美容室開業までの流れは?保健所申請(美容所登録)、管理美容師の設置義務などを解説
最終更新日:2023/04/10
飲食店営業許可証を取得するには?開業に必要な手続きや資格を詳しく解説
美容室を開業するには、保健所に申請して美容所登録を行うなど、さまざまな手続きが必要です。美容師として独立を考えている方や、事業者として新たに美容室の経営を始めたい方は、計画的に準備を進めていかなければなりません。
本記事では、美容室を開業する上で必要な手続きについて詳しく解説します。
目次
美容室の開業に美容師免許は必須?
経営者は美容師免許がなくてもよい
管理美容師の設置が必要なケースも
美容室の開業にあたって対応すべきこと
保健所への申請(美容所登録)
店舗設備の整備
消防設備の整備
社会保険・労働保険の手続き
税務署への届出
美容室開業までの流れ
1.保健所・消防署に事前相談する
2.保健所・消防署に必要書類を提出する
3.保健所による立入検査を受ける
4.立入検査の確認書を受領する
5.消防署による現地調査を受ける
6.従業員の社会保険・労働保険の手続きを行う
7.美容室の営業を開始する
8.税務署に開業届を提出する
まとめ
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美容室の開業に美容師免許は必須?
美容師としてサービスを提供する場合は国家資格である美容師免許が必要ですが、美容室を開業し、経営を行う上で免許が必要かどうかを説明します。
経営者は美容師免許がなくてもよい
美容室を開業する上で、経営者やオーナーは美容師免許を所有している必要はありません。
ただし、経営者であっても、実際にお店に立ちお客様に対して美容師としてサービスを提供する場合は、国家資格である美容師免許が必要になります。
しかし、経営者は美容室の経営にのみ携わり、免許を持つ美容師を雇用することで店舗を運営する場合には、経営者の美容師免許の有無は問いません。
管理美容師の設置が必要なケースも
開業する店舗に常時2名以上の美容師が勤務する場合は、美容師法によって「管理美容師」を置くことが義務づけられています(美容師法第12条の3)。
美容室は公衆衛生にかかわる業態であるため、管理美容師には美容所の衛生面を管理する役割が求められます。
開業時点では美容師1名体制だとしても、ゆくゆくは人員補充を検討する必要が出てくるかもしれません。
開業後の事業拡大を考えるのであれば、管理美容師の資格保持者を雇用するか、経営者自身が美容師の場合は管理美容師の資格をあらかじめ取得しておくことが望ましいでしょう。
美容室の開業にあたって対応すべきこと
美容室の開業にあたって事前に対応すべきことは以下のとおりです。それぞれについて、詳しく説明します。
美容室の開業にあたって対応すべきこと
保健所への申請(美容所登録)
店舗設備の整備
消防設備の整備
税務署への届出
社会保険・労働保険の手続き
保健所への申請(美容所登録)
美容室を開業するには保健所への申請が必要です。保健所への開業申請は美容師法(第11条・第12条)で規定されているため、登録申請を行わずに無断で開業した場合は、30万円以下の罰金が科せられるので注意しましょう。
出典:e-Gov法令検索「美容師法」
登録申請にあたっては、2万円程度の検査手数料が必要です。手数料の金額は管轄の保健所によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
出典:京都市役所「美容所の手続きのついて」
出典:東京都西多摩保健所「美容所のてびき」
なお、2店舗以上を開業する場合は、それぞれの店舗ごとに管轄の保健所への申請が必要です。
申請時に提出しなければならない書類は以下の通りです。
なお、以下に記載する書類の名称と種類は渋谷区保健所の「理容所・美容所のてびき」に基づいています。
保健所によって必要書類が異なる場合があるため、実際に申請を行う際は、管轄の保健所へ事前に問い合わせてください。
美容所開設届
開設者の住所・氏名、施設の名称、施設の所在地、開設予定日などを報告する書類です。様式は管轄する保健所のホームページなどで入手できます。
施設の構造設備の概要
建物の規模、セット面やシャンプー台の数などをはじめとした美容院の設備を報告する書類です。使用する消毒薬の種類やサロンの床の材質まで細かく記入する必要があります。
自治体によっては、開設届と構造設備の概要が一緒になっていることがあります。様式は美容所開設届と同じく、保健所のホームページからダウンロード可能です。
施設の平面図
美容室は法律や条例に基づく構造設備の基準、衛生管理上の基準の適用が必須であるため、工事着工前に保健所に相談する必要があります。工事業者から施設の平面図を取り寄せ、提出します。
美容室の所在地がわかる地図や、商業ビルなどのテナントに開業する場合は同じフロア内の配置図も用意しておくとよいでしょう。
従業員名簿
美容師免許を持っている従業員の氏名や免許取得日、番号などの情報をまとめた書類です。管理美容師免許を持っている場合は、あわせて免許取得日と番号を記載します。様式は保健所のホームページからダウンロード可能です。
また、従業員名簿とあわせて以下の証明書を窓口で提示します。
従業員全員の美容師免許証(本証)
管理美容師の講習修了証(本証)
美容師免許を持つ従業員の医師診断書
公衆衛生にかかわる美容室は、伝染病などのまん延が起こらないように、美容師免許を持つ従業員全員分の医師診断書を提出する必要があります。
診断書は結核・伝染性皮膚疾患の有無がわかるものであれば、特に様式の指定はありません。発行された時期の規定は自治体によって異なります。
登記事項証明書(開設者が法人の場合のみ)
開設者が法人の場合は、法人の登記事項証明書の原本が必要です。6ヶ月以内に発行されたものを提出します。
住民票の写し(開設者が外国人の場合のみ)
開設者が外国人の場合は、国籍等の記載がある住民票の写しを提出します。
店舗設備の整備
店舗設備の整備
美容室の開業にあたっては保健所の立入検査があり、法律に規定されたとおりの設備が整っているかのチェックを受けます。主な要件は以下の通りです。
①作業スペースの面積と椅子の台数
髪を切ったり洗ったりする作業スペースの面積13㎡あたり、椅子は6台までと規定されています。
7台以上設置する場合は、椅子1台につきスペースを3㎡追加する必要があります。
作業椅子の台数 作業室の面積
1~6台 13㎡
7台 16㎡
8台 19㎡
9台 22㎡
10台 25㎡
なお、作業椅子にはセット椅子やシャンプー椅子、コールド待ち椅子なども含まれます。
②待合スペース
お客様が待機する待合スペースは店舗の入り口付近で、作業室を通過しない場所に設けます。
作業スペースとの間を区切る必要がありますが、何で区切るかがポイントです。固定されたついたてや動かせない家具、壁や扉などを採用します。
固定していないついたてやカーテン、観葉植物などで区切ることは認められていません。
③シャンプー台などの洗髪設備
流水式の洗髪設備を設ける必要があります。施術内容によって洗髪設備を置かない場合は、保健所に相談してください。
④消毒場所
トイレやシャンプー台とは別に、流水式の洗い場を設ける必要があります。
また、以下の消毒設備を保健所の立入検査までに用意します。
用意するべき消毒設備
消毒薬
メスシリンダー
薬液容器(ふたつき容器やタッパーなど)
乾燥器(水切りカゴや水切り棚など)
消毒済み器具容器(ふたつき容器やタッパーなど)
タオルの格納棚
未洗浄タオルの格納容器
フタつきの毛髪専用箱・汚物入れ(最低1つずつ)
⑤床・壁
床や壁はコンクリートやタイルなど不浸透性の材質を使用しなければなりません。
また、たたみやカーペット、ふすま・障子などは認められていません。
⑥照明・換気
十分な採光、照明、換気を確保してください。作業面照度は100ルクス以上、室内炭酸ガス濃度は0.5%以下と定められています。
消防設備の整備
開業前に消火器・火災報知器・非常警報設備などの消防設備を整える必要がります。
内装工事が始まる前に管轄の消防署へ相談し、不備がないかを確認してください。工事後からの変更が難しいため、事前相談をおすすめします。
開業時には「防火対象物使用開始届出書」や「防火対象物工事等計画届出書」などの各種届出が求められますが、店舗条件によって異なるため、事前にどのような届出が必要かを問い合わせてください。場合によっては防火管理者を専任する必要があるため、その際は別途届出が必要です。
出典:東京消防庁「新たにテナントを使用する皆様へ」
社会保険・労働保険の手続き
美容院の開業にあたって従業員を雇用する場合、以下の通り社会保険・労働保険の手続きも必要です。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き
法人は必ず手続きをしなければなりませんが、個人事業者は従業員を5名以上雇用する場合のみ必要です。
個人事業者で雇用者が5名未満の場合、手続きは任意とされています。
手続きの際に届出が必要な書類は以下のとおりです。
名称 期限 届出先
健康保険・厚生年金保険新規適用届 特に定めはないが、すみやかな対応が望ましい 所轄の年金事務所
被保険者資格取得届
被扶養者(異動)届
法人(商業)登記簿謄本(法人のみ)
事業主の世帯全員の住民票の原本(個人のみ)
出典:日本年金機構「事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」
労働保険(労災保険・雇用保険)の手続き
法人・個人にかかわらず、従業員を雇用する場合は手続きが必要です。労働保険は強制加入であることに注意しましょう。
労働保険に関する手続きの際に、届出が必要な書類は以下の通りです。
名称 期限 届出先
保険関係成立届 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 所轄の労働基準監督署
概算保険料申告書 保険関係が成立した日の翌日から50日以内 以下のいずれか
・所轄の労働基準監督署
・所轄の都道府県労働局
・日本銀行
雇用保険適用事業所設置届 設置の日の翌日から10日以内 所轄の公共職業安定所(ハローワーク)
雇用保険被保険者資格取得届 資格取得の事実があった日の翌月10日まで 所轄の公共職業安定所(ハローワーク)
出典:厚生労働省「労働保険の成立手続」
税務署への届出
美容院の営業を開始するときに、税務署と各都道府県税事務所に開業の届出を行う必要があります。提出が求められる書類は以下の通りです。
税務署への手続きは、持参・郵送のほか、電子申請も可能です。申請様式は国税庁のホームページから入手できます。
開業届出書(開設者が個人の場合のみ)
個人による開業の場合は、事業開始日から1ヶ月以内に税務署へ提出します。
出典:国税庁「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
法人設立申請書(開設者が法人の場合のみ)
法人による開業の場合は、法人の設立日から2ヶ月以内に税務署へ提出します。あわせて定款、寄付行為、規則又は規約の写しも提出します。
出典:国税庁「[手続名]内国普通法人等の設立の届出」
青色申告承認申請書
個人の所得税における確定申告の際、「青色申告承認申請」をすると税額控除を多く受けられます。
ただし、正規簿記の原則に基づいた帳簿作成が必要です。青色申告による特別控除を受けたい場合は、承認申請書を税務署へ提出しましょう。
個人による開業の場合は、事業開始日から2ヶ月以内に提出します。2ヶ月以降の提出も可能ですが、青色申告はすぐには適用されないため要注意です。
出典:国税庁「[手続名]所得税の青色申告承認申請手続」
法人の場合は、「青色申告書の承認の申請」を法人の設立日から3ヶ月が経過した日、もしくは設立した事業年度終了日のうち、早い日の前日までに提出してください。
出典:国税庁「[手続名]青色申告書の承認の申請」
給与支払事務所等の開設届書
個人・法人にかかわらず、従業員を雇用する場合は、事務所の開設日から1ヶ月以内に届出を税務署へ提出します。
出典:国税庁「[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与支払時に所得税の源泉徴収を行った場合、源泉所得税を原則として翌月10日までに税務署へ納付しなければならず手間がかかります。
給与を支払う対象が常に10人未満である場合は、特例承認を申請することで、源泉所得税の納付を年2回に減らすことができます。
1~6月に支払った分に対しては7月10日に納付、7~12月に支払った分に対しては翌1月20日に納付します。
任意の申請のため提出期限はなく、申請した日の翌月に支払う給与から適用されます。
出典:国税庁「[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
事業開始等申告書、法人設立・設置届出書
個人・法人にかかわらず、各都道府県税事務所にも開業の申告を行う必要があります。
個人の場合は「事業開始等申告書」を、法人の場合は「法人設立・設置届出書」をそれぞれ各都道府県税事務所に事業開始日から15日以内に提出します。
法人はあわせて定款、寄付行為、規則又は規約の写し、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の写しの提出も必要です。
出典:東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき」
美容室開業までの流れ
美容室開業までの流れをまとめると以下の通りです。
美容室開業までの流れ
保健所・消防署に事前相談する
保健所・消防署に必要書類を提出する
保健所による立入検査を受ける
立入検査の確認書を受領する
消防署による現地調査を受ける
従業員の社会保険・労働保険の手続きを行う
美容室の営業を開始する
税務署に開業届を提出する
1. 保健所・消防署に事前相談する
美容室の開業にあたっては、着工前の事前相談が欠かせません。施工業者と打ち合わせをして店舗の平面図が上がってきた段階で、保健所へ図面を持参し、確認してもらいましょう。
あらかじめ保健所からチェックやアドバイスを受けておくことで、その後の申請や検査がスムーズに進みます。申請や検査にあたってわからないことなども事前に相談して解消しておきましょう。
同時に消防署への事前相談も行い、消防設備に問題がないか、どのような届出が必要か、防火管理者の選任が必要かをあらかじめ確認してください。
2.保健所・消防署に必要書類を提出する
事前相談によって問題なく開業できる目途が立ったら、実際に必要な書類をそろえて保健所・消防署にそれぞれ提出します。
3.保健所による立入検査を受ける
保健所への書類提出後に、保健所が施設の立入検査を行います。検査はだいたい30分ほどです。検査までに規定通りの設備を整えておく必要があります。万が一不備があった場合は改善後の再検査となります。
4.立入検査の確認書を受領する
検査の結果、問題ないと判断されたら保健所からの営業許可が下ります。その際に美容所適合確認書が発行されるため、保健所の窓口で受け取ります。確認書は店舗の見える場所に掲示します。
5.消防署による現地調査を受ける
消防職員の現地調査によって消防法令に適合していることが確認されたら、届出書の副本が返却され消防署からの営業許可が下ります。
6.従業員の社会保険・労働保険の手続きを行う
必要書類をそろえて前述の各種届出を提出します。
7.美容室の営業を開始する
上記までの対応が完了したら、営業を開始できます。従業員の研修や店舗の清掃などを徹底し、お客様に満足してもらえるサービスの提供を目指しましょう。
8.税務署に開業届を提出する
前述のとおり、各種届出をそれぞれ期限内に提出しましょう。
まとめ
美容室を開業するには、保健所への美容所登録や税務署への開業届提出など、さまざまな手続きが必要です。
特に、設備に関しては美容師法において細かく規定されているため、規定をよく確認し、求められる水準を満たすことが重要です。
手続きには時間や手間がかかりますが、保健所や消防署から確実に営業許可が得られるよう、慎重に進めていきましょう。
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