美容室の経費、削っていいものとダメなもの
「経費を削って利益を増やしたいけど、
何を削ったらいいか分からない…」
「お客さんに迷惑をかけずに節約する方法はある?」
美容室経営者なら誰でも考える、経費削減の悩み。
でも間違った経費削減をすると、
お客さんが離れてしまったり、
逆に売上が下がってしまうことも。
この記事では、安心して削れる経費と、
絶対に削ってはいけない経費を、
具体例とともに分かりやすく解説します。
経費削減の大原則:「お客さんの満足度」を下げてはいけない
経費削減で失敗した美容室の例
D美容室の失敗事例
月の経費を15万円削減しようと以下の節約をしました:
- シャンプーを安いものに変更(-3万円)
- タオルの洗濯回数を減らす(-2万円)
- 冷暖房費節約で室温を我慢(-4万円)
- スタッフの技術研修を中止(-3万円)
- 掃除回数を減らす(-1万円)
- お客さん用のドリンクを廃止(-2万円)
結果:3ヶ月後
- 15万円の経費削減に成功
- しかし、お客さんからの苦情が増加
- リピート率が70% → 45%に低下
- 月売上が120万円 → 95万円に減少
- 実質的な利益は削減前より悪化
教訓:お客さんの満足度を下げる節約は逆効果
正しい経費削減の考え方
経費削減には2つのタイプがあります:
タイプ1:お客さんに関係ない経費削減
→ これは積極的にやるべき
タイプ2:お客さんに関係する経費削減
→ これは慎重に判断する
大切なのは、お客さんが気づかない・困らない範囲で経費を削ることです。
【安心して削れる経費】ベスト10
1. 電気代の節約(月1〜3万円削減可能)
すぐできる節約法
- LED電球への交換(初期投資あり、長期的に節約)
- 使わない部屋の電気をこまめに消す
- エアコンの設定温度を1度調整
- 営業時間外の電気使用を見直し
お客さんへの影響:なし 明るさや快適さを保ったまま節約できます。
2. 水道代の節約(月5千〜1万5千円削減可能)
節約のコツ
- シャワーヘッドを節水タイプに交換
- 洗濯機の使い方を効率化
- 掃除用水の使用量見直し
- 水漏れのチェックと修理
お客さんへの影響:なし 水圧や快適さはそのままで節約できます。
3. 通信費・インターネット代の見直し(月5千〜2万円削減可能)
チェックポイント
- 使っていない有料サービスはないか?
- 必要以上に高速なプランになっていないか?
- スマホの料金プランは適正か?
- 複数の契約を統合できないか?
お客さんへの影響:なし Wi-Fi環境は維持したまま節約できます。
4. 保険料の見直し(月1〜5万円削減可能)
見直しポイント
- 火災保険の補償内容は適正か?
- 必要以上の生命保険に入っていないか?
- 損害保険の重複はないか?
- 共済への切り替えで節約できないか?
お客さんへの影響:なし 必要な保障は確保したまま節約できます。
5. 材料の仕入れ方法改善(月1〜3万円削減可能)
改善方法
- まとめ買いで単価を下げる
- 複数業者からの見積もり比較
- 期限切れ廃棄の減少
- 在庫管理の徹底
お客さんへの影響:なし 品質は保ったまま仕入れ価格を下げる方法です。
6. 事務用品・消耗品費の見直し(月5千〜1万円削減可能)
節約のコツ
- ネット通販での一括購入
- 必要以上に高品質なものを避ける
- 在庫管理で無駄買いを防ぐ
- 中古品やリース利用の検討
お客さんへの影響:なし 業務に支障なく節約できます。
7. 交通費・ガソリン代の節約(月5千〜1万5千円削減可能)
節約方法
- 仕入れの移動を効率化
- 燃費の良い車への変更検討
- 近場の仕入れ先を開拓
- 配送サービスの活用
8. 税理士・会計費用の見直し(月5千〜2万円削減可能)
見直しポイント
- 会計ソフト導入で税理士依存を減らす
- 複数の税理士事務所で見積もり比較
- 本当に必要なサービスかチェック
9. 広告費の効率化(月1〜5万円削減可能)
効率化の方法
- 効果測定をして無駄な広告をストップ
- 口コミ・紹介を増やして広告費削減
- SNS活用で低コスト集客
- 地域密着で自然な宣伝効果
10. その他の雑費見直し(月5千〜1万円削減可能)
チェック項目
- 使っていない月額サービス
- 過剰な清掃用具購入
- 不要な雑誌・新聞の購読
- 過度な接待費・会議費
【絶対に削ってはいけない経費】ワースト5
❌ NG1:お客さんが直接触れるもの
削ってはいけないもの
- シャンプー・トリートメントの品質
- タオルの清潔さ・品質
- 椅子やシャンプー台のメンテナンス
- 清掃用具・消毒用品
理由
これらはお客さんが直接体感するものです。
品質を下げると、すぐにお客さんに気づかれて
満足度が下がります。
❌ NG2:技術向上・教育費
削ってはいけないもの
- スタッフの技術研修費
- 新しい技術習得のためのセミナー参加費
- 専門書籍・教材費
- 技術コンテストの参加費
理由
技術力は美容室の生命線です。
技術が向上すれば、自然と客単価も上がります。
成功例 月1万円の研修費をかけ続けたE美容室:
- 6ヶ月後、新技術で客単価1,500円アップ
- 研修費1万円 × 6ヶ月 = 6万円の投資
- 客単価アップで月15万円の売上増加
- 投資回収期間:わずか3ヶ月
❌ NG3:清潔さに関わる経費
削ってはいけないもの
- 掃除用品・洗剤
- タオルやガウンのクリーニング代
- 消毒・除菌用品
- 空気清浄機の電気代
理由
美容室の清潔感は、お客さんの信頼に直結します。
不潔な印象を与えると、二度と来てもらえません。
❌ NG4:安全に関わる経費
削ってはいけないもの
- 設備の定期メンテナンス費
- 安全装置・消防設備の維持費
- 保険料(必要最小限は維持)
- セキュリティ関連費用
理由
事故やトラブルが起きてからでは遅いです。
予防にかかる費用は必要経費です。
❌ NG5:お客さんとの関係維持に必要な経費
削ってはいけないもの
- お客さん用のドリンクサービス
- 季節の飾りつけ・BGM
- お客さんへの手紙やDM費用
- アフターフォローのための通信費
理由
これらは利益に直結する投資です。
削ると顧客満足度とリピート率が下がります。
【慎重に判断すべき経費】グレーゾーン
判断が分かれる経費項目
雑誌・新聞代
- 削る場合:お客さんがあまり読まない、古い雑誌ばかり
- 削らない場合:お客さんが楽しみにしている、最新情報源
BGM・音楽配信料
- 削る場合:無料の音楽でも十分な場合
- 削らない場合:お店の雰囲気作りに重要な場合
装飾・インテリア関連費
- 削る場合:過度な装飾、効果が見えないもの
- 削らない場合:お店の個性・差別化につながるもの
判断の基準
以下の質問に答えて判断しましょう:
- お客さんは気づくか?
- 売上に影響するか?
- 他で代替できるか?
- 本当に必要か?
全て「いいえ」なら削る、1つでも「はい」なら慎重に検討。
経費削減の成功事例:F美容室の取り組み
削減前の状況
- 月売上:110万円
- 月経費:95万円
- 月利益:15万円(利益率13.6%)
実施した経費削減
削った経費
- LED電球交換 → 電気代月8千円削減
- 通信費プラン見直し → 月1万2千円削減
- 保険の見直し → 月6千円削減
- 仕入れ方法改善 → 月1万5千円削減
- 不要な雑誌購読停止 → 月3千円削減
削らなかった経費
- シャンプー・トリートメントの品質維持
- スタッフ研修費はむしろ増額
- 清掃・消毒用品は高品質を維持
- お客さん用ドリンクサービス継続
削減後の結果(3ヶ月後)
- 月売上:112万円(微増)
- 月経費:90万円(5万円削減)
- 月利益:22万円(7万円増加)
- 利益率:19.6%(6%向上)
成功の秘訣
お客さんの満足度を下げずに、
見えない部分で効率化を図ったこと。
経費削減の具体的な進め方
ステップ1:現在の経費を全て書き出す
経費の分類例
【固定費】
- 家賃:○万円
- 人件費(基本給):○万円
- 保険料:○万円
- ローン返済:○万円
【変動費】
- 材料費:○万円
- 光熱費:○万円
- 広告費:○万円
- 消耗品費:○万円
【その他】
- 税理士費用:○万円
- 通信費:○万円
- 交通費:○万円
ステップ2:各経費を3つに分類する
🟢 緑色(安心して削れる)
- お客さんが気づかない
- サービス品質に影響しない
- 代替手段がある
🟡 黄色(慎重に判断)
- お客さんが気づくかもしれない
- 一部サービスに影響の可能性
- 代替案を検討する必要
🔴 赤色(絶対に削ってはいけない)
- お客さんが直接関わる
- サービス品質に直結
- 安全・清潔に関わる
ステップ3:緑色から順番に削減実行
実行の順番
- まず緑色の経費から削減開始
- 効果を測定(1ヶ月後)
- 問題なければ黄色の経費を検討
- 赤色の経費は基本的に手をつけない
経費削減の成功パターン・失敗パターン
✅ 成功パターン
パターン1:見えない部分の効率化
- 仕入れ方法の改善
- 光熱費の節約技術
- 事務作業の効率化
- 無駄な契約の見直し
パターン2:代替手段の活用
- 高い業者から安い業者への変更
- 購入からリースへの変更
- 外注から内製への変更
- 新技術導入による効率化
パターン3:段階的な改善
- 急激な変更を避ける
- お客さんへの説明と理解
- 効果測定と微調整
- 継続的な見直し
❌ 失敗パターン
パターン1:お客さん体験の悪化
- 材料品質の低下
- 清潔感の低下
- 接客時間の短縮
- サービス内容の削減
パターン2:急激な変更
- 一度に大幅な削減
- 事前説明なしの変更
- スタッフへの相談なし
- お客さんの反応を見ない
パターン3:必要な投資まで削る
- 技術向上への投資停止
- 設備メンテナンス延期
- 宣伝・集客活動の停止
- スタッフ教育費の削減
業種別・経費項目別の削減目安
光熱費の削減目安
現在の光熱費が売上の5%以上
→ 削減余地大 現在の光熱費が売上の3〜5%
→ 適正、微調整程度 現在の光熱費が売上の3%以下
→ 削減の必要なし
具体的な削減方法
- LED化:20〜30%削減
- エアコン清掃:10〜15%削減
- 営業時間外電気:10〜20%削減
材料費の削減目安
現在の材料費が売上の15%以上
→ 削減余地大 現在の材料費が売上の10〜15%
→ 適正範囲 現在の材料費が売上の10%以下
→ 削減注意
品質を保った削減方法
- 仕入れ先の見直し:5〜10%削減
- まとめ買い:3〜5%削減
- 在庫管理改善:5〜8%削減
広告費の削減目安
現在の広告費が売上の10%以上
→ 削減余地大 現在の広告費が売上の5〜10%
→ 効果測定が必要 現在の広告費が売上の5%以下
→ 削減慎重に
効率的な削減方法
- 効果の薄い広告停止:30〜50%削減
- SNS活用で低コスト化:20〜40%削減
- 紹介システムで広告依存脱却:50%以上削減
経費削減の注意点とリスク回避
注意点1:削減しすぎのリスク
経費を削りすぎると、以下のリスクがあります:
- サービス品質の低下
- スタッフのモチベーション低下
- 設備の故障・劣化
- 競合他店との差が広がる
注意点2:お客さんへの影響測定
経費削減後は必ず以下をチェック:
- お客さんからの苦情は増えていないか?
- リピート率は下がっていないか?
- スタッフから不満の声はないか?
- 売上に悪影響は出ていないか?
注意点3:削減効果の測定
測定すべき数字
- 削減前後の経費比較
- 利益率の変化
- お客さんの満足度
- スタッフの働きやすさ
測定期間 最低3ヶ月は様子を見て判断しましょう。
今日からできる経費削減3ステップ
ステップ1:現状把握(今日)
やること
- 先月の経費を項目別に書き出す
- 売上に対する各経費の比率を計算
- 高い経費項目をピックアップ
所要時間:30分
ステップ2:削減計画作成(明日)
やること
- 削減可能な経費を緑・黄・赤で分類
- 緑色の経費から削減目標を設定
- 削減方法を具体的に計画
所要時間:1時間
ステップ3:実行と測定(今月から)
やること
- 緑色の経費削減から開始
- 1週間ごとに効果をチェック
- 問題があれば即座に修正
継続期間:3ヶ月間
まとめ:賢い経費削減で利益率30%を目指そう
美容室の経費削減は「何を削るか」より
「何を削らないか」の判断が重要です。
削減の基本原則
- お客さんの満足度は絶対に下げない
- 見えない部分から効率化する
- 段階的に進める
- 効果を必ず測定する
削減できる経費の例
- 光熱費(LED化、節約意識)
- 通信費(プラン見直し)
- 材料費(仕入れ改善)
- 事務用品(効率的購入)
削ってはいけない経費の例
- お客さんが触れるもの
- 技術向上・教育
- 清潔・安全関連
- お客さんとの関係維持
正しい経費削減で、利益率を5〜10%向上させることは十分可能です!
まずは今日、現在の経費を書き出して分類してみてください。
きっと、削減できる経費が見つかるはずです。
お客さんに喜ばれながら利益も増える、
そんな理想的な美容室経営を実現しましょう!
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