「社長さん、最後に家族全員で旅行に行ったのはいつですか?」
先日、ある海鮮居酒屋を営む30代の男性オーナーと話していたとき、ふと聞いてみた。彼はしばらく黙って、「…3年前ですかね」とぽつりと言った。
週6日、開店から閉店まで厨房に立ち続ける。仕込みは誰よりも早く来て、片付けは誰よりも遅く残る。「自分が動かなければ店が回らない」という自覚と重圧が、ずっと肩に乗っていた。
でも正直に言えば、それは僕自身も経験してきた感覚だ。役所を辞めて独立し、開業2年半で全財産を失ったあの時期、僕もひたすら自分で抱えて、抱えて、結果的に何もかも崩れた。だからこそ、彼の言葉が他人事じゃなかった。
今回は、その海鮮居酒屋オーナーが「月商380万円→470万円」「定休日を1日増やして家族との時間を取り戻した」という実話をベースに、なぜそれが実現できたのかを書いていく。
📋 この記事でわかること
- 現場依存が生まれる本当の原因と、気づきにくいその構造
- 委譲と仕組み化で「自分がいなくても回る店」をつくる具体的な手順
- 働く時間を減らしながら売上を伸ばした実例と、そこから学べること
- 「経営者の仕事」に集中するための時間の捻出方法
こんな方におすすめ
- ✅ 自分が現場にいないと不安で、休めない状態が続いている飲食店・美容室オーナー
- ✅ 家族との時間を増やしたいのに、仕事を優先し続けてしまっている方
- ✅ スタッフに任せたいけど、品質が落ちるのが怖くて手放せない方
- ✅ 売上は上がっているのに、なぜか手元にお金も時間も残らない方
- ✅ 「経営者として何をすべきか」が分からなくなってきたと感じている方

「俺がいないと回らない」という呪縛の正体
彼が最初に相談してきたとき、真っ先に口にしたのがこの言葉だった。「うちはスタッフがまだ育っていないので、私が現場にいないとダメなんです」と。
でも、少し深く聞いていくと違う景色が見えてきた。スタッフが育っていないのではなく、そもそも任せる仕組みが存在していなかったのだ。
魚の目利き、仕込みの手順、接客でよく聞かれる質問への答え方——すべてがオーナーの頭の中にだけあった。言語化もされていないし、手順書もない。だからスタッフは「聞かなければ動けない」し、オーナーは「聞かれるたびに手を止める」という状態が続いていた。
これは「スタッフの問題」じゃない。「仕組みがない問題」だ。
「俺がいないと回らない」の本当の意味は、「俺の頭の中にしかない情報で店が動いている」ということ。その構造に気づいた瞬間、彼の表情がすこし変わった。
「仕事を任せられない理由のほとんどは、スタッフの能力じゃなくて、任せる準備ができていないオーナー側の問題です。でも、それはオーナーが怠けているわけじゃない。日々の現場に追われて、仕組みをつくる時間が取れていないだけ。だとしたら、まず時間をつくることから始めましょう」
ハワードジョイマン(繁盛店研究所 代表・中小企業診断士)
変化のきっかけは「1週間の行動を全部書き出す」こと
僕が最初に彼にやってもらったのは、難しいことじゃない。1週間、自分が何をしているかをすべて紙に書き出すこと、それだけだ。
朝の仕込みから、スタッフへの声かけ、仕入れ業者との電話、ランチの準備、夜のシフト確認、SNSの更新、売上の集計…。書き出してみると、A4用紙が2枚になった。
そこに「これは自分にしかできないか?」という問いを立てる。すると、実際に「オーナーじゃないとできないこと」は全体の3割もなかった。残りの7割は、手順さえ整えれば他の人でもできる作業だった。
大事なのは、仕事を「大きな塊」で見ないことだ。「仕込み」を一つの塊で見ると「自分にしかできない」に見える。でも「魚を切る→味を付ける→冷蔵庫に入れる→翌日の分量を確認する」と工程に分解すると、どの部分を誰に任せられるかが見えてくる。
この「工程の分解と役割の切り出し」が、仕組み化の第一歩になる。
仕組み化 STEP 1
自分の1週間の行動をすべて書き出す
どんな小さな作業も漏らさず書き出す。「なんとなく毎朝やっていること」も全部リストに。まずは現状を正確に把握することが出発点。
⚠️ よくある失敗:「そんなの分かってる」と書き出しをサボること。頭の中で整理しようとしても、必ず抜け漏れが生じる。紙に書くことで初めて客観的に見える。
仕組み化 STEP 2
工程に分解して「任せられる部分」を切り出す
1つ1つの作業を細かな手順に分解し、「これは自分でなくてもできる」ステップを特定する。最初は小さな作業でいい。
⚠️ よくある失敗:完璧な引き継ぎを目指しすぎて、何も任せられないまま終わること。まず一つの工程を手放すことから始めよう。
仕組み化 STEP 3
手順書をつくって渡す
スタッフが見て動ける手順書(テキストでも写真付きでもいい)を作成し、試してもらう。最初はうまくいかなくて当然。フィードバックを入れながら改善する。
⚠️ よくある失敗:手順書を作らずに「口頭で教えたから大丈夫」と思うこと。口頭の説明は必ず忘れられる。手順書があれば、スタッフも安心して動ける。
✓ ここまでのポイント
- 「俺がいないと回らない」の本質は、仕組みがないことであってスタッフの能力ではない
- 仕事を工程に分解すると、任せられる部分が見えてくる(大半は委譲可能)
- 手順書をつくって渡すことで、初めて「安心して任せられる状態」が生まれる
委譲が進んだとき、何が起きたか
彼がいくつかの工程を手放し始めてから、最初の1か月で変わったのは「実働が1日1時間短縮された」ことだ。数字にすると小さく聞こえるかもしれない。でも月20時間以上になる。
その時間を使って彼がやり始めたのは、新しいドリンクペアリングのメニュー開発と、常連客向けのプレミアムコースの設計。それまでは「考える時間がない」と後回しにしていたことだ。
結果として、客単価が上がり、月商は380万円から470万円に伸びた。そして彼は定休日をもう1日増やすことにした。「子どもの学校行事に初めて行けました」と、少し照れながら話してくれたのを覚えている。
「働く時間を増やして売上を伸ばすのは、社長の仕事じゃないです。儲かるアイデアをつくって、儲かる仕組みを設計する——それが社長の本当の仕事。現場作業は任せる準備ができれば任せていい。あなたがいなくても回る店をつくることが、あなたがいることの一番の価値なんです」
ハワードジョイマン(繁盛店研究所 代表・中小企業診断士)
「定休日を1日増やして、初めて子どもの運動会に行けました。月商も380万から470万に増えて、正直こんなことが同時にできるとは思っていませんでした。仕組みをつくることが、こんなに生き方を変えるとは。」
海鮮居酒屋オーナー(男性・30代)
「社長の仕事」に時間を使えているか?
振り返ってほしいのだが、今のあなたの1日のうち、「儲かるアイデアと仕組みをつくる時間」は何分あるだろうか。
ほとんどの個人店オーナーは、正直ゼロに近い。それは怠けているからじゃない。現場の作業が常に最優先になってしまう構造の中にいるからだ。
でも考えてほしい。料理がうまいだけでは繁盛店にはならない。技術があるだけでは、売上は増えない。社長が現場に張り付いたまま経営する限り、店の成長には天井がある。
❌ 現場依存の経営(よくあるパターン)
- 売上がオーナーの稼働量に比例している
- 休んだ日は売上が落ちる
- 考える時間が取れず、今の延長線上しか描けない
- スタッフが育たず、離職するたびにゼロに戻る
✅ 仕組み化された経営(目指すべき状態)
- オーナーが休んでも、仕組みが売上をつくる
- スタッフが手順書に沿って動き、品質が安定する
- 空いた時間で新しいメニュー・サービス・企画を考えられる
- 「今月どう動くか」を経営者として設計できる
この違いは、才能や運ではなく、「仕組みをつくる時間を取れているかどうか」の差だ。だから最初の一歩は、今の行動の中から「やめること」「任せること」を一つ決めること。そこから始まる。
まとめ:家族との時間を増やすことは、経営を手放すことじゃない
「家族との時間を増やしたい」という望みは、「仕事を諦める」ことじゃない。現場作業を仕組みに置き換えて、社長として本来やるべき仕事に集中できるようになることで、売上と時間は両立できる。
海鮮居酒屋の彼が証明してくれたように、月商470万円を達成しながら定休日を1日増やすことはできた。それは特別な才能があったからじゃなく、仕組みをつくることに向き合ったからだ。
静岡県・新清水を拠点に、全国500名以上の飲食店・美容室オーナーと向き合ってきた繁盛店研究所では、こうした「現場依存からの脱却」と「経営者として時間を取り戻す」ための考え方と実践を、体系的にまとめた動画講座を提供している。
「今の自分の行動を変えるための一歩目を踏み出したい」と感じている方は、ぜひ詳細を確認してみてほしい。あなたの望む未来は、仕組みの中にある。
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