「2店舗目を出したいけど、どれだけ売れれば赤字にならないんだろう?」と、物件を見に行った帰り道に不安になったことはありませんか?
独立してから10年近く、1店舗目をコツコツ育ててきた。ようやく安定してきた、次のステップへ――そう思ったとき、多くの美容室オーナーが最初につまずくのが「数字の根拠」です。感覚で「いけそう」と思っていても、いざ融資の話になると数字が出てこない。あるいは出店してから初めて「こんなに固定費がかかるとは思わなかった」と気づく。
2店舗目の開業に失敗するほとんどのケースは、損益分岐点を開業前にきちんと把握できていないことに原因があります。今回は、美容室の2店舗目出店を検討している方に向けて、損益分岐点の計算方法と、開業前に絶対に押さえておくべき数字の考え方をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 損益分岐点とは何か、美容室における基本的な計算の構造
- 2店舗目特有の固定費・変動費の洗い出し方
- 開業前に確認しておくべき「生存ライン」の数字の出し方
- 実際に2店舗目を成功させた美容室の事例と、再現性のあるポイント
こんな方におすすめ
- ✅ 2店舗目・3店舗目の出店を検討している美容室オーナーの方
- ✅ 「売上は上がっているのに利益が残らない」と感じている方
- ✅ 損益分岐点の計算を自力でやったことがない方
- ✅ 出店後に「こんなはずじゃなかった」という後悔をしたくない方
- ✅ 融資や事業計画書の作成に備えたい方

損益分岐点とは何か――美容室で考える基本の構造
損益分岐点とは、簡単に言うと「赤字にも黒字にもならない売上の水準」のことです。この金額を下回れば赤字、上回れば黒字になる。その境界線の数字です。
計算式は次のとおりです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
この式に出てくる「固定費」と「変動費」を美容室に置き換えて考えてみましょう。
固定費(売上に関わらず毎月かかるコスト)
- 家賃・共益費
- スタッフの固定給・社会保険料
- リース代(機器・POSレジなど)
- 通信費・光熱費の基本料金部分
- 借入金の返済(開業資金の融資分)
- オーナー自身の役員報酬
変動費(売上に連動して変わるコスト)
- 材料費(カラー剤・パーマ液・トリートメント剤など)
- 歩合給・インセンティブ
- クレジットカード手数料
- 消耗品費の一部
美容室の変動費率は、一般的に売上の20〜30%程度になることが多いです。つまり「1 − 変動費率」=限界利益率は70〜80%前後になります。
たとえば固定費が月80万円、変動費率が25%とすると――
損益分岐点売上 = 80万円 ÷(1 − 0.25)= 80万円 ÷ 0.75 = 約107万円
この店舗では、月107万円以上売れて初めて黒字になる、ということです。
「売上の話をする前に、まず固定費の総額を正確に把握してください。その数字を知らずに出店を決めることは、地図を持たずに山に登るようなものです」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/店舗利益最大化コンサルタント)
2店舗目で見落としやすい固定費――1店舗目との違いを理解する
2店舗目が1店舗目と大きく異なるのは、「オーナーが常にいない店舗を作る」という点です。これが固定費の構造を根本から変えます。
1店舗目はオーナー自身が現場に立ち、その分の人件費を抑えられていたケースがほとんどです。しかし2店舗目は、オーナーが常駐できない以上、店長またはそれに代わるスタッフに固定給を払い続ける必要があります。
以下の項目は、2店舗目の計画時に特に抜け落ちやすいコストです。
チェックポイント1:店長または責任者スタッフの人件費
オーナー不在の店舗を運営するためには、信頼できる人材が必要です。その人件費は「出店してから考える」では遅い。優秀なスタッフを先に確保しようとすると、売上が立つ前から月20〜30万円以上の固定コストが生じることがあります。
✅ ポイント:「誰が店を回すのか」を先に決め、その人件費を損益分岐点の計算に必ず含める。人がいない出店計画は絵に描いた餅。
チェックポイント2:内装工事費・設備投資の返済コスト
開業コストは借入れで賄うケースが多いですが、その月々の返済額(元本+利息)を固定費に算入し忘れる方が少なくありません。返済額を含めた上で損益分岐点を再計算してください。
✅ ポイント:事業計画書上の「利益」と「手元に残るキャッシュ」は別物。元本返済はキャッシュを減らすが費用計上されないため、帳簿上は黒字でもお金が足りない状況が起きやすい。
チェックポイント3:1店舗目のオーナー不在による売上減
2店舗目に移動する時間が増えると、1店舗目での施術時間が減ります。オーナーが指名を多く持っている場合、この「機会損失」は月数十万円規模になることも。2店舗目の採算だけでなく、グループ全体の収支で考える視点が必要です。
✅ ポイント:1店舗目の月商が下がる可能性をシミュレーションに織り込む。「2店舗目の売上が増えても、1店舗目が落ちたらトントン」というケースが実際に起きている。
✓ ここまでのポイント
- 損益分岐点は「固定費 ÷ 限界利益率」で算出できる。美容室の限界利益率は概ね70〜80%。
- 2店舗目では、店長人件費・融資返済・1店舗目の売上減という3つの見落としやすいコストが存在する。
- 「売上が上がれば解決する」ではなく、先に固定費の総額を把握することが正しい順序。
成功事例で見る――2店舗目を黒字化した美容室が実践したこと
ここからは、実際に2店舗目の出店を成功させた美容室の事例をもとに、再現性のある考え方をお伝えします。(個人・店舗が特定されないよう情報は一部変更しています)
【初期の状況】
独立10年目、スタッフ2名を抱える個人美容室のオーナー。1店舗目の月商は安定して180万円前後。「このままでは天井が見える」と2店舗目を検討。ただし、経営数字の整理はほとんどできていない状態でのご相談でした。
【課題の整理】
まず行ったのは、1店舗目の固定費・変動費の洗い出しです。「大体このくらい」と把握していた家賃や人件費を実際に積み上げると、固定費の合計は予想より15万円以上多かった。また、オーナー自身の指名売上が全体の6割以上を占めており、2店舗目に移動した場合の1店舗目への影響が無視できないことが判明しました。
【実施した施策】
2店舗目出店 STEP 1
1店舗目の「オーナー依存度」を下げる仕組みをまず整備する
2店舗目の計画と並行して、1店舗目のスタッフに指名客を少しずつ移行する施策を実施。メニューブックの改訂とPOPの設置で客単価を引き上げ、1店舗目の利益率を改善。オーナーの施術時間を減らしても売上が落ちにくい体制を6ヶ月かけて構築しました。
⚠️ よくある失敗:「出店してから同時並行でやろう」と考えること。2店舗目が始まると時間も精神的余裕もなくなり、1店舗目の立て直しは後回しになりがちです。
2店舗目出店 STEP 2
2店舗目の損益分岐点を3パターン試算する
「楽観・現実・悲観」の3シナリオで損益分岐点を試算。悲観シナリオでも赤字期間が6ヶ月以内に収まるよう、固定費の上限を設定してから物件を探しました。家賃の目安は「月商の10%以内」を基準とし、それを超える物件は候補から外しました。
⚠️ よくある失敗:「理想の物件」に引っ張られて家賃の上限を後から引き上げること。固定費は一度決まると下げるのが極めて難しい。
2店舗目出店 STEP 3
開業前から集客の仕込みをする
開店前3ヶ月からLINE公式アカウントの準備と近隣へのチラシ配布を開始。「ターゲットを絞ったラブレター型のチラシ」を使い、近隣の特定の悩みを持つお客さんに向けた内容で構成。オープン初月から損益分岐点の8割の売上を達成。3ヶ月目で黒字化を実現しました。
⚠️ よくある失敗:「オープンすれば人が来る」という楽観論。開店後に慌てて集客を考えても、固定費の支払いは初月から始まります。
【結果】
2店舗目は開業から3ヶ月で単月黒字化。1店舗目の月商は一時的に150万円台へ下がりましたが、オーナー自身の施術負担が減ったことで販促に使える時間が生まれ、6ヶ月後には1店舗目も180万円台を回復。2店舗合計での利益額は、1店舗時代を大幅に上回る結果となりました。
「お金をかけずに売上を伸ばそうとするのは愚策です。でもそれ以上に愚かなのは、数字を把握せずにお金をかけることです。投資は根拠のある数字の上に乗せてください」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/店舗利益最大化コンサルタント)
損益分岐点だけでは足りない――開業前に確認すべき「もう一つの数字」
損益分岐点の計算ができたら、もう一つ必ず確認してほしい数字があります。それは「生存ライン期間」、つまり「赤字でも耐えられる月数」です。
どんなに緻密な計画を立てても、開業直後は想定を下回る売上になることがほとんどです。そのとき、手元に何ヶ月分の運転資金があるかが生死を分けます。
一般的な目安として、開業後6ヶ月分の固定費相当額を「準備資金」として別途確保しておくことを推奨しています。この数字がないまま出店に踏み切ると、売上の回復を待たずして資金ショートに追い込まれるリスクがあります。
また、損益分岐点を達成するために必要な「1日あたりの売上目標」を逆算しておくことも大切です。
たとえば月の損益分岐点が120万円、営業日数が25日なら、1日あたり4万8千円の売上が最低ライン。客単価が8,000円なら1日6名の来客が必要。これが「現実的に達成できる数字か」を物件の立地・商圏・想定スタッフ数と照らし合わせて検証する。この作業が、出店前の最大のリスクヘッジになります。
❌ よくあるパターン(感覚頼みの出店判断)
- 「あの場所はいい立地だから売れるはず」という感覚論で決める
- 損益分岐点を計算したことがない
- 開業資金は用意したが運転資金の備えが薄い
✅ 推奨アプローチ(数字に基づく出店判断)
- 固定費・変動費を積み上げ、3シナリオで損益分岐点を試算する
- 損益分岐点から1日あたりの必要売上・必要客数を逆算する
- 6ヶ月分の運転資金を確保してから出店を決定する
「出店後に売上目標を達成できた美容室と、撤退を余儀なくされた美容室の違いは、才能でも立地でもなく、開業前の数字の準備でした」
増益繁盛クラブ 会員(40代・男性・美容室オーナー)
まとめ:2店舗目の成功は「開業前の数字の整理」で8割が決まる
2店舗目の出店を考えるとき、多くの経営者が「売れれば大丈夫」と感じています。しかしその「売れる」の定義が曖昧なまま動いてしまうと、想定外の固定費に追われ、最悪の場合1店舗目まで道連れになる。
今回お伝えした損益分岐点の計算は、決して難しいものではありません。固定費の総額を正確に把握し、変動費率を出し、計算式に当てはめるだけです。ただ、それを「やっているか、やっていないか」が、出店後の経営の安定感に大きな差をもたらします。
私・ハワードジョイマンは、静岡を拠点に21年間・833件以上の店舗経営者の支援に携わってきました。美容室だけでも150件以上の指導実績があります。2店舗目・3店舗目へのチャレンジは、正しい準備と正しい順番で進めれば、必ずしも高いリスクを取る必要はありません。
もし「自分の店舗の数字で損益分岐点を計算してみたい」「2店舗目への具体的な進め方を知りたい」という方は、まずは下記の無料レポートからご覧ください。スタイリスト1人で月商200万円を超えた実例をベースに、利益を残す経営の仕組みをまとめています。
2店舗目への挑戦を、根拠ある数字とともに進めていきましょう。一緒に考えていきます。
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