2.目標設定と未来デザイン

目標を具体化する手順

9月に入ると、夏の忙しさがひと段落して、少しだけ「これからどうするか」を考える余裕が生まれてくる——そういうオーナーさんが多い時期です。売上の波が落ち着いたタイミングで、ふと「うちのスタッフ、楽しそうに働いてるかな」と気になる。そんな感覚、あなたにも心当たりがあるんじゃないでしょうか。

スタッフが前向きに働いてほしい。そう思わないオーナーはいません。でも、「うちの子たちがもっと誇りを持って働けるようにするには、何をすればいいんだろう」という問いの答えが見えていない方がほとんどです。

結論から言うと、スタッフが誇りを持って働ける店をつくるための最初の一歩は、オーナーが目標を具体化することです。「目標」と聞くと数字の話に聞こえますが、そうじゃない。「この店を3年後にどんな場所にしたいか」というビジョンを、スタッフが「一緒に実現したい」と思えるレベルまで言語化できているか、という話です。

今回はその具体的なステップを、海鮮居酒屋オーナーの実例を交えながら解説します。

📋 この記事でわかること

  1. なぜ「目標が曖昧なまま」だとスタッフが誇りを持てないのか
  2. スタッフが「一緒にやりたい」と思える目標の具体化ステップ
  3. 目標をスタッフと共有するときに避けるべき落とし穴
  4. 目標の具体化を経営の仕組みに組み込む方法

こんな方におすすめ

  • ✅ スタッフが受け身で、店への熱量が感じられないと悩んでいるオーナーの方
  • ✅ 「いい職場にしたい」とは思っているが、具体的に何をすればいいか分からない方
  • ✅ 目標はあるが言葉にできておらず、スタッフに伝えられていない方
  • ✅ スタッフに任せたいのに、動いてもらえずつい自分でやってしまう方
  • ✅ 人が長続きしない、育たないと感じている飲食店・美容室オーナーの方
目標を具体化する手順 | 有限会社繁盛店研究所

「スタッフのやる気がない」の本当の原因

スタッフのモチベーションが低いと感じたとき、「今どきの若い子は…」と思いたくなる気持ちはわかります。でも、ちょっと待ってください。原因は100%自分——というのが私の一貫したスタンスです。

スタッフが前向きに動けない理由のほとんどは、「この店がどこへ向かっているのか分からない」という状態にあります。目的地が見えない船に、全力で漕ぎ続けられる船員はいません。

「売上を上げたい」「お客様に喜んでほしい」——これはどの店のオーナーも口にします。でも、それが3年後にどんな光景として実現されているのか。スタッフがどんな役割を担っているのか。お客様がどんな表情で帰っていくのか。そこまで具体的に描けているオーナーは、実は多くありません。

スタッフは「給料をもらうために働く場所」ではなく、「ここで働くことに意味がある」と感じられる環境を求めています。その「意味」を与えるのが、オーナーが描く具体的な目標です。

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目標を具体化する4つのステップ

目標具体化 STEP 1

「完了形」で未来を描く

目標を立てるとき、多くのオーナーが「〜したい」「〜を目指す」という言葉を使います。でも、これだと脳が本気で動きません。「2027年9月時点で、月商550万円を達成し、スタッフが主体的にシフトを組み、定休日に自分が店にいなくても回っている」——このように、完了形で具体的な光景を書くことが出発点です。

「未来から今を見る」感覚で、3年後に実現した状態を先に言語化してしまう。これが目標具体化の最初の作業です。

⚠️ よくある失敗:「売上アップ」「集客強化」など抽象的な言葉で止まってしまい、3ヶ月後に見返したときに何を達成したのか判断できなくなる。

目標具体化 STEP 2

数字と情景の両方を書く

目標には「数字」と「情景」の2つの軸が必要です。数字だけだとスタッフには刺さらない。情景だけだと自分が動けない。

たとえば、「月商470万円を達成している(数字)。週に1日は定休日を増やし、火曜日は家族と過ごしている。スタッフがお客様に自信を持って魚の産地を説明している(情景)」——こうなると、目標が生きてきます。

実際に私が支援した海鮮居酒屋の30代オーナーは、まさにこの形で目標を書き直しました。

「月商380万から470万になり、実働を1日1時間短縮できました。定休を1日増やして家族との時間ができたことが、一番の変化です。」

海鮮居酒屋オーナー(30代・男性)

数字と情景を一緒に書いた目標は、スタッフに見せたときに「そういう店にしたいんですね」と伝わりやすくなります。「月商を上げます」ではなく「定休日に家族と過ごせる店にします」という言葉のほうが、スタッフの心に届くのです。

⚠️ よくある失敗:売上の数字だけ書いて、「なぜその数字を目指すのか」という文脈が抜け落ちてしまう。スタッフには数字より「その先にある光景」が刺さる。

目標具体化 STEP 3

スタッフの役割を目標の中に入れ込む

ここが多くのオーナーが抜かすステップです。目標の中に「スタッフがどんな役割を担っているか」を書いてください。

「3年後、홀 担当のAさんがお客様のリピート予約を自分で管理できている」「料理長のBさんが新メニューを提案し、月に1品採用されている」——このレベルまで具体化すると、その目標はオーナー1人の目標ではなく、スタッフを含めたチームの目標になります。

スタッフが「自分もこの目標の登場人物だ」と感じた瞬間から、仕事への関わり方が変わります。これが「誇りを持って働ける」状態の正体です。

目標から逆算する手順についても合わせて読んでおくと、STEP 3の目標をより実行可能な形に落とし込めます。

⚠️ よくある失敗:目標がオーナー自身の視点だけで書かれており、スタッフが「自分ごと」として受け取れない内容になっている。

目標具体化 STEP 4

目標を「見える場所」に置き、週次で確認する

書いた目標を引き出しにしまった瞬間に、それは「夢」ではなく「メモ」になります。目標は見える場所に置き、週に一度確認する習慣が必要です。

私が使っている「目標を行動に落とし込む3つのポイント」でも触れていますが、目標と日々の行動を繋げる作業は、週次の確認なしには成立しません。

1日の終わりに15分だけ、「今日の行動は目標に近づいていたか」を確認する。この小さな習慣が、3年後の目標を現実にします。

⚠️ よくある失敗:目標を書いた達成感で終わり、翌週には忘れてしまう。目標は「設定する」ではなく「使い続ける」もの。

✓ ここまでのポイント

  • スタッフのやる気が低い原因の多くは「目標が曖昧で、この店がどこへ向かうか分からない」という状態にある
  • 目標は「完了形+数字+情景+スタッフの役割」の4要素で書くと、チームの目標になる
  • 書いた目標を週次で確認し続けることで、初めて行動と繋がる

STEP 3で「スタッフの役割を目標に入れ込む」と書きましたが、実際に目標を行動レベルまで分解し、利益に直結しない作業をやめて時間を捻出するまでの流れを体系的に学びたい方へ。動画講座「行動収益化法」では、未来デザインマップと曼荼羅シートを使って目標を日々の行動に落とし込む手順を、全8本・約6時間17分で学べます。有料教材ですが、視聴期限なしでスマートフォンからも繰り返し見られます。

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目標をスタッフに共有するときの「やりがちな失敗」

目標を具体化したら、次はスタッフへの共有です。でもここで失敗するオーナーが多い。

❌ よくあるパターン:「目標を一方的に発表する」

  • 朝礼や会議で「今月の目標は月商◯◯万円です」と伝えるだけで終わる
  • スタッフからすると「また数字の話か」となり、自分ごとにならない
  • 達成しても未達でも、スタッフの感情が動かない

✅ 推奨アプローチ:「目標の背景と自分の役割を一緒に伝える」

  • 「なぜその数字を目指すのか」「実現したらスタッフとどんな時間を過ごしたいか」を言葉にして伝える
  • 「あなたにはこの部分を担ってほしい」とスタッフ個人への期待を具体的に伝える
  • 月に一度、目標への進捗をスタッフと一緒に確認する場をつくる

「目標は数字じゃなく、物語です。スタッフが『自分もその物語の登場人物だ』と感じられるかどうかが、誇りを持って働ける店かどうかを決めます。」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 主宰)

スタッフへの伝え方を変えると、「言われたことをやる」から「自分で考えて動く」に変化します。この変化が起きると、オーナーが現場にいなくても店が回り始める——仕組み化の第一歩はここにあります。

目標の具体化を「一回で終わらせない」ために

目標を具体化する作業は、一度やれば終わりではありません。半年ごとに見直し、達成した部分は更新し、状況が変われば書き直す。これを繰り返すことで、目標はオーナーとスタッフの「共通言語」になっていきます。

私が支援する中で、21年間にわたって飲食店・美容室オーナーと向き合ってきた経験から言えることがあります。売上が伸び、スタッフが誇りを持って働いている店には共通点があります。それは、オーナーが自分の言葉で「この店の未来」を語れることです。

目標の具体化は、一人でやるより仲間がいると続きます。全国500名の経営者が参加している「増益繁盛クラブ」では、目標を言語化する場や、他のオーナーの取り組みから刺激を受ける機会が定期的にあります。「書いたけど続かない」という方には、この環境が効いてくることが多いです。

タスクを整理する手順と合わせて実践すると、目標から逆算した日々の行動を整理しやすくなります。

「儲かるアイデアと儲かる仕組みをつくるのが社長の仕事。スタッフが誇りを持てる目標を掲げること自体が、最大の経営判断のひとつです。」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 主宰)

まとめ:目標を具体化することが、スタッフを変える

「スタッフが前向きに働いてほしい」という願いを、「目標を具体化すること」で実現する——この流れを4つのステップで整理しました。

完了形で未来を描く。数字と情景を両方書く。スタッフの役割を目標の中に入れる。週次で確認し続ける。この4つを地道にやり続けると、半年後には「スタッフが自分で考えて動く場面」が確実に増えます。

9月という節目に、ぜひ一度「3年後のうちの店はどうなっているか」を完了形で書いてみてください。書いた瞬間から、経営は変わり始めます。とっととやれ、が私の口癖ですが、今回ばかりは「丁寧に言語化すること」を最初の一歩にしてほしいです。

「完了形で未来を描き、スタッフの役割を目標に入れ、週次で確認する」——この流れを読んで「やってみよう」と思えたなら、次の一歩は目標を逆算して行動に変換する仕組みを手に入れることです。動画講座「行動収益化法」では、今日ここで読んだステップをワークシートを使いながら自分の店に当てはめる方法を、繰り返し視聴できる形で学べます。

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