材料費を抑えて品質を保つプロの仕入れ術

材料費を抑えて品質を保つプロの仕入れ術

「材料費が高くて利益が圧迫されている…」
「でも品質を下げるわけにはいかないし、どうしたらいいの?」

美容室経営者なら誰でも悩む材料費の問題。
シャンプー、カラー剤、パーマ液など、
品質を保ちながらコストを下げるのは本当に難しいですよね。

でも大丈夫!この記事では、
品質は一切下げずに材料費を20〜30%削減した美容室の実例とともに、
プロの仕入れ術をお教えします。

目次

材料費の現実:美容室経営を圧迫する大きな負担

美容室の材料費の実態

一般的な美容室の材料費

  • 売上に占める割合:12〜18%
  • 月商100万円の場合:12〜18万円
  • 年間で144〜216万円の支出

材料費の内訳例(月商100万円の美容室)

  • カラー剤:5万円(33%)
  • シャンプー・トリートメント:3万円(20%)
  • パーマ液:2万円(13%)
  • スタイリング剤:1.5万円(10%)
  • その他消耗品:3.5万円(24%)
  • 合計:15万円

材料費が高くなる5つの原因

原因1:メーカー言い値で購入

  • 価格交渉をしていない
  • 複数業者からの見積もりを取らない
  • 「仕方ない」と諦めている

原因2:必要以上に高品質な材料を使用

  • すべてのお客さんに最高級品を使用
  • メニューに応じた使い分けをしていない
  • コストパフォーマンスを考えていない

原因3:在庫管理ができていない

  • 期限切れで廃棄が多い
  • 過剰在庫で資金が寝てしまう
  • 必要な時に足りなくて緊急購入

原因4:仕入れ方法が非効率

  • 少量ずつ頻繁に購入
  • まとめ買い割引を活用していない
  • 送料を考慮していない

原因5:ロス(無駄)が多い

  • 使いすぎ・つけすぎ
  • 技術的なミスによる無駄
  • 管理不徹底による紛失

成功事例:材料費30%削減に成功したK美容室

改善前の状況

K美容室の概要

  • 立地:地方都市の住宅街
  • 規模:オーナー+スタッフ1名
  • 月商:90万円

材料費の問題

  • 月の材料費:18万円(売上の20%)
  • 主な仕入れ先:1社のみ
  • 仕入れ方法:必要な時に少量購入
  • 在庫管理:どんぶり勘定

オーナーの悩み
「技術にこだわって良い材料を使っているつもりだけど、
材料費が高すぎて利益が残らない。
でも品質を下げたらお客さんに申し訳ない…」

改善の取り組み内容

取り組み1:仕入れ先の見直しと価格交渉

複数業者からの見積もり取得

  • 既存業者:A社
  • 新規開拓:B社、C社、D社
  • 同じ品質の商品で価格比較

価格交渉の実施

  • 年間購入予定額を提示
  • 長期契約での割引交渉
  • 支払い条件の改善交渉

結果

  • カラー剤:A社より15%安いB社に変更
  • シャンプー系:A社より20%安いC社に変更
  • その他:品目別に最安値業者を選択

取り組み2:商品の使い分け戦略

お客さん別の使い分け

【高級ライン】
対象:高単価メニューのお客さん
商品:最高級カラー剤、プレミアムトリートメント
使用比率:30%

【スタンダードライン】
対象:通常メニューのお客さん
商品:高品質だがコスパ重視の商品
使用比率:60%

【エコノミーライン】
対象:価格重視のお客さん、練習用
商品:品質は保ちつつ価格を抑えた商品
使用比率:10%

取り組み3:まとめ買い戦略

3ヶ月分まとめ購入

  • まとめ買い割引:10〜15%
  • 送料削減:月4回 → 月1回
  • 業者との関係強化:安定取引で優遇価格

共同購入の実施

  • 近隣の美容室3店舗で共同購入
  • 大口割引の恩恵を享受
  • 送料の分担で個別負担軽減

取り組み4:徹底した在庫管理

在庫管理システムの導入

  • エクセルでの簡単な在庫表作成
  • 入荷・使用・残量の記録
  • 発注タイミングの最適化

適正在庫量の設定

  • 各商品の月間使用量を分析
  • 2ヶ月分を基本在庫として設定
  • 期限切れリスクを最小化

取り組み5:ロス削減の徹底

使用量の標準化

  • カラー剤の使用量をグラム単位で管理
  • シャンプーの適量を明確化
  • スタッフ教育で無駄遣い防止

技術向上による材料ロス削減

  • カラー技術の向上でやり直し減少
  • 正確な薬剤調合でミス防止
  • 計画的な施術で時間短縮

改善後の結果(6ヶ月後)

材料費の変化

  • 改善前:18万円(売上の20%)
  • 改善後:12.5万円(売上の13.9%)
  • 削減額:5.5万円(30.6%削減)

品質への影響

  • お客さんからの品質に関する苦情:ゼロ
  • むしろ「前よりツヤが良くなった」との声
  • リピート率:従来通り85%を維持

その他の効果

  • 仕入れ作業時間:月8時間 → 月2時間
  • 在庫切れによる機会損失:月3回 → ゼロ
  • 資金繰り:在庫回転率向上で改善

オーナーの感想
「材料費を下げて品質が保てるなんて信じられませんでした。
実際は、無駄をなくして効率的になっただけで、
お客さんには何も変わらない。
むしろ技術力が上がったと思います。
浮いたお金で新しい技術習得にも投資できるようになりました。」

プロの仕入れ術:5つの基本テクニック

テクニック1:業者選定の3ステップ戦略

ステップ1:現状分析

【分析項目】
・現在の仕入れ先と価格
・月間・年間の購入金額
・商品別の使用量
・品質に対する満足度

ステップ2:新規業者開拓

【開拓方法】
・インターネットでの検索
・同業者からの情報収集
・展示会・見本市への参加
・メーカー直販の検討

ステップ3:比較検討

【比較項目】
・商品価格(単価・まとめ買い割引)
・送料・手数料
・支払い条件
・配送スピード
・アフターサービス

テクニック2:効果的な価格交渉術

交渉前の準備

  • 年間購入予定額の算出
  • 競合他社の価格調査
  • 長期取引の意思表示
  • 支払い条件の検討

交渉のポイント

【交渉例】
「年間○○万円の取引を予定しており、
長期的なパートナーシップを考えています。
現在A社から△%高い提示をいただいていますが、
御社と取引させていただきたく、
価格面でのご協力をお願いできませんでしょうか?」

交渉成功のコツ

  • 具体的な数字を示す
  • 相手のメリットも提示
  • 段階的な提案をする
  • Win-Winの関係を目指す

テクニック3:商品グレード戦略

3段階商品構成

プレミアム商品(30%)

  • 最高級カラー剤・トリートメント
  • 高単価メニューでのみ使用
  • お客さんの特別感を演出

スタンダード商品(60%)

  • 品質と価格のバランス重視
  • 通常メニューで使用
  • 最もコストパフォーマンスが良い

エコノミー商品(10%)

  • 必要最小限の品質を確保
  • 練習用・緊急時用
  • コスト重視の選択肢

使い分けの基準

【判断基準】
・お客さんの単価
・メニューの内容
・お客さんの要望
・技術者のスキル

テクニック4:計画的仕入れシステム

月次仕入れ計画の作成

1. 使用量の分析

【分析方法】
・過去3ヶ月の使用実績
・季節変動の考慮
・新メニュー導入の影響
・お客さん数の増減予測

2. 適正在庫量の設定

【基本ルール】
・日用品:1ヶ月分
・カラー剤:2ヶ月分
・特殊商品:3ヶ月分
・季節商品:需要期間中の分

3. 発注タイミングの最適化

【発注基準】
・在庫が基準量の50%になったら発注
・まとめ買い割引を最大活用
・送料を考慮した効率的な頻度

テクニック5:ロス削減の仕組み化

使用量の標準化

カラー剤の使用量管理

【髪の長さ別使用量】
・ショート:40g
・ボブ:60g
・ミディアム:80g
・ロング:100g

調合比率の統一

【カラー調合例】
・明るくする場合:1:1.5
・暗くする場合:1:1
・白髪染め:1:1

在庫管理の徹底

  • 毎日の使用量記録
  • 週次の在庫チェック
  • 期限管理の徹底
  • 紛失防止の工夫

商品別コストダウン戦略

カラー剤のコストダウン

戦略1:メーカー直販の活用

  • 問屋を通さず直接取引
  • 15〜20%のコストダウン
  • 技術サポートも充実

戦略2:大容量商品への変更

  • 400g → 1kg容器に変更
  • 単価20%削減
  • 使用頻度の高い色のみ

戦略3:ベースカラーの活用

  • 基本色を数色に絞る
  • 調合で様々な色を作成
  • 在庫品目の削減

シャンプー・トリートメントのコストダウン

戦略1:業務用大容量への変更

  • 1L → 5L容器に変更
  • 単価30%削減
  • 詰め替え作業の効率化

戦略2:濃縮タイプの活用

  • 希釈して使用するタイプ
  • 実質コスト50%削減
  • 在庫スペースの節約

戦略3:用途別使い分け

  • プレシャンプー:エコノミー
  • メインシャンプー:スタンダード
  • 仕上げトリートメント:プレミアム

パーマ液のコストダウン

戦略1:髪質別使い分け

  • 健康毛:エコノミータイプ
  • 普通毛:スタンダードタイプ
  • ダメージ毛:プレミアムタイプ

戦略2:技術力向上による効率化

  • 適切な薬剤選択でやり直し防止
  • 正確な塗布で無駄な使用量削減
  • 時短技術でコスト削減

業者との良好な関係構築法

長期パートナーシップの築き方

信頼関係の構築

  • 約束の支払い期日を守る
  • 定期的なコミュニケーション
  • 問題があれば早めに相談
  • 感謝の気持ちを表す

情報交換の活用

  • 新商品情報の早期入手
  • 技術指導の受講
  • 他店の成功事例の共有
  • 市場動向の情報収集

相互メリットの創出

  • 安定した取引量の提供
  • 新商品のテスト協力
  • 口コミでの紹介
  • 展示会での協力

支払い条件の最適化

現金払いでの割引獲得

  • 手形・掛売りより現金が有利
  • 2〜3%の割引獲得可能
  • 資金繰りに余裕があれば効果的

まとめ払いでの割引

  • 月1回の集約払い
  • 事務処理の効率化
  • 1〜2%の割引可能

材料費管理の効率化ツール

エクセル活用術

在庫管理表の作成

【管理項目】
・商品名
・現在庫数
・月間使用量
・発注点
・仕入れ価格
・使用期限

原価計算表の作成

【計算項目】
・メニュー別材料費
・お客さん別材料費
・材料費率の推移
・目標との比較

専用アプリの活用

在庫管理アプリ

  • バーコード読み取り機能
  • 自動発注機能
  • 期限管理アラート
  • 使用実績分析

原価計算アプリ

  • メニュー別原価計算
  • 利益率の自動計算
  • レポート機能
  • 予算管理機能

今日からできる材料費削減5ステップ

ステップ1:現状分析(今日)

やること

  1. 先月の材料費を項目別に集計
  2. 売上に対する材料費率を計算
  3. 最も金額の大きい材料を特定

分析例

【材料費分析】
カラー剤:5万円(33%)← 最重要
シャンプー:3万円(20%)
パーマ液:2万円(13%)
その他:5万円(34%)
合計:15万円(売上比15%)

ステップ2:業者調査(今週中)

やること

  1. 現在の主要商品の仕入れ価格をリスト化
  2. インターネットで3社以上の業者を調査
  3. 見積もり依頼の準備

ステップ3:見積もり比較(来週)

やること

  1. 複数業者から見積もり取得
  2. 価格だけでなく条件も比較
  3. 最有力候補を2社まで絞る

ステップ4:テスト発注(来月)

やること

  1. 小ロットでテスト発注
  2. 品質・サービスを確認
  3. お客さんの反応をチェック

ステップ5:本格導入(2ヶ月後)

やること

  1. 品質に問題なければ本格導入
  2. 在庫管理システムの構築
  3. 効果測定の開始

よくある質問と回答

Q:安い材料に変えて、お客さんに気づかれませんか?

A:同等品質の商品を選べば、お客さんが気づくことはありません。重要なのは「安かろう悪かろう」ではなく、「同じ品質でより安く」という考え方です。

Q:業者を変更するのは面倒ではありませんか?

A:最初は手間がかかりますが、
一度変更すれば長期間メリットを享受できます。
月5万円削減できれば、年間60万円の効果です。

Q:まとめ買いで在庫が増えるのが心配です

A:適正在庫量を設定すれば問題ありません。
2〜3ヶ月分程度なら、期限切れリスクも少なく、
割引メリットの方が大きいです。

材料費削減の注意点

注意点1:品質を最優先にする

絶対に削ってはいけないもの

  • お客さんの髪に直接影響する品質
  • 安全性に関わる要素
  • 技術的な性能
  • お客さんの満足度

注意点2:急激な変更は避ける

段階的変更のすすめ

  • 一度に全商品を変更しない
  • 影響の少ないものから開始
  • 効果を確認してから次のステップ

注意点3:スタッフの理解を得る

スタッフ教育のポイント

  • 変更の理由を説明
  • 新商品の使用方法を指導
  • 品質への影響がないことを確認
  • 意見やフィードバックを聞く

まとめ:賢い仕入れで利益率向上を実現しよう

材料費削減は、品質を犠牲にすることではありません。
無駄をなくし、効率的に仕入れることで、
同じ品質をより安く実現することです。

成功のポイント

  • 複数業者からの見積もり比較
  • 商品グレードの使い分け
  • 計画的な仕入れとまとめ買い
  • 徹底したロス削減
  • 業者との良好な関係構築

期待できる効果

  • 材料費20〜30%削減
  • 年間60〜100万円のコストダウン
  • 利益率3〜5%向上
  • 資金繰りの改善

あなたの美容室も、賢い仕入れ術で材料費を削減してみませんか?

まずは現在の材料費率を計算して、
削減目標を設定してみてください。
品質を保ちながらコストを下げることで、
より安定した美容室経営が実現できるはずです!

材料費が下がれば、その分を技術向上や設備投資に回すことができ、
さらなる成長につながりますよ。

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 代表取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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