2.目標設定と未来デザイン

なぜ私は「なりたい姿」から逆算するのか

「ジョイマンさん、私、何が正解か本当に分からなくなってきたんです」

数ヶ月前、そう打ち明けてくれたのは、開業3年目の美容室を一人で切り盛りする30代の女性オーナーでした。技術には自信がある。お客様にも恵まれている。でも、月商300万円の壁をどうしても越えられない。何かをやるたびに「これで合ってるのかな」という迷いが頭をかすめて、結局また現場の作業に戻ってしまう——そのループを3年間繰り返してきた、と。

その話を聞きながら、私はすぐに思い当たることがありました。問題は「手を動かす量」でも「技術力」でもない。出発点がずれているんです。

今日は、なぜ私が「なりたい姿」から逆算することにこだわるのか、その理由を自分の体験も交えて話したいと思います。

📋 この記事でわかること

  1. 「なりたい姿」を起点にしないと、何をしても迷いが消えない理由
  2. 完了形で望みを描くことが、日々の行動を変える仕組み
  3. 逆算の出発点となる「未来デザインマップ」の使い方の考え方
  4. 月商300万の壁を突破したサロンオーナーの実際の変化

こんな方におすすめ

  • ✅ 毎日忙しく動いているのに、どこへ向かっているか分からなくなっている方
  • ✅ 「これが正解か分からない」という迷いの中で行動が止まりがちな経営者の方
  • ✅ 目標はなんとなく頭にあるが、具体的な行動に落ちていない飲食店・美容室オーナー
  • ✅ 売上の壁を越えたいが、何から手をつければいいか整理できていない方
  • ✅ 望んだ人生を、自分の手でデザインしていきたいと思っている経営者の方
なぜ私は「なりたい姿」から逆算するのか | 有限会社繁盛店研究所

「今より良くしたい」では、人は動けない

かつての私も、同じ状態にいました。

役所を辞めて独立したはいいけれど、開業2年半で全財産を失い、一度は破産を経験しました。初年度の年商は269万円。翌年はさらに落ち込む。毎日必死に動いていたのに、気づいたら手元に何も残っていない。

そのとき私には「もっと頑張る」という意志はありました。でも、「どこへ向かって頑張るのか」が完全に抜けていたんです。

「今よりも良くしたい」「売上を伸ばしたい」——これは願望であって、目的地ではありません。目的地のない船は、いくら全力で漕いでも同じ海域をぐるぐる回るだけです。私がどん底から這い上がれたのは、技術を磨いたからでも、努力の量を増やしたからでもない。「自分が本当になりたい姿」を、逃げずに描き直したからです。

経営者の方とお話しすると、「目標はありますか?」という質問に対して、「まあ、売上を増やしたいですね」「余裕が出たら考えます」と返ってくることが多い。でも「余裕が出たら考える」は永遠に来ません。日々の作業は、放っておくと今ある時間を全部埋め尽くすようにできているからです。

「余裕ができてから考えようとしている限り、余裕は一生やってこない。先になりたい姿を決めるから、余裕をつくる理由が生まれるんです。」

ハワードジョイマン(繁盛店研究所・中小企業診断士)

「何が正解か分からない」という感覚、記事を読んで少し言語化できてきたのではないでしょうか。繁盛店ポータルに無料登録すると、AIと対話しながら自分のビジョン・目標・ターゲット客層を整理できる「増益繁盛プランナー(5ステップ)」が使えます。メールアドレスだけで登録でき、すぐに使い始められます。

ビジョンと目標を整理する無料ツールを試してみる

「完了形で描く」ことで、脳の動き方が変わる

では、なりたい姿をどう描くのか。ここに一つ、大事なポイントがあります。

「売上を増やしたい」ではなく、「月商〇〇万円を毎月安定して達成できている」と書く。「スタッフに任せたい」ではなく、「スタッフに現場を任せ、私は週に2日は経営に集中できている」と書く。

この「〜できている」という完了形の書き方が、実は非常に重要です。

人間の脳は、現実と鮮明なイメージを区別するのが苦手です。「〜したい」という欲求形では、どこかで「でも今はできていない」という現実が同時に浮かびやすい。一方、「〜できている」と完了形で描くと、脳がその状態をリアルな基準値として受け取りやすくなります。「そこに向かうために今日は何をするか」という問いが、自然と立ち上がってくる。

私が支援の中で使っている「未来デザインマップ(1-3-3-3)」は、まさにこの考え方を土台にしています。1年後・3年後・それ以降の姿を、経済的・時間的・精神的という3つの軸で、完了形の言葉で書き出す。そこから3つの行動領域を決め、さらに3つの具体的な行動に落とし込む。

大切なのは、この地図を「最初にちゃんと描いておく」こと。地図があれば、日々の細かい判断の精度が上がります。「これは地図に近づく行動か?」というシンプルな問いで、やるべきこととやらなくていいことが分けられるようになるからです。

✓ ここまでのポイント

  • 「今よりも良くしたい」は目的地ではない。どこへ向かうかを先に決めることで、行動の方向性が生まれる
  • 完了形(〜できている)で望みを描くことで、脳がそれを基準値として受け取り、逆算の問いが立ちやすくなる
  • 未来デザインマップは、日々の判断を「地図に近づくか・遠ざかるか」で整理するツールとして機能する

「優先順位が分かった」という感覚を自分でも掴みたい——そう思ったなら、まず自分の望みを言葉にする場所が必要です。繁盛店ポータルの「増益繁盛プランナー」は、AIに問いかけられながら5ステップで経営の軸を整理できるツールで、無料アカウント登録後すぐに使えます。

経営の軸を整理する無料プランナーを使ってみる

迷いが消えたのは、「やること」が増えたからじゃなかった

冒頭でお話しした、開業3年目のサロンオーナーの話に戻ります。

彼女の悩みは「何が正解か分からない」でした。SNS投稿をすべきか、クーポンを出すべきか、新しいメニューを作るべきか。外から見ると「全部やろうとしている人」に映るのですが、本人は常に迷っていた。

一緒に取り組んだのは、引き算でした。まず「3年後、自分はどういう状態にいたいか」を完了形で書き出してもらう。経済的・時間的・精神的、それぞれに。そこから「その状態になるために、今の行動の中で何が直結しているか」を整理する。

すると、彼女が毎日時間を使っていたことのいくつかが、地図に書かれていない方向を向いていたことが見えてきました。やめていい行動が明確になった瞬間、「優先順位が分かった」という感覚が生まれたそうです。

「何が正解か分からない状態を抜けました。優先順位が明確になって、迷いが減った。そして月商300万の壁も突破できています。」

開業3年サロン(女性・30代)

この変化のポイントは、「新しいことを始めた」ではなく、「やる必要のないことをやめた」ことにあります。未来の姿を先に描いたから、今の行動を選別できた。逆算がなければ、「とりあえず全部やってみる」という状態から抜けられなかったはずです。

目標から逆算して行動を組み立てる具体的な手順については別の記事でも詳しく触れていますが、今回はその「なぜ逆算なのか」という根っこの部分を、もう少し掘り下げます。

「現状維持」を引き剥がすのが、なりたい姿の力

経営者の方と話していると、「やろうと思っているんですが、なかなか動けなくて」という言葉をよく聞きます。これは意志の問題でもなく、能力の問題でもない。

人間には、今の状態を維持しようとする機能が備わっています。私はこれを「形状記憶ラバー」と呼んでいます。新しい動きをしようとすると、元の形に戻ろうとする力が働く。これは脳の安全装置のようなもので、意識だけで突破しようとしても、すぐに元の習慣に引き戻されます。

ここで「なりたい姿」が武器になります。未来の自分がすでに達成した状態を、リアルに・具体的に・繰り返し思い描くことで、脳の基準値がじわじわと書き換えられていく。「このくらいでいい」という現状の感覚が、「自分の当たり前はここだ」という新しい感覚に塗り替えられていくんです。

これが私の言う「基準値を上げる」ということです。テクニックを習得する前に、まず経営者自身の認識が変わること。認識が変わると、自然と行動が変わる。行動が変わると、現実が変わっていきます。

飲食店でも美容室でも、支援実績21年・全国500名以上の経営者と向き合ってきた中で、この順番が逆になっているケースが本当に多い。テクニックを先に覚えようとして、使い道を見失う。でも「なりたい姿」が先にあれば、テクニックは道具として自然に機能します。

逆算は、スタート地点を正しく置くための作業だ

最後に、一つ言葉にしておきたいことがあります。

逆算というと「目標を数値で決めて、月次・週次に分解して……」という手順の話に聞こえるかもしれません。もちろんそれは大事です。でも私がもっと大切だと思っているのは、逆算を始める前の「なりたい姿」をどれだけ本気で、言葉にして描けるか、そこです。

地図の精度が高ければ、逆算の精度も上がる。進んでいる途中で迷っても、地図に戻れば判断できる。目の前の繁忙期(私は「繁盛期」と呼んでいますが)に追われていても、「これは地図に近づく行動か」という問いが頭にあれば、流されません。

あなたが今、日々の作業に追われて「このままでいいのかな」と感じているなら、それはサインです。動く前に、先に地図を描く。それだけで、同じ1日の使い方がまったく違う意味を持ち始めます。

「儲かるアイデアと儲かる仕組みをつくるのが社長の仕事」というのが私の持論ですが、その仕組みづくりも、行き先が決まって初めて設計できるもの。ぜひ、今日ここから未来の自分を描いてみてください。

地図を描いたら、次は「直結しない行動をやめて時間をつくる」ステップが待っています。動画講座「行動収益化法」では、未来デザインマップの描き方から、1週間の行動分析で手放せる作業を特定する方法、行動を6つの選択肢で整理する手順まで、全8本・約6時間17分で体系的に学べます。有料教材ですが、分割払いにも対応しています。

「行動収益化法」の内容と受講方法を確認する

-2.目標設定と未来デザイン