美容室の2店舗目出店を検討したオーナーのうち、実際に黒字化できているのは3年後時点で半数以下というデータがあります。出店そのものは成功しても、経営が安定しないケースが多い。その最大の分岐点のひとつが「物件選びの段階」にあります。
こんにちは、ハワードジョイマンです。静岡県静岡市清水区を拠点に、美容室・飲食店など小規模店舗の利益最大化を専門とするコンサルタントをしています。中小企業診断士として21年、833件以上の店舗支援に携わってきた中で、「居抜き物件で失敗した」という相談を何度受けてきたことか。
今日は私の一日に密着する形で、2店舗目の物件探しから内見当日の動き方まで、現場感覚でお伝えしていきます。
📋 この記事でわかること
- 居抜き物件を探す際の正しい情報収集ルートと優先順位
- 内見前に用意しておくべき確認リストの全体像
- 現地で必ずチェックすべき「見落としがちなポイント」
- 物件契約前に経営数値から逆算する判断軸の作り方
こんな方におすすめ
- ✅ 2店舗目・3店舗目の出店を具体的に検討している美容室オーナーの方
- ✅ 居抜き物件の探し方がわからず、とりあえず不動産屋任せになっている方
- ✅ 内見に行ったが何を確認すればいいか整理できていない方
- ✅ 出店後に「こんなはずじゃなかった」と後悔したくない方
- ✅ 利益から逆算した出店判断の基準を持ちたい方

朝7時・机の前で始まる「物件情報の仕分け作業」
私の朝は早い。トライアスロンやキックボクシングで体を動かす習慣があるので、身体が起きるのが自然と早くなりました。7時ごろには机に向かい、その日のアポイントや確認事項を整理するのが日課です。
今日は午前中に、ある美容室オーナーのKさんと物件内見に同行する予定が入っています。Kさんは1店舗を安定軌道に乗せ、いよいよ2店舗目の出店を考え始めた段階。「居抜き物件がいくつかリストアップされたので、一緒に見てほしい」というご依頼でした。
内見当日の前に私がKさんに伝えていたのは、「物件を探すルートは不動産ポータルサイトだけに頼らないこと」という点です。
居抜き物件には「表に出る前に決まる」案件が少なくありません。閉店した美容室や飲食店の造作が、知人ネットワークや地元の内装業者・設備業者を通じて非公開で流通しているケースが多いのです。
だからこそ、物件情報の収集ルートをこう整理しておくといい。
チェックポイント1:物件情報の収集ルートを複数持っているか
ポータルサイト(SUUMO・アットホーム・居抜き専門サイト)だけでなく、①地元の美容ディーラー担当者、②内装・設備業者のネットワーク、③同業者コミュニティ、④地元の不動産業者への直接アプローチ、この4ルートを並行して動かすことが大切です。
✅ ポイント:「待ちの情報収集」をやめ、「攻めの情報収集」に切り替える。ディーラー担当者は閉店情報をいち早く知っていることが多く、「2店舗目を探しています」と一言伝えておくだけで有益な情報が入ってきやすくなります。
チェックポイント2:居抜き物件に「何が含まれるか」を事前確認しているか
「居抜き」と一口に言っても、シャンプー台・セット面・給排水設備が残っているケースもあれば、スケルトンに近い状態で「居抜き扱い」になっていることもあります。造作譲渡契約の内容をリスト化して確認しないと、想定外の改装費が発生します。
✅ ポイント:内見前に「造作リスト(設備・内装の残置物一覧)」を書面で取り寄せる。口頭確認だけでは後でトラブルになります。
午前10時・内見当日に私が最初に確認すること
Kさんと物件の前で合流。今日見る物件は3件。最初の物件はシャンプー台2台・セット面4席が残っている居抜き物件です。
内見で私が最初に確認するのは、外観・立地の「流れ」です。店内の設備より先に、建物の外を一周します。
「周辺の人通りはどの時間帯に多いか」「駐車スペースは台数と動線が使いやすいか」「競合店との距離と業態」——これを肌で確認しないと、内装がいくら良くても判断が狂います。
Kさんに「この場所、何時ごろに来てみましたか?」と聞くと、「今日が初めてです」という答えが返ってきました。よくある話です。内見は複数の時間帯(朝・昼・夕方)に来ることが理想です。平日の昼間と土曜日では人通りが全く違う立地もあります。
店内に入ってから確認するポイントは以下のとおりです。
チェックポイント3:給排水・電気容量・換気設備の状態
シャンプー台の配管の状態、電気容量(美容室はドライヤーや設備で消費が大きい)、換気設備の現状を必ず確認します。「使えそう」という印象ではなく、専門業者(設備屋・電気工事業者)に同行してもらうか、後日確認の機会を設けることが重要です。
✅ ポイント:設備の「現状確認費用」は惜しまない。ここで数万円をケチると、入居後に数十万円の修繕費が発生するリスクがあります。
チェックポイント4:天井・壁・床の「見えない部分」に目を向けているか
内装の仕上がりではなく、天井裏の状態・壁のシミや染み・床の軋みを確認します。水回りの近くの壁は特に注意。前テナントの退去理由が「水漏れ」「カビ」だったケースでは、原状回復されていないまま次に貸し出されることがあります。
✅ ポイント:「なぜ前の店が退去したのか」を不動産業者に正直に聞く。答えを曖昧にする場合は注意信号です。
✓ ここまでのポイント
- 居抜き物件の情報は4つのルートを並行して収集する(ポータルサイト任せにしない)
- 内見前に造作リストを書面で取り寄せ、「何が含まれるか」を明確にする
- 内見当日は外観・立地の「人の流れ」を先に確認し、複数時間帯での来訪が理想
午後・数字に落とし込む「物件の合否判断」
3件の内見を終えてKさんとカフェに入り、数字を整理します。物件選びで見落とされがちなのが、「気に入ったかどうか」で判断してしまうことです。感覚的な好みより先に、経営数値で合否を判断する必要があります。
「物件に恋をしてはいけない。あくまで投資対象として数字で見る。それができる経営者が2店舗目を黒字にできる。」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント/中小企業診断士)
私がKさんと一緒に確認したのは、以下のシンプルな計算式です。
月の固定費(家賃+人件費+光熱費)÷ 営業日数 ÷ 1日の稼働可能客数 = 損益分岐点の客単価
この数字が現実的かどうか。「頑張れば達成できる」ではなく、「通常営業で達成できるか」という基準で見ます。
今日見た3件のうち、1件は家賃が相場より2割高く設定されていました。居抜きで設備が残っているため魅力的に見えましたが、固定費を乗せると損益分岐点の客単価が現在の1店舗目の単価を大きく上回ってしまう。これでは出店する意味が薄れます。
❌ よくあるパターン:「設備が残っているから初期費用が安い=お得な物件」と判断する
- 造作の状態が古く、結局改装が必要になるケースがある
- 家賃が相場より高く設定されており、造作譲渡費用を含めると割高になることも
- 固定費を乗せた損益分岐点の検証をしないまま契約してしまう
✅ 推奨アプローチ:初期費用の安さより「月次固定費と損益分岐点」で判断する
- 家賃交渉の余地を確認する(居抜き物件は交渉の余地があることが多い)
- 造作リストと設備の現状確認を専門業者に依頼し、実質的な改装費を把握する
- 月次の損益シミュレーションを3パターン(楽観・中立・悲観)で作成する
「焦って動いたとき、ろくな判断はできない。2店舗目の出店は、1店舗目が利益を安定的に出せている状態で動くのが鉄則です。利益のない状態で店舗を増やしても、赤字が増えるだけ。」
ハワードジョイマン(店舗利益最大化コンサルタント/中小企業診断士)
内見後・夕方の「交渉と確認プロセス」
気になる物件が絞れたら、内見後の動きが重要です。「検討します」で終わらせず、以下のステップで進めます。
物件交渉 STEP 1
家賃・造作費の交渉タイミングと材料を準備する
居抜き物件では「家賃」と「造作譲渡費用」の両方が交渉対象になります。前テナントの退去から時間が経っている物件ほど、オーナー側に早期成約のニーズがあるため、交渉の余地が生まれやすい。「他にも複数物件を検討している」という事実をきちんと伝えることも、誠実な交渉の材料になります。
⚠️ よくある失敗:「この物件に決めたい」という意欲を先に見せてしまい、交渉力を失う。気持ちは内に秘め、あくまで比較検討中のスタンスで臨む。
物件交渉 STEP 2
契約前に「設備保証」の範囲を書面で確認する
引き渡し後に設備の不具合が発覚した場合、誰が修繕費を負担するかを契約書に明記してもらう。口頭での「現状渡し」という説明だけでは、後のトラブルの原因になります。特に給排水系・電気設備は入居後すぐに問題が表面化することがあります。
⚠️ よくある失敗:「現状渡し」の意味を確認せず、入居後の修繕費用がすべて自己負担になるケース。「現状確認書」を作成し双方署名するよう求める。
物件交渉 STEP 3
出店後6ヶ月の収支計画を事業計画書として作成する
感覚ではなく、数字で「この物件で生き残れるか」を検証する最終ステップ。月次の売上目標・固定費・変動費・利益の見通しを6ヶ月分作成し、最悪シナリオでも耐えられる資金余力があるかを確認します。
⚠️ よくある失敗:楽観シナリオだけで計画を立て、集客が想定より遅れた際に資金が尽きる。悲観シナリオでも3ヶ月は運転資金が持つ状態で出店すること。
まとめ:2店舗目出店を成功に導く物件選びの本質
今日Kさんと一緒に動いた一日を通じて改めて感じたのは、「物件選びは経営判断そのもの」だということです。居抜きかどうかという話の前に、その物件で利益が出せる経営設計ができているかどうかが先にあります。
支援実績833件以上、美容室だけで150件以上のコンサルティングを積み重ねてきた経験から言えば、2店舗目で失敗するオーナーの多くは「物件のポテンシャル」に期待しすぎている。場所が良ければ売れる、という発想です。でも実際には、物件を選んだ後に何をするかの経営力が9割を決めます。
「売上よりも利益。出店数よりも1店舗あたりの収益力。この順番を間違えないことが、長く続けられる美容室経営の土台です。」
ハワードジョイマン(繁盛店グループ総代表/中小企業診断士)
2店舗目の出店を考えている方は、ぜひ今の1店舗目の利益率と客単価を改めて確認してみてください。そこが安定していれば、物件選びの判断軸も自然と定まってきます。
「どこから手をつければいいかわからない」「1店舗目の経営をもっと安定させたうえで2店舗目に進みたい」という方は、まず以下の無料レポートからご覧ください。スタイリスト1人でも月商100万円を超えていく経営の仕組みについて、具体的にお伝えしています。
また、日々の集客や販促について気軽に情報を受け取りたい方は、LINE公式アカウントもご活用ください。実践的な情報をお届けしています。
静岡市清水区から全国の美容室オーナーの皆さんに向けて、引き続き現場で使える情報をお伝えしていきます。一緒に、利益が残る繁盛店をつくっていきましょう。