美容室の設備投資、リースvs購入どちらが得?
新しい機器が欲しいけど、リースと購入どっちにしよう…
美容室を経営している佐々木さん(仮名)から、こんな相談を受けました。
「先生、新しいパーマ機を導入したいんですが、
営業マンから『リースの方がお得ですよ』と言われて…
でも本当にそうなんでしょうか?
150万円の機器なんですが、リースだと月4万円を5年間。
計算すると240万円になって、90万円も高い気が…
どちらが良いのか分からなくて困ってます」
これ、多くの美容室経営者が悩むポイントですよね。
実は、リースと購入のどちらが得かは、
あなたの店舗の状況によって大きく変わるんです。
佐々木さんの場合は詳しく分析した結果、購入の方が圧倒的に有利でした。
今日は、その判断基準と具体的な計算方法をお教えします。
リースvs購入、基本的な違いを理解しよう
リースとは?
リースの仕組み
リース会社が機器を購入
↓
美容室が毎月リース料を支払い
↓
契約期間中は使用権のみ
↓
契約終了後は返却(再リースまたは買取も可能)
リースの特徴
- 初期費用がほとんどかからない
- 毎月定額の支払い
- 所有権はリース会社
- 途中解約が困難
- メンテナンス付きプランもある
購入とは?
購入の仕組み
美容室が機器代金を支払い
↓
所有権が美容室に移転
↓
自由に使用・処分が可能
↓
資産として計上、減価償却で費用化
購入の特徴
- 初期費用が大きい
- 総額では安い場合が多い
- 所有権が自分にある
- 自由に売却・処分可能
- メンテナンスは自己責任
リース料金の裏側を知ろう
リース料金の構成要素
リース料金はこうして決まる
機器価格:150万円
+ リース会社の利益:15万円(10%)
+ 金利(年利3-6%):36万円(5年間)
+ 保険料・事務手数料:9万円
+ 税金等:15万円
+ メンテナンス費用:15万円
= 総リース料:240万円
なぜリースの方が高くなるのか?
- リース会社の利益が上乗せされる
- 金利が5年間かかり続ける
- 各種手数料が加算される
- 税金が複雑に計算される
リース営業マンの「お得」トーク分析
よく聞く営業トーク
「月4万円なら、1日1,300円程度です。
お客様1人分の売上で機器が使えますよ」
現実的な計算
リース:月40,000円×60ヶ月=240万円
購入:150万円
差額:90万円
→ お客様60人分の売上に相当
「メンテナンス込み」のトリック
「メンテナンス込みで安心です」
→ 実際のメンテナンス費用:年3-5万円程度
→ 5年間で15-25万円
→ リースでは50万円以上が
「メンテナンス費用」として計上
損益分岐点を計算してみよう
ケース1:150万円のパーマ機の場合
購入の場合
初期費用:150万円
年間メンテナンス:5万円
5年間総費用:175万円
減価償却:年30万円(税務メリット)
リースの場合
初期費用:0円
月額リース料:4万円
5年間総費用:240万円
リース料:全額経費(税務メリット)
損益比較
総費用差額:65万円(購入が有利)
税務メリット差:年6万円×5年=30万円
実質差額:35万円(購入が有利)
ケース2:300万円の高額機器の場合
購入の場合
初期費用:300万円
年間メンテナンス:8万円
5年間総費用:340万円
減価償却:年60万円
資金調達コスト:年利2%として30万円
リースの場合
初期費用:0円
月額リース料:7.5万円
5年間総費用:450万円
損益比較
総費用差額:110万円(購入が有利)
ただし、初期資金300万円の調達が課題
あなたの店舗はどちらが得?判断基準
購入が有利なケース
1. 資金に余裕がある場合
✓ 初期投資額の1.5倍以上の現金がある
✓ 借入余力に問題がない
✓ 他の投資計画と競合しない
2. 長期使用が確実な場合
✓ 同じ場所で5年以上営業予定
✓ 技術変化が少ない機器
✓ 故障リスクが低い機器
3. 節税効果を重視する場合
✓ 利益が安定して出ている
✓ 減価償却による節税メリット大
✓ 投資促進税制の適用可能
リースが有利なケース
1. 資金繰りを重視する場合
✓ 初期投資を抑えたい
✓ 現金は他の用途に使いたい
✓ 借入枠を温存したい
2. 不確定要素が多い場合
✓ 移転の可能性がある
✓ 技術革新が早い機器
✓ 需要が不安定
3. メンテナンス負担を避けたい場合
✓ 機器に詳しいスタッフがいない
✓ メンテナンス業者との関係がない
✓ 故障時の対応が不安
実際の判断事例
成功事例1:Rサロンの場合
状況
- 5席の中規模サロン
- 営業5年、安定経営
- カラー専用機器(180万円)の導入検討
購入を選択した理由
1. 手元資金:500万円(十分な余裕)
2. 使用期間:10年以上確実
3. 技術変化:少ない機器
4. 節税効果:年間利益600万円で大きなメリット
結果
購入総費用:200万円(5年間)
リース想定費用:270万円
節約効果:70万円
この資金で追加の機器も購入し、
売上20%アップを実現
成功事例2:Sサロンの場合
状況
- 2席の小規模サロン
- 開業2年目
- 最新式パーマ機(120万円)の導入検討
リースを選択した理由
1. 手元資金:200万円(ギリギリ)
2. 他の投資:店舗改装を優先したい
3. 技術革新:新技術の機器が次々登場
4. 不確定要素:将来の移転可能性
結果
リース料:月3.5万円
手元資金温存:120万円
→ 店舗改装に投資し、客数30%増
2年後に最新機器にアップグレード
技術革新に対応できた
機器別の最適選択パターン
購入推奨機器
1. 基本的な設備
・洗髪台:耐用年数長、技術変化少
・椅子:故障リスク低、長期使用
・ドライヤー:低価格、交換容易
2. 安定技術の機器
・基本的なパーマ機
・従来型カラー機器
・スチーマー
リース推奨機器
1. 高額・最新技術機器
・最新のカラー分析機器
・デジタルパーマ機
・高度な美容機器
2. 技術革新が早い機器
・IT関連機器
・分析・診断機器
・新技術の実験的機器
税務面での比較検討
購入の税務メリット
減価償却の活用
機器価格:150万円
耐用年数:5年
年間償却費:30万円
税率30%の場合
年間節税効果:9万円
5年間総節税:45万円
投資促進税制の活用
条件:
・青色申告
・一定規模以上の設備投資
・新品の機器
メリット:
・特別償却または税額控除
・初年度に大きな節税効果
リースの税務メリット
全額経費計上
リース料:月4万円
年間経費:48万円
税率30%の場合
年間節税効果:14.4万円
現金流出との差額が小さい
資金調達を考慮した判断
銀行融資と比較
購入(銀行融資利用)vs リース
【銀行融資での購入】
機器価格:150万円
融資金利:年2.5%
返済期間:5年
月返済額:26,500円
総返済額:159万円
【リース】
月リース料:40,000円
総支払額:240万円
差額:81万円(融資購入が有利)
自己資金の機会コスト
手元資金の活用効果
機器購入:150万円
他投資の期待収益率:年10%
5年間の機会コスト:
150万円×10%×5年=75万円
リース差額:90万円
実質損失:15万円(リースが有利)
契約時の注意点
リース契約のチェックポイント
1. 契約条件の確認
□ 月額料金の内訳
□ 契約期間と中途解約条件
□ メンテナンス範囲
□ 故障時の対応
□ 契約終了時の選択肢
2. 隠れたコスト
□ 保険料
□ 設置・撤去費用
□ 延長時の料金
□ 買取時の価格
購入時のチェックポイント
1. 購入条件の確認
□ 保証期間と内容
□ メンテナンス契約
□ 故障時の対応
□ 下取り・買い替え制度
2. 資金計画の確認
□ 支払い条件
□ 融資の必要性
□ 他投資への影響
□ 緊急時資金の確保
実践的な判断フローチャート
ステップ1:基本条件の確認
Q1: 初期投資額の2倍以上の現金がありますか?
→ YES: ステップ2へ
→ NO: リース検討
Q2: 5年以上同じ場所で営業予定ですか?
→ YES: ステップ3へ
→ NO: リース検討
Q3: 年間利益が安定していますか?
→ YES: 購入検討
→ NO: ステップ4へ
ステップ2:機器特性の確認
Q4: 技術革新が激しい機器ですか?
→ YES: リース検討
→ NO: 購入検討
Q5: メンテナンスが複雑ですか?
→ YES: リース検討
→ NO: 購入検討
ステップ3:経済計算
購入総費用 vs リース総費用
節税効果の比較
機会コストの計算
→ 最終判断
今すぐできる判断アクション
今週やること
月曜日
- [ ] 検討中の機器価格とリース料を確認
- [ ] 手元資金と今後の資金計画を整理
火曜日
- [ ] 税理士に税務メリットを相談
- [ ] 銀行に融資条件を確認
水曜日
- [ ] 複数のリース会社から見積もり取得
- [ ] 機器メーカーに購入条件を確認
木曜日
- [ ] 総コスト比較表を作成
- [ ] 機会コストを計算
金曜日
- [ ] 判断フローチャートで最終確認
- [ ] 決定事項の文書化
判断に必要な資料
財務関連
- [ ] 損益計算書(直近3年)
- [ ] 貸借対照表
- [ ] 資金繰り表
- [ ] 銀行借入状況
機器関連
- [ ] 機器の詳細仕様
- [ ] 保証・メンテナンス内容
- [ ] 類似機器との比較
- [ ] 将来の技術動向
よくある失敗パターンと対策
失敗パターン1:営業トークに流される
失敗例 「月額4万円なら楽々支払えます」 → 総額を考えずに契約
対策 必ず総額で比較し、5年後の状況も考慮
失敗パターン2:資金繰りを軽視
失敗例 手元資金ギリギリで購入 → 他の支払いで困窮
対策 購入後も十分な手元資金を確保
失敗パターン3:将来変化を考慮しない
失敗例 技術革新を無視して購入 → 2年後に陳腐化
対策 機器の技術トレンドを調査
まとめ:最適な選択で経営効率アップ
リースvs購入の判断は、単純な損得勘定だけでなく、
あなたの店舗の状況を総合的に考慮する必要があります。
判断の3つのポイント
- 財務状況:現金余力と資金計画
- 事業計画:将来の営業方針と投資計画
- 機器特性:技術革新と使用期間
購入が有利な条件
✓ 十分な現金余力
✓ 安定した収益
✓ 長期使用予定
✓ 技術変化が少ない機器
✓ 節税効果を活用したい
リースが有利な条件
✓ 初期投資を抑えたい
✓ 技術革新が早い機器
✓ 将来の不確定要素が多い
✓ メンテナンス負担を避けたい
✓ 資金を他に活用したい
多くの場合、購入の方が総コストは安くなりますが、
資金繰りや事業戦略によってはリースが最適な場合もあります。
今日からできること
- 現在の財務状況を正確に把握する
- 導入予定機器の総コストを計算する
- 5年後の事業計画を明確にする
重要なのは、目先の支払いやすさではなく、
長期的な経営効率と成長戦略を考慮することです。
正しい判断で、効率的な設備投資を実現しましょう。
きっと5年後、あなたの選択が正しかったと実感できるはずです!
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