「お客さんに商品をすすめると、押しつけがましくなる気がして……」
美容室で物販の話になると、スタッフからこういう声が出てくることは珍しくありません。技術は磨いてきた、接客も丁寧にやっている、でも商品をすすめる場面だけなぜかぎこちなくなる。
ここで一つ、意外かもしれない事実をお伝えします。消費者庁が公表している「消費者白書」をはじめとする消費行動の調査では、購入のきっかけとして「店員にすすめられた」が一定の割合を占めることが繰り返し示されています。つまり、お客さんはゼロから自分で選ぶより、「信頼できる人に背中を押してもらう」ことを求めている面があるわけです。
では、なぜ美容室のスタッフは「すすめること」に抵抗を感じるのか。そしてその抵抗感は、どうすればなくなるのか。
今回は、私ハワードジョイマンが833件以上の店舗支援の現場で見てきた「物販が苦手なスタッフの変化」を起点に、美容室オーナーが知っておくべき仕組みの話をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 物販への抵抗感がどこから来ているのか、その本当の原因
- スタッフが「すすめやすくなる」状態をどう作るか
- オーナーが現場に張り付かなくても物販が回る仕組みの考え方
- 赤字続きの美容室が折込チラシとPOPを組み合わせて経営を立て直した実例
こんな方におすすめ
- ✅ スタッフが物販をすすめてくれず、結局オーナーだけが動いている方
- ✅ 物販の売上が上がらない原因がスタッフの「言い方」にあると思っている方
- ✅ 客単価が上がらないまま、値引き競争に引き込まれそうになっている方
- ✅ 自分が店にいないと回らないと感じていて、休みが取れない方
- ✅ 物販の仕組みをスタッフに任せられる状態を作りたいオーナーの方

「すすめるのが苦手」は性格の問題ではない
物販が苦手なスタッフに共通しているのは、「断られることへの恐怖」よりも、「お客さんに嫌われたくない」という感覚です。これは決して性格の問題ではありません。
多くのスタッフは「商品をすすめる=営業する=押しつけ」という図式を無意識のうちに持っています。美容師として技術を磨くことには誇りを持っているけれど、「モノを売る自分」に違和感がある。この構造が根っこにあるうちは、研修で「もっと積極的に!」と伝えても変わりません。
ここで私がよく使う例え話があります。たとえばスタッフが、施術中に「最近、髪がパサつきやすくなってきていませんか?」と声をかけ、「実は乾燥しやすい季節に入ってきたので、このトリートメントを使うと持ちが変わりますよ」と伝えたとします。これは「売りつけ」でしょうか?
違います。これは「気づきを共有すること」です。この区別が腑に落ちたとき、スタッフの言葉は変わります。
「物販を売れるスタッフを育てようとすると、たいていうまくいかない。物販を通じてお客さんの悩みを解決できるスタッフを育てると、結果として売上がついてくる。順番が大事です」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)
物販をすすめることへの抵抗感が、実は「言葉の準備がないこと」から来ているとわかっても、では何をどう準備すればいいかという部分が見えないままになっていませんか。無料レポートでは「物販が自然に売れる仕組み」と「スタッフに伝え方を渡す方法」を具体的に解説しています。メールアドレスだけで受け取れます。
抵抗感がなくなるのは「言葉の準備」があるとき
私が見てきた美容室の中で、物販の売上が安定しているお店には一つの共通点があります。スタッフが「何を言えばいいか」をあらかじめ持っているという点です。
逆に物販が伸び悩むお店では、スタッフが「その場で考えて言葉を探している」状態になっています。即興でことばを探す場面で、人はどうしても守りに入ります。「何も言わないほうが安全」という判断が働くわけです。
だからこそ、オーナーが用意すべきなのは「スクリプト(話す言葉の型)」と「POP(見えるかたちの説明)」です。
たとえばPOPに「秋冬の乾燥で傷みやすい髪に。このシャンプーを使ったお客さんの8割が『翌朝の手触りが変わった』とおっしゃいます」と書いてあれば、スタッフは「あちらのPOPにも書いてあるんですが……」と言うだけで会話が始まります。スタッフが自分で「説得しなくていい」状態を作ることが、抵抗感をなくす一番の近道です。
10月に入り秋が深まってくると、髪の乾燥や静電気といったお客さんの悩みも変わってきます。季節に合わせた言葉をPOPに落とし込んでおくことで、スタッフは「今の時期に合った話題」として自然に会話に乗せられます。
物販で利益が出ているかどうか、原価率と利益率の観点から見直したい方は美容室の物販で利益が出ているか診断できていますか?原価率と利益率の見方も参考にしてください。
✓ ここまでのポイント
- 物販への抵抗感は「性格」ではなく「言葉の準備がないこと」から生まれる
- スタッフが「すすめる」のではなく「気づきを共有する」という認識に変わると行動が変わる
- POPやスクリプトを用意することで、スタッフが「自分で説得しなくていい」状態を作れる
POPとチラシを組み合わせた販促設計の話が出てきましたが、「実際にどんなPOPやチラシを作ればいいか」がイメージしにくいと感じているオーナーの方もいると思います。LINEで友だち追加するだけで、チラシ・DM・名刺などサロンの販促ツールについて直接相談できます。土日祝は休みで、月〜金の9〜17時に対応しています。
オーナーが全部やっている間は、仕組みにならない
ここが本題です。
物販をすすめているのがオーナーだけ、POPを作るのもオーナーだけ、商品の説明ができるのもオーナーだけ——これは「仕組み」ではなく「属人化」です。
この状態のとき、オーナーは現場から離れられません。休日も「自分がいないと売れない」という感覚がついてまわります。家族との時間が取れない、体力的にも限界が近い、そういう声を全国の美容室オーナーからよく耳にします。
では、どうすれば仕組みになるのか。
私が伝えているのは「40点のスタッフでも動けるレベルに分解する」という考え方です。物販のプロセスを細かく分けると、こういう作業になります。
物販を仕組みに変える STEP 1
「何をどの場面でどう伝えるか」を言語化する
施術中のどのタイミングで何の商品を話題にするか、どんな言葉を使うか、を文字に起こします。「なんとなく自然に」では再現できません。言葉にして渡すことで、初めてスタッフに移管できます。
⚠️ よくある失敗:「センスのある子は自然にやってくれる」と期待して、言語化を後回しにしてしまう。センスではなく、言葉の設計が先です。
物販を仕組みに変える STEP 2
POPを「スタッフの代わりに語る営業マン」として設置する
POPはスタッフの負担を減らすツールです。お客さんの視線が向かう場所に、商品のご利益(使うとどう変わるか)が書いてあれば、スタッフはそれを補足するだけで済みます。「なんと書けばいいか」のフォーマットをオーナーが一度作れば、スタッフが月ごとに更新できます。
⚠️ よくある失敗:商品名と価格だけ書いたPOPを置いて「反応がない」と諦めてしまう。POPに書くのは「お客さんにとっての変化」です。
物販を仕組みに変える STEP 3
毎日1時間、「社長の仕事」の時間を確保する
仕組みを作るには、まず時間が必要です。しかし現場に追われているオーナーほど「仕組みを考える時間」がありません。だからこそ意図的に、毎日1時間だけ「今日は施術を入れない時間」を作ることを習慣にする必要があります。この1時間でPOPを書く、スクリプトを整理する、スタッフに渡す手順書を作る。この積み重ねが半年後のお店の形を変えます。
⚠️ よくある失敗:「お客さんが入っていない時間に考えよう」と思っていると、気づけば1日が終わっている。先にカレンダーに「仕組みづくりの時間」を入れることが先決です。
「オーナーが現場から離れられない美容室は、たいていオーナーが一番上手にできてしまうんですよね。だから全部自分でやってしまう。でも、上手にできることと、仕組みを作ることはまったく別の仕事です」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)
スタッフへの業務移管と仕組み化について、さらに具体的な考え方を知りたい方は美容室のスタッフ教育について相談できる場所と、仕組みとして教育を回す考え方もあわせて読んでみてください。
「赤字続きの美容室」が変わったのは、仕組みと投資の両輪だった
実際に経営が立て直しになった事例として、会員の方からこんな声をいただいています。
「赤字が続いていたときは、何をやっても空回りしている感覚でした。折込チラシとPOPを組み合わせる形で販促を整えてから、売上が動き始めて、経営が安定してきました」
美容室オーナー
この事例で重要なのは、チラシとPOPを「別々の道具」として使ったのではなく、「新規のお客さんを呼ぶ→来店したお客さんに物販を知ってもらう→また来てもらう」という流れとして設計した点です。
チラシで呼んだお客さんがお店に入ったとき、POPがそのお客さんに語りかけます。スタッフはPOPを補足するだけでいい。この設計があれば、スタッフが「すすめなければ」と身構える必要がなくなります。
私がよく言う「お金をかけずに売上を伸ばすのは愚策」という言葉も、ここにつながります。折込チラシは費用がかかります。でも、適切な設計のもとで使えば、チラシは「広告費」ではなく「顧客を生み出す投資」になります。費用を渋って新規客が来ない状態を続けるより、投資して来店してもらい、POPと接客の仕組みで物販につなげるほうが、利益は残りやすくなります。
美容室で利益が出ない状態、当てはまったら要注意なチェックリストと改善の糸口も、あわせて確認してみてください。経営全体の利益構造を見直すきっかけになります。
まとめ:スタッフの抵抗感をなくすのは「気合い」ではなく「設計」
物販が苦手なスタッフに「もっと積極的に!」と声をかけ続けても、根本は変わりません。
変わるのは、スタッフが「どう言えばいいか」を知っているとき、POPが「代わりに語ってくれている」とき、そして仕組みがオーナー一人の頭の中にあるのではなく、誰でも再現できる形に落とし込まれているときです。
オーナーが現場から離れられない、休みが取れない、家族との時間が持てない——その状態を変えるための第一歩は、毎日1時間の「社長の仕事時間」を意図的に作ることです。その1時間で、物販の言葉を整理する、POPのフォーマットを作る、スタッフへの手順書を書く。地味に見えるこの積み重ねが、半年後に「自分がいなくても回るお店」の形を作っていきます。
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