9月に入っても、静岡市清水区はまだ昼間の気温が30度を超える日がある。でも、夕方になると港から涼しい風が吹いてきて、「ああ、秋が近いな」と感じる瞬間がある。居酒屋の経営者にとっては、秋はこれから書き入れ時。歓迎会シーズンが終わり、忘年会シーズンが始まる前の"仕込み期間"でもある。
この記事で紹介するのは、そんな大事な仕込み期間に「声かけによる口コミお願い」をやめた、ある居酒屋オーナーの話だ。口コミがゼロの状態からアンケートを導入し、3ヶ月後に何が変わったのか。そして、その裏側でポータルサイト依存から抜け出す「3本柱」がどう育っていったのか。
僕、ハワードジョイマンが、その居酒屋オーナーとともに歩んだ一日を追いながら、あなたの店でも使える手順を書いていく。
📋 この記事でわかること
- 口コミがゼロの居酒屋がアンケート導入で何をどう変えたか
- ポータルサイト依存から抜け出すために必要な「3本柱」の具体的な中身
- GBP・Instagram・LINE公式を同時並行で立ち上げる順番と注意点
- 声かけをやめた後に口コミが増えた理由と、その仕組みの作り方
こんな方におすすめ
- ✅ ホットペッパーや食べログの掲載料が年々上がり、利益が残らないと感じているオーナー
- ✅ 「口コミをお願いして」と声をかけているのに、なかなか集まらないと悩んでいる方
- ✅ ポータルをやめたいが、解約後に客足が落ちるのが怖くて踏み切れない方
- ✅ GBP(Googleビジネスプロフィール)やInstagram、LINE公式を活用した自前集客を始めたい方
- ✅ クーポン目当ての一見客ではなく、リピートにつながるお客様を増やしたい方

午前10時:コンサルの一日は「現状の数字を読む」ところから始まる
新清水駅から徒歩1分。巴町にある僕のオフィスに着くのは朝10時だ。まず最初にやることは、支援中のクライアントのGBP(Googleビジネスプロフィール=Googleマップに表示される店舗情報ページのこと)のインサイトデータを確認することだ。
この日、画面に映し出されたのは、静岡市内で居酒屋を経営するKオーナーの数字だった。3ヶ月前、この方のGBPには口コミが1件もなかった。Googleマップで検索しても、星の数すら表示されない状態。「近くの居酒屋」と検索しても、ライバル店の後ろに埋もれていた。
Kオーナーが最初に相談に来たとき、こう言っていた。「ホットペッパーに月8万円払っているんですが、来るのはクーポン目当てのお客さんばかりで。リピートにつながらないし、利益も残らない。でも、やめたら客が来なくなりそうで怖い」と。
その気持ちは痛いほどわかる。ポータルサイトは確かに集客力がある。でも、その集客力はポータルのものであって、あなたの店のものではない。だから、依存したまま解約すると確実に売上が落ちる。
「ポータルをやめるのは、ゴールじゃなくてスタートの話です。自前集客の柱が育った後に卒業するのと、何も準備せずに切るのとでは、結果がまったく違う。6ヶ月間の"助走期間"が必要なんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・MEO集客大全)
午前11時:「声かけ口コミ」をやめた理由を、データで確認する
Kオーナーが以前やっていたのは、会計時にスタッフが「よかったらGoogleに口コミを書いていただけますか?」と声をかける方法だった。でも、3ヶ月やって集まった口コミは2件だけ。しかも、そのうち1件は知人からのものだった。
なぜ声かけは集まりにくいのか。理由はシンプルで、「口コミを書く」という行為は、お客様にとって手間がかかるうえ、何を書けばいいか分からないからだ。特に居酒屋のような感情的な満足感が高い業態では、「楽しかった」という気持ちはあっても、それを文章にするハードルが高い。
そこでKオーナーに提案したのが、お客様アンケート方式の口コミ集めだ。「口コミを書いてください」とお願いするのではなく、「アンケートに答えてもらう」形にする。お客様が答えやすい質問を設計し、その回答内容が自然にGoogleの口コミになる流れを作る仕組みだ。
具体的な手順についてははじめてのお客様アンケート設置|店頭QRから口コミまでの手順でも詳しく解説しているが、今日の記事ではKオーナーの実例を通じて、その"舞台裏"を掘り下げていく。
✓ ここまでのポイント
- ポータル依存から抜けるには「自前集客の柱」を先に育てる6ヶ月の助走期間が必要
- 声かけによる口コミお願いは手間とハードルが高く、集まりにくい構造になっている
- アンケート方式に切り替えることで、お客様が「答えやすい」流れを作れる
午後1時:3本柱を同時に立ち上げる。順番と優先度の話
昼休憩を挟んで、午後はKオーナーとのオンライン面談の時間だ。この日は3ヶ月の振り返りと、次の3ヶ月の設計を話し合う。
Kオーナーに最初に伝えたのは、「3つの柱を同時に育てる」という考え方だ。ポータルから卒業するために必要な3本柱とは、次の通りだ。
ポータル卒業の3本柱 STEP 1
① GBP(Googleビジネスプロフィール)のMEO最適化
Googleマップで「近くの居酒屋」と検索されたとき、上位に表示されるための整備。具体的には、営業時間・メニュー・写真・属性情報を正確に埋め、週1回以上の投稿更新を続ける。口コミへの返信も48時間以内を目安にする。Kオーナーの場合、最初の1ヶ月はここだけに集中してもらった。
⚠️ よくある失敗:写真を1〜2枚しか登録していないケース。Googleは情報が豊富な店舗を優先して表示する傾向がある。料理・店内・外観・メニュー表など最低20枚は必要だ。
ポータル卒業の3本柱 STEP 2
② Instagram連携によるサイテーション(引用・言及)拡張
サイテーションとは、Web上でその店の名前・住所・電話番号が言及される状態のことだ。InstagramにGBPと一致した情報を載せ、料理や雰囲気の投稿を週2〜3回続けることで、Googleがその店の存在を複数の場所から確認できるようになる。Kオーナーはここで「毎日投稿しなきゃ」と焦ったが、週2〜3回の質の高い投稿の方が効果的だと伝えた。
⚠️ よくある失敗:投稿するだけで、ハッシュタグや位置情報の設定を忘れているケース。「#静岡市居酒屋」「#清水グルメ」のような地域ハッシュタグは必ず入れる。
ポータル卒業の3本柱 STEP 3
③ LINE公式・ニュースレターでのリピート設計
新規集客と並行して、既存顧客が再来店する仕組みを作る。LINE公式アカウントを開設し、来店時に登録してもらう。月に1〜2回、旬の食材情報や限定メニューをLINEで配信するだけで、「またあの居酒屋に行こう」という動機づけができる。Kオーナーの場合、2ヶ月目からLINE登録を始め、3ヶ月目には登録者が87名になっていた。
⚠️ よくある失敗:クーポンしか配信しないこと。クーポンに慣れたお客様はクーポンがなければ来なくなる。「情報」や「エピソード」を中心に、クーポンは補助として使う。
「口コミが増えると、Googleマップの上位表示が安定してきます。上位表示が安定すると、ポータルなしでも新規のお客様が来るようになる。この順番で進めれば、ポータルの解約は怖くなくなります」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・MEO集客大全)
午後2時:数字が語る「仕組み」の威力
3本柱の話をしながら、Kオーナーに他の業種の事例も共有した。居酒屋以外でも、同じ仕組みが機能していることを実感してもらうためだ。
たとえば、眼科クリニックの事例。GBPとアンケート方式の口コミ設計を導入してから9ヶ月後、コンタクト販売数が2倍になり、問い合わせ数は+1,875%増加した。医療機関は「口コミを書いてください」と声をかけること自体が難しい業種だが、アンケート方式に切り替えることで、患者さんの声が自然に集まるようになった事例だ。
葬儀社の事例も紹介した。葬儀という性質上、口コミが集まりにくいと思われがちな業種だが、アンケート方式と適切なGBP運用を組み合わせた結果、10ヶ月で売上+297%・問い合わせ+300%を達成した。
「葬儀社でも口コミが集まるんですか?と驚く方が多いですが、ご家族を亡くされた方が『こんな葬儀社に出会えてよかった』という気持ちを伝えたい場面は、確かにあるんです。その場を設計してあげることが大切なんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・MEO集客大全)
Kオーナーは「医療や葬儀でも仕組みが作れるなら、居酒屋はもっとやりやすいですね」と言って、少し表情が和らいだ。
実際、居酒屋は「楽しかった」「おいしかった」という感情が動きやすい業種だ。お願いする口コミ集め vs アンケート方式の比較でも示しているが、感情が動いているタイミングで「質問に答えてもらう」形にすれば、口コミは自然に増える。
「GBPのMEO最適化とアンケート方式を組み合わせてから、3ヶ月で口コミが23件集まりました。以前は0件だったのに。ホットペッパーの掲載料を払わなくてもお客様が来てくれるようになってきていて、少しずつですが手元に残るお金が増えてきています」
静岡市内・居酒屋オーナー(40代・男性)
まとめ:「卒業」は準備した人だけの特権だ
午後3時、Kオーナーとの面談を終えて、この日の業務は一区切りだ。
ポータルサイトをやめることは、決してリスクではない。でも、準備なしにやめることは間違いなくリスクだ。
大切なのは、次の3つを6ヶ月かけて同時に育てることだ。
- ① GBPのMEO最適化:Googleマップ上での存在感を高め、ポータルなしでも「見つけてもらえる」状態を作る
- ② Instagram連携によるサイテーション拡張:Web上での言及を増やし、Googleに「実在する活発な店舗」と認識させる
- ③ LINE公式・ニュースレターでのリピート設計:一見客をリピーターに変える仕組みを、ポータルの外側に作る
そして、口コミを集める方法を「声かけ」から「アンケート方式」に切り替えること。これだけで、3本柱の根が深く張るスピードが格段に上がる。
笑人流に言うと、「ポータルは借り家、自前集客は自分の家」だ。借り家に住み続ける限り、家賃は払い続けなければならない。でも、自分の家が建てば、その家賃をそっくりそのまま利益にできる。
Kオーナーは今、ホットペッパーへの依存度を少しずつ下げながら、自前集客の柱を育てている最中だ。まだ完全には卒業していないが、「もうすぐ卒業できる」という確かな手応えを感じている、とこの日の面談で話してくれた。
あなたの店でも、同じプロセスは再現できる。ライバルに対して相対的に勝てれば、Googleマップでの上位表示は手が届く場所にある。ぜひ、今日の記事を参考に、一つひとつ仕込んでみてください。