10月も終わりに近づき、朝晩の冷え込みが一段と増してきた。この時季、飲食店オーナーの多くが「年末商戦に向けて体制を整えなきゃ」と焦り始める時期でもある。
ところが、現場ではこんな声をよく耳にする。
「うちのスタッフ、いつまで経っても指示待ちなんですよ。自分がいないと何も動かない」
これ、スタッフの問題だと思っているオーナーが多い。でも実際のところ、原因のほとんどはスタッフじゃなくて「任せる仕組みと基準がない」こと、そしてオーナーが全部やり続けていることにある。
今日は僕、ハワードジョイマンの一日の流れを追いながら、飲食店でスタッフに自主的に動いてもらうための具体的な考え方と手順を共有したい。
📋 この記事でわかること
- スタッフが指示待ちになる本当の原因と、オーナー側の盲点
- 「任せる仕組み」を一日の流れの中でどう設計するか
- 権限を渡して自主性を育てるための具体的な基準のつくり方
- 仕組みが回り出したあとにオーナーが使うべき時間の向け先
こんな方におすすめ
- ✅ スタッフが育たず、自分が現場を離れられないと感じている飲食店オーナー
- ✅ 「任せたいのに任せられない」「結局自分でやった方が早い」が口癖になっている方
- ✅ 繁忙期前に人の動かし方を根本から見直したい方
- ✅ スタッフ教育に時間を使っているのに成果が出ていないと感じている方
- ✅ オーナー不在でも店が回る仕組みをつくりたい方

朝のルーティンが、その日の「任せる量」を決める
僕の一日は、朝の静かな時間から始まる。静岡市清水区のオフィスに着くのは、営業開始の10時より少し前。まず手をつけるのは、「その日誰に何を渡すか」の確認だ。
これを「仕事の段取り」と思っている人が多いが、僕はそう捉えていない。これは「今日の権限委譲の設計」だ。
飲食店のオーナーに朝の行動を聞いてみると、圧倒的多数が「とりあえず仕込みをしながら、気になったことをスタッフに都度指示している」と言う。これでは、スタッフは「次に何をするか」を自分で考える必要がない。オーナーが言うのを待てばいいから。
自主性を育てたいなら、朝の段階で「今日この人にはこの判断を任せる」という設計を、自分の頭の中で完成させておく必要がある。ふわっと「任せた」では動けない。「この作業は、こういう基準で進めていい」という枠組みを渡すことで初めて、スタッフは自分の判断で動き始める。
「任せたいのに任せられない」が続いているオーナーに共通しているのは、「基準を渡す」という設計がまだ頭の中にしかないことだ。無料登録で読める134ページの実践者訪問インタビューには、実際に仕組みを整えて月商が安定した飲食店オーナーが「何をどう変えたか」が具体的に書かれている。メールアドレスだけで登録でき、書籍・レポート8冊も一緒に受け取れる。
午前中のセッションで見えてくる「任せられない構造」の正体
午前中(10時〜12時)は主にオーナーさんとのコンサルティングセッションに充てる。ここで毎回のように出てくるのが、「スタッフに任せたけど、やっぱりうまくいかなかった」という話だ。
話を掘り下げていくと、決まってこういう構造が出てくる。
❌ よくある「任せた」の失敗パターン
- 「なんとなく頼んだ」→ 完成基準を伝えていないから、スタッフ自身も「これでいいのか」がわからない
- 「前もやったから分かるはず」→ 口頭で教えた記憶はあっても、スタッフ側の記憶はあいまい
- 「途中で確認してこない」→ 確認のタイミングを設定していないから、問題が大きくなってから発覚する
✅ 自主性が育つ「渡し方」の構造
- 「この作業の完了形はどういう状態か」を具体的に言語化して渡す
- 作業をステップに分解し、どこで誰に確認していいかを明示する
- 「迷ったときの判断基準」をあらかじめ文字にしておく(これがマニュアルの核になる)
要するに、スタッフが指示待ちになるのはスタッフのせいじゃなくて、「動ける基準」が整っていないオーナー側の構造問題だ。
「自分でやった方が早い」が口癖になっているオーナーは要注意。それを続けている限り、スタッフは永遠に育たない。早く終わる代わりに、社長はずっと現場に縛り付けられる。
「任せられない、というのは能力の問題じゃないんですよ。仕組みの設計をサボってきた結果です。スタッフを育てたいなら、まず自分の頭の中にある"当たり前"を言語化して渡す作業から始めてください」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所主宰)
実際、僕自身もかつてはこの罠にはまっていた。「自分がやればいい」と突き進んで破産まで追い込まれた経験がある。全部一人で抱え込む経営の末路を、身をもって知っているからこそ、この話は強く言える。
✓ ここまでのポイント
- スタッフが指示待ちになる原因は、「動ける基準」が設計されていないオーナー側にある
- 「任せた」が機能するには、完了形の定義・判断基準・確認タイミングの3点が必要
- 「自分でやった方が早い」という習慣こそが、スタッフの成長を止めている
作業を工程に分解して渡す、という話をしたが「具体的にどう分解すればいいか分からない」という声は多い。動画講座「行動収益化法」では、1週間の行動を分析して利益に直結しない作業を特定し、なくす・任せる・集約するという6つの選択肢で整理する手順を全8本の動画で解説している。視聴期限はなく、スマホからでも繰り返し見られる。
昼休みを挟んだ午後のセッション、ここで「仕組みの設計図」を描く
昼休みを挟んで午後(13時〜15時)は、より実践的な設計作業に入る。クライアントのオーナーと一緒にやるのは、「一日の業務を工程に分解する作業」だ。
具体的にはこんな流れで進める。
仕組み設計 STEP 1
一日の全作業を書き出す
「何時に何をやっているか」を朝の開店準備から閉店後の清掃・締め作業まで、思いつく限り紙に出してもらう。最初はざっくりでいい。「仕込み」「接客」「発注」「日報」といった大きなまとまりでOK。
⚠️ よくある失敗:「うちはその日によって違うから」と書くことを諦めてしまう。違う日があっても、まず「基本の流れ」を作ることが先決。
仕組み設計 STEP 2
作業を「誰でもできる」単位に分解する
書き出した作業を「これを初めて見た人でも動けるか?」という目線で細かく砕いていく。「仕込み」なら「○○を△gカットする→○○を□分茹でる」という具合に。分解の粒度が細かいほど、スタッフが迷わず動ける。
⚠️ よくある失敗:「普通わかるでしょ」と分解をやめてしまう。その「普通」こそがスタッフとのズレを生んでいる。
仕組み設計 STEP 3
各工程に「判断基準」を書き添える
分解した作業に「この状態になっていればOK」「こうなった場合はオーナーに確認」という基準を一言添える。これがあることで、スタッフは都度聞かなくても自分で判断できるようになる。
⚠️ よくある失敗:最初から完璧なマニュアルを作ろうとして、途中で止まる。まず50点のものを作って現場で使いながら育てていけばいい。
この3ステップを踏むだけで、「任せる」の質が劇的に変わる。詳しい実践の進め方については、飲食店マニュアルの作り方と、新人スタッフが動ける仕組みの整え方でも解説しているのであわせて読んでみてほしい。
実際に仕組みを回し始めた60代オーナーの変化
ここで、実際にこのアプローチを試した一人のオーナーの話を紹介したい。
「月商が15%増で安定しました。仕入れを集約したことで週3時間が削減できて、ずっと感じていた焦りが前向きな計画に変わりました」
中華料理店オーナー(男性・60代)
この方が最初に相談に来たとき、すべての判断を自分でやっていた。発注も、仕込みの段取りも、スタッフへの指示も。「自分が一番分かっているから」という理由で、60代になっても休みなく現場に立ち続けていた。
取り組んだのは難しいことじゃない。まず「仕入れの判断基準」を文字に起こし、スタッフに渡した。「この食材は○○円以下なら多めに仕入れていい」「発注は毎週月曜の朝にこの方法でやる」というように、具体的な数字と手順で渡した。
すると、発注という作業がスタッフに移り、そこで週3時間が生まれた。その時間を使って月次の売上を分析し、メニュー構成を見直す時間が取れた。結果として月商が安定的に伸び始めた。
「焦りが前向きな計画に変わった」という言葉が印象的だった。仕組みができると、視野が広がる。目の前の作業に追われている状態から、少し先を見て動ける状態に変わる。
スタッフが育たないことへの焦りも、同じ構造で解消できる。自分の頭の中にある「基準」を外に出して渡す。それだけで、スタッフの動き方は変わっていく。
詳しい事例やスタッフ育成の考え方については、飲食店のスタッフが育たないときに見直したい教育の仕組みと流れも参考になるはずだ。
営業時間が終わった後、社長の時間の使い方が店の未来を決める
僕のオフィスの営業時間は15時で終わる。その後の時間は、コンテンツ制作や会員コミュニティ「増益繁盛クラブ」のメンバーへのメッセージ発信に充てることが多い。
ここで伝えたいのは、「社長の時間」の話だ。
仕組みができてスタッフが動けるようになると、オーナーの手が空く時間が生まれる。問題は、その時間をどこに使うか。
多くのオーナーは、手が空いても「じゃあもう一品考えよう」「SNSを更新しよう」と、また作業に戻る。それはもったいない。
捻出した時間の正しい使い方は、「儲かるアイデアと儲かる仕組みをつくること」だ。これが社長の本来の仕事。メニューの原価と価格の見直しでもいい、リピーターへの案内の仕組みを考えることでもいい。現場の作業から頭を切り離して、経営の視点から店を見る時間をつくることが大切だ。
スタッフに作業を渡すのは、オーナーが楽をするためじゃない。オーナーがもっと本質的な仕事をするための時間を生み出すためだ。
「時間が捻出できた社長が、最初にやるべきことは休むことじゃなくて、経営の設計をすることです。現場仕事から頭を上げて、3年後の店をどうするかを考える。その時間こそが、店の未来をつくります」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所主宰)
「スタッフが育たない」「任せられない」という問題は、突き詰めると「オーナーが経営者の仕事をする時間をつくれていない」という問題と表裏一体だ。
任せる仕組みを作ることで時間が生まれ、その時間で経営を設計することで店は成長する。この循環を回すことができれば、年末の繁盛期も「大人気」な状態で迎えられる。
飲食店でスタッフが指示待ちになる職場と動ける職場の違いについても整理しているので、現状の職場環境と照らし合わせてみてほしい。
まとめ|「任せ方」を変えるのは、一日の中の小さな設計から
朝、その日誰に何を渡すかを設計する。午前、「完了形の基準」と「判断基準」を添えて渡す。午後、作業を工程に分解して言語化する。そして夕方以降、捻出した時間で経営の設計をする。
こうした一日の流れの中で、少しずつ「任せる構造」が出来上がっていく。
スタッフを変えようとする前に、仕組みを変える。オーナーの頭の中にある「当たり前」を外に出して、誰でも動けるかたちにする。それだけで、今のスタッフが見違えるように動き始めることは珍しくない。
「原因は100%自分」という言葉を、ここでも使いたい。スタッフが育たないのはスタッフの問題ではなく、育てる基準と渡す仕組みを整えてこなかった自分の問題だ。そこに気づいた瞬間から、変化は始まる。
経営歴21年、全国500名以上の飲食店・美容室オーナーと一緒に取り組んできた中で、この「仕組みを先に作る」アプローチで変わった店は本当に多い。あなたの店でも、今日の一日の中の小さな設計から始めてみてほしい。
今日の記事で「任せる仕組みと基準がなかった」と気づいたなら、次のステップは自分の行動を分解して設計し直すことだ。動画講座「行動収益化法」では、マニュアル化と委譲の手順に加えて、捻出した時間を売上につなげる逆算の設計まで、飲食店・美容室オーナーの実例をもとに体系的に学べる。一括払いのほか分割払いも選べ、申し込み後すぐに全動画を視聴できる。