3.行動戦略と時間創出

時間を効率的に使う経営者の3つのポイント

先日、カフェを経営されている30代の女性オーナーからこんな相談をいただきました。

「ジョイマンさん、スタッフが最近なんとなく元気がないんです。自分は毎日必死で動いてるのに、なぜかお店全体が沈んでいく感じがして……。このまま続けていていいのか不安で。」

話を聞いていくと、問題の根っこはスタッフのやる気ではありませんでした。オーナーの時間の使い方にあったんです。

オーナー自身が毎日の作業に追われ続けて、「お店をどうしたいか」「スタッフに何を期待しているか」を伝える時間がまったく取れていなかった。スタッフは目の前の作業をこなすだけで、自分が何のために働いているかが見えていない状態でした。

これは、珍しいケースではありません。むしろ、飲食店・美容室オーナーの多くが同じ状況に陥っています。

今日は「時間を効率的に使う経営者」が実践している3つのポイントを、具体的な数字と事例を交えてお伝えします。スタッフが誇りを持って働ける店をつくるために、経営者の時間の使い方を根本から見直していきましょう。

📋 この記事でわかること

  1. 時間を効率的に使えていない経営者に共通する「時間の罠」
  2. スタッフが前向きに動き出す「ワクワクする未来」の伝え方
  3. 時間を捻出してスタッフとの関係を変えた3つの具体的なポイント
  4. カフェオーナーが月商20%増を実現した実際の変化の流れ

こんな方におすすめ

  • ✅ スタッフに前向きに、誇りを持って働いてほしいと思っている方
  • ✅ 毎日作業に追われて、スタッフと話す時間が取れていない方
  • ✅ 目標や方向性をスタッフとうまく共有できていないと感じている方
  • ✅ 「自分がいないと回らない」状態から抜け出したい飲食店・美容室オーナー
  • ✅ 値引きやグルメサイト依存ではなく、価値で選ばれる店づくりを目指している方
時間を効率的に使う経営者の3つのポイント | 有限会社繁盛店研究所

「忙しい社長」ほど、スタッフが育たない理由

まず、少し耳の痛い話をさせてください。

経営者が1日のうち現場作業に費やす時間の割合を聞くと、多くの方が「8〜9割」と答えます。仕込み、調理、接客、発注、SNS更新——気づけば「社長業」にかける時間がほぼゼロという状態です。

これは感覚論ではなく、実際に私が支援してきた21年・全国500名以上の経営者に共通するパターンです。そしてこの状態が続くとき、スタッフに起きることがあります。

  • 「この店の目指す方向が分からない」
  • 「オーナーに振り回されているだけの感覚がある」
  • 「自分が貢献できているのか実感がない」

スタッフが「指示待ち」になるのは、スタッフのせいではありません。判断基準も、向かう先も、共有されていないからです。

では、どうすれば変わるのか。答えはシンプルで、「経営者が時間をつくり直すこと」から始まります。

「スタッフが動かないと嘆く前に、自分がどんな未来を描いているか伝えたことがあるか、まず聞いてみます。ほとんどの場合、経営者本人も言語化できていないんです。」

ハワードジョイマン(繁盛店研究所・中小企業診断士)

ポイント①「社長業」に使う時間を週単位で確保する

時間を効率的に使う経営者が最初にやることは、1週間の行動をすべて書き出すことです。

「そんなこと?」と思った方、やってみてください。本当に驚きます。多くのオーナーが「やめられる作業」「誰かに任せられる作業」に、週の大半を費やしていることに気づくからです。

先ほどのカフェオーナーも、この作業をしてもらいました。すると、週に約12時間を「仕込みの段取り・発注のやり取り・電話対応」に費やしていたことが判明。これらを分業・仕組み化することで、週に5〜6時間の時間を捻出することができました。

この「捻出した時間」を何に使うか、が肝心です。答えは明確です——儲かるアイデアと仕組みをつくること、そしてスタッフと未来を語ることです。

経営者の時間は、作業の効率を上げるためにあるのではなく、「誰もできないことをやるため」にあります。スタッフと向き合い、方向性を共有し、「一緒にここへ行こう」と伝えること——これこそが社長にしかできない仕事です。

チェックポイント①:今週、「社長業」に使った時間は何時間でしたか?

スタッフとの面談、目標の共有、販促の設計、仕組みの見直し……これらに使えた時間を振り返ってみてください。「ほぼゼロ」であれば、今の時間の使い方を変えるサインです。

✅ ポイント:まず「やめる作業」を1つ決めることから始めましょう。完璧なリストより、1つ手放す決断の方が現実を変えます。

ポイント②「ワクワクする未来」を完了形で伝える

時間を捻出した経営者が次にやること。それは「お店のワクワクする未来」をスタッフに伝えることです。

ただし、伝え方には工夫があります。「売上を上げたい」「お客様に喜んでほしい」という抽象的な言葉では、スタッフの心は動きません。大切なのは完了形で描くこと。

たとえば——

  • ❌「もっとリピーターを増やしていきたいと思っています」
  • ✅「3ヶ月後には、次回予約率が60%を超えていて、お客様の顔が全員分頭に浮かぶお店になっている」

完了形で語ることで、スタッフは「その未来に自分も参加している」イメージを持ちやすくなります。「一緒に実現したい」という感覚は、具体的なビジョンが先にあってこそ生まれるものです。

カフェオーナーのケースでは、この「未来の共有」を行った翌月から、スタッフが自ら物販メニューの接客提案を始めました。指示したわけではありません。「何のために動くか」が見えたから、自然と行動が変わったんです。

✓ ここまでのポイント

  • 経営者が作業に追われている限り、スタッフに「向かう先」は伝わらない
  • 1週間の行動を書き出し、「やめる・任せる」を決めることで時間が生まれる
  • 「ワクワクする未来」を完了形で共有することが、スタッフの自主性を引き出す起点になる

「物販を導入して、サブスクの仕組みをつくって、仕込みをスタッフに任せられるようになったとき、初めて『安売り以外の道がある』って実感できました。それからスタッフの顔つきが変わったんです。」

カフェオーナー(女性・30代)|物販・サブスク導入で月商20%増、仕込みの分業で作業時間を短縮

ポイント③「任せる仕組み」をつくることで、関わりの質が変わる

スタッフに前向きに働いてもらいたいなら、「任せる」ことが必要です。しかし多くのオーナーは「任せたいけど不安」という葛藤を抱えています。

その不安の正体は何か。多くの場合、「基準が言語化されていないこと」です。

「自分がやった方が早い」と感じるのは当然です。ただそれは、仕事が大きな塊のまま頭の中にあるから。工程に分解してみると、実はスタッフに渡せる部分が7〜8割あることに気づきます。

チェックポイント②:「自分しかできない」と思っている作業を、工程に分解してみましたか?

たとえば「仕込み」という1つの作業も、「食材の計量→下処理→加熱→保管」と分解すれば、どの工程を任せられるか見えてきます。

✅ ポイント:全部を一気に任せようとしないこと。まず1工程を渡して、成功体験を積んでいきましょう。

チェックポイント③:手順書(マニュアル)が「言葉」で存在していますか?

「見て覚えろ」「なんとなく分かるよね」では、任せた後に品質がばらつくのは必然です。工程を言語化することで、スタッフも安心して動けます。

✅ ポイント:完璧なマニュアルより「今日から使えるメモ1枚」を先につくることが、動きを変える最速の方法です。

仕組みが整うと、経営者の「関わり方」が変わります。作業の監視から、スタッフの成長を見守ること・感謝を伝えること・次の未来を語ることへ。この質の変化こそが、スタッフが「この店で働いていて誇らしい」と感じるきっかけになります。

数字で見る「時間の使い方を変えた経営者」の変化

最後に、実際の変化を数字で見てみましょう。

冒頭でご紹介したカフェオーナーは、仕込みの分業と物販・サブスクの仕組み化によって月商が20%増加しました。スタッフが自分で考えて動くようになったことで、オーナー自身が「安売り以外の道がある」と確信を持てるようにもなった、とおっしゃっていました。

また、和食店を経営する50代の男性オーナーは、仕組み化によって現場を任せられる時間が増え、月商に80万円を上乗せ。「抱え込みグセが減り、経営に集中できるようになった」と話してくれました。

「仕組み化で現場を任せられる時間が増えてから、スタッフとちゃんと話せるようになりました。抱え込んでいたときは、スタッフの顔すら見られていなかったと気づきました。」

和食店オーナー(男性・50代)|月商80万円上乗せ、仕組み化で経営に集中できるように

この2つの事例に共通するのは、「時間を捻出したこと」が起点になっているという点です。

時間を効率的に使う経営者は、「忙しいから仕組みをつくれない」ではなく、「仕組みをつくるために時間をつくる」という順番で動いています。ほんの少しの視点の違いが、お店とスタッフを根本から変えていくんです。

まとめ:スタッフが誇りを持って働く店は、社長の時間から始まる

「スタッフに前向きに働いてほしい」という願いは、多くのオーナーが持っています。でもその実現は、スタッフを変えることではなく、経営者自身が時間の使い方を変えることから始まります。

3つのポイントを振り返ります。

  • ①「社長業」に使う時間を週単位で確保する——まず1週間の行動を書き出し、やめる・任せる作業を決める
  • ②「ワクワクする未来」を完了形で伝える——具体的なビジョンがスタッフの自主性を引き出す
  • ③「任せる仕組み」をつくることで、関わりの質を変える——工程分解と言語化が、安心して任せられる状態をつくる

今日から全部やろうとしなくていいです。まず1つ、「今週やめる作業」を1つ決めてみてください。それだけで、来週の自分の時間が少し変わります。

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