先日、ある美容室オーナーからこんな相談を受けました。「2号店を出したいんです。売上をもっと伸ばさないと将来が不安で」と。
その方の現在の月商はおよそ180万円。一見すると順調に見えますが、話を深掘りしてみると利益率は8%台。手元に残るお金は月に15万円程度という状況でした。
「その状態で2号店を出したら、どうなると思いますか?」と私が尋ねると、しばらく沈黙が続きました。
多店舗展開は、確かに美容室経営の一つの到達点です。でも、その前に知っておかなければならない現実があります。静岡市清水区を拠点に、全国833件以上の店舗を支援してきたコンサルタント・ハワードジョイマンが、多店舗展開の本音をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 美容室の多店舗展開が持つ具体的なメリットとその前提条件
- 拡大前に見落としがちなデメリットとリスクの実態
- 「拡大より先にやるべきこと」——利益基盤の整え方
- 多店舗展開を成功させるために必要な仕組みと経営者マインド
こんな方におすすめ
- ✅ 2号店・3号店の出店を検討している美容室オーナー
- ✅ 売上は上がっているのに利益が残らないと感じている方
- ✅ 多店舗展開のリスクを冷静に把握してから動きたい方
- ✅ 現場から離れられず、仕組み化に課題を感じている経営者の方
- ✅ 将来の教育費・老後資金のために経営を安定させたい方

多店舗展開の「夢」と「現実」のギャップ
美容師として独立し、1店舗目が軌道に乗り始めると、自然と頭をよぎるのが「もう1店舗」という選択肢です。売上を2倍にできる、自分のブランドが広がる、将来の安定につながる——そう考える気持ちはよく分かります。
ただ、私がこれまで美容室150件以上の支援を通じて見てきた現実は、少し違います。多店舗展開に踏み切ったオーナーの中には、2号店を出したことで経営が一気に苦しくなったケースが少なくありません。
理由はシンプルです。1店舗でうまくいっているように見えても、その「うまくいっている」が実はオーナー自身の体力と時間の消費によって成立していた、というケースが多いからです。仕組みではなく、人(社長)が回している店を2倍に増やせば、消耗も2倍になります。
多店舗展開のメリット——正しい順序で踏めば大きな武器になる
誤解のないようにお伝えしますが、多店舗展開そのものを否定しているわけではありません。利益基盤がしっかり整った状態であれば、以下のような本物のメリットを享受できます。
チェックポイント1:規模の経済が働くか
仕入れ・広告・システムコストを複数店舗で分散できます。たとえば、ヘアケア商品の仕入れや予約管理システムの月額費用は、1店舗より2店舗のほうが1店舗あたりのコストが下がります。
✅ ポイント:コスト構造の改善は、出店前に「何が固定費で何が変動費か」を数値で把握しておくことが前提です。
チェックポイント2:採用・人材育成の幅が広がるか
スタッフにとって「店長候補」「エリアマネージャー」といったキャリアパスが見えると、採用と定着に好影響が出ます。1店舗では上が詰まってしまうため、優秀なスタッフが辞めやすい構造になりがちです。
✅ ポイント:ただしキャリアパスを用意しても、評価制度や業務マニュアルが整っていなければ機能しません。
チェックポイント3:ブランドの認知が広がるか
地域内に複数店舗があると、「あのサロン、よく見かける」という印象が生まれ、ブランド認知が高まります。口コミが広がりやすくなる効果もあります。
✅ ポイント:ブランド認知の拡大は、1店舗目のコンセプトと接客品質が統一されていることが前提です。バラバラだと逆効果になります。
✓ ここまでのポイント
- 多店舗展開のメリット(規模の経済・採用・ブランド)は、利益基盤と仕組みが整っていて初めて機能する
- 「売上を増やしたい」という動機だけで動くと、消耗を2倍にするリスクが高い
- 現状の1店舗がオーナーの体力で回っているなら、拡大前に仕組み化が必須
多店舗展開のデメリット——見落としやすい3つの落とし穴
私が特に注意してほしいのは、以下の3つです。実際に支援した美容室オーナーが直面した現実をもとにお伝えします。
❌ よくあるパターン:「1号店が安定しているから大丈夫」という判断
- 1号店の安定が「オーナー常駐」によるものだと気づかないまま2号店を開ける
- 結果として両店舗の品質が下がり、リピート率が落ち始める
- 売上は増えても利益は減る「売上増・利益減」の状態に陥る
✅ 推奨アプローチ:仕組み化を先行させる
- オーナー不在でも回るマニュアル・評価制度・教育の仕組みを1号店で完成させる
- その仕組みをコピーする形で2号店を立ち上げる
- 出店後も数値管理(利益率・客単価・再来店率)を月次で把握できる体制を作る
もう一つ、見落とされがちなのが資金繰りです。内装費・保証金・採用コスト・初期在庫——2号店の開業には一般的に300万〜800万円以上の初期投資がかかります。さらに開業後6〜12ヶ月は赤字を覚悟するケースも多い。
「私自身、独立当初に貯金を使い果たし、家族から借金をした経験があります。だからこそ、投資は覚悟を持ってするものだと伝えています。ただし、準備なき拡大は投資ではなく散財です。」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/店舗利益最大化コンサルタント)
3つ目の落とし穴は、オーナーの「判断の質」が下がることです。拠点が増えると移動・管理・スタッフ対応に時間が取られ、経営上の重要な判断をする時間と思考体力が削られます。「現場からいつまでも抜けられない」という状態が、2店舗分になるだけです。
拡大の前に整えるべき「利益の土台」
では、多店舗展開を成功させるために何を準備すればいいのか。私が必ず確認する基準は3つです。
多店舗展開STEP 1
1店舗目の利益率が安定して15%以上あるか
売上ではなく利益率です。月商200万円でも利益率8%なら手元に残るのは16万円。これで2号店の借入返済と固定費を賄うのは現実的ではありません。まず1店舗の利益率を高めることが最優先です。客単価アップ・再来店率の改善・無駄なコストの見直しで、利益率を15〜20%に引き上げることは十分可能です。
⚠️ よくある失敗:「2号店を出せば売上が増えて解決する」と考えること。低利益率のまま拡大すると、赤字店舗を抱えるリスクが高まります。
多店舗展開STEP 2
オーナー不在で1号店が3ヶ月以上回るか
これは仕組み化の完成度を測る最もシンプルな指標です。スタッフが接客・予約管理・販促の基本動作をこなせるか。業務マニュアルが存在し、実際に機能しているか。もし「自分がいないと不安」という状態なら、まずここを解決します。
⚠️ よくある失敗:マニュアルを作ったつもりで実際には使われていないケース。作成後に実地でテストする必要があります。
多店舗展開STEP 3
次の店長候補が育っているか
2号店を誰が回すのか。外部採用でも既存スタッフの登用でも、「この人なら任せられる」という人材が存在しているかどうかが分岐点です。人材がいない状態で出店すると、オーナーが両店を走り回ることになります。
⚠️ よくある失敗:「出してから採用すればいい」という見通しの甘さ。採用には時間とコストがかかり、開業後に人材難で経営が立ち行かなくなるケースがあります。
「多店舗展開を目指すこと自体は素晴らしい。でも、拡大は利益の土台の上に積み上げるものです。砂の上に城を建てても、すぐに崩れます。」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/店舗利益最大化コンサルタント)
「ジョイマン先生のアドバイスで、まず1店舗の利益率を改善することに集中しました。客単価を上げる仕組みを作り、再来店の仕組みを整えたことで、手元に残るお金が変わりました。2号店はそこからの話だと気づいた時、視界がクリアになりました。」
40代・男性 美容室オーナー
まとめ——「拡大」より「深化」が先
美容室の多店舗展開には、正しい順序で臨めば大きな可能性があります。ただし、利益基盤・仕組み化・人材育成という3つの土台なしに踏み出すと、消耗と資金難に追い込まれるリスクが高くなります。
私・ハワードジョイマンが21年・833件以上の支援実績の中で繰り返し見てきたのは、「売上を増やす前に利益の構造を変えた店舗が、結果として安定した拡大を実現している」という事実です。
まずは今の1店舗で、客単価・再来店率・利益率を丁寧に高めること。それが遠回りに見えて、多店舗展開への最も確実な道です。
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