結論から言うと、フランチャイズコンサルの実績は「支援した店舗数」だけで判断してはいけません。飲食業の本部構築に強い事務所かどうかを見分けるには、「加盟店が閉店せずに続いているか」という観点で実績を読み解くことが、最も重要な判断軸になります。
なぜこの点が重要なのか。その理由を、飲食業のFC化に特有のリスク構造から順を追ってお伝えします。
📋 この記事でわかること
- コンサルの「実績」を正しく読むための3つの視点
- 根拠の薄いモデル収益がFC本部にもたらす本当のリスク
- 本業ブランドを傷つけないために、本部構築で最初に確認すべきこと
- 飲食業の本部構築に強い事務所と弱い事務所の違い
こんな方におすすめ
- ✅ FC化に興味はあるが、失敗して本業のブランドや財務まで傷つくのが怖い方
- ✅ フランチャイズコンサルに依頼を検討しているが、実績の見方がわからない方
- ✅ 直営3〜10店舗で成長が鈍化し、本部化を検討し始めた飲食経営者の方
- ✅ 加盟店が儲かるモデル収益の設計に不安を感じている方
- ✅ のれん分けや本格FCの線引き・契約書まわりに自信がない方

「実績〇〇社」の数字をそのまま信じてはいけない理由
FC本部構築を支援するコンサルタントや事務所を探すと、「支援実績〇〇本部」「FC化成功事例多数」といった表現を目にします。しかし、その数字の中身を精査せずに依頼先を決めることは、大きなリスクを伴います。
実績として語られる「支援した本部の数」には、本部を立ち上げただけで加盟店がほとんど集まらなかったケースも含まれます。さらに深刻なのは、加盟店を募集したものの、モデル収益が現実の固定費を反映しておらず、加盟店が短期間で閉店・撤退してしまったケースです。この場合、本部のオーナーには加盟金収入が一時的に入りますが、その後に待つのは加盟店からのクレーム・返金交渉・場合によっては訴訟です。
飲食業のFC化に伴う失敗の多くは、根拠の薄いモデル収益と法令に沿っていない情報開示から生まれます。加盟店が閉店すると、そのブランド毀損は直営店にも波及します。「あのFC、加盟したけど全然儲からなかった」という評判がSNSや口コミで広がれば、本業として積み上げてきた信頼も傷つきます。
「FC化で怖いのは失敗そのものより、本業まで引きずられることです。だから私は、加盟店が儲かるかどうかを最初に徹底的に検証します。そこに確信が持てなければ、正直に『今はまだ早い』と伝えます」
ハワード・ジョイマン(飲食店FC本部構築支援・中小企業診断士)
実績を正しく読むための3つの視点
では、フランチャイズコンサルの実績をどのような視点で見ればよいのか。比較形式で整理します。
チェックポイント①:加盟店は今も営業を続けているか
支援した本部の加盟店が、現在も実際に店舗を運営しているかどうかを確認してください。「展開を支援した」という表現は、立ち上げ時の書類整備やマニュアル作成だけを指している場合があります。重要なのは、加盟後1〜3年が経過した今、加盟店オーナーが事業を継続できているかという事実です。
✅ ポイント:商号・屋号で実際に検索し、加盟店が営業中であることを自分で確認する。コンサルに「現在も続いている加盟店の事例を教えてください」と直接尋ねることも有効です。
チェックポイント②:飲食業の固定費構造を理解した上でモデル収益を設計しているか
飲食業には、家賃と人件費という二大固定費があります。この2つを正確に織り込まなければ、モデル収益は絵に描いた餅になります。にもかかわらず、固定費を低く見積もった楽観的な数値を加盟希望者に提示するケースが後を絶ちません。
✅ ポイント:コンサルに「モデル収益はどのような前提条件で計算しますか」と質問し、家賃比率・人件費比率・ロイヤリティ控除後の手残りが明示されているかを確認する。
チェックポイント③:法定開示書面と契約書の整備を支援しているか
フランチャイズ契約には、中小小売商業振興法に基づく法定開示書面の交付義務があります(飲食業の多くが対象)。この書面が不備であったり、契約書のテリトリー設定や契約解除条項が曖昧であったりすると、後に深刻なトラブルに発展します。
✅ ポイント:「法定開示書面の作成支援は含まれていますか」「契約書は弁護士と連携して整備しますか」と確認する。この質問を嫌がるコンサルには注意が必要です。
✓ ここまでのポイント
- コンサルの「支援実績数」は、加盟店が今も続いているかという観点で読み直すことが必要
- 飲食業の二大固定費(家賃・人件費)を織り込んだモデル収益設計ができているかが分岐点
- 法定開示書面と契約書の整備支援があるかどうかが、本業ブランドを守る最初の防波堤になる
「本業が傷つく」リスクはどこから生まれるか:失敗パターンの比較
❌ よくあるパターン:加盟金収入を優先した本部設計
- ロイヤリティや加盟金を高めに設定し、加盟店の手残りが薄くなる構造になっている
- モデル収益に根拠がなく、実際の運営では赤字が常態化する加盟店が出る
- 加盟店の閉店・撤退が続くと、FC全体の評判が下がり、本部ブランドも毀損される
- 最悪の場合、不実告知・過大な利益見通しとして法的問題に発展する
✅ 推奨アプローチ:加盟店が儲かることを起点にした本部設計
- 固定費・変動費・ロイヤリティを差し引いた「加盟店の手残り」から逆算してロイヤリティを設定する
- 法定開示書面に現実的なモデル収益を正直に記載し、過度な期待を与えない
- テリトリー設定・契約解除条項を明文化し、加盟店との信頼関係を書面で担保する
- 加盟店が安定して営業を続けることが、本部ブランドの評判と加盟店募集の好循環を生む
この「加盟金収入優先」と「加盟店の儲け優先」の違いは、依頼するコンサルタントがどちらの設計思想を持っているかに直結します。フランチャイズコンサルに依頼して失敗した飲食店に共通する、契約前の見落としについては別の記事でも詳しく整理していますので、あわせてご参照ください。
飲食業の本部構築に強い事務所の見分け方:具体的な質問リスト
事務所選びの場面で、実際にどう確認すればよいかを整理します。FC本部構築の無料相談で実際に何を話すのかという記事でも触れていますが、相談の場は「情報を得る場」であると同時に「コンサルの設計思想を確認する場」でもあります。
FC本部構築 STEP 1
コンサルへの初回ヒアリングで確認すべき質問
①「支援した本部の加盟店で、現在も継続営業している割合はどれくらいですか」
②「モデル収益はどのような項目を前提に算出しますか。家賃・人件費の比率の想定を教えてください」
③「法定開示書面の作成はサポートに含まれていますか。弁護士との連携体制はありますか」
④「加盟店が赤字になりそうな場合、どのようなサポートを行いますか」
⚠️ よくある失敗:「実績が豊富そう」「資料がきれいだった」という印象だけで依頼を決めてしまい、モデル収益の根拠や法的整備について確認しないまま契約するケース。初回相談の段階でこれらの質問に明確に答えられないコンサルへの依頼は、慎重に判断してください。
FC本部構築 STEP 2
見積もり・提案書で確認すべき項目
費用の内訳として、①モデル収益設計、②法定開示書面の作成、③FC契約書の整備、④運営マニュアルの構築、⑤加盟店募集の仕組みづくりが含まれているかを確認します。FCコンサルに依頼するときの費用相場と本部構築でかかるコストの現実についても事前に把握しておくと、提案内容の妥当性を判断しやすくなります。
⚠️ よくある失敗:「マニュアル作成」と「モデル収益設計」だけが含まれており、法定開示書面や契約書の整備が別途費用または対応外になっているケース。後から追加費用が発生したり、法的書面が不備のまま加盟店募集を開始してトラブルになる事例があります。
「加盟店募集の前に、絶対に確認してほしいのが法定開示書面です。これが整っていないまま契約を進めることは、本部と加盟店の双方にとって深刻なリスクになります。書面の完成度が、そのコンサルの誠実さを測るひとつの指標です」
ハワード・ジョイマン(飲食店FC本部構築支援・中小企業診断士)
実績の「質」を示すお客様の声と、本部設計の誠実さ
ここで一つの事例をご紹介します。
「客単価が6,000円から8,500円に上がりました。値引きで呼ぶのではなく、価値で選ばれているという実感が初めて生まれた感覚です。経営の数字に向き合う時間も1日1.5時間捻出できるようになり、視点が変わりました」
寿司店オーナー(50代・男性)
この方の変化は、直営店の経営改善から始まったものです。重要なのは、FC化を検討する前に「自分の店が本当に価値で選ばれる状態になっているか」を確認することです。加盟店に展開するモデルの再現性は、直営店が安定して利益を出し続けているかどうかが前提になります。直営店の収益構造が曖昧なまま本部化しようとしても、加盟店のモデル収益を誠実に設計することはできません。
私がFC本部構築の支援を行う際、まずクライアントの直営店の収益構造を丁寧に分解するのはこのためです。833件を超える店舗の利益改善支援を経て確信していることがあります。それは、「売上より利益」を積み上げた直営店の実績こそが、誠実なFC本部の土台になるということです。
まとめ:コンサルの実績は「加盟店が今も続いているか」で見る
フランチャイズコンサルの実績を正しく評価するための軸は、支援した本部の数ではなく、加盟店が閉店せずに営業を続けているかどうかです。
飲食業のFC化に失敗して本業まで傷つくリスクは、根拠の薄いモデル収益と法的書面の不備から生まれます。逆に言えば、この2点を誠実に設計できるコンサルタントを選ぶことが、リスクを最小化する最も確実な方法です。
依頼先を選ぶ際は、「加盟店の手残りから逆算してロイヤリティを設定しているか」「法定開示書面の整備を支援しているか」という2点を必ず確認してください。この質問に明確に答えられるかどうかが、飲食業の本部構築に強い事務所かどうかを見分ける実質的な判断基準になります。
なお、どの事務所に依頼するかを検討する前に、フランチャイズ本部構築コンサルの評判を口コミで調べる前に確認したい5つのこともあわせてご確認いただくと、依頼先の選定がより具体的になります。
FC化を急ぐ必要はありません。「今の直営店が価値で選ばれているか」を確認すること——それが、閉店しない本部づくりの最初の一歩です。