「うちの料理は絶対に美味しいのに、なんでお客さんが増えないんだろう」
「メニュー表を新しくしたばかりなのに、高いコースが全然出ない」
「食材にこだわって仕入れコストをかけているのに、お客さんはそこを全然見てくれない」
こういう話、ほんとうによく聞くんですよ。全国の飲食店オーナーさんと話すたびに、同じ言葉が返ってくる。料理の腕には自信がある。でも、その価値がお客さんに伝わっていない。
伝わっていないのは、腕のせいじゃないんです。「言葉」のせいなんです。
今日は、静岡市清水区を拠点に飲食店・美容室など累計1,000店舗以上の経営支援に関わってきた中小企業診断士・ハワードジョイマンが、「ご利益メニュー」の作り方を一日の流れに沿ってお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 「ご利益中心ネーミング」とは何か、なぜ売上に直結するのか
- 開店前・仕込み中・営業中・閉店後の各時間帯でできる具体的な改善アクション
- 「むかしばなしの大盛り」という表現がなぜ効くのか、その言葉の作り方
- 月商130万→230万円に伸びた焼き鳥店が実際にやったこと
こんな方におすすめ
- ✅ 料理の品質には自信があるのに、売上が横ばいで悩んでいる飲食店オーナーさん
- ✅ メニュー表を作り直したいが、何をどう変えれば効くのかわからない方
- ✅ 高単価メニューをもっと注文してもらいたいと思っている方
- ✅ 値引きやクーポンに頼らず、価値で選ばれるお店にしたい方
- ✅ スタッフに任せても同じ水準で価値を伝えられる仕組みを作りたい方

朝10時。仕込みの手を止めて、まずメニュー表を「声に出して読む」
ジョイマンのコンサルの現場では、飲食店さんに伺う最初の30分でかならずメニュー表を見させてもらいます。
そこで9割のお店に共通していること、わかりますか?
品名が「商品名だけ」なんです。
「黒毛和牛のステーキ 3,500円」
「本日のおすすめ魚介スープ 1,200円」
「特製煮込み 850円」
これ、料理好きの玄人には伝わるんですよ。「黒毛和牛」という言葉に反応できる人には。でも、ふらっと入ってきた初めてのお客さんや、接待で連れてこられた方には、何がどう「特製」なのか、まったく伝わりません。
ターゲットは初心者です。玄人相手にしちゃダメですからね。
だからまず、仕込みが落ち着いた朝の時間帯に10分だけ時間を取って、メニュー表を声に出して読んでみてください。そのとき「これ、なんで美味しいの?」「これ、どんな人に頼んでほしいの?」と自分に問いかけながら読むんです。
答えが口をついて出てくる料理があるはずです。その言葉が、ご利益メニューの原石です。
「むかしばなしの大盛り」はなぜ売れるのか。手間と時間を「数字」で見せる
ご利益中心ネーミングの基本公式はシンプルです。
「誰のための、どんなご利益がある料理か」を言葉にする。これだけです。
でも、これを聞いて「なんとなくわかるけど、具体的にどう書けばいいか…」となる方がほとんどです。そこで一番効くのが、「手間と時間を数字で書く」という方法です。
例えば、こんな感じです。
- 「16時間かけて仕込んだ、おばあちゃんのうちの豚の角煮」
- 「3日間かけて炊き上げた、あの昔懐かしい肉じゃが」
- 「毎朝5時から職人が1本ずつ手で巻く、むかしばなしの厚巻き卵」
「むかしばなし」という言葉、使っていいですか?使っていいんです。
なぜかというと、このフレーズには「昔から守られてきた」「手間を惜しまない」「懐かしさと温かさ」という複数の感情が一言に詰まっているから。お客さんはその瞬間、自分の記憶とつながるんです。「おばあちゃんが作ってくれた煮物のあの感じ」という、お金では買えない記憶への橋渡しをしてくれる言葉です。
「大盛り」もOKです。量が多いことへの罪悪感を持つ必要はありません。「これだけ食べさせてくれるお店だ」という安心感がお客さんに伝わるし、「誰か連れてきたい」と思ってもらえるきっかけになる。
「メニュー名を変えるだけでいいのか、と最初は半信半疑でした。でも実際にやってみたら、スタッフも『この料理はこんな人に頼んでほしいですよ』と自然に言えるようになって、客単価がじわじわ上がっていきました。言葉って本当に大事なんですね」
月商130万円→230万円へ成長した焼き鳥店オーナー(40代・男性)
昼の営業中。スタッフが「言葉」で売れる仕組みを仕込む
午前の仕込みで言葉を作ったら、次は営業前のスタッフへの共有です。
ここで大事なのは、「このメニューを売って」と言うんじゃなくて、「このメニューにはこういう背景があって、こういうお客さんに喜んでもらえる」というストーリーを話すこと。
スタッフが注文を取るとき、「こちらが本日のおすすめです」と言うだけでは弱い。でも「これ、仕込みに3日かかってるやつで、牛すじをじっくり煮込んだ昔ながらのスタイルで作ってるんですよ」と言えたら、お客さんの反応はガラッと変わります。
そのためには、スタッフが「なぜ美味しいか」を知っている必要がある。仕込みのときに料理人が一言添えるだけでいいんです。「今日のこれ、24時間煮込んだやつだよ」それだけで、スタッフが自分の言葉でお客さんに伝えられるようになります。
❌ よくある失敗パターン
- スタッフが「今日のおすすめです」とだけ言う
- なぜそれがおすすめなのか、スタッフ自身が知らない
- メニュー表に「特製」「こだわり」とだけ書いて具体性がない
✅ ご利益メニューが動くパターン
- スタッフが「この料理は〇〇時間かけて仕込んだ」と言える
- 「〇〇さんみたいな方がよく頼みます」とターゲットを示せる
- メニュー表に数字と背景が書かれていて、黙っていても伝わる
✓ ここまでのポイント
- メニュー名は「料理の名前」ではなく「お客さんへのご利益」を言葉にする
- 手間と時間を数字で書くだけで、説得力が桁違いに変わる
- スタッフが背景を知っていれば、言葉が自然に出て客単価が上がる
夕方の仕込みタイム。「見せ球メニュー」を一つ作ってみる
ご利益メニューの考え方をもう一歩進めると、「見せ球の当て玉」という使い方があります。
簡単に言うと、あえて高額のプレミアムメニューを一つ作ることで、既存のメニューを相対的にお得に見せる戦略です。
例えば、今まで一番高いメニューが4,500円だとします。そこに12,000円の「昔ながらの技法で7時間かけた特選コース(2名様から)」を加えてみる。すると不思議なことに、4,500円のメニューが「これで十分に贅沢できる」と感じてもらえるようになる。
これは算数の話なんです。基準が変わると価値の感じ方が変わる。
さらに、新しいメニューは必ず既存メニューより20%以上高く設定することをルールにしてください。これを守るだけで、メニュー全体の単価が自然と上がっていきます。
チェックポイント1:今のメニュー表に「ご利益」が書かれているか
メニュー表の料理名を一つひとつ確認してください。料理の名前だけが書かれていて、「誰のための」「どんな体験ができる」が一切ないメニューが複数あるなら、今日から書き直せます。
✅ ポイント:「特製」「こだわり」という言葉は意味を持たない。具体的な時間・人・場面に置き換えること。
チェックポイント2:一番高いメニューは「当て玉」として機能しているか
今の最高価格メニューは、他のメニューを「相対的に選びやすく見せる」役割を果たしていますか?もし最高価格メニューが「売れて当然のメニュー」になっているなら、その上に一つプレミアムを置いてみてください。
✅ ポイント:プレミアムメニューは「必ず売る」必要はない。存在するだけで他が売れやすくなる。
チェックポイント3:スタッフが料理の背景を「自分の言葉で」言えるか
営業前に5分だけ、スタッフに「今日のおすすめ一品、その背景を話してみて」と聞いてみてください。言葉が出てこないなら、まだ仕組みが入っていないサインです。
✅ ポイント:料理人が仕込みの際に「今日のこれは〇〇時間かけた」と一言添える習慣を入れるだけでよい。
閉店後15分。「今日一番出たメニューの言葉」を書き留める
一日の終わり、閉店後にやってほしいことがあります。
今日一番出たメニューと、お客さんから一番多く聞いた言葉を書き留めること。
「これ、すごく懐かしい味ですね」「こんなに手間かけてるんですか?」「友達連れてこようと思います」──こういったお客さんの一言が、次のご利益メニューの原石です。
お客さんが感じたご利益を、そのままメニュー名に入れてしまえばいい。「懐かしい」と言われた料理なら「懐かしい」という言葉を入れる。「手間をかけてる」と言われたなら時間を数字で入れる。
2週間で3つ実行するだけで、1ヶ月で6つ、年間72の打ち手になります。全部を一気にやろうとしなくていい。2週間に一度、メニュー名を3つ見直すだけでいいんです。
「『美味しいのに伝わらない』は実力の問題じゃなくて、言葉の問題です。腕はある。あとは、その腕の価値をお客さんの言葉に翻訳してあげるだけ。それだけで、同じ料理でも見違えるように売れ始めます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・経済産業省登録番号 402345/販促アイデア100選)
「赤字続きで本当に悩んでいたときに、まずメニューの言葉を変えるところから始めました。最初は『こんなことで変わるの?』と思いましたが、3ヶ月後には客単価が上がって、気づいたら年商が2倍になっていました」
赤字経営から脱却し、年商を2倍にした美容室オーナー(30代・女性)
まとめ:「ご利益メニュー」は今日から作れる
今日お伝えしたことをまとめます。
- メニュー名は「料理の名前」ではなく「お客さんへのご利益」を言葉にする
- 手間と時間を数字で書くだけで、説得力がまったく変わる
- 「むかしばなし」「大盛り」など記憶や感情につながる言葉は積極的に使っていい
- プレミアムメニューを一つ置くことで、既存メニューが選ばれやすくなる
- 閉店後15分、お客さんの言葉を書き留めることが次のネタになる
値引きじゃなくて価値で選ばれる。そのための第一歩は、今夜のメニュー表を一枚見直すことから始まります。
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