無駄な在庫を減らして資金繰りを改善するコツ
在庫が眠ったまま、お金も眠ってませんか?
美容室を経営している高橋さん(仮名)から、
こんな相談を受けました。
「先生、うちの倉庫、材料がいっぱいで足の踏み場もないんです。
でも不思議なことに、いざ使おうと思うと
『あれ?ない!』ってことがよくあって…
そのたびに急いで注文するから、余計に在庫が増えちゃって。
お金も材料に縛られてる感じで、資金繰りがキツいんです」
これ、多くの美容室あるあるですよね。
実は、在庫管理を改善するだけで資金繰りが劇的に良くなるんです。高橋さんのお店では、4ヶ月間で在庫を40%削減し、浮いたお金で新しいサービスを始めることができました。
今日は、その具体的な方法をお教えします!
なぜ美容室の在庫は増えがちなのか?
在庫が増える5つの悪い習慣
1. 「安心のため」の過剰発注
- 「足りなくなったら困る」という心理
- 「まとめ買いの方がお得」という思い込み
- 実際の使用量を把握していない
2. 管理システムがない
- 何がどれだけあるか分からない
- 使用期限を把握していない
- 発注のタイミングがバラバラ
3. 衝動的な購入
- 営業マンに勧められてつい購入
- 新商品に飛びつく
- セール情報に踊らされる
4. 使わない商品の蓄積
- 試しに買ったけど使わない商品
- 季節商品の売れ残り
- お客様に合わなかった商品
5. スタッフ間の連携不足
- 誰が何を発注したか分からない
- 重複発注が発生
- 在庫確認をせずに発注
あなたのお店の在庫、適正ですか?
美容室の適正在庫目安
【回転期間の目安】
日用品(シャンプーなど):1ヶ月分
カラー剤:2ヶ月分
パーマ液:3ヶ月分
季節商品:1ヶ月分
在庫金額の目安 月間材料費の2-3ヶ月分が適正
例:月間材料費20万円の場合 適正在庫金額:40-60万円
もしこれを大幅に超えている場合は、改善の余地があります!
今すぐできる!在庫削減の第一歩
ステップ1:現状把握から始めよう
在庫の棚卸し
準備するもの
- 在庫リスト用紙(または簡単なアプリ)
- 電卓
- 付箋(期限表示用)
棚卸しの手順
1. すべての材料を種類別に分ける
2. 商品名・数量・購入価格を記録
3. 使用期限をチェック
4. 最後に使った日を思い出す
簡単記録表の例
商品名:カラー剤(ブラウン)
数量:15本
単価:800円
購入価格:12,000円
期限:2025年8月
最終使用:先月
ステップ2:「ABC分析」で優先順位をつける
ABC分析って何? 商品を使用頻度と重要度で3つに分類する方法
A商品(毎日使う重要商品)
- シャンプー、トリートメント
- 基本的なカラー剤(ブラウン系)
- タオル、手袋
B商品(週1-2回使う商品)
- パーマ液
- 特殊カラー剤
- スタイリング剤
C商品(月1回以下の商品)
- 季節限定商品
- 特殊処理剤
- イベント用商品
管理方法の違い
【A商品】常に適正在庫を維持
【B商品】最小限の在庫で都度補充
【C商品】使用予定がある時のみ購入
ステップ3:「使わない商品」を見つけ出す
6ヶ月ルールを適用
6ヶ月以上使っていない商品は思い切って処分を検討しましょう。
処分方法の例
【期限内の商品】
- スタッフの練習用に使用
- 他店への譲渡・交換
- オンライン販売
【期限切れ商品】
- 適切に廃棄
- 損失として計上し、税務上の処理
実践!資金繰り改善テクニック
テクニック1:「ジャストインタイム発注」
従来の発注方法(NG例) 「そろそろなくなりそうだから、まとめて注文しよう」
改善後の発注方法(OK例) 「使用量から逆算して、ちょうど良いタイミングで必要分だけ注文」
具体的な計算方法
例:シャンプー1Lボトルの場合
1日の使用量:100ml
1ヶ月の使用量:3L(3本)
発注から到着まで:3日
安全在庫:3日分(300ml)
発注タイミング:残り600ml(6日分)の時
発注量:3本(1ヶ月分)
効果
- 在庫金額30%削減
- 資金繰りの改善
- 保管スペースの有効活用
テクニック2:「期限管理システム」の導入
簡単期限管理法
色分けシール作戦
赤シール:1ヶ月以内に期限
黄シール:3ヶ月以内に期限
青シール:6ヶ月以内に期限
シールなし:6ヶ月以上
先入先出し(FIFO)の徹底
- 古いものから順番に使用
- 新しく入荷したものは奥に配置
- 期限の近いものは目立つ場所に
デジタル管理のススメ スマホアプリ「在庫管理」(無料)を活用
- 期限アラート機能
- 使用量の自動計算
- 発注タイミングの通知
テクニック3:「共同購入」で小ロット対応
近隣サロンとの連携
共同購入のメリット
- 大容量パックを小分けできる
- 配送費の削減
- 新商品のリスク分散
実施例
【従来】各店舗で10Lタンク購入
A店:使用量5L → 5L余る
B店:使用量3L → 7L余る
【共同購入後】20Lタンクを4店舗で分割
各店舗:必要分だけ購入 → 余りゼロ
年間削減効果 在庫金額:40%削減 保管スペース:50%削減
中級編:システム化で効率アップ
発注ルールの標準化
誰でもできる発注システム
発注チェックリスト
□ 現在の在庫量を確認
□ 1ヶ月の使用予定量を計算
□ 発注から到着までの日数を考慮
□ 安全在庫分を加算
□ 発注量を決定
□ 発注日・到着予定日を記録
発注担当者の決定
- 週1回の定期発注日を設定
- 発注担当者を固定
- 緊急時の対応ルールを明確化
在庫データの見える化
月次在庫レポートの作成
記録する項目
1. 在庫金額の推移
2. 回転率の変化
3. 期限切れによる廃棄金額
4. 発注回数と配送費
5. 在庫削減による資金効果
目標設定の例
【3ヶ月目標】
在庫金額:20%削減
廃棄ロス:50%削減
資金繰り:現金手持ち1ヶ月分増加
上級編:戦略的在庫管理
季節変動への対応
季節商品の管理戦略
春夏商品(3-8月)
- UVケア商品
- さっぱり系シャンプー
- 明るめカラー剤
秋冬商品(9-2月)
- しっとり系トリートメント
- 暗めカラー剤
- 静電気防止商品
管理のコツ
【シーズン前】
必要最小限の量を発注
【シーズン中】
売れ行きを見て追加発注
【シーズン終了1ヶ月前】
発注ストップ、在庫消化に集中
新商品導入のリスク管理
「お試し購入」システム
従来の導入方法(リスク大) 営業マンの話を聞いて、いきなり大量購入
改善後の導入方法(リスク小)
1. サンプルでテスト使用
2. スタッフとお客様の反応を確認
3. 最小単位で試験導入
4. 反応が良ければ本格導入
5. 反応が悪ければ早期撤退
判断基準の明確化
導入判断基準:
□ スタッフ評価80%以上
□ お客様満足度向上
□ 既存商品との差別化
□ 利益率の確保
□ 安定供給の確保
実際の成功事例
Fサロンの在庫改革
改革前の状況
- 在庫金額:180万円(月間材料費の6ヶ月分)
- 毎月の廃棄ロス:8万円
- 資金繰り:常にギリギリ
- 保管場所:倉庫がパンク状態
実施した対策
- 全在庫の棚卸しとABC分析
- 6ヶ月以上未使用商品の整理
- ジャストインタイム発注システム導入
- 近隣2店舗との共同購入開始
- 期限管理システムの徹底
改革後の結果(6ヶ月後)
- 在庫金額:108万円(40%削減)
- 廃棄ロス:月2万円(75%削減)
- 資金繰り:現金手持ち2ヶ月分確保
- 保管場所:50%のスペース活用
オーナーのコメント 「最初は『在庫が少なくて大丈夫?』と不安でしたが、実際は全く問題なし。むしろ、必要な時に必要なものがすぐ見つかるようになって効率が上がりました。浮いたお金で新しい研修にも参加できて、技術レベルも向上しています!」
スタッフ全員で取り組む在庫管理
チーム一丸となる仕組み作り
役割分担の明確化
オーナー・店長
- 在庫管理方針の決定
- 月次レポートの確認
- 改善指示
発注担当者
- 週次在庫チェック
- 発注量の決定
- 入荷商品の確認
全スタッフ
- 使用量の記録
- 期限チェック
- 異常の報告
在庫削減インセンティブ
成果連動型ボーナス
在庫削減目標達成時:
スタッフ全員に特別手当
廃棄ロス削減達成時:
削減金額の20%をスタッフに還元
改善提案制度
- 在庫管理の改善アイデア募集
- 採用されたアイデアには報奨金
- 四半期最優秀提案者には特別賞
今すぐ始められる在庫改善アクションプラン
今週やること
月曜日
- [ ] 現在の在庫を全て書き出す
- [ ] 在庫金額を計算する
火曜日
- [ ] ABC分析で商品を分類
- [ ] 6ヶ月以上使っていない商品をマーク
水曜日
- [ ] 期限切れ・期限間近商品をチェック
- [ ] 処分・活用方法を決定
木曜日
- [ ] 主要商品の使用量を測定開始
- [ ] 発注ルールの検討
金曜日
- [ ] 1週間の成果をチェック
- [ ] 来週の改善計画を立案
1ヶ月後の目標設定
短期目標(1ヶ月)
- 在庫の全容把握完了
- 不要在庫20%削減
- 発注ルール作成
中期目標(3ヶ月)
- 在庫金額30%削減
- 廃棄ロス50%削減
- 資金繰り改善実感
長期目標(6ヶ月)
- 在庫金額40%削減達成
- 浮いた資金で新規投資
- システム化完了
よくある質問と解決法
Q: 「在庫を減らして、お客様に迷惑をかけませんか?」
A: 適正な在庫管理なら問題ありません。むしろ「必要な時に新鮮な商品」を提供できるようになります。緊急時のためのネットワークも構築すれば完璧です。
Q: 「まとめ買い割引がもったいない気が…」
A: 割引額と在庫コスト(金利、保管費、廃棄リスク)を比較してください。多くの場合、適正在庫の方がトータルコストは安くなります。
Q: 「スタッフが面倒がって協力してくれない」
A: 在庫削減の効果をスタッフと共有し、浮いたお金の一部を還元することで協力が得られます。「みんなでお店を良くしよう」という意識を大切に。
Q: 「複雑な管理システムは続かないかも…」
A: 最初は簡単な方法から始めましょう。完璧を求めず、まずは「見える化」から。習慣になってから徐々に精度を上げていけばOKです。
まとめ:在庫管理は経営改善の特効薬
在庫の適正化は、美容室経営において非常に効果的な改善手法です。
在庫削減の5つのメリット
- 資金繰りの劇的改善:現金が手元に残る
- 利益率の向上:廃棄ロスの削減
- 効率性の向上:必要なものがすぐ見つかる
- スペースの有効活用:保管場所の確保
- 経営の見える化:数字で状況把握
成功する在庫管理の3つのポイント
- 現状把握の徹底:何があるかを正確に知る
- ルールの標準化:誰でもできるシステム作り
- 継続的な改善:小さな積み重ねが大きな効果
段階的アプローチが重要
【第1段階】見える化(今すぐ)
現状把握、ABC分析
【第2段階】ルール化(1ヶ月後)
発注システム、期限管理
【第3段階】最適化(3ヶ月後)
戦略的管理、システム化
在庫管理の改善は、一度軌道に乗れば継続的に効果を発揮します。月50万円の在庫削減ができれば、年間600万円の資金効果。この資金で新サービス開発、設備投資、スタッフ教育など、さまざまな成長投資が可能になります。
今日からできること
- 倉庫の中身を全て書き出す
- 6ヶ月以上使っていないものをチェック
- 1週間の使用量を記録してみる
「在庫は資産」と思いがちですが、「動かない在庫は負債」です。スッキリした倉庫と豊かな資金繰りで、理想の美容室経営を実現しませんか?
3ヶ月後、きっとあなたも「在庫管理を見直して本当に良かった!」と実感しているはずです。
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