「FC化に興味はある。でも、もし失敗したら本業のブランドまで傷つくんじゃないか」
「加盟店が閉店したとき、自分たちはどこまで責任を負うのか」
「収益モデルを作ったはいいが、その数字が本当に正しいのか自信がない」
直営で3〜5店舗を育て上げた飲食経営者の方から、このような声をよくいただきます。FC化への興味は確かにある。けれど、その一歩を踏み出せない最大の理由が、「失敗したときのダメージ」への恐怖です。
この恐怖は、決して感情論ではありません。根拠の薄い収益モデルをそのまま使って加盟店を募集し、蓋を開けたら加盟店が赤字続きになる——そういうケースでは、閉店、トラブル、最悪の場合は訴訟に発展し、本部ブランドが毀損するという現実が実際に存在します。
今回の記事では、私(ハワード・ジョイマン)が収益モデル作成の支援に入った実際の飲食本部が、設計段階でどんな数字を修正したのかを比較形式でお伝えします。どこが甘かったのか、何を直したのか。その具体的な過程を見ていただくことで、「誠実なモデル収益とは何か」が見えてくるはずです。
📋 この記事でわかること
- FC化失敗リスクの根本原因——なぜ収益モデルの甘さがトラブルに直結するのか
- 支援を受けた飲食本部が設計段階で修正した具体的な数字の中身
- 「楽観的な数字」と「誠実な数字」の比較と、その判断基準
- 加盟店が儲かる収益モデルを土台に、本部リスクを抑える設計の考え方
こんな方におすすめ
- ✅ FC化に興味はあるが「失敗したら本業まで傷つく」という不安が拭えない方
- ✅ 自分でモデル収益を試算したが、その数字の妥当性に自信が持てない方
- ✅ 加盟店募集を始める前に、収益モデルの設計を見直したい方
- ✅ 加盟店の閉店・トラブルを未然に防ぐ本部設計の考え方を知りたい方
- ✅ 直営3〜10店舗規模でFC化の本部構築を検討し始めた飲食経営者の方

FC化失敗の多くは、収益モデルの「甘さ」から始まる
FC化を検討する経営者の多くは、最初に自分で収益モデルを試算します。直営店のデータをもとに、家賃・人件費・原材料費を並べ、ロイヤリティを設定して「月商〇〇万円なら加盟店も利益が出る」という計算をする。一見、正しいプロセスに見えます。
ところが、この段階で生じやすい「甘さ」がいくつかあります。
まず家賃の設定です。直営店は開業当初に交渉して有利な条件で入居できている場合が多く、その家賃をそのままモデルに使うと、後から加盟する店舗の実勢賃料と乖離します。特に都市部の出店を想定する場合、売上対比の家賃比率が想定より5〜8ポイント高くなるケースは珍しくありません。
次に人件費の見積もりです。直営では、オーナー自身や幹部社員が現場に入り込んでいることで人件費を抑えられています。しかし加盟店は基本的に独立した個人や法人が運営するため、オーナー自身の稼働を計算に含めるとしても、スタッフを一定数確保しなければ回りません。「オーナーが頑張れば赤字にはならない」という前提のモデル収益は、誠実とは言えません。
そして想定月商の設定です。直営の最盛期の売上数字をモデルに使うのは典型的な落とし穴です。開業直後の立ち上がり期、季節変動、競合の参入——こうしたリスクを折り込まずに「月商〇〇万円」と示すことが、加盟店の閉店を招く最大の原因になります。
「収益モデルは、本部の"希望"ではなく、加盟店の"現実"を映す鏡でなければならない。そこが甘ければ、どれだけ良い業態でも加盟店は苦しむ。そしてその苦しみは、いずれ必ず本部に返ってきます」
ハワード・ジョイマン(飲食店FC本部構築支援コンサルタント・中小企業診断士)
支援を受けた飲食本部が修正した数字——設計前後の比較
ここからは、私が収益モデル設計の支援に入った際に、実際にどんな数字を修正したかを比較形式でお見せします。業態や規模の特定を避けるため数字は一部調整していますが、修正の「方向性と理由」は実際のものです。
修正①:想定月商を「直営最高値」から「加盟店開業半年平均」へ
❌ 修正前(楽観的なモデル)
- 想定月商:直営の好調時の数字をそのまま使用(月商600万円)
- 根拠:「うちの直営がこれだけ売れているから、同じ業態なら同じくらい売れる」
- 問題点:立ち上がり期の落ち込み、エリア差、開業コストの回収計画が抜け落ちている
✅ 修正後(誠実なモデル)
- 想定月商:直営複数店舗の過去データをもとに、開業から6か月の平均値に設定(月商390万円)
- さらに「下振れシナリオ」として月商320万円の場合のP&Lも併記
- 効果:加盟検討者が「最悪このくらいの売上でも、固定費を払えるか」を自分で判断できる情報開示ができる
修正②:人件費比率を「オーナー込み」から「スタッフのみで回す前提」へ
❌ 修正前(楽観的なモデル)
- 人件費比率:28%(オーナーが週6日フル稼働する前提、オーナー人件費はほぼ未計上)
- 問題点:オーナーが体を壊したり、別の店舗に手が取られた場合に即赤字転落するモデル
✅ 修正後(誠実なモデル)
- 人件費比率:34%(オーナーの適正報酬を計上したうえで、スタッフで回せる体制を前提に設定)
- 加盟店オーナーが「経営者として生活できるか」を可視化する設計に変更
- 効果:開業後に「思ったより人件費がかかる」という最も多いトラブルを防げる
修正③:家賃設定を「直営の実績値」から「出店エリアの実勢相場」へ
❌ 修正前(楽観的なモデル)
- 家賃比率:8%(本部の直営1号店が特別に安い物件を確保できていた数字をそのまま使用)
✅ 修正後(誠実なモデル)
- 家賃比率:12%(加盟店が実際に出店する想定エリアの相場をリサーチして設定)
- 想定エリア別に「家賃〇〇万円以内の物件を選ぶこと」という出店基準を明文化
- 効果:物件選びの段階で「採算の取れない家賃の物件を掴んでしまう」リスクを事前に遮断
✓ ここまでのポイント
- FC化の失敗リスクは、収益モデルの「楽観的な前提」から生まれることが多い
- 修正すべき主な数字は、想定月商・人件費・家賃の3点。直営の好条件をそのまま使わないことが鉄則
- 「下振れシナリオ」を明示した誠実な情報開示が、加盟店の閉店とトラブルを防ぐ
数字を修正することへの「心理的な抵抗」とどう向き合うか
ここまで読んでいただくと、「修正の方向性は分かった。でも、数字を厳しくすると加盟希望者が来なくなるのでは?」という不安を感じる方もいるかもしれません。
これは、多くの本部構築の支援に入ったときに必ずと言っていいほど出てくる疑問です。私の答えは明確です。「来てほしい加盟店」と「来てはいけない加盟店」を分けるのが、誠実なモデル収益の役割だということです。
甘い数字で集まる加盟希望者は、「簡単に儲かりそう」という期待値で来ている方が多い。一方、現実的な数字を見たうえで「それでもやりたい」と言う加盟希望者は、事業に対して真剣に向き合えている方が多い。後者の方が、開業後の苦しい時期も踏ん張れる可能性が高い。
また、フランチャイズ本部が儲かる仕組みを図解した収益モデルの設計においても同様ですが、ロイヤリティ収入は加盟店の売上が安定して初めて継続的に入ってきます。加盟店が赤字で閉店すれば、ロイヤリティ収入も消え、本部の収益も毀損します。誠実な数字を出すことは、本部自身を守ることでもあります。
「私たちは、加盟店に対して『絶対に儲かる』とは決して言いません。でも、固定費を織り込んだ現実の数字を一緒に見て、それでも挑戦したいと思えるかを確認する。その誠実さが、加盟後の信頼関係の土台になる」
ハワード・ジョイマン(飲食店FC本部構築支援コンサルタント・中小企業診断士)
収益モデルと並走して整えるべき「情報開示」の設計
モデル収益の数字を誠実に設計したとしても、それが適切な形で加盟希望者に伝わらなければ意味がありません。日本のフランチャイズ取引においては、中小小売商業振興法に基づく法定開示書面(法定開示書)の交付が義務付けられており、モデル収益の提示方法にも一定のルールがあります。
この法定開示書面の作成について詳しくは、フランチャイズ法定開示書面の作成で何から手をつければいいかを解説した記事でまとめています。また、契約書の設計に関しては、飲食店のフランチャイズ契約書作成で経営者が外部専門家に任せるべき項目も参考にしてください。
収益モデルと情報開示は、セットで設計するものです。どちらが欠けても、「誠実な本部」とは言えません。
「漠然とした不安が『やることが見える』安心に変わった」
イタリアン経営者(40代・女性)
これは私が支援しているクライアントのイタリアン経営者(40代・女性)の言葉です。客単価が18%向上し、電話対応の負担も軽減できたと教えてくださいました。「何をすればいいか分からない」という霧の中にいた状態から、具体的な行動と優先順位が見えた瞬間の変化です。収益モデルの設計においても同じことが言えます。「FC化したら何が起きるか」が数字として見えたとき、漠然とした恐怖は具体的な課題に変わります。課題になれば、対処できます。
「修正に耐えられる業態か」を先に確認する——FC化適性の診断
ここまで読んでいただいて、「そもそも自分の業態は、現実的な数字でも加盟店が利益を出せるのか」という根本的な問いに直面する方もいるかもしれません。その問いは、非常に大切です。
収益モデルを誠実に設計し直したとき、「加盟店が利益を出せない」という結論になる業態や規模感であれば、正直に「今はFC化のタイミングではない」とお伝えすることもあります。それが、本業を守ることにもなるからです。
私が支援対象としているのは、直営3〜10店舗・年商1〜5億円規模で、業態の再現性が実証されている飲食企業です。その条件を満たしていても、収益モデルの現実的な設計をしたときに加盟店の採算が取れないと判断した場合には、まず直営の利益構造を改善するところから始めることをお勧めします。
支援実績833件超の経験から言えるのは、FC化は「直営の問題を加盟店に転嫁する仕組み」ではないということです。直営で利益が出ている状態を、加盟店でも再現できる仕組みを設計する——それがFC本部の本質です。
まとめ:誠実な数字が、本業を守る最初の一手
今回ご紹介した収益モデルの修正は、どれも「本部に有利な数字をやめ、加盟店の現実に即した数字に置き換える」という一貫した方向性に基づいています。
想定月商を下げること、人件費を現実的に計上すること、家賃を実勢相場で見ること。これらは一見、加盟店の魅力を下げるように感じるかもしれません。しかし実際には逆で、誠実な数字を示すことが、本部への信頼を生み、長続きする加盟関係を作ります。
「FC化して失敗したら本業まで傷つく」という恐怖の根源は、実は「自分たちの出す数字が正しいか分からない」という不確かさにあることが多い。その不確かさを、現実的なモデル収益の設計と法令に沿った情報開示によって「誠実な確かさ」に変えること——それが、FC化に踏み出すための最初の一手です。
FC本部の構築に向けて、収益モデルの設計から一緒に考えたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。静岡県静岡市清水区を拠点に、全国の飲食経営者の方をオンラインでも支援しています(月曜〜金曜・10:00〜15:00)。