飲食店オーナーを対象にした調査では、「自分が現場に入らないと店が回らない」と答えたオーナーが7割以上にのぼるという報告があります(中小企業庁「小規模事業者の経営実態調査」を参考)。つまり、自分が抜けられない状態は、あなただけが抱える特殊な問題ではない。ただし、「みんなそうだから仕方ない」で片づけてしまうと、体力の限界が来たときに選択肢がなくなる。それが問題なんです。
このブログでは繁盛店研究所のハワードジョイマンが、飲食店・美容室オーナーに向けて現場依存から抜け出すための経営の考え方を発信しています。今回のテーマは「仕事を減らす4つのポイント」。ただし、単純に仕事量を削るという話ではありません。厨房を離れても店が回る構造、施術を減らしても売上が伸びる体制をどうつくるか、という話です。
📋 この記事でわかること
- 「仕事を減らす」と「サボる」がまったく別物である理由
- 現場依存が起きる構造的な原因と、その見つけ方
- 工程分解を使って仕事を手放すための4つの具体的ポイント
- 鉄板居酒屋オーナーが月商25%増・残業短縮を同時に実現した実例
こんな方におすすめ
- ✅ 毎日厨房や施術台に立ち続けていて、経営のことを考える時間がまったく取れない方
- ✅ スタッフはいるのに、結局自分がいないと不安で任せられない方
- ✅ 閉店後の残業・仕込み・事務作業が深夜まで続いていて体が限界に近い方
- ✅ 売上は横ばいなのに、自分の労働時間だけが増え続けている方
- ✅ 「仕事を減らしたら売上が落ちる」という恐怖から抜け出せない方

「仕事を減らす=手を抜く」ではない。構造を変えることです
「仕事を減らしましょう」と言うと、多くのオーナーは一瞬警戒します。「手を抜けということか?」「お客さんへのサービスが落ちるのでは?」という反応です。これは完全に誤解で、ここから整理しないと先に進めません。
仕事を減らすというのは、「あなたがやらなくていい仕事を、あなたがやるのをやめる」ということです。料理の質を落とせとか、接客を手抜きしろという話ではない。逆に、あなたが経営者として本来集中すべきことに時間を使えるようにするための作業です。
多くの飲食店・美容室オーナーが現場に張り付いている理由は、能力の問題ではなく、構造の問題です。「自分がやるのが早い」「スタッフに教える時間がない」「クオリティが心配」——これらはすべて、仕組みが整っていないから発生している症状です。
「忙しい、と言いながら仕事を抱え込んでいるオーナーに共通しているのは、自分が『作業者』のままでいることに気づいていないことです。経営者の仕事は、儲かる仕組みをつくること。その時間を確保するために、まず仕事を減らす構造をつくらないといけない。」
ハワードジョイマン(繁盛店研究所・中小企業診断士)
「自分がいないと不安」という感覚は、仕事の構造が見えていないから起きています。繁盛店ポータルの無料アカウントでは、AIと対話しながらお店の経営課題を整理できる「増益繁盛プランナー(5ステップ無料)」が使えます。メールアドレスだけで今すぐ無料登録できます。
ポイント1:「自分しかできない仕事」を正確に数える
まず今週1週間、自分がやった仕事をすべて書き出してください。仕入れ交渉、仕込み、調理、接客、レジ締め、SNS投稿、クレーム対応、シフト管理、売上集計……ざっと書いても20〜30項目は出てきます。
そのなかで、「本当に自分でなければ成立しない仕事」は何件ありますか?
多くのオーナーが、正直に仕分けしてみると3〜5項目程度しかありません。残りはすべて、教えれば誰かに任せられる仕事か、そもそもやめてもいい仕事です。
この仕分けをせずに「任せたいけど任せられない」と悩んでも、何も変わりません。無駄な仕事を減らす視点でいえば、まず「自分がやる必要のない仕事の量」を数値で把握することが出発点です。
チェックポイント1:「自分しかできない」は思い込みかもしれない
「これは自分にしかできない」と判断した仕事を、もう一度見てください。それは本当に、スキルや知識が特殊だから自分にしかできないのか?それとも、手順を文書化したことがないから引き継げないだけなのか?
✅ ポイント:「自分しかできない」の9割は、手順が整理されていないことが原因です。手順を言語化するだけで、引き継ぎできる仕事に変わります。
ポイント2:仕事を工程に分解して「渡せる単位」にする
「仕事を任せる」と言うとき、多くのオーナーは仕事をひとかたまりで渡そうとします。「これ、全部やっておいて」という渡し方です。これがうまくいかない最大の原因です。
仕事は必ず複数の工程に分解できます。たとえば「ランチの仕込み」というひとつの塊も、「食材の計量→下処理→加熱→保管→補充確認」という工程に分けられる。この工程単位で渡すと、スタッフは迷わず動けます。
重要なのは、「工程を分ける」と「責任の所在を明確にする」がセットであること。工程が曖昧なまま渡すと、結局あなたが確認・修正に駆り出されて、かえって仕事が増えるという逆効果になります。仕事を工程に分けることの具体的な手順については別の記事でも詳しく書いていますが、今回の文脈でいえば「渡せる工程の単位をつくること」が仕事を減らす核心です。
チェックポイント2:一度でうまくいかなくても「仕組み」のせいにする
スタッフに工程を渡してうまくいかなかったとき、「やっぱりあの子には無理だ」と人のせいにしてしまうオーナーは多いです。でも、失敗の9割は工程の設計が不明確だったことが原因です。
✅ ポイント:うまくいかないのは人の問題ではなく仕組みの問題。手順書・基準・確認方法を見直すのが先です。「原因は100%自分」の姿勢で設計を改善してください。
✓ ここまでのポイント
- 「自分しかできない仕事」は実際には3〜5項目程度。残りは構造次第で手放せる。
- 仕事を「ひとかたまり」で渡すのではなく、工程に分解して「渡せる単位」にすることが先決。
- うまくいかないのは人の問題ではなく、仕組みの設計の問題として捉え直す。
工程分解や基準設定の話を読んで「やってみたい」と思っても、「どこから手をつければいいか分からない」で止まる方が多いです。動画講座「行動収益化法」では、1週間の行動を分析して利益に直結しない仕事を特定する手順と、行動を6つの選択肢で整理するフレームワークを実践ワーク付きで学べます。有料の動画教材ですが、申し込み後すぐに全動画を視聴できます。
ポイント3:「減らした時間」に何をするかを先に決める
これは多くの記事では語られない盲点です。仕事を減らしても、できた時間を何に使うかが決まっていないと、その時間はすぐに別の雑務で埋まります。人間の脳には現状を維持しようとする機能があるので、意識して「できた時間の使い道」を先に決めておかないといけない。
具体的には、「この仕事を任せたら、週に○時間できる。その時間で○○をやる」という宣言を先にしてしまうことです。新メニューの開発、リピーター向けのDM発送、Googleマップの口コミ返信、来月のキャンペーン設計——経営者がやるべき仕事は山ほどある。問題は、その時間がないことでした。
「儲かるアイデアと儲かる仕組みをつくるのが社長の仕事」——この言葉を本気で実行するには、現場から離れる時間を意図的に確保するしかありません。
❌ よくあるパターン:仕事を減らす前に「何をするか」を考えていない
- 任せた仕事を心配して結局確認に行ってしまい、時間が生まれない
- できた時間が「なんとなく店にいる時間」になり、雑務で消える
- 「暇になったらどうしよう」という不安から、意図的に仕事を手放せない
✅ 推奨アプローチ:「この時間で何をするか」を先に紙に書く
- 任せる仕事を決める前に、「できた時間でやること」を具体的に1〜3項目書き出す
- 経営者として直結する行動(集客・単価アップ・仕組み設計)を優先する
- 「時間ができたら考える」ではなく「時間をつくるためにやることを決める」という順序で動く
ポイント4:仕事を減らした後の「基準」を設定する
仕事を手放すと必ず出てくる不安が「クオリティが落ちるのでは?」です。この不安を解消するには、「任せる前に基準を決める」ことが必要です。何をもって合格とするかを数値や写真・手順書で可視化しておくことで、あなたが毎回確認しなくても水準を保てる仕組みになります。
たとえば美容室であれば、次回予約の声かけタイミング、カウンセリングシートの記入項目、施術後の仕上がりチェックリスト——これらを「基準」として定めると、アシスタントでも一定のクオリティを保ちながら動けます。仕事を標準化するための考え方を参照しながら、自分のお店の「任せられる基準」を言語化してみてください。
飲食店でも同様です。仕込みの分量、盛り付けの見本写真、クレーム時の対応フロー——これらを「基準書」として整備することで、あなたが厨房にいなくても店が動く状態に近づきます。
チェックポイント3:基準がないまま「任せた」と思っていないか
「任せたのに自分の思い通りにならない」というオーナーに多いのが、基準を言葉で伝えたつもりになっているケースです。「ちゃんとやってほしい」「いい感じに」という指示では、スタッフは動けません。
✅ ポイント:「基準を渡す」とは、数値・写真・手順のどれかで表せる形にすることです。言葉だけの指示は基準ではなく期待であり、期待は伝わらないものと思ってください。
「仕事を減らした途端に"店に立つのが待ち遠しくなった"というオーナーがいます。それまでは義務感で立っていたのが、余白ができたことで"自分で選んで立っている"感覚に変わったんですね。現場依存から抜けることは、現場を嫌いになることじゃない。現場をもっと好きになることです。」
ハワードジョイマン(繁盛店研究所・中小企業診断士)
実例:鉄板居酒屋オーナーが月商25%増・残業短縮を同時に実現
繁盛店研究所に相談にきた鉄板居酒屋の40代男性オーナーは、まさに「閉店後も残業が続く」という状態でした。仕込みから調理、締め作業まで自分でこなし、深夜に帰宅する日々。スタッフはいるのに、「任せると不安」「説明する時間がない」という状態が続いていました。
取り組んだのは、今回紹介した4つのポイントそのものです。まず1週間の仕事を書き出して「自分でなければいけない仕事」を仕分け。次に、仕込みと締め作業を工程単位に分解して、スタッフが単独で動けるチェックリストを作成。「任せた時間でやること」として、週1回の新メニュー検討と常連客へのLINE発信を先に決めました。
結果は数字に出ました。
「閉店後の残業がなくなって、翌日の仕込みを見直す時間ができました。新メニューを出すたびにお客さんが喜んでくれて、月商も25%増えました。何より、店に立つのが待ち遠しくなったんです。あのころの義務感がウソみたいです。」
鉄板居酒屋オーナー(40代・男性)
このオーナーが変えたのは、スキルでも商品でもなく、仕事の構造と自分の時間の使い方でした。月商25%増という結果は、「任せた時間にやるべき経営行動」に集中できるようになったことから生まれています。
まとめ:仕事を減らすことは、経営者になる第一歩
今回の4つのポイントを整理します。
- ① 「自分しかできない仕事」を正確に数える——思い込みで抱え込んでいる仕事を明確にする
- ② 仕事を工程に分解して「渡せる単位」にする——ひとかたまりで渡さない
- ③ 減らした時間に何をするかを先に決める——目的地のない時間は雑務で消える
- ④ 任せた後の「基準」を設定する——数値・写真・手順書で可視化してクオリティを担保する
「自分がいないと回らない」という状態は、能力の問題ではなく構造の問題です。構造を変えれば、鉄板居酒屋のオーナーのように、閉店後の残業がなくなりながら月商が25%増えることもある。
仕事を減らすことは、手を抜くことではありません。経営者として本来やるべきことに集中できる状態をつくることです。今日から動けることは、「今週自分がやった仕事をすべて書き出す」ところから始まります。とっととやってみてください。
仕事の手放し方・標準化の進め方については、従業員に仕事を任せるための4つのポイントも合わせて参考にしてみてください。
鉄板居酒屋のオーナーが残業を短縮しながら月商25%増を実現したのは、「任せた時間に何をするか」を先に決めて動いたからです。行動収益化法では、その「経営者として集中すべき行動の設計」を未来デザインマップと行動目標88シートで実践できる形に落とし込んでいます。分割払いにも対応しており、詳細は案内ページでご確認いただけます。