「棚の奥に、去年から動いていない商品がある」
「仕入れのタイミングがズレて、気づいたら手元のキャッシュが在庫に変わっていた」
「棚卸しはやるけど、その数字を経営に活かせていない」
「売れ筋と死に筋の判断が感覚頼みで、いつも仕入れの決断に迷う」
こういった悩みを抱えている小売店オーナーの方は、本当に多いです。商品が好きで、仕入れに情熱を注いできたからこそ、気づいたら在庫の山になってしまう。この構造は、店を愛している証拠でもあるのですが、キャッシュが在庫という形で眠り続けると、経営の選択肢が少しずつ狭まっていきます。
今回は、増益繁盛クラブを主宰する店舗利益最大化コンサルタントのハワードジョイマンが、在庫回転率の改善と棚卸しの新しいルールについて、実際の現場感覚をもとにお話しします。対談形式でお届けしますので、自分の店に置き換えながら読んでみてください。
📋 この記事でわかること
- 在庫回転率が低下する本当の原因と、多くの小売店が陥るパターン
- 経営に活きる「棚卸しの新ルール」の考え方と実践ステップ
- 死に筋商品の見極め方と、仕入れ判断を感覚から数字に変える方法
- 在庫を適正化して、キャッシュが残る小売経営への転換アプローチ
こんな方におすすめ
- ✅ 仕入れが増えるのに手元のキャッシュが減っていると感じている小売店オーナーの方
- ✅ 棚卸しをしているのに経営数字に活かしきれていない方
- ✅ 売れ筋・死に筋の判断を感覚ではなく仕組みにしたい方
- ✅ 在庫回転率という言葉は知っているが、具体的な改善方法がわからない方
- ✅ 月商500万円〜1,000万円の壁を感じている小売・物販系の経営者の方

「棚卸し、やっています」では足りない理由——数字を取るだけで終わっていませんか?
——ジョイマンさん、棚卸しって定期的にやっている小売店は多いですよね。でも「改善につながっていない」という声もよく聞きます。
ジョイマン: そうなんですよ。棚卸しをやること自体は悪くない。でも多くの店で、棚卸しが「数を数える作業」で終わっているんです。何個あるかを把握して、帳簿と突き合わせて、「ああ、これだけあるね」で終わる。それだと経営の意思決定に使えていない。
——数を把握するだけじゃなくて、そこから何をするかが大事ということですか。
ジョイマン: 正確には、「何日分の在庫があるか」という回転率の視点が抜けているケースが多い。在庫の量じゃなくて、速度の問題なんです。たとえば月商500万円の店で在庫が300万円分あるとしたら、それが30日で回転しているのか、90日かけて回転しているのかでは、経営への影響がまったく違う。
「棚卸しの目的は、在庫の量を確認することではありません。在庫がどのくらいの速さでお金に変わっているかを把握することです。その視点が入ったとき、棚卸しは初めて経営のツールになる。」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント・中小企業診断士)
在庫回転率が低下する「3つの本当の原因」——仕入れの習慣を疑ってみる
——在庫回転率が悪くなるのは、仕入れすぎが原因だと思っていましたが、他にも要因があるんでしょうか。
ジョイマン: 仕入れすぎも原因の一つですが、私が現場で見てきた限り、大きく3つのパターンがあります。
一つ目は「感情仕入れ」。仕入れ担当者、多くの場合オーナー自身が「これ好きだな」「絶対売れる気がする」という感覚で仕入れてしまうパターン。過去の売れ行きデータより、好みが先に来てしまう。
二つ目は「ロット仕入れの罠」。まとめ買いした方が単価が下がるから、つい多めに仕入れてしまう。でも在庫を抱えている間にかかる機会損失と、保管コスト、資金拘束を考えると、必ずしもお得ではない場合が多い。
三つ目は「陳列維持バイアス」。棚が埋まっていることに安心感を持ってしまう。スカスカの棚が気になって補充してしまうのですが、これが死に筋を温存する原因になる。
——全部、思い当たります(笑)。これを解消するには何から手をつければいいですか。
ジョイマン: まず「売れていない商品に名前をつける」ことから始めてほしいんです。死に筋商品を曖昧にしない。仕入れてから何日経っているか、いつ最後に売れたか——これを可視化するだけで、感情ではなく事実で棚を見られるようになります。
✓ ここまでのポイント
- 棚卸しは「在庫量の確認」ではなく「回転速度の把握」のために行うこと
- 在庫回転率低下の主な原因は「感情仕入れ」「ロット仕入れの罠」「陳列維持バイアス」の3パターン
- まず死に筋商品を数字で可視化することが、改善の第一歩になる
棚卸しの新ルール——「4週サイクル管理」で仕入れと販促をつなぐ
——「棚卸しの新ルール」というお話、もう少し具体的に聞かせてもらえますか。
ジョイマン: 私がおすすめしているのは、棚卸しを年2回や四半期に1回という単位ではなく、4週サイクルで回すやり方です。月に1回、全品じゃなくていい。ただし「動いていない商品のリスト」を毎月作ることを習慣にする。
棚卸し改善 STEP 1
死に筋リストの作成(月1回・30分)
仕入れから30日以上経過しているのに、この1ヶ月で1個も売れていない商品を一覧にする。棚から外すかどうかの判断は後でいい。まず「見える化」することが先です。POSレジが導入されていれば商品別の動きは引き出せますし、手書きでもExcelでも構いません。
⚠️ よくある失敗:「この商品は来月になれば動くかも」と先送りにしてリストに載せない。感情で除外しないことが重要です。
棚卸し改善 STEP 2
売れ筋・並み筋・死に筋の3分類(月1回・判断会議15分)
リストを見ながら商品を3つに分ける。売れ筋(回転が速く粗利が高いもの)、並み筋(動いているが特段強くないもの)、死に筋(動いていないもの)。この分類を、感覚ではなく「最終販売日」と「販売数」だけで行う。
⚠️ よくある失敗:「高価だから死に筋にしたくない」という心理が働きやすい。仕入れ値を回収できるかどうかより、今後の回転見込みで判断することを優先してください。
棚卸し改善 STEP 3
死に筋への対処(値下げ・バンドル・フィーチャー販促)
死に筋商品を確認したら、3つの選択肢から打ち手を決める。①一定期間価格を下げて在庫を動かす(値下げ)、②売れ筋商品とセットで提案する(バンドル)、③POPや棚の位置を変えて視認性を上げる(フィーチャー)。この順番で試していくといい。
⚠️ よくある失敗:いきなり大幅値下げして利益を削ること。まずPOPと棚の位置変更という「コストゼロの打ち手」から試してみてください。
——このサイクルが回ると、仕入れの精度も変わってきますか。
ジョイマン: 変わります。売れ筋・死に筋の分類を続けることで、「自分の店で売れる商品の共通項」が見えてくるんです。客層の好み、価格帯の傾向、季節性——これが肌感覚ではなくデータとして蓄積されてくる。そうなると、仕入れの判断が「なんとなく良さそう」から「自店では売れる根拠がある」に変わっていく。
在庫回転率の改善は、客単価アップとセットで考える
——在庫の問題って、仕入れだけじゃなくて売り方とも関係しているんですね。
ジョイマン: そうなんです。在庫回転率を上げるには、仕入れを減らすだけじゃなくて、「一人のお客さんに、より多く買ってもらう」という客単価アップの視点が欠かせない。同じ客数でも、1回の購買点数が増えれば在庫の回転は速くなる。
POPで商品の背景や使い方を伝えることで、手に取ってもらいやすくなる。バンドル提案で「これと合わせると〇〇になります」という関連購買を促す。こういった施策が在庫回転率の改善と直結しています。
——「値下げせずに在庫を動かす」という考え方ですね。
ジョイマン: 値下げは最終手段です。値下げで在庫を動かすことに慣れてしまうと、「売れない→値下げ」の回路ができあがって、利益を自分で削り続けることになる。価格を下げる前に、価値を伝えるPOPや陳列の工夫でどこまでできるかを試してほしい。
❌ よくある在庫対処パターン
- 動かない商品をそのまま棚に残す
- じわじわ値引きして最終的に大幅値下げ
- 値下げ習慣が定着し、お客さんが「待てば安くなる」と学習してしまう
- 利益が削れ、仕入れ余力が落ちる悪循環
✅ 在庫回転率を高めながら利益も守るアプローチ
- 月1回の死に筋リスト作成で、問題在庫を早期に把握する
- まずPOPと棚位置変更(コストゼロ)で反応を試す
- 動かない場合はバンドル提案で関連購買を促す
- それでも動かない場合に初めて限定的な値下げを実施する
- 売れ筋の発注精度を上げて、仕入れ総額そのものをスリム化する
「在庫は、キャッシュが形を変えて棚に並んでいるものです。動かない在庫は眠ったお金。それが積み上がるほど、経営の選択肢は狭まる。棚卸しを月1回の習慣にして、在庫とキャッシュの流れを意識的に管理することが、小売経営の体力を守ることに直結します。」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント・中小企業診断士)
チェックポイント1:仕入れから何日経った商品が何%を占めているか把握できていますか?
在庫の「年齢」を見ることが棚卸しの基本です。仕入れから30日以内・60日以内・90日以上の在庫比率を出してみてください。90日以上の在庫が全体の20%を超えているなら、在庫回転率の改善が急務です。
✅ ポイント:まず現状の在庫年齢分布を「見える化」することから始める。問題を認識しないと対策は打てません。
チェックポイント2:「感情仕入れ」をしていませんか?
直近3ヶ月の仕入れ履歴を振り返ったとき、過去の販売実績ではなく「好み」「なんとなく」で決めた仕入れはどれくらいありますか?
✅ ポイント:仕入れ判断の基準を「最終販売日」と「1ヶ月あたりの販売数」の2軸で設定する。これだけで感情仕入れを大幅に減らせます。
チェックポイント3:POPや陳列の工夫に取り組んでいますか?
商品をただ棚に並べているだけでは、お客さんに価値は伝わりません。特に並み筋の商品は、少しのPOP一枚や棚位置の変更で売れ筋に転換するケースがあります。
✅ ポイント:週1回、棚を歩いて「価値が伝わっていないと感じる商品」を1つ選んで、POPを1枚作ることを習慣にする。
「月商45万円だった理容室が、メンズパーマ専門店として再生できたのも、何でもやろうとするのをやめて、強みを絞って伝え直したからです。小売でも同じで、自店の売れ筋の共通項を見つけて、それをもっと売れる環境に整えることが、在庫の健全化と売上の安定につながります。」
増益繁盛クラブ会員(理容室オーナー)の事例をもとに
「POPとSNS訴求を統一して、AIで販促文の作成速度を10倍にした結果、客単価1.8倍・月商1,100万円を達成しました。在庫の価値をきちんと伝える仕組みが整うと、同じ商品でも売れ方が変わります。」
小売店(アパレル)オーナー
まとめ——棚卸しを「経営のツール」に変える、今すぐできる一歩
在庫回転率の改善は、大きな仕組みを一気に変える必要はありません。今日から始められる「小さな習慣の変化」が、3ヶ月後・半年後の経営の体力に確実に影響します。
まず今月やってほしいのは、「仕入れから30日以上経過して1個も売れていない商品のリスト」を作ること。それだけです。リストができたら、次の4週間で3分類する。売れ筋・並み筋・死に筋。そして死に筋への打ち手を1つ決めて動く。
この4週サイクルを3ヶ月続けることで、棚卸しが「年に2回の重い作業」から「毎月の経営判断ツール」に変わります。在庫がスリム化されれば、キャッシュの動きが良くなり、仕入れ判断の精度が上がり、利益が残りやすい体質に近づいていきます。
私がこれまで833件以上の店舗経営者に関わってきた中で見てきた共通点は、「地味な管理を継続できる店ほど、中長期で強くなる」ということです。派手な手法より、月1回の死に筋リスト作成という地味な習慣が、半年後の経営の安定を作ります。
もし「自店の在庫状況を整理したい」「客単価アップや販促の仕組みと合わせて考えたい」という方は、ぜひ増益繁盛クラブの情報をのぞいてみてください。同じような悩みを持つ全国の店舗経営者と一緒に、伴走しながら取り組んでいけます。
一人で抱え込まずに、ぜひ気軽にご覧になってみてください。