「今日もやりたいことの半分もできなかった」——そんな夜を、何度繰り返しているでしょうか。
仕込み、仕入れ対応、スタッフへの指示、SNSの更新、クレーム処理、請求書の確認……気づけば閉店時間を過ぎていて、「本当にやらなきゃいけないこと」には一秒も手をつけられていない。そんな日々が続いていませんか?
面白いことに、私が21年間支援してきた経営者の中で「忙しすぎる」と嘆いているオーナーほど、売上が伸び悩んでいるという傾向があります。逆に、心にも時間にも余裕がある経営者ほど、気持ちよく業績を伸ばしているんです。これは偶然じゃない。今日はその「なぜ」を、一人のカフェオーナーのストーリーを交えながら話してみます。
📋 この記事でわかること
- 「時間がない」を生み出している本当の原因
- 心と時間に余裕がある経営者が実践していること
- 1週間の行動を書き出して「やめる」から始める具体的な手順
- 余裕が生まれると経営にどんな変化が起きるか
こんな方におすすめ
- ✅ 毎日忙しく動いているのに、売上も手元のお金も増えていない方
- ✅ 「考える時間がない」が口癖になっている飲食店・美容室オーナー
- ✅ やることリストが増える一方で、消化できずに自己嫌悪に陥っている方
- ✅ 余裕を持って経営に向き合いたいが、どこから手をつければいいか分からない方
- ✅ 学んでも実践に移せず、現状が変わらないことに焦りを感じている方

「忙しさ」は実績でもなんでもない、という話
以前、静岡でセミナーをした際に、こんな発言をした経営者がいました。
「ジョイマンさん、私、毎日10時間以上働いてるんですよ。それでも全然追いつかなくて……」
その言葉を聞いたとき、私が最初に思ったのは「10時間、何をやっているんだろう」ということでした。決して批判ではなく、純粋に。
これは多くのオーナーに共通する落とし穴なんですが、「忙しく働いている」ことと「成果に直結する仕事をしている」は、まったく別の話です。
たとえば、毎朝自分でSNSに投稿する。仕入れ先に直接電話して値交渉する。スタッフのシフトを1枚1枚手書きで管理する。これらは全部「やっている感」があるけれど、本当に売上を動かしているかというと疑問です。
もっと恐ろしいのが、「時間がないから考える余裕がない」「考えないから何も変わらない」「何も変わらないからまた忙しい」という悪循環です。経営者がこの渦に入り込むと、もう自力では抜け出しにくくなる。
「原因は100%自分にある。忙しいと感じているなら、その忙しさを作り出しているのも自分です。だからこそ、自分で変えられる。」
ハワードジョイマン(繁盛店研究所 主宰・中小企業診断士)
あるカフェオーナーが気づいた「やめる」の威力
30代のカフェオーナー(女性)のことを話させてください。
彼女は丁寧なコーヒーと手作りスイーツにこだわった素敵なカフェを営んでいましたが、開業から数年が経っても売上は横ばい。毎日朝から仕込みをして、接客して、SNSを更新して、経理をして……気づけば夜の10時。「何かを変えなきゃ」とは思っているけれど、考える時間がない。そんな日々が続いていました。
「正直、安売りかポイントカードくらいしか集客の手段を知らなかった」と当時を振り返っていました。
彼女が最初に取り組んだのは、難しいテクニックではありませんでした。「1週間、自分が何をしているかをすべて書き出す」というシンプルな作業です。15分刻みで、起きてから寝るまでの行動を全部メモする。
書き出してみて、彼女は愕然としました。売上に直結しない作業——たとえば、毎朝自分でやっていたコーヒー豆の計量、スタッフでもできる備品補充の確認、慣例でやり続けていた紙の在庫管理——これらが1週間で合計12時間以上を占めていたんです。
そこから彼女は「やめる」と「任せる」を一つひとつ判断していきました。自分がやらなくていい作業を切り出し、仕込みを分業できる体制を整えた。すると、面白いほど時間が生まれてきた。
その空いた時間で考えたのが、物販とサブスクリプションの導入でした。店内で飲んでいるコーヒーをご自宅でも楽しめるよう豆の販売を始め、月額で焼き菓子が届く定期便をスタートさせた。
「安売り以外の道があるって、初めてわかった気がしました。考える時間ができて初めて、新しいアイデアが浮かぶようになったんです。」
カフェオーナー(30代・女性)
結果として、物販・サブスク導入で月商が20%増。仕込みの分業で作業時間も短縮され、精神的な余裕も生まれた。以前は「安売りしないと客が来ない」と思っていたのに、今では自分の価値に自信を持って提案できるようになったと言っています。
✓ ここまでのポイント
- 「忙しい」=「頑張っている」は錯覚。成果に直結しない作業が時間を奪っている
- まず1週間の行動をすべて書き出し、売上に直結しない行動を「やめる」ことで時間が生まれる
- 余裕があるから新しいアイデアが浮かび、行動に移せる——この順番が大切
「やめる」を決める3ステップ
では、具体的にどう動けばいいか。私がよく使う流れをお伝えします。
時間の棚卸し STEP 1
1週間の行動をすべて書き出す
スマホのメモでも手帳でも構いません。起きてから寝るまでの行動を、15〜30分単位で記録します。「当たり前にやっていること」ほど書き漏らしやすいので注意。ルーティンこそ全部書く。
⚠️ よくある失敗:「だいたいこんな感じ」で頭の中で整理しようとするケース。必ず「紙に書く」か「画面に打つ」こと。可視化しないと、自分の行動の全貌は見えません。
仕分け STEP 2
「目標に直結する行動」と「そうでない行動」を色分けする
書き出した行動の一つひとつに問いかけます。「これは3ヶ月後の売上に直接つながっているか?」と。直結していないものは、止める・任せる・外注するの3択で判断します。
⚠️ よくある失敗:「これも大事、あれも大事」と全部を同じ重さで見てしまうこと。大事じゃない仕事など存在しない、という感覚が「やめる決断」を阻みます。社長の仕事は、儲かるアイデアと仕組みをつくること。それ以外は原則、手放す方向で考えてください。
実行 STEP 3
捻出した時間を「考える時間」として死守する
時間が生まれても、すぐに別の作業で埋まります。だから意図的に「この時間は考えることだけをする」と決める。新しいメニューの企画、次の販促の設計、お客様への手紙——そういった「将来の売上につながること」に使う時間を、先に確保するんです。
⚠️ よくある失敗:捻出した時間を「空き時間」として認識してしまい、別の雑務で埋めてしまうこと。カレンダーに「経営の時間」と書いて予約を入れる感覚で守ってください。
余裕が生まれると、経営は面白くなる
「忙しい」という言葉、私はあまり使いません。「大人気」と言い換えるようにしています。言葉は認識をつくるので。
時間に余裕が生まれると、経営者は変わります。お客さんの声に耳を傾ける余裕が生まれる。スタッフの小さな変化に気づける。新しい提案を怖れずにできるようになる。そして何より、「このままでいいのか」という漠然とした不安が、「次はこれをやってみよう」という前向きな計画に変わっていく。
カフェの彼女も、仕組み化をする前は毎日が「こなすだけ」の連続だったと言っています。でも今は、定期的にお客さんとコーヒーの話をしながら「次はどんな豆を届けようか」を考える時間が楽しみだと。同じ仕事をしているのに、体感がまるで違うと。
これが「余裕がある経営者ほど伸びる」の実態です。余裕→思考→行動→成果→さらに余裕、という好循環が回り始めるんです。
まとめ:「忙しさ」を手放すことから、すべてが動き始める
時間がないのは、あなたが怠けているからでも、能力が足りないからでもありません。成果に直結しない作業に時間を取られている構造の問題です。だから、まず構造を変える。
今週1週間、自分の行動を書き出してみてください。それだけでいい。書き出して、「これは本当に自分がやる必要があるか?」と一つひとつ問いかけてみる。「やめる」が見つかれば、そこから時間が生まれ始めます。
考える余裕ができたとき、人は初めて「安売り以外の道」が見えてくる。価値を磨くことに集中できる。そして「価値で選ばれる経営者」に近づいていく。
今回紹介した「1週間の行動を書き出す→目標に直結しない行動をやめる→時間を経営に使う」という流れは、私の動画講座でより体系的に学べます。未来デザインマップや行動目標88シートといったワークと組み合わせることで、「何をやめるか」だけでなく「何に時間を使うと売上が伸びるか」まで設計できるようになります。
興味があればぜひのぞいてみてください。
また、継続的に経営のヒントや考え方を受け取りたい方は、こちらからどうぞ。一人で抱え込まず、まず情報に触れることから始めてみてください。