客単価・来店頻度・リピート率の関係を理解して売上アップ

客単価・来店頻度・リピート率の関係を理解して売上アップ

目次

なぜ忙しいのに売上が思うように伸びないのか?

美容室を経営している林さん(仮名)から、
こんな相談を受けました。

「先生、うちのお店、
毎日忙しくてお客様もたくさん来てくれるんですが、
売上が頭打ちなんです。
新規のお客様も結構来るし、
単価もそれなりにあるんですが…
何かが足りないような気がして。
どうすれば売上をもう一段階上げられるでしょうか?」

多くの美容室経営者が同じ悩みを抱えています。
実は、客単価・来店頻度・リピート率の3つの関係を理解せずに、
バラバラに対策を取っていることが原因なんです。

林さんは、この3つの関係性を理解して戦略的に取り組み、
6ヶ月で売上を40%アップさせました。
秘密は「連鎖的改善システム」にありました。

今日は、その具体的な方法をお教えします。

売上の方程式を理解しよう

美容室売上の基本構造

売上の基本方程式

売上 = 客数 × 客単価

でも、これだけでは不十分。
実際は...

売上 = 顧客数 × 来店頻度 × 客単価 × リピート率

より詳細な方程式

年間売上 = 顧客数 × 年間来店回数 × 平均客単価

年間来店回数 = 来店頻度 × リピート継続期間

つまり...
売上 = 顧客数 × 来店頻度 × 客単価 × リピート継続期間

3つの指標の相互関係

客単価と来店頻度の関係

【一般的な傾向】
客単価 ↑ → 来店頻度 ↓
客単価 ↓ → 来店頻度 ↑

【美容室の理想】
客単価 ↑ & 来店頻度 ↑
(価値提供による両立)

リピート率と他指標の関係

リピート率 ↑ → 来店頻度 ↑
リピート率 ↑ → 客単価 ↑(信頼関係構築)
リピート率 ↑ → 新規集客コスト ↓

最適バランスの重要性

【NG例】客単価のみ追求
高単価 + 低頻度 + 低リピート率
= 不安定な売上

【OK例】バランス型
適正単価 + 適正頻度 + 高リピート率
= 安定した売上成長

現状分析:3つの数字を正確に把握する

客単価の正しい計算と分析

基本的な客単価計算

客単価 = 月間売上 ÷ 月間来店客数

例:
月間売上:200万円
月間来店客数:400人
平均客単価:5,000円

詳細分析が必要な項目

【メニュー別客単価】
カットのみ:4,000円
カット+カラー:8,500円
カット+パーマ:9,000円
フルコース:12,000円

【客層別客単価】
20代:6,000円
30代:7,500円
40代:8,500円
50代以上:7,000円

【スタッフ別客単価】
Aスタッフ:7,200円
Bスタッフ:5,800円
Cスタッフ:6,500円

来店頻度の測定方法

来店頻度の計算

来店頻度 = 年間総来店回数 ÷ 年間実顧客数

例:
年間総来店回数:4,800回
年間実顧客数:1,200人
平均来店頻度:4回/年(3ヶ月に1回)

顧客セグメント別分析

【高頻度客】年6回以上(2ヶ月に1回以上)
人数:180人(15%)
来店回数:1,260回
売上貢献:630万円(31.5%)

【中頻度客】年3-5回(2-4ヶ月に1回)
人数:720人(60%)
来店回数:2,880回
売上貢献:1,152万円(57.6%)

【低頻度客】年1-2回(6ヶ月に1回以下)
人数:300人(25%)
来店回数:660回
売上貢献:218万円(10.9%)

リピート率の詳細分析

段階別リピート率

【2回目来店率】
新規客100人中、2回目来店:65人
2回目来店率:65%

【3回目来店率】
2回目来店65人中、3回目来店:45人
3回目来店率:69%

【6ヶ月継続率】
新規客100人中、6ヶ月後も継続:35人
6ヶ月継続率:35%

期間別リピート分析

【1ヶ月以内リピート】25%
【2ヶ月以内リピート】45%
【3ヶ月以内リピート】65%
【6ヶ月以内リピート】75%
【1年以内リピート】80%

3つの指標を連鎖的に改善する戦略

戦略1:リピート率改善を起点とした連鎖改善

なぜリピート率を最初に改善するのか?

リピート率向上 → 信頼関係構築
          ↓
      来店頻度向上 + 客単価向上
          ↓
      売上安定 + 利益率向上

リピート率向上の具体策

【カウンセリング強化】
・初回は通常より15分長く時間確保
・髪質・悩み・ライフスタイルを詳細聞き取り
・写真撮影で仕上がり記録
・次回来店時期の具体的提案

【アフターフォロー】
・来店翌日にお礼LINEメッセージ
・1週間後にスタイリング確認
・1ヶ月後に次回予約案内
・季節変わり目に新提案

効果測定例

改善前:2回目来店率55%
改善後:2回目来店率75%
向上率:20ポイント改善

年間効果:
新規客600人 × 20%向上 = 120人の2回目来店増
120人 × 平均客単価6,000円 = 72万円売上増

戦略2:来店頻度向上による売上最大化

適正来店頻度の設定

【髪質・メニュー別適正頻度】
カットのみ:2-3ヶ月に1回
カラー(白髪染め):1.5-2ヶ月に1回
カラー(おしゃれ染め):2-3ヶ月に1回
パーマ:3-4ヶ月に1回

頻度向上の具体的手法

【美髪計画の提案】
「3ヶ月で理想の髪質を目指しませんか?」
1回目:ダメージケア + カット
2回目:栄養補給トリートメント
3回目:スタイルチェンジ + 総仕上げ

【季節・イベント提案】
春:新生活スタイル
夏:紫外線対策ケア
秋:乾燥対策
冬:忘年会・新年会スタイル

頻度向上の効果例

【改善前】
平均来店頻度:年3.5回
顧客数:800人
年間来店回数:2,800回

【改善後】
平均来店頻度:年4.2回
顧客数:800人
年間来店回数:3,360回

増加効果:560回 × 平均客単価6,000円 = 336万円

戦略3:客単価アップと顧客満足の両立

段階的客単価向上戦略

【第1段階】信頼関係構築期
目標:適正価格での満足度向上
施策:丁寧な施術、的確な提案

【第2段階】価値認識期
目標:サービス価値の理解促進
施策:技術説明、効果の見える化

【第3段階】価値向上期
目標:より高価値なサービス提案
施策:プレミアムメニュー、オプション提案

客単価アップの具体的手法

【メニュー構成の最適化】
基本メニュー:4,000円
推奨メニュー:6,500円(+トリートメント)
プレミアムメニュー:9,000円(+ヘッドスパ)

【オプション提案のタイミング】
カウンセリング時:30%
施術中:40%
仕上げ時:20%
次回予約時:10%

客単価向上と満足度の両立

【価値提供の明確化】
「今日のトリートメントで、来月まで手触りが続きます」
「このカラーなら、2ヶ月は美しい色が保てます」

【選択肢の提供】
無理な押し売りではなく、複数の選択肢を提示
お客様自身の判断を尊重
予算に応じた最適提案

連鎖改善の実践事例

Gサロンの連鎖改善システム

改善前の状況

月間売上:180万円
月間客数:300人
平均客単価:6,000円
平均来店頻度:年3.2回
2回目来店率:50%

課題:
・新規は多いがリピートが少ない
・客単価向上施策の効果が一時的
・売上の安定性に欠ける

実施した連鎖改善プログラム

Phase1:リピート率改善(1-2ヶ月目)

【施策】
・カウンセリング時間を倍増
・美髪計画シートの導入
・LINEでのアフターフォロー開始
・次回予約時期の明確な提案

【結果】
2回目来店率:50%→70%(20ポイント向上)
3ヶ月継続率:30%→45%(15ポイント向上)

Phase2:来店頻度向上(3-4ヶ月目)

【施策】
・季節別美髪プログラムの導入
・3ヶ月スパンでの髪質改善計画
・イベント・季節に合わせた提案強化
・定期メンテナンスの重要性啓発

【結果】
平均来店頻度:3.2回→4.1回(年間0.9回増加)
高頻度客比率:15%→28%

Phase3:客単価最適化(5-6ヶ月目)

【施策】
・信頼関係を基盤とした価値提案
・プレミアムメニューの充実
・オプション提案スキルの向上
・価値の見える化と説明強化

【結果】
平均客単価:6,000円→7,200円(20%向上)
プレミアムメニュー利用率:15%→35%

総合効果(6ヶ月後)

月間売上:180万円→252万円(40%向上)
年間売上効果:864万円増加

内訳:
・リピート率向上効果:年間288万円
・来店頻度向上効果:年間336万円
・客単価向上効果:年間240万円

実際は相乗効果により総効果が期待以上に

小規模サロンでの成功例

Hサロン(一人美容室)の事例

【改善前】
月間売上:80万円
月間客数:160人
平均客単価:5,000円

【戦略】
一人だからできる徹底的な個別対応
完全予約制によるゆとりある接客
お客様一人一人の記録・管理

【改善後】
月間売上:106万円(32.5%向上)
月間客数:140人(効率重視で減少)
平均客単価:7,571円(51%向上)

【ポイント】
客数を絞り込み、一人あたりの価値を最大化
高いリピート率と来店頻度により安定売上確保

業態・規模別の最適戦略

小規模サロン(1-3席)の戦略

特徴を活かした改善アプローチ

【強み】
・個別対応力
・お客様との距離の近さ
・柔軟な対応

【戦略】
リピート率重視 > 来店頻度向上 > 客単価アップ
(信頼関係構築を最優先)

具体的施策

【リピート率向上】
・お客様専用カルテの充実
・LINEでの個別フォロー
・誕生日・記念日の特別対応

【来店頻度向上】
・季節に応じた個別提案
・髪質改善の長期計画
・ライフスタイル変化への対応

【客単価向上】
・技術力向上による価値提供
・時間をかけた丁寧な施術
・お客様専用メニューの開発

中規模サロン(4-8席)の戦略

バランス型改善アプローチ

【強み】
・多様な技術者
・豊富なメニュー
・安定した運営

【戦略】
来店頻度向上 > リピート率向上 > 客単価アップ
(システム化による効率的改善)

具体的施策

【システム化】
・顧客管理システム導入
・予約管理の最適化
・スタッフ間の情報共有

【チーム戦略】
・スタッフ別の得意分野明確化
・連携による総合的サービス
・教育による全体レベル向上

大規模サロン(9席以上)の戦略

組織力活用型アプローチ

【強み】
・豊富なリソース
・専門性の追求
・ブランド力

【戦略】
客単価アップ > 来店頻度向上 > リピート率向上
(専門性と付加価値による差別化)

具体的施策

【専門化】
・技術者の専門分野特化
・高度な技術・サービス提供
・プレミアムブランドの確立

【システム化】
・データ分析による戦略的改善
・マーケティングオートメーション
・効率的な組織運営

実践的な改善ロードマップ

3ヶ月改善プログラム

1ヶ月目:現状分析と基盤整備

Week1: 現状数値の正確な把握
- 客単価・来店頻度・リピート率の計算
- 顧客セグメント分析
- 問題点の洗い出し

Week2: 改善の優先順位決定
- 最も効果的な改善ポイント特定
- 目標数値の設定
- 改善計画の策定

Week3: システム・仕組み整備
- 顧客管理システム導入
- スタッフ教育プログラム開始
- 測定・分析体制構築

Week4: 改善施策開始
- リピート率向上施策実行
- 効果測定開始
- 必要に応じた調整

2ヶ月目:本格的改善実行

Week5-6: リピート率向上集中期間
- カウンセリング強化
- アフターフォロー充実
- 顧客満足度向上施策

Week7-8: 来店頻度向上準備
- 美髪計画・長期プラン導入
- 季節・イベント提案準備
- 予約システム最適化

3ヶ月目:総合的最適化

Week9-10: 来店頻度向上実行
- 定期来店促進キャンペーン
- 個別フォローアップ強化
- 効果測定と調整

Week11-12: 客単価最適化
- メニュー構成見直し
- 価値提案スキル向上
- プレミアムサービス導入

総合評価と次期計画策定

効果測定と継続改善

KPI設定と目標管理

段階別目標設定例

【3ヶ月目標】
リピート率:+10ポイント
来店頻度:+0.3回/年
客単価:+500円
総売上:+15%

【6ヶ月目標】
リピート率:+20ポイント
来店頻度:+0.6回/年
客単価:+1,000円
総売上:+30%

【12ヶ月目標】
リピート率:+30ポイント
来店頻度:+1.0回/年
客単価:+1,500円
総売上:+50%

継続改善のサイクル

月次改善サイクル

Week1: 前月実績分析
- 3つの指標の詳細分析
- 目標達成度評価
- 問題点の特定

Week2: 改善計画策定
- 優先改善項目の決定
- 具体的施策の計画
- 必要リソースの確保

Week3: 改善施策実行
- 計画に基づく実行
- 進捗状況のモニタリング
- 必要に応じた調整

Week4: 効果確認と調整
- 施策効果の測定
- 次月計画への反映
- 成功事例の横展開

今すぐ始められるアクションプラン

今週やること

月曜日

  • [ ] 過去3ヶ月の客単価・来店頻度・リピート率を計算
  • [ ] 現状の問題点を洗い出し

火曜日

  • [ ] 顧客セグメント別の詳細分析
  • [ ] 改善の優先順位を決定

水曜日

  • [ ] リピート率向上の具体策を検討
  • [ ] スタッフとの情報共有・教育開始

木曜日

  • [ ] カウンセリング・アフターフォロー体制見直し
  • [ ] 顧客管理システムの整備

金曜日

  • [ ] 改善施策の開始
  • [ ] 効果測定体制の構築

1ヶ月後の目標

測定可能な目標設定

□ 新規客の2回目来店率5ポイント向上
□ 既存客の平均来店間隔10%短縮
□ プレミアムメニュー利用率20%向上
□ 全体売上10%向上
□ 顧客満足度向上の実感

よくある質問と解決法

Q: 「3つの指標のうち、どれから改善すべきですか?」

A: まずはリピート率から。
信頼関係を築けば、来店頻度も客単価も自然に向上します。
基盤となる関係性の構築が最重要です。

Q: 「客単価を上げると客離れしませんか?」

A: 価値提供なしの値上げは危険ですが、
適切な価値提供があれば問題ありません。
まずは信頼関係構築と価値認識が先です。

Q: 「一人美容室でも同じ戦略で大丈夫ですか?」

A: 基本戦略は同じですが、
一人だからこそできる個別対応力を最大限活かしてください。
親密な関係構築に集中しましょう。

Q: 「効果が出るまでどのくらいかかりますか?」

A: リピート率改善は1-2ヶ月、来店頻度は3-4ヶ月、
客単価は6ヶ月程度で効果を実感できることが多いです。

まとめ:連鎖的改善で売上を劇的にアップ

客単価・来店頻度・リピート率は独立した指標ではありません。
相互に影響し合う関係性を理解し、
戦略的に改善することで劇的な効果が得られます。

連鎖改善の5つのステップ

  1. 現状分析:3つの指標を正確に把握
  2. 優先順位決定:リピート率→来店頻度→客単価の順
  3. 段階的実行:基盤から順次改善
  4. 効果測定:継続的なモニタリング
  5. 継続改善:PDCAサイクルの確立

成功の鍵は相乗効果

リピート率向上 × 来店頻度向上 × 客単価アップ
= 想定以上の売上向上効果

例:各指標20%向上の場合
1.2 × 1.2 × 1.2 = 1.728
→ 72.8%の売上向上効果

今日から始める3つのアクション

  1. 現在の3つの指標を正確に計算する
  2. リピート率向上の具体策を1つ実行する
  3. お客様との関係性強化を最優先する

バラバラに取り組むのではなく、
3つの指標を連鎖的に改善する戦略的アプローチで、
あなたの美容室も確実に売上アップを実現できます。

6ヶ月後、きっとあなたも「連鎖改善の威力」を実感しているはずです!

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 代表取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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