先日、静岡市内でご支援している寿司店の経営者(50代・男性)から、こんなご相談をいただきました。
「ジョイマンさん、銀行にはもうほとんど頼れない状況です。それでも業態の再現性は出てきた。FC化を真剣に考えたいんですが、ロイヤリティをいくらに設定すればいいか、まったく見当がつかなくて」
その方は、直営2店舗を安定軌道に乗せ、客単価も6,000円から8,500円まで引き上げることに成功されていました。「価値で選ばれている」という実感を取り戻し、経営に手応えを感じ始めていた矢先のことです。ところが銀行の借入枠はほぼ上限。新たに直営店を出すリスクを取れる財務余力が残っていなかった。
こうした状況の飲食経営者にとって、FC化における「ロイヤリティ設計」は、単なる数字の問題ではありません。借入に頼らず事業を広げるための収益構造の転換そのものです。今回は、業態別のロイヤリティ相場と設定事例を交えながら、飲食FC本部の収益モデルをどう設計するかを具体的にお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 飲食業のフランチャイズロイヤリティの種類と相場(業態別)
- ロイヤリティだけに頼らない本部収益モデルの設計考え方
- 銀行借入に頼らず拡大するための「加盟金・保証金・食材供給」との組み合わせ方
- ロイヤリティを高く設定しすぎると起きる閉店リスクの現実
こんな方におすすめ
- ✅ 銀行の借入枠が限界で、直営出店のリスクが取れない飲食経営者の方
- ✅ FC化を検討しているが、ロイヤリティをいくらにすればいいか分からない方
- ✅ 加盟店が儲かりながら本部も収益を得る設計の考え方を知りたい方
- ✅ 加盟金・保証金・食材供給との組み合わせで本部収益を設計したい方
- ✅ 直営3〜10店舗規模で、自己資本に頼らない拡大構造を探している方

フランチャイズロイヤリティには「定額型」と「定率型」がある
ロイヤリティの設定方法は、大きく2種類に分かれます。
❌ 「なんとなく他のFCと同じ率にする」(よくあるパターン)
- 根拠のない率設定は、加盟店の損益を壊す原因になる
- 繁盛店でも薄利業態では定率ロイヤリティが致命傷になりやすい
- 本部側の収益も不安定になり、SV体制が維持できなくなる
✅ 「業態の損益構造に合わせて種類・金額を選ぶ」(推奨アプローチ)
- 家賃・人件費の比率を先に計算し、支払える上限から逆算する
- 定額型・定率型・食材マージン型の組み合わせで本部収益を設計する
- 加盟店が儲かる前提で設計するため、閉店リスクが大幅に下がる
定率型は月商に対して一定のパーセンテージを支払う形式で、飲食業では売上の3〜8%が目安です。一方、定額型は月商に関係なく固定額を徴収する形式で、月3万〜15万円程度の設定が多く見られます。
どちらが「正解」かではなく、業態の損益構造に合った形を選ぶことが重要です。利益率の薄いラーメン業態で売上の8%を取れば、加盟店の経営は成り立たなくなります。逆に高単価の業態であれば、定率型でも十分な利益を加盟店に残せます。
業態別のロイヤリティ設定事例と相場感
実際に私がご支援してきた案件や、FC業界全体の傾向をもとに、業態別の相場をご紹介します。
チェックポイント①:ラーメン業態のロイヤリティ設計
ラーメン業態は客単価が低く、回転数で稼ぐ構造です。一般的に月商200〜350万円規模を想定し、定率型で3〜5%が現実的な設定ライン。それ以上を設定すると、食材費・人件費・家賃を差し引いた後に加盟店のオーナー取り分がほぼゼロになります。私が支援したラーメン業態の案件では、ロイヤリティは定率4%にとどめ、代わりにスープ素材・たれ等の食材供給マージンで本部収益を補う構造にしました。
✅ ポイント:ラーメンは「ロイヤリティを低く抑え、食材供給で本部収益を確保する」モデルが安定しやすい。食材供給の品質管理がそのままブランド管理にもつながる。
チェックポイント②:焼肉・居酒屋業態のロイヤリティ設計
焼肉・居酒屋は客単価が高く、酒類の粗利率が食材に比べて高い業態です。定率5〜7%の設定が多く見られます。食材費率(FL比率)が50%を超えやすい業態なので、ロイヤリティ設計の前に、モデル収益シミュレーションを丁寧に行うことが必須です。私が支援した焼肉業態(2店舗展開)では、定率5%+食材供給マージンの組み合わせで本部収益を構成しました。
✅ ポイント:焼肉は食材(肉)の仕入れルートを本部が一元管理することで、品質統一とコスト削減を同時に実現しやすい。ここに本部としての「価値」を乗せることができる。
チェックポイント③:パスタ・イタリアン業態のロイヤリティ設計
私が支援した事例では、パスタ業態で定率5%+食材供給の構成を採用しました。パスタ・ソース類を本部から供給することで、加盟店の仕込み工数を削減しつつ本部の収益源を確保する設計です。このモデルは加盟店にとって「省力化できる」というメリットが明確なため、加盟募集の場面でも訴求力があります。
✅ ポイント:食材供給は「コスト」ではなく「オペレーション支援の価値」として加盟店に伝えることで、ロイヤリティへの抵抗感が和らぐ。
✓ ここまでのポイント
- ロイヤリティには定率型・定額型があり、業態の損益構造に合わせて選ぶことが基本
- ラーメン系は定率3〜5%+食材供給マージン、焼肉・居酒屋系は5〜7%が現実的な目安
- ロイヤリティ単体ではなく、加盟金・保証金・食材供給との組み合わせで本部収益を設計する
「ロイヤリティだけで稼ごう」は本部崩壊の入口
FC化を考え始めた経営者の方が最初に陥りやすい誤解に触れておきます。それは「ロイヤリティを高めに取れば本部は安定する」という発想です。
「ロイヤリティを高く取ることは、加盟店の損益を圧迫することと表裏一体です。私は常に、加盟店の手元に残る金額を先に計算してから、本部が受け取れる上限を逆算します。加盟店が儲からなければ、本部への支払いも続かない。これは理屈ではなく、現場で見てきた現実です」
ハワード・ジョイマン(飲食店FC本部構築支援コンサルタント)
実際に、ロイヤリティ設定を誤った本部の多くは、加盟店が2〜3年以内に閉店を余儀なくされ、本部自体も訴訟リスクや社会的信用の毀損に直面します。FC化の目的が「借入に頼らず広げる」ことであれば、加盟店が長く続くモデルを設計することが、結果として本部の長期収益を守ることになります。
本部収益は、以下の複数の柱で構成するのが理想的です。
- 加盟金:加盟時に一括で得られる初期収益(目安:50万〜300万円)
- 保証金:契約終了時に返還する預かり金だが、期間中は資金として機能する
- ロイヤリティ:毎月の安定収益(定率3〜7%または定額制)
- 食材・資材の供給マージン:品質管理を担保しながら継続的に得られる収益
- 研修費・加盟店サポート費:開業前後の支援に対して設定するケースもある
このうち、銀行借入枠が限界に近い経営者にとって特に重要なのが、加盟金と保証金という「加盟時点で入ってくる資金」です。自己資本ゼロで出店した場合に発生する借入リスクを、加盟者側の資本で代替できるのがFC化の本質的な強みです。
こうした複合的な収益モデルの設計については、フランチャイズ本部の構築費用と収益構造の全体像も参考にしてみてください。
寿司業態での実例:借入に頼らず拡大する設計を考える
冒頭でご紹介した寿司店の経営者(50代・男性)の事例に戻ります。
「客単価が6,000円から8,500円に上がり、1日1.5時間の余裕も生まれた。でも一番大きかったのは、『価値で選ばれている』という実感です。だからこそ、この業態をもっと広げたい。自分の借金でではなく、一緒に店を持ってくれる人と一緒に」
寿司店オーナー(50代・男性)
この方の業態で私が整理したのは、まず「1店舗の標準損益モデル」です。月商・食材費・人件費・家賃・その他固定費を実数で試算し、加盟店オーナーが毎月いくら手元に残せるかを明確にしました。その上で、「本部が受け取れるロイヤリティの上限」を逆算したのです。
高単価の寿司業態は、客単価8,000〜10,000円帯であれば食材費率を30〜35%以内に抑えられる場合も多く、定率5〜6%のロイヤリティでも加盟店に十分な利益を残せる可能性があります。ただし、ネタの仕入れ価格は市況に左右されるため、ロイヤリティを定率で高く設定するのではなく、仕入れの一部を本部経由にすることで品質管理と収益確保を両立させる設計が現実的です。
FC化 STEP 1
1店舗の実損益を「他人でも再現できる数字」に整理する
自分が回しているからこその利益率なのか、それとも第三者のオーナーが経営しても同等の利益が出るモデルなのか。ここを区別しないままロイヤリティを設定すると、加盟店が機能しない数字になります。まず直営店の損益データを精緻化し、「あなたがいなくても成立するモデル収益」を導き出すことが第一歩です。
⚠️ よくある失敗:オーナー自身の無償労働・低報酬が損益を良く見せているケース。この数字のまま加盟店に渡すと、人件費が適正な加盟店では利益が出ない。
FC化 STEP 2
本部収益の複数の柱を決め、ロイヤリティの「上限」を逆算する
加盟金・保証金・ロイヤリティ・食材供給それぞれの金額を設定し、加盟店の月次損益から「支払い可能なロイヤリティの上限」を算出します。この順番が逆になると、本部都合のロイヤリティ設定になり、加盟店の閉店リスクが高まります。
⚠️ よくある失敗:競合FCの率を参考にそのまま採用する。業態・地域・客単価が異なれば、同じ率でも加盟店の手残りは大きく変わる。
FC化 STEP 3
法定開示書面に「モデル収益の根拠」を誠実に開示する
フランチャイズ契約には、法定開示書面(情報提供書面)の作成が求められます。そこに記載するモデル収益は、実態に即した数字でなければなりません。「絶対に儲かる」という表現は使えませんし、使うべきでもない。現実的な収益の幅と、固定費の内訳を正直に示すことが、長期にわたって揉めない本部をつくる土台です。
⚠️ よくある失敗:楽観的なモデル収益だけを提示し、固定費の変動リスクに触れないケース。後になって「話が違う」とトラブルになる原因になる。
伴走型のFC本部構築支援の詳細については、フランチャイズ本部への伴走支援と丸投げの違いをご覧いただくと、支援の進め方のイメージが具体的につかめます。また、依頼を検討される際はFC本部構築に強いコンサルタントの見分け方も参考にしてみてください。
ロイヤリティ設計で「本部化の失敗」を防ぐために
増益繁盛クラブでは、創業21年・支援実績833件超の経験をもとに、FC本部構築を伴走支援しています。オムライス業態で11店舗、パスタ業態で4店舗、焼肉業態で2店舗など、複数業態にわたる展開支援の中で、ロイヤリティ設計の失敗が本部崩壊の引き金になるケースを数多く見てきました。
「私はFC化を勧める際、必ず『今の業態でなぜ加盟店が儲かるか』を先に説明できるか確認します。それが説明できない段階では、ロイヤリティの率をいくらにしても意味がない。本部の収益設計は、加盟店の損益設計が先です」
ハワード・ジョイマン(飲食店FC本部構築支援コンサルタント)
借入枠が限界に近い状況だからこそ、FC化の設計を急ぎたい気持ちは理解できます。しかし、ロイヤリティを「取りやすいから高く設定する」という発想で設計した本部は、3〜5年後に加盟店の閉店が相次ぎ、本部自体の信用と収益が傷つくことになります。
大切なのは、加盟者が長く続けられるモデルを先に設計し、その余白の中から本部が受け取れる分を確保すること。それが「閉店しない本部」をつくる、唯一の順番です。
まとめ:ロイヤリティ設計は「加盟店の手残り」から逆算する
飲食業のフランチャイズロイヤリティは、ラーメン系で定率3〜5%、焼肉・居酒屋系で5〜7%が現実的な目安ですが、これはあくまで起点に過ぎません。自分の業態の食材費・人件費・家賃を踏まえた「加盟店の実損益」を先に計算しなければ、正しいロイヤリティ設定はできません。
銀行の借入枠が限界に近い飲食経営者にとって、FC化は「加盟者の資本で拡大する」という財務構造の転換です。加盟金・保証金・ロイヤリティ・食材供給マージンを組み合わせた複合収益モデルを設計することで、自己負担ゼロに近い形で事業を広げる道が開けます。
ただし、その設計が加盟店を苦しめるものであれば、結果として本部も長続きしません。「加盟店が儲かってこそ、本部は続く」——この原則を土台に置いたロイヤリティ設計こそが、借入リスクを取らずに事業を広げるための現実的な答えです。
ご自身の業態がFC化に適しているか、またロイヤリティを含む本部収益モデルをどう設計するかについて、具体的にお話しを聞きたい方は、ぜひ増益繁盛クラブへご相談ください。静岡市清水区(新清水駅近く)を拠点に、全国の飲食経営者の本部構築を伴走支援しています。