2店舗同時経営で陥りがちな失敗パターンと回避方法

2店舗同時経営で陥りがちな失敗パターンと回避方法【多店舗展開の落とし穴を完全回避】

目次

はじめに:なぜ2店舗目で挫折する美容室が多いのか?

「1店舗目は上手くいってるから、2店舗目も大丈夫でしょ」

そう思って2店舗目をオープンしたものの、
気がついたら両方の店舗がギリギリの状態に…。
実は、こんな美容室がとても多いんです。

統計によると、美容室の多店舗展開で
1年以内に何らかの困難に直面する確率は約70%。
その多くが「想定していなかった問題」が原因です。

でも安心してください!失敗パターンを事前に知って対策を立てれば、
必ず成功できます。今回は、2店舗同時経営でよくある失敗パターンと、
それを回避する具体的な方法を分かりやすく解説します。

【失敗パターン1】オーナーの体力・時間不足で両店舗が中途半端に

よくある症状

こんな状況になっていませんか?

  • 毎日2つの店舗を行ったり来たり
  • どちらの店舗にいても気になってしまう
  • 家に帰るのは毎日深夜
  • 疲れ果てて判断力が低下
  • 家族から「体調が心配」と言われる

実際の声
「朝は1店舗目、午後は2店舗目にいるんですが、
1店舗目でトラブルがあると2店舗目のお客様を待たせてしまう。
どちらも中途半端になって、スタッフもお客様も不安そうです…」

なぜこの失敗が起こるのか?

根本的な原因

  1. 自分がいないと回らない仕組み
  • スタッフに権限を移譲していない
  • トラブル対応を全て自分で行う
  • 技術的な判断も全て自分
  1. 時間管理の甘さ
  • 各店舗での滞在時間を決めていない
  • 移動時間を軽く見積もっている
  • 予想外の事態への時間を確保していない
  1. 完璧主義的な思考
  • 全てを自分の目で確認したい
  • スタッフを信頼しきれない
  • 品質低下への過度な不安

具体的な回避方法

解決策1:権限移譲システムの構築

店長制度の確立

【店長の権限範囲】
○ 日常の接客・技術指導
○ スタッフのシフト調整
○ 小額の経費支出(月3万円まで)
○ お客様からの軽微なクレーム対応
○ 在庫の発注(決められた範囲内)

【オーナーへの報告事項】
× 重要なクレーム・トラブル
× 月5万円以上の支出
× スタッフの重大な問題
× 売上の大幅な変動

判断基準の明文化

【緊急度別対応ルール】
レベル1(即座にオーナーに連絡)
・お客様の怪我・体調不良
・設備の重大な故障
・火災・盗難などの事件

レベル2(当日中にオーナーに連絡)
・お客様からの重要なクレーム
・スタッフの急病・事故
・予約システムの不具合

レベル3(翌日の定期報告で)
・軽微なトラブル・要望
・商品の在庫切れ
・お客様からの褒め言葉

解決策2:効率的な時間管理

週間スケジュール例

月曜日:1店舗目(9:00-13:00)→ 2店舗目(14:00-18:00)
火曜日:2店舗目(9:00-13:00)→ 事務作業(14:00-18:00)
水曜日:1店舗目(9:00-13:00)→ 2店舗目(14:00-18:00)
木曜日:1店舗目(9:00-18:00)※じっくり指導日
金曜日:2店舗目(9:00-18:00)※じっくり指導日
土曜日:忙しい方の店舗をサポート
日曜日:休息・家族時間・経営分析

移動時間の最適化

  • 移動時間は最低30分は見込む
  • 緊急時の移動手段を複数確保
  • 各店舗に必要な書類・道具を常備

解決策3:リモート管理システム

デジタルツールの活用

  • 予約システム:両店舗の予約状況をリアルタイム確認
  • 売上管理:日次売上を即座にチェック
  • カメラシステム:店内の様子を遠隔確認
  • LINE・チャット:スタッフとの迅速な連絡

【失敗パターン2】資金繰り悪化で経営が危険な状態に

よくある症状

危険な兆候をチェック

  • 支払いを遅らせることが増えた
  • 借入金の返済が厳しくなった
  • スタッフの給与支払いが不安
  • 仕入れを減らして品質が低下
  • 設備修理を先延ばししている

実際の声
「2店舗目の開店費用が予想以上にかかり、
運転資金が足りなくなりました。
1店舗目は黒字なのに、全体では赤字で支払いが苦しいです…」

なぜこの失敗が起こるのか?

主な原因

  1. 楽観的な資金計画
  • 2店舗目の売上予測が甘い
  • 開店費用の見積もりが甘い
  • 軌道に乗るまでの期間を短く見積もっている
  1. キャッシュフローの理解不足
  • 売上と現金の違いを理解していない
  • 支払いタイミングと入金タイミングのズレ
  • 季節変動を考慮していない
  1. 緊急資金の未確保
  • 予備資金を持たずにスタート
  • 想定外の出費への準備不足

具体的な回避方法

解決策1:保守的な資金計画

安全な資金計画の立て方

【2店舗目の売上予測】
楽観的予測:200万円/月
現実的予測:150万円/月
保守的予測:120万円/月
→ 保守的予測で計画を立てる

【必要資金の計算】
開店費用:800万円
運転資金:6ヶ月分(720万円)
緊急資金:300万円
合計:1,820万円

【資金調達内訳】
自己資金:700万円(40%)
銀行融資:900万円(50%)
その他:220万円(10%)

解決策2:段階的オープン

リスクを下げる開店方法

ステップ1:ソフトオープン(1ヶ月)
・限定的な営業で問題点発見
・口コミでの評判作り
・スタッフの習熟度向上

ステップ2:プレオープン(1ヶ月)
・通常営業だが宣伝は控えめ
・オペレーションの確認
・細かい改善点の修正

ステップ3:グランドオープン
・本格的な宣伝開始
・通常の営業体制
・目標売上の達成を目指す

解決策3:月次資金管理

キャッシュフロー表の作成

【月次予測表】
項目    | 1月  | 2月  | 3月
──────────────────────
前月残高  | 500  | 420  | 380
売上入金  | 350  | 380  | 400
支出合計  | 430  | 420  | 410
当月残高  | 420  | 380  | 370
危険度   | 注意 | 警戒 | 危険

危険信号の早期発見

  • 残高が300万円を下回ったら要注意
  • 3ヶ月連続で残高減少なら対策必要
  • 支払い遅延が発生したら即座に対応

【失敗パターン3】スタッフ管理の混乱で人間関係が悪化

よくある症状

人間関係のトラブル兆候

  • 1店舗目と2店舗目のスタッフ間での対立
  • 「どちらが本店?」という意識の違い
  • 給与・待遇への不満の声
  • スタッフの退職が相次ぐ
  • チームワークが取れなくなった

実際の声
「1店舗目のスタッフから『2店舗目の方が優遇されている』と言われ、
2店舗目のスタッフからは『1店舗目のスタッフの方が技術が上』と言われます。
板挟みで疲れました…」

なぜこの失敗が起こるのか?

主な原因

  1. 不平等感の発生
  • 新しい設備は2店舗目だけ
  • オーナーの注目が2店舗目に偏る
  • 昇進・昇給の機会に差がある
  1. コミュニケーション不足
  • 店舗間での情報共有不足
  • オーナーとの面談機会の差
  • 成功事例の共有不足
  1. 評価基準の曖昧さ
  • 頑張りが正当に評価されない
  • 店舗別の目標設定が不明確
  • 昇進・昇格の基準が不透明

具体的な回避方法

解決策1:公平な評価制度の確立

統一評価システム

【評価項目と配点】
技術力(30点)
・基本技術の習得度
・新技術への取り組み
・お客様からの技術評価

接客力(25点)
・お客様満足度
・コミュニケーション能力
・トラブル対応力

売上貢献(20点)
・個人売上目標達成度
・客数増加への貢献
・客単価向上への取り組み

チームワーク(15点)
・他スタッフとの協力
・店舗間での情報共有
・後輩指導への取り組み

成長意欲(10点)
・研修参加状況
・資格取得への取り組み
・提案・改善活動

解決策2:定期的なコミュニケーション

全体ミーティングの実施

【月1回:全店舗合同ミーティング】
・各店舗の売上・成果報告
・成功事例の共有
・問題点の相談・解決
・新しい取り組みの検討
・親睦を深める時間

【週1回:店舗別ミーティング】
・その週の振り返り
・来週の目標設定
・お客様の声の共有
・技術・接客の改善点

【月1回:個別面談】
・個人の目標設定
・悩み・相談の聞き取り
・キャリアプランの相談
・評価のフィードバック

解決策3:店舗間交流の促進

相互理解を深める取り組み

【スタッフ交換研修】
・月1回、半日の店舗間交換
・お互いの良いところを学ぶ
・技術・接客の情報交換

【合同技術研修】
・新技術の習得を一緒に
・外部講師を招いての研修
・技術コンテストの開催

【親睦イベント】
・四半期に1回の食事会
・年1回の社員旅行
・誕生日・記念日のお祝い

【失敗パターン4】品質管理ができずクレームが多発

よくある症状

品質低下の兆候

  • お客様からのクレームが増加
  • 同じミスの繰り返し
  • 技術レベルにばらつき
  • 衛生管理の不徹底
  • サービスの統一感がない

実際の声
「1店舗目では起こらないようなミスが2店舗目で続き、
お客様から『前の店舗と全然違う』と言われました。
ブランドイメージが傷つくのが心配です…」

なぜこの失敗が起こるのか?

主な原因

  1. 教育・研修の不足
  • 開店を急いで研修期間を短縮
  • オーナーの指導時間不足
  • 技術チェックの体制不備
  1. マニュアル化の不徹底
  • 感覚的な指導に依存
  • 標準的な手順が不明確
  • チェック体制の不備
  1. 責任体制の曖昧さ
  • 誰が何を管理するのか不明確
  • 問題発生時の対応が遅い
  • 改善サイクルが回らない

具体的な回避方法

解決策1:詳細なマニュアル作成

技術マニュアルの作成

【カットマニュアル例】
1. カウンセリング(5分)
   ・お客様の要望聞き取り
   ・髪質・顔型の確認
   ・提案とアドバイス

2. 準備(3分)
   ・道具の準備と確認
   ・髪の状態チェック
   ・ブロッキングの実施

3. カット実施(25分)
   ・基本カットの手順
   ・左右バランスの確認
   ・長さの最終調整

4. 仕上げ確認(2分)
   ・お客様と一緒に確認
   ・修正が必要な箇所のチェック
   ・満足度の確認

解決策2:定期的な品質チェック

チェック体制の確立

【日次チェック】
□ 朝礼での衛生管理確認
□ 技術のポイント確認
□ 本日のお客様情報共有

【週次チェック】
□ 技術レベルの相互確認
□ お客様の声の振り返り
□ 改善点の話し合い

【月次チェック】
□ オーナーによる技術チェック
□ 覆面調査の実施
□ お客様満足度アンケート
□ 改善計画の作成・実行

解決策3:継続的な教育システム

段階的な教育プログラム

【新人スタッフ:最初の3ヶ月】
1ヶ月目:基本技術の習得
2ヶ月目:接客スキルの向上
3ヶ月目:独立した業務遂行

【経験者:継続的な向上】
・月1回の技術研修
・四半期ごとの新技術習得
・年1回の外部研修参加
・資格取得への支援

【失敗パターン5】集客が思うようにいかず売上不振

よくある症状

集客不振の兆候

  • 新規客が想定の半分以下
  • リピート率が1店舗目より低い
  • 広告の効果が見られない
  • 競合店にお客様を取られている
  • 予約に空きが目立つ

実際の声
「1店舗目と同じ宣伝方法を使ったのに、
2店舗目は全然お客様が来ません。
立地は悪くないと思うのですが、何が原因か分からず困っています…」

なぜこの失敗が起こるのか?

主な原因

  1. 地域性の理解不足
  • 1店舗目と客層が違う
  • 地域のニーズを把握していない
  • 競合状況が異なる
  1. 差別化の不足
  • 近隣の美容室との違いが不明確
  • 独自性・魅力が伝わらない
  • 価格競争に巻き込まれる
  1. 認知度不足
  • 地域での知名度がゼロからスタート
  • 口コミ・紹介のネットワークがない
  • 信頼関係の構築に時間がかかる

具体的な回避方法

解決策1:地域密着の集客戦略

地域分析の徹底

【商圏分析】
・半径500m以内の人口構成
・年代別・性別の分布
・世帯構成(単身・ファミリー・高齢者)
・所得レベルの推定

【競合分析】
・近隣美容室の特徴
・価格帯・サービス内容
・強み・弱みの把握
・差別化のポイント発見

【ニーズ調査】
・地域住民へのアンケート
・近隣店舗での情報収集
・口コミサイトでの評判調査

解決策2:段階的な認知度向上

開店前からの地域アプローチ

【開店3ヶ月前】
・地域へのチラシ配布開始
・近隣への挨拶回り
・地域イベントへの参加検討

【開店1ヶ月前】
・プレオープンイベントの告知
・地域限定の特別サービス発表
・SNSでの情報発信開始

【開店後】
・口コミ・紹介キャンペーン
・地域コミュニティとの連携
・継続的な地域貢献活動

解決策3:独自性の明確化

差別化ポイントの設定

【技術面での差別化】
・特定分野の専門性(カラー、パーマなど)
・最新技術・設備の導入
・独自の施術メニュー

【サービス面での差別化】
・営業時間の工夫
・特別なホスピタリティ
・アフターフォローの充実

【価格面での差別化】
・明確な価値提案
・コストパフォーマンスの訴求
・透明性のある料金体系

総合的な回避戦略:成功する2店舗経営の秘訣

成功の3つの原則

原則1:準備に時間をかける

  • 焦らず、丁寧に準備する
  • 想定される問題を事前に対策
  • 十分な資金と時間の確保

原則2:システム化を徹底する

  • 感覚的な経営からの脱却
  • マニュアル化・標準化の推進
  • 定期的なチェック・改善

原則3:人を大切にする

  • スタッフの成長と満足を重視
  • お客様との信頼関係構築
  • 地域コミュニティとの連携

失敗を防ぐチェックリスト

開店前チェック

  • [ ] 十分な資金準備(予算の1.5倍)
  • [ ] スタッフの教育・研修完了
  • [ ] マニュアル・システムの整備
  • [ ] 地域分析・競合調査の実施
  • [ ] 緊急時対応計画の策定

開店後チェック(毎月)

  • [ ] 資金繰りの確認
  • [ ] スタッフ満足度の確認
  • [ ] 品質管理の実施
  • [ ] 集客状況の分析
  • [ ] 改善計画の実行

定期見直し(四半期)

  • [ ] 全体戦略の見直し
  • [ ] 問題点の洗い出し
  • [ ] 成功事例の横展開
  • [ ] 次の展開計画の検討

まとめ:失敗を恐れず、でも準備は万全に

失敗パターンを知ることの価値

失敗パターンを事前に知ることで:

  • 同じ失敗を繰り返さない
  • 問題の早期発見・対処
  • 成功確率の大幅向上
  • 安心して経営に集中

成功への心構え

大切なのは

  • 完璧を求めすぎない
  • 問題が起きても冷静に対処
  • 継続的な改善の姿勢
  • スタッフ・お客様との信頼関係

そして何より

  • 1店舗目で培った「お客様を大切にする心」
  • これを2店舗目でも忘れずに
  • 地域の皆様に愛される店作り

最後に:挑戦する勇気を応援します

2店舗同時経営は確かに大変ですが、
適切な準備と対策があれば必ず成功できます。

失敗を恐れて挑戦しないより、
失敗を避ける知識を身につけて挑戦する方が、
はるかに価値があります。

あなたの美容室が、地域の皆様により良いサービスを提供し、
スタッフの皆さんも幸せに働ける
素晴らしい2店舗展開を実現することを心から応援しています!

次のアクション

  • 失敗パターンのチェックシートを作成してみましょう
  • 現在の状況を客観的に分析してみましょう
  • 必要な対策の優先順位を決めてみましょう
  • 信頼できる相談相手を見つけてみましょう

準備万端で、安全な多店舗展開を実現しましょう!


この記事は美容室経営の実践的なノウハウをもとに作成しています。
2店舗展開の際は、各店舗の特性や地域性を考慮した個別対応が重要です。

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 代表取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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