優良スタッフ採用と教育

幹部候補の見極め方。採用時・育成中に使える判断ポイントと確認方法

「スタッフに任せたのに、思っていた通りに動いてくれなかった」——美容室オーナーから、この話を聞くたびに私が思い出す出来事があります。

実は、幹部候補を任命したあとに「この人じゃなかった」と気づく経営者は、感覚的には半数を超えます。採用のときに「この子は伸びる」と直感で決めたり、「勤続年数が一番長いから」という理由で役職を与えたりする。それ自体が間違いとは言いませんが、そこに判断軸がなければ、どうしても選ぶ人を間違えやすいのです。

私、ハワードジョイマンは、静岡市清水区を拠点に21年間・833件以上の店舗経営者を支援してきました。美容室だけでも150件以上に関わっています。その中で、「幹部候補を正しく見極めること」がどれほど経営の根幹に関わるか、繰り返し実感してきました。

この記事では、採用の場面と育成の途中という2つのタイミングに分けて、幹部候補を見極めるための具体的な判断ポイントをお伝えします。

📋 この記事でわかること

  1. 幹部候補の見極めで多くの美容室オーナーが陥りやすい誤解
  2. 採用時に確認すべき「幹部の素地」を見抜く判断ポイント
  3. 育成中に使えるチェック方法と観察の視点
  4. 任せた後に起きやすい失敗と、その事前対処法

こんな方におすすめ

  • ✅ スタッフに仕事を任せたいが、誰を選べばいいかわからない方
  • ✅ 幹部候補を育てているが、このままでいいか不安な方
  • ✅ 採用面接で「この人は伸びるか」を判断する基準を持ちたい方
  • ✅ 自分が現場から抜けられず、仕組み化を進めたい方
  • ✅ スタッフ教育が属人的になってしまっていると感じている方
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「長く働いているから幹部」という思い込みが招く混乱

ある美容室オーナーの方(独立10年目、スタッフ3名)から相談を受けたときの話です。

その方は、「入社して6年目のスタッフを副店長にした。でも、他のスタッフとの関係がギクシャクして、むしろ店がまとまらなくなった」とおっしゃっていました。

話を聞いてみると、そのスタッフは技術面での実力は確かでした。でも、他のスタッフの話を聞くのが苦手で、自分のやり方を押しつける傾向があった。オーナーはそれを知りながら「長く働いてくれているから」という理由で任命してしまっていたのです。

幹部候補の見極めで最も多い誤解は、「勤続年数=信頼度=幹部の適性」という図式です。長く働いてくれていることへの感謝と、幹部としての適性は、まったく別の話です。混同してしまうと、スタッフにとっても本人にとっても、良い結果になりません。

❌ よくある誤った幹部選びのパターン

  • 勤続年数や年齢だけで判断してしまう
  • 「なんとなく頑張っている感じがする」という印象で決める
  • オーナーに対して従順であることを幹部適性と混同する
  • 技術力が高いスタッフ=マネジメントも得意、と思い込む

✅ 幹部候補を見極める本来の視点

  • 他者の言葉を受け取り、行動を変えられるか
  • 自分の仕事の「目的」を言語化できるか
  • 小さな役割を与えたときに、どう動くか
  • 問題が起きたとき、解決しようとするか・人のせいにするか

採用時に使える「幹部の素地」を見抜く3つの確認ポイント

採用の面接は、通常20〜40分程度です。その短い時間の中で、「この人は将来、幹部になれる素地があるか」を見抜くのは簡単ではありません。でも、確認すべきポイントを絞れば、精度はぐっと上がります。

チェックポイント1:過去の失敗談と、そこからの行動

「これまでで一番失敗したことと、そのあとどうしましたか?」という質問をしてみてください。幹部になれる人は、失敗の内容より「そのあと自分がどう動いたか」を具体的に話せます。言い訳や環境のせいにする答えが多い場合は、注意が必要です。

✅ ポイント:失敗談の「内容」ではなく、その後の「行動」に着目する。行動の話が薄い場合は、他責傾向がある可能性を念頭に置いて。

チェックポイント2:「なぜこの仕事をしているか」を聞いたときの答え

「美容師を続けている理由を教えてください」という問いに対して、「お客さんが喜んでくれるから」だけで終わる人と、「お客さんが変わる瞬間が好きで、そのためにこういう勉強もしています」と話が続く人では、成長角度が違います。自分の仕事に対して言語化できる人は、スタッフにも伝えられる人です。

✅ ポイント:答えの深さと、言葉の後ろに「行動」があるかどうかを確認する。

チェックポイント3:「あなたが苦手なこと」への答え方

苦手なことを「ありません」と答える人より、「〇〇が苦手ですが、こうやって補っています」と話せる人の方が、自己認識の精度が高い。幹部は自分の弱みを知っていて、それを他者や仕組みで補おうとできる人です。

✅ ポイント:苦手を認めた上で「どう対処しているか」まで答えられるかを見る。

✓ ここまでのポイント

  • 幹部の見極めは「勤続年数・技術力」ではなく、「行動の質・自己認識・言語化力」で判断する
  • 採用面接では「失敗後の行動」「仕事への動機の深さ」「苦手への対処法」の3点を確認する

育成中に使える「成長の兆し」を見抜く観察の視点

採用後、実際に育てていく中でも、幹部としての適性は見えてきます。私がコンサルティングの現場でよくお伝えするのは、「小さな役割を意図的に渡して、どう動くかを観察する」という方法です。

たとえば、「来月の棚卸しをお願いしたい」「新人スタッフに〇〇の説明をしてほしい」といった小さな役割を任せてみる。そのときに何が起きるかを観察します。

「幹部に育てるのではなく、幹部になろうとしている人を見つけることが先です。その人を育てれば良い。育てようとしていない人を役職で縛っても、お互いに不幸になるだけです。」

ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント)

育成中に「幹部の素地がある」と判断できる行動パターンは、次のようなものです。

観察ポイント1:指示がなくても次の行動を考えているか

「言われたことだけをやる」スタッフと、「やり終えたあとに報告して、次に気になることを自分から聞いてくる」スタッフでは、半年後の成長が全然違います。

✅ ポイント:小さな仕事を任せたあと、どんな言葉で報告が来るかをメモしておく習慣をつける。

観察ポイント2:他のスタッフへの関わり方

幹部はオーナーの代わりに現場を動かす役割です。つまり、他のスタッフとの関係性が非常に重要になります。「自分の仕事だけをこなす」人と、「他のスタッフの様子を気にかけて声をかけられる」人では、チームを動かす力がまったく違います。

✅ ポイント:技術練習や朝礼の様子など、仕事の「周辺」での行動を観察する。

観察ポイント3:フィードバックを受けたあとの行動

「この前お伝えしたこと、試してみましたか?」という問いに対して、「試しました、こうなりました」と返ってくる人は伸びます。「忙しくて…」「やろうとは思ったんですが…」が続く場合は、継続実践の習慣がまだ身についていません。

✅ ポイント:フィードバックから次の面談まで、行動があったかどうかを記録しておく。

「ジョイマン先生のアドバイスで、幹部候補を決める前に『小さな役割を渡して観察する期間』を設けるようにしました。以前は雰囲気で選んでいましたが、今は根拠をもって任せられるので、私自身が現場から離れやすくなりました。」

40代・美容室オーナー(スタッフ4名)

任せたあとに起きやすい失敗と、その事前対処

幹部候補を決めたあと、よくあるのが「任せたはずなのに、結局自分が動いている」という状態です。これはなぜ起きるか。多くの場合、「役職を渡す」ことと「役割・権限・判断基準を渡す」ことが一緒にできていないのです。

❌ よくある失敗パターン

  • 「副店長ね」と告げるだけで、何をする役職かを言語化していない
  • 権限があいまいなため、幹部候補が判断を下せずオーナーにお伺いを立て続ける
  • うまくいかないと「やっぱり任せられない」とすぐに巻き取ってしまう

✅ 事前に整えておくべきこと

  • 「この役職の人が決めていいこと」「オーナーに確認が必要なこと」を書面で渡す
  • 最初の3ヶ月は週1回の短い面談を設け、困っていることを確認する
  • 失敗しても責めずに「次どうするか」を一緒に考える場をつくる

任せた直後は、誰でもぎこちない動きになります。そこで「やっぱりダメだ」と判断するのは早すぎます。ただし、3〜6ヶ月経っても改善の方向性が見えない場合は、役割そのものを見直す判断も必要です。

仕組み化は、一人の「すごいスタッフ」に頼る経営ではありません。「40点のスタッフでも店が回る仕組みを作る」という発想で設計することが、本当の意味での経営の安定につながります。

まとめ:幹部候補の見極めは、経営者自身の成長でもある

幹部候補を正しく見極めるためには、判断軸が必要です。勤続年数や印象ではなく、「行動の質・自己認識・他者への関わり方・フィードバックへの反応」という具体的な視点で観察すること。そして、任せたあとに役割・権限・判断基準をセットで渡すこと。

これらは、実は経営者自身が「社長の仕事」を整理することと表裏一体です。何を任せ、何を自分が担うか。それを言語化できていない経営者が、スタッフに「あとはよろしく」と言っても、うまくいくはずがないのです。

私がこれまで21年間・833件以上の店舗を支援してきた中で、仕組み化と幹部育成がうまくいったオーナーに共通しているのは、「自分がまず経営者として何をするべきかを整理した人」でした。

幹部を育てたいなら、まず自分が「どんな店をつくりたいか」を言葉にすることから始めてみてください。その言葉に共鳴して動けるスタッフが、あなたの幹部候補です。

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