結論から言うと、多店舗展開において採用が滞る最大の原因は「採用を社長一人の属人業務にしたまま」にしていることです。1店舗目を回しながら2店舗目・3店舗目のスタッフを確保しようとしても、仕組みがなければ採用活動は後手に回るばかりです。この記事では、複数店舗に対応できる採用体制をどう構築するか、利用できる助成金・制度との組み合わせ方も含めて、具体的にお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 多店舗展開で採用が機能しなくなる根本的な理由
- 複数店舗に対応できる採用体制の作り方(ステップ解説)
- 採用コストを補助する助成金・制度の活用ポイント
- 採用した人材が定着する「仕組み」の整え方
こんな方におすすめ
- ✅ 2店舗目・3店舗目への出店を検討している美容室オーナー
- ✅ 多店舗展開を進めているが採用が追いつかないと感じている方
- ✅ 採用コストを助成金で補いながら人材投資を進めたい方
- ✅ スタッフが定着せず、採用しても辞めるサイクルに悩んでいる方
- ✅ 社長が現場から抜けられず、店舗拡大の手が止まっている方

多店舗展開で採用がうまくいかない理由は「仕組みの不在」にある
多店舗展開を目指す美容室オーナーからよく聞く声があります。「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用できたのにすぐ辞める」「面接する時間すら取れない」。こうした悩みに共通しているのは、採用活動が社長の個人作業になっていて、再現性がないという点です。
1店舗の段階では、社長が面接して、感覚で採用して、自分が教育する——それでも何とかなります。でも2店舗目、3店舗目が加わった瞬間、その「感覚採用」は通用しなくなります。社長の時間は物理的に分散され、目が届かなくなるからです。
私が21年間・833件以上の店舗支援を通じて見てきた多店舗展開の失敗パターンで最も多いのが、「売上の仕組みを作る前に出店してしまう」ことと並んで、「採用体制を整える前に出店してしまう」ことです。出店後に慌てて採用活動を始めても、良い人材はすでに他店に流れています。
「多店舗展開は、採用と定着の仕組みを先に設計することが鉄則です。出店してから考えるのでは、常に後手に回ります。スタッフが定着しない店舗に、優秀な人材は来てくれません」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/店舗利益最大化コンサルタント)
複数店舗に対応できる採用体制を作る4つのステップ
採用体制づくり STEP 1
採用基準と求める人物像を言語化する
「良い人を採りたい」という言葉ほど曖昧なものはありません。多店舗展開においては、まず「自店で活躍できる人物像」を具体的に言語化することが先です。技術力だけでなく、接客の考え方・チームへの貢献姿勢・成長意欲など、定性的な基準を文章で整理します。これが採用ページの原稿にも、面接の質問設計にも、研修の土台にもなります。
⚠️ よくある失敗:「即戦力」「明るい方」などの抽象的なワードだけで求人票を作り、どんな人が来てもとりあえず採用してしまう。その結果、店舗ごとに人材の質がバラつき、サービスの均一化ができなくなる。
採用体制づくり STEP 2
採用導線を「社長不在でも回る仕組み」に整備する
求人票の作成・応募者対応・一次選考のフローを、できる限り社長以外でも対応できる形にします。たとえば、応募フォームの自動返信設定、面接日程のオンライン予約化、一次面接をスタッフ(店長候補)に任せる設計などです。社長が直接関わるのは最終確認のみ、という状態を目指します。
⚠️ よくある失敗:すべての採用判断を社長が抱え込み、現場が忙しいと採用活動が止まる。求人票を出しっぱなしで応募者へのレスポンスが遅れ、優秀な候補者が離れていく。
採用体制づくり STEP 3
入社後の定着率を高める「受け入れ体制」を先に設計する
採用した人材がすぐに辞める店舗には共通点があります。入社後の教育プログラムが整っておらず、新人スタッフが「何をすればいいか分からない」状態に置かれているのです。多店舗展開では、研修マニュアル・OJTの仕組み・評価制度を1店舗目の段階で整えておくことが、2店舗目以降の定着率に直結します。
⚠️ よくある失敗:社長自身が育ってきた「見て覚えろ」式の教育をそのまま引き継ぎ、マニュアル化を後回しにする。結果として、店舗ごとに教育の質が異なり、スタッフの不満や離職につながる。
採用体制づくり STEP 4
採用ブランディングで「来てほしい人材が自ら応募してくる」状態を作る
多店舗展開が進むほど、採用コストは経営を圧迫します。それを防ぐのが「採用ブランディング」です。自店の理念・働き方・成長環境をSNSや採用ページで継続的に発信し、「ここで働きたい」と思ってもらえる発信を積み重ねます。1回の求人広告費より、継続的な情報発信の積み上げの方が、長期的には採用コストを大幅に下げることができます。
⚠️ よくある失敗:求人が必要になった時だけ求人広告を出す。採用ブランディングの発信を「暇なときにやる作業」と位置付けているため、常に後手の採用活動になる。
✓ ここまでのポイント
- 採用体制の構築は「出店前」に着手することが鉄則。採用仕組みを後回しにすると、多店舗展開後に慢性的な人材不足に陥る
- 採用基準の言語化→導線の仕組み化→定着体制の設計→採用ブランディングの順に整備することで、社長が現場に張り付かなくても採用が機能する状態が作れる
採用コストを補助する助成金・制度の活用ポイント
採用体制を整えていく上で、見逃せないのが国や自治体の助成金・支援制度です。美容室の多店舗展開に関連して活用可能性がある制度をいくつか紹介します。
❌ よくある誤解(助成金に対する姿勢)
- 「助成金は手続きが面倒だからうちには関係ない」と最初から諦めて、活用を検討すらしない
- 「タダでお金がもらえるから何でも申請する」と制度の要件を確認せず申請して不採択になる
✅ 正しいアプローチ
- 自店の採用・人材育成の取り組みに合う制度を選んで、要件をきちんと満たしながら活用する
- 採用にかかる投資を「コスト」でなく「将来の利益を生み出す広告投資」として捉え、制度で補いながら積極的に実行する
具体的には、以下のような制度が採用・人材育成の文脈で活用できる可能性があります。
キャリアアップ助成金(厚生労働省)
パートや契約社員を正社員へ転換した場合や、処遇改善を行った場合に支給される助成金です。多店舗展開で優秀なスタッフを正社員として定着させたい場合に活用しやすい制度です。要件や支給額は変更される場合があるため、最新情報は厚生労働省または都道府県の労働局で確認することをお勧めします。
人材開発支援助成金(厚生労働省)
スタッフの職業訓練や研修にかかる費用・賃金の一部を助成する制度です。新人スタッフの教育プログラムを整備する際や、既存スタッフのスキルアップ研修を導入する際に活用できる可能性があります。
業務改善助成金(厚生労働省)
最低賃金の引き上げに伴い、業務効率化のための設備投資(予約管理システム・POSレジ等)を行う際に支給される助成金です。採用後の業務効率化と連動して活用できる場合があります。
ただし、助成金はあくまで採用・人材育成への投資を「補助する」ものです。助成金ありきで採用計画を立てると、制度の変更や不採択時に計画全体が崩れます。まず採用体制の設計を行い、その上で活用できる制度を探す順番を守ることが重要です。
「お金をかけずに採用を強化しようとするのは、広告を打たずに新規集客しようとするのと同じです。採用も投資です。助成金を活用しながら、採用ブランディングと人材育成に計画的にお金をかけていくことが、多店舗展開を支える人材基盤を作ります」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/店舗利益最大化コンサルタント)
採用した人材が定着する「利益が出る店舗」の条件
採用体制を整えても、定着率が低い店舗には根本的な問題があります。それは「スタッフが働き続けたいと思える環境」が整っていないことです。そしてその環境を支えるのは、結局のところ「店舗の利益」です。
利益が出ていない店舗では、給与水準を上げられない、研修に投資できない、休みを取らせる余裕がない、という状況が続きます。スタッフはそれを敏感に感じ取り、将来性を感じられなくなって離職します。
多店舗展開において採用を安定させる最も根本的な解決策は、「利益が残る店舗」を1店舗目から作ることです。
具体的には、改善の優先順位を「①客単価アップ→②再来店率の向上→③新規集客」に整えることです。忙しく働いても利益が残らない状態では、採用投資もできませんし、スタッフへの還元もできません。客単価と再来店率を改善することで、同じ席数・同じ時間でもより多くの利益が生まれ、それが採用・育成への投資原資になります。
増益繁盛クラブでは、美容室150件を含む833件以上の支援実績をもとに、利益が残る経営体質の構築から採用・人材育成の仕組み化まで、多店舗展開を見据えた経営支援を行っています。静岡市清水区を拠点に、全国のオーナーへオンラインでも対応しています。
「月商200万円から年商1億円への道は、採用と利益の仕組みを同時に整備することで開けます。どちらかが欠けても、多店舗展開は砂上の楼閣になります」
(増益繁盛クラブ会員・40代・美容室オーナー)
まとめ:採用体制と利益の仕組みを同時に整えることが多店舗展開の王道
多店舗展開で採用を強化するためにやるべきことを整理すると、次の3点に集約されます。
- 採用を社長の属人業務から解放する——採用基準の言語化・導線の仕組み化・受け入れ体制の設計を出店前に行う
- 助成金・制度を活用して採用投資のコストを賢く補う——キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金など、自店の取り組みに合う制度を選んで活用する
- 利益が残る店舗を作ることが最大の採用強化策——スタッフが働き続けたいと思える環境を、客単価アップと再来店率改善によって整える
採用は「良い人が来てくれるかどうか」という運任せのものではありません。仕組みとブランディングと利益の土台があれば、採用は「繰り返し機能する仕組み」になります。多店舗展開に向けて、まず1店舗目の利益体質を整えることから始めてみてください。
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