先日、複数店舗を経営されている美容室オーナー(40代・男性)の方とお話しする機会がありました。2店舗を合わせると月商は550万円を超えているのに、「毎日何かに追われていて、自分が何のために働いているのか分からなくなってきた」とおっしゃっていたんです。
売上は出ている。スタッフもいる。でも自分がいないと何も決まらない。休めない。「経営者」のはずなのに、気づけば一番の現場作業員になっている——。
この状態、他人事じゃない方も多いと思います。「時間がない」という言葉は、経営者がもっともよく使うフレーズのひとつです。でも実は、時間がないのではなく、進むべき方向が定まっていないから、全部に力を使ってしまっていることが多い。
今回はその方へのアドバイスも踏まえながら、経営者が進むべき方向を定めるための3つの視点についてお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 「時間がない」状態が起きる本当の原因と、方向性の欠如との関係
- 進むべき方向を定める3つの具体的な視点と診断チェックポイント
- 方向が定まった先に何が起きるか——仕組み化と時間捻出の実際
- 今日から動き出すための最初の一手
こんな方におすすめ
- ✅ 毎日忙しいのに、何に時間を使っているか把握できていない方
- ✅ 売上はあるのに手元の時間も利益も残らないと感じている飲食店・美容室オーナー
- ✅ 「もっと経営に集中したい」と思いながら現場から抜け出せずにいる方
- ✅ 方向性を絞れずに、あれもこれも手を出してしまっている方
- ✅ 仕組み化や委譲を考えているが、何から手をつけていいか分からない方

「時間がない」の正体は、方向性の未定義にある
多くの経営者が「時間がない」とおっしゃいます。でも私がよく聞くのは、「何に時間を使えばいいか分からない」ということと、実はセットになっているケースがほとんどです。
方向性が定まっていないと、目の前に来たことにすべて反応するしかなくなります。お客様対応、スタッフのシフト調整、クレーム処理、仕入れ交渉、SNS更新……。どれも「やらなければいけない気がする」から手をつける。でも、どれがゴールに直結しているかは考えていない。
これが、時間をいくら使っても手元に残らない状態の正体です。
「経営者が一番やってはいけないのは、忙しいことを言い訳にして、どこへ向かうかを考えない時間を続けることです。方向が見えていない船は、どの風も追い風にはなりません」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 主宰)
では、どうやって方向を定めるのか。私が経営者の方に伝えている3つの視点を順番に見ていきましょう。
「方向が定まっていないから、全部に力を使ってしまっている」——その感覚、記事を読んで心当たりがあった方も多いと思います。繁盛店ポータルでは、AIと対話しながら店のビジョン・目標・ターゲット客層を5ステップで整理できる「増益繁盛プランナー」が無料で使えます。メールアドレスだけで今すぐ無料登録できます。
視点①「自分が何者として存在したいか」を先に決める
チェックポイント①:今の自分は「経営者」か「現場の職人」か
美容師として腕を磨いてきた方、料理人として技術を積んできた方にとって、これは少し耳が痛い問いかもしれません。でも、経営者として進むべき方向を定めるには、まずここを決める必要があります。
冒頭でご紹介した複数店舗経営の方は、支援を始めた当初、2店舗の現場をほぼ一人でコントロールしようとしていました。スタッフはいる。でも「自分がやった方が早い」「自分でないと品質が保てない」という意識が抜けなかった。
✅ ポイント:「自分がいないと回らない」状態は、能力の問題ではなく役割の定義の問題です。「経営者として何に集中するか」を先に決めることで、委譲できる仕事が見えてきます。
その方は支援を経て、仕組み化で各店を任せられる体制を整え、「美容師」から「経営者」へと意識が変わった、とおっしゃっています。これは技術が落ちたわけじゃない。役割の優先順位が変わったんです。
「仕組み化で各店を任せられる体制になり、2店舗合計の月商が550万円を超えました。でも一番大きな変化は、自分が『美容師』から『経営者』へと意識が変わったことです」
複数店舗経営(40代・男性)
視点②「利益に直結しない行動」を棚卸しして手放す
チェックポイント②:今週の行動のうち、売上・利益に直結していたのは何割か
方向性を定めたら、次は「何をやめるか」を決めます。これが多くの経営者にとって一番難しいステップです。
人は「やること」を増やすのは得意ですが、「やめること」には強い抵抗を感じます。これは心理学的にも説明できる現象で、私は「形状記憶ラバー」と呼んでいます。引っ張っても元に戻ろうとする、あの感覚です。
1週間の自分の行動を書き出してみてください。そのうち、売上・利益に直結している行動は何割ありますか? 正直に棚卸しすると、多くの経営者が「半分以下だった」とおっしゃいます。
✅ ポイント:行動には6つの選択肢があります——「なくす・任せる・外注する・変える・速める・集約する」。利益に直結しない行動を特定したら、この6つの選択肢でどう処理するかを決める。これが時間捻出の核心です。
たとえば仕入れの手配を、複数の業者に個別で対応していたなら「集約する」。毎朝30分かけていたSNS投稿を、週1回の集中作業に「変える」。閉店後の売上集計をスタッフに「任せる」。こうして少しずつ、経営者自身の時間が生まれていきます。
経営で力の入れどころを見極める3つの視点でも触れていますが、何にエネルギーを集中するかを決めるためには、まず手放す行動を特定することが先決です。
✓ ここまでのポイント
- 「時間がない」の正体は、方向性の未定義と、利益に直結しない行動への過剰投入が多い
- 経営者として「何者でいるか」を先に定義することで、委譲できる仕事が見えてくる
- 1週間の行動棚卸しで、6つの選択肢を使って手放す行動を特定することが時間捻出の第一歩
利益に直結しない行動を特定して「やめる」判断をする——これが頭では分かっていても動けない理由は、どの行動が直結しているかの見極め方を知らないからです。動画講座「行動収益化法」では、1週間の行動分析で直結しない行動を特定する方法と、なくす・任せる・外注する・変える・速める・集約するという6つの選択肢を、飲食店・美容室の実例で解説しています。全8本の動画で、繰り返し視聴できます。
視点③「未来から逆算して今日を決める」という思考順序に変える
チェックポイント③:今日の行動は、3年後の自分に近づいているか
3つ目の視点は、思考の「順序」を変えることです。
多くの経営者は「今日できることを積み上げれば、いつか理想に近づく」という感覚で動いています。でも実際には、今日の積み上げは今日の延長線上にしか届きません。3年後に「月2日は必ず家族と過ごせている」「自分がいなくても店が回っている」という状態を手に入れたいなら、その完了した状態から逆算して、今日何をするかを決める必要があります。
これが「未来から今を見る」という考え方です。
✅ ポイント:理想の状態を完了形で描くことで、今やるべき行動と、やらなくていい行動の境目が明確になります。「〇〇できている」という完了形で未来を書くことが、方向性を定める最初の作業です。
伸びる経営者ほど「理想の未来」を描いているというのは、コンサルティングの現場で何度も実感してきたことです。目標を数字だけで持っている経営者より、「どんな自分でいるか」まで描いている経営者の方が、行動のブレが少ない。
比較してみると、こういう違いがあります。
❌ 今日ベースで動く(よくあるパターン)
- 目の前のタスクをこなし続けるが、ゴールとの距離が分からない
- 忙しいほど充実感はあるが、気づくと何も変わっていない
- 「いつか仕組み化しよう」が3年後もそのままになっている
✅ 未来から逆算して今日を決める(推奨アプローチ)
- 3年後の完了形から、今月・今週・今日の行動が明確に決まる
- 利益に直結しない行動を「やめる勇気」が持てる
- 経営者としての時間の使い方が変わり、仕組み化が加速する
「方向が定まった経営者」に起きる3つの変化
この3つの視点を実践した経営者に共通して起きる変化があります。
まず、何をやめるかが決まるので、時間が生まれます。これはいわゆる「効率化」とは少し違って、そもそもやる必要のなかった行動がなくなる感覚です。次に、スタッフへの委譲が具体的になります。「任せたい」という気持ちだけでは動かなかった委譲が、「これを任せる」という明確な仕事の定義が生まれることで動き始める。
そして3つ目が、経営者自身の精神的な余裕が戻ってくること。「何をやっているか分からない毎日」から、「今これをやっている意味が分かる毎日」に変わると、同じ時間数でも疲れ方がまったく違います。
経営者が心のゆとりを作る4つのポイントでも書いていますが、ゆとりは「暇になること」で生まれるんじゃなく、「やることの優先順位が定まること」で生まれます。
「方向性が定まった瞬間に、経営者は止まれるようになります。止まれるから、考えられる。考えられるから、仕組みが作れる。この順番が逆になっていると、忙しいままいくら年数を重ねても経営は変わりません」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 主宰)
まとめ:進む方向を定めることが、時間を取り戻す最短ルート
「時間がない」という状態は、忙しさの問題ではなく、方向性の問題であることがほとんどです。
今回お伝えした3つの視点をおさらいすると——
- ① 「自分が何者として存在したいか」を先に決める(経営者か職人か)
- ② 「利益に直結しない行動」を棚卸しして手放す(6つの選択肢を使う)
- ③ 「未来から逆算して今日を決める」思考順序に変える(完了形で描く)
この3つは、どれか一つだけやれば完結するものじゃありません。3つが連動して、はじめて「自分の時間を取り戻す経営」が動き始めます。
冒頭の複数店舗オーナーの方は、この流れを実践することで、2店舗合計月商550万円超えという数字だけでなく、「経営者として動ける時間」と「自分が美容師じゃなく経営者だという自覚」を手に入れました。
あなたの今の忙しさは、能力の限界じゃない。方向が定まっていないことで起きている構造の問題です。構造を変えれば、時間は必ず生まれます。
経営者の目標設定のはじめてのやり方も参考にしながら、まずは「3年後の自分」を完了形で書いてみることから始めてみてください。
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