補が「変化」を目の当たりにして、自ら関心を持つようになる
- オーナー自身の表情・言葉が変わり、周囲の空気が変わる
- 「継いでほしい」と頼まなくても、向こうから話が来るケースが生まれる
まとめ:後継者は「育てる」より「惹きつける」
後継者問題を「誰に頼むか」という人選の問題だけで考えていると、答えは出ません。本質は「継ぎたくなる店になっているか」という経営の問題です。
料理の腕は申し分ない。人柄も誠実。でも、経営の知識だけは誰も教えてくれなかった──そういうオーナーさんが本当に多い。それは責めることじゃなく、「じゃあ今から学べばいい」という話です。
私自身、父を突然失って「清水の街を元気にしたい」という遺志を受け継いだ人間として、経営者の方が「この店を残したい」「次の世代に渡したい」と思う気持ちは、他人事じゃないんです。だからこそ、その想いを実現するために必要な「実践的な経営の知識」を届け続けています。
飲食店経営の現場で21年・1,000店舗以上の支援実績の中で言えるのは、「変われた人は、ちゃんと変われた」ということ。スタートは小さくていい。POP1枚、LINE1配信、数字の見直し1回。その積み重ねが、後継者が「継ぎたい」と思う店を作ります。
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