優良スタッフ採用と教育

スタッフのやる気がないと感じる前に、オーナーが語るべき「働く理由」の言語化

有限会社繁盛店研究所でスタッフサポートを担当している、渥美昌代です。

会員さんからのご相談を日々お受けするなかで、ここ数年、ある共通したパターンに気づくようになりました。「うちのスタッフはやる気がない」という言葉の裏側を丁寧に聞いていくと、実はスタッフの問題よりも先に、オーナーさん自身が「自分がなぜこの仕事をしているのか」を言葉にしたことがない、というケースが多いのです。

畑を耕すのが好きな私にとって、これはすごく身近な感覚で理解できます。種を蒔いた目的が自分の中で明確じゃないと、毎日の水やりが「作業」になってしまう。何のために育てているか分かっていれば、同じ水やりでも全然違う手の動きになる。スタッフに「動いてほしい」と思うなら、まずオーナーさん自身が「この畑で何を育てたいのか」を自分の言葉で持っていることが出発点だと、私は感じています。

この記事では、スタッフへの期待と「社長自身の言語化」の関係、そして現場から離れられないオーナーさんが最初に手をつけるべき一歩について、サポート現場での実感を交えてお伝えします。

📋 この記事でわかること

  1. 「スタッフのやる気がない」と感じる前に確認すべき、オーナー自身の言語化の現状
  2. 社長が現場作業に追われることでスタッフへの業務移管が進まない構造的な理由
  3. 「働く理由」を言語化して仕組みに落とし込む具体的なステップ
  4. 40点のスタッフでも店が回る仕組みの作り方と、社長時間の確保の実践法

こんな方におすすめ

  • ✅ スタッフに「もっと主体的に動いてほしい」と感じているオーナーの方
  • ✅ 自分がいないとお店が回らず、休みを取ることに罪悪感を感じている方
  • ✅ スタッフへの指示が「作業の命令」になってしまっていると気づいている方
  • ✅ 仕組み化やスタッフ教育を進めたいけれど、何から手をつければいいか分からない方
  • ✅ 技術には自信があるのに、経営者としての自分の言葉をまだ持っていない方
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「やる気がない」の前に、オーナー自身が問われていること

サポートの現場で、スタッフに関するご相談を受けるとき、私はまず一つ確認することにしています。「オーナーさん自身は、スタッフにどうなってほしいか、言葉にして伝えたことがありますか?」という問いです。

多くの場合、返ってくる答えは「……ちゃんと言ったことはないかもしれません」というものです。技術の手順、接客の流れ、開閉店の作業——こういった「業務の手順」は伝えていても、「自分たちがこのお店で何を実現しようとしているのか」「スタッフにどういう存在になってほしいのか」という部分は、なんとなく伝わっているだろうという前提で済ませてしまっているケースが多いのです。

スタッフは、オーナーの頭の中を見ることができません。作業だけ渡されたスタッフが「作業をこなす人」になるのは、ある意味では当然の結果です。「やる気がない」と見えるのは、スタッフの資質の問題というより、オーナーが「何のためにこの仕事をするのか」を共有する場を作れていない状態の反映であることが、意外なほど多い。

「スタッフが動かないと嘆く前に、自分は何のためにこのお店を経営しているかを、声に出して言えますか。言えないなら、スタッフに動きを求めるのはまだ早い。言語化は経営の基礎工事です。」

ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)

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社長が現場に張り付く構造が、言語化を遠ざける

「それは分かっているんですが、現場から手が離せなくて……」というのも、よく聞くお声です。これは本当によく分かります。一人ひとりのお客さんに向き合い、技術を提供し続けていると、一日があっという間に終わります。仕組みを作る時間なんてどこにあるの、という感覚は、現実として存在しています。

ただ、少し立ち止まって考えてみると、「社長が現場にいないとお店が回らない」という状態そのものが、スタッフへの言語化を妨げている大きな原因になっています。自分が施術に入ることで精一杯だと、スタッフに「なぜこの仕事をするのか」を伝える時間はもちろん、スタッフが動ける仕組みを設計する時間もなくなっていきます。

そして仕組みがないから、スタッフは都度オーナーに確認しに来る。オーナーはその対応で現場から離れられない。離れられないから仕組みを作れない——このループが、「自分がいないと回らない」状態を慢性化させていきます。

美容室オーナーの年収が低くなりやすい原因とは?利益が残らない経営の共通点でも触れていますが、現場作業から抜け出せない状態では、利益を生み出す仕組みに時間を使えないという構造的な問題があります。スタッフの動きの話は、実は経営者の時間の使い方と表裏一体なのです。

✓ ここまでのポイント

  • 「スタッフのやる気がない」問題の根本には、オーナー自身の「働く理由」が言語化されていないことがある
  • 社長が現場作業に追われていると、スタッフへの言語化も、仕組み設計の時間も取れなくなる
  • 「自分がいないとお店が回らない」状態は、仕組み不在と言語化不在が組み合わさって慢性化する

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「働く理由」を言語化してスタッフに渡すステップ

言語化 STEP 1

オーナー自身が「なぜこのお店をやっているのか」を紙に書く

まず、15分だけ時間を取って、「自分がこのお店を続けている理由」を箇条書きで書き出してください。「好きな技術を活かしたい」「地域のお客さんの日常を支えたい」「家族のために安定した収入を作りたい」——どんな言葉でも構いません。正解はありません。ここで大事なのは、頭の中にある霧のようなものを、見える言葉に変えることです。

⚠️ よくある失敗:「きれいな言葉にしなきゃ」と身構えて、書けないまま終わってしまう。完成度より「とにかく書く」が先です。

言語化 STEP 2

スタッフに「こうなってほしい」姿を業務ごとに分解して書く

次に、「スタッフにどう動いてほしいか」を、業務単位で具体的に書きます。「接客中はこういう言葉を使う」「次回予約はこのタイミングで声をかける」「店販はこう伝える」——こうした手順に、「なぜそうするのか」の理由をセットで書くことが重要です。理由のない手順は、スタッフにとって「命令」にしかならないからです。

⚠️ よくある失敗:手順だけをマニュアル化して「あとはスタッフが考えてくれるはず」と渡す。考える根拠(理由)がないと、イレギュラーに対応できません。

言語化 STEP 3

「40点で合格」という基準を設けて、移管と修正を繰り返す

完璧を求めると、いつまでも移管できません。スタッフが70点の動きをしてくれれば十分、いや最初は40点で合格にする——この割り切りが、現場から離れる第一歩になります。移管した後は、うまくいかなかった部分を仕組みに戻して修正する。この繰り返しが「スタッフでも回るお店」を少しずつ作っていきます。

⚠️ よくある失敗:一度移管してうまくいかないと「やっぱり自分でやる」に戻ってしまう。修正のサイクルを回すことが仕組み化の本体です。

毎日1時間、社長の仕事を確保することの意味

仕組みづくりと言語化を進めるうえで、私がいつも会員さんにお伝えしていることがあります。「毎日1時間だけ、社長の仕事をする時間を先に確保してください」ということです。

スタッフへの仕組み移管、販促ツールの作成、次の来店を促す仕掛け——これらはどれも、施術の合間にちょこっとできるものではありません。まとまった時間を意識的に作らないと、何ヶ月経っても手がつかないまま終わってしまいます。

美容室のスタッフ教育について相談できる場所と、仕組みとして教育を回す考え方でも詳しく解説していますが、教育を「仕組みとして回す」ためには、オーナーが設計者として動く時間を物理的に確保することが前提になります。

❌ よくあるパターン:空いた時間に仕組みを作ろうとする

  • 現場が忙しいと、空き時間が永久に来ない
  • 「いつかやろう」が数年続いてしまう
  • スタッフへの移管が進まず、休みが取れない状態が固定化する

✅ 推奨アプローチ:朝一番や閉店後など、施術が入らない時間帯を「社長業の時間」として先にブロックする

  • 週5日×1時間で、月に約20時間が経営者として使える時間になる
  • この時間でスタッフへの仕組み移管・言語化・販促を少しずつ進められる
  • 半年続けると「自分がいなくても回る部分」が少しずつ増えていく

「技術の腕を磨くことに費やしてきた時間と同じ熱量を、経営の仕組みづくりに向けると、お店は別の顔になる。職人として優れていることと、経営者として機能することは、まったく別の筋肉を使う仕事です。」

ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)

この言葉は、技術に誇りを持っているオーナーさんほど、胸に刺さるものがあると思います。実際に私たちのところにお声が届いたオーナーさんの中にも、こんな変化がありました。

「技術には自信があったんですが、客単価1万円を超えるメニューが自然に売れるようになるとは思っていませんでした。学んだことを一つひとつ実践していくなかで、お客さんの方から聞いてくれるようになって。」

技術に自信があったオーナー(増益繁盛クラブ会員)

この方に起きたことは、技術を磨き続けることに加えて、「どう伝えるか・どう仕組みを作るか」に時間を使い始めた結果です。お客さんが1万円を超えるメニューを「自然に」選んでいくためには、そのための言語化と仕掛けが必要です。それは、現場作業から少し顔を上げた先にある仕事です。

美容室の客単価が低いまま変わらない。よくある3つの理由と今日から動ける改善策もあわせて読んでいただくと、客単価と仕組みの関係がより具体的に見えてきます。

渥美から、最後に一つだけ

私は畑が好きで、週末には土を触ることが何より好きなのですが、畑で一つ学んだことがあります。どんな作物も、育てる人間が「何のために育てているか」を知らないと、ただの草刈り作業になってしまうということです。

お店も同じだと思っています。スタッフへの指示を増やす前に、オーナーさん自身が「自分はなぜこの仕事をしているのか」を言葉にすることが、実はすべての出発点になる。その言葉があってはじめて、スタッフに渡す「働く理由」が生まれ、仕組みに意味が宿ります。

自分がいないとお店が回らない、休みが取れない、家族との時間が作れない——そう感じているオーナーさんに、まず15分だけ、「自分がこのお店をやっている理由」を紙に書いてみることをおすすめします。その一枚が、仕組みづくりの最初の一歩になります。

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