なぜ特定の人に依存してはいけないのか

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なぜ特定の人に依存してはいけないのか

目次

〜「あの人がいないと困る」が経営を危険にさらす理由〜

「うちの田中さんがいないと、お店が回らないんです…」

そんな話をよく聞きますが、実はこれ、経営者として最も危険な状態なんです。なぜなら、その田中さんが明日事故に遭ったら?インフルエンザで1週間休んだら?あるいは転職してしまったら?

あなたのお店は一体どうなるでしょうか?

【実話】ある居酒屋で起こった悲劇

大阪でお好み焼き屋を経営する山田さん(仮名)のお店には、20年働いているベテランの大西さん(仮名)がいました。

大西さんは:

  • お好み焼きを焼くのが店で一番上手
  • 常連客の好みを全て覚えている
  • 新人の指導も完璧
  • レジも在庫管理もお任せ

「大西さんがいれば安心」そう思っていた矢先…

突然の出来事 大西さんが腰を痛めて3ヶ月の休職。その途端、お店は大混乱。

  • お好み焼きが焼けるスタッフがいない
  • 常連客に「味が違う」と言われる
  • レシピが頭の中にしかなく、誰も作れない
  • 在庫管理の方法が分からず、材料切れが続出
  • 新人は何をしていいか分からずオロオロ

結果:売上が60%ダウン、常連客の3割が来なくなってしまいました。

山田さんの後悔: 「大西さんに頼りすぎていました。まさか『いい人材』が『経営リスク』になるなんて思ってもいませんでした…」

なぜ特定の人への依存は危険なのか?

危険1:「単一障害点」リスク

コンピューターの世界では「単一障害点(Single Point of Failure)」という言葉があります。1つの部品が壊れただけで、システム全体が止まってしまう箇所のことです。

あなたのお店でも同じ。特定の人がいないと機能しない状態は、まさに「単一障害点」。その人が休むだけで、お店全体が機能停止してしまいます。

危険2:「人質」状態になる

依存していることを本人が知ると、立場が逆転してしまいます。

実際にあった話: 「僕がいないと困るでしょ?だから給料上げてください」 「有給取ります。代わりがいないのは知ってますが、僕の責任じゃないですよね」

経営者なのに、スタッフに「人質」に取られた状態になってしまうんです。

危険3:成長が止まる

その人に頼りきっていると:

  • 他のスタッフが成長しない
  • 新しいアイデアが生まれない
  • 経営者自身も学習しなくなる
  • 店全体の改善が進まない

「優秀な人がいる」ことで、逆に店全体の成長が止まってしまうという皮肉な結果に。

危険4:採用が困難になる

特定の人のスキルレベルに合わせて運営していると、新しく雇う人にも同じレベルを求めてしまいます。

「前の人はこれができたのに…」 「経験者じゃないと無理ですね」

結果的に、採用のハードルがどんどん高くなり、人手不足に陥ります。

【実例】美容室での「カリスマ依存」の落とし穴

渋谷の美容室で働いていた佐藤さん(仮名)は、独立して自分のサロンを開きました。腕前は確か、お客様からの指名も多く、順調に見えていました。

しかし…

問題発生

  • 佐藤さんの指名客ばかりで、他のスタッフに指名が入らない
  • 佐藤さんが休むと、その日の売上が半分になる
  • 新人スタッフが育たない(お客様に「佐藤さんじゃなきゃ嫌」と言われる)
  • 佐藤さんが体調を崩しても休めない

佐藤さんの悩み: 「お客様に愛されるのは嬉しいけど、自分がいないと成り立たないサロンって、これ本当に『経営』なんでしょうか?私はただの『ひとり親方』になってしまった気がします…」

依存を生まない経営の考え方

1. 「人」ではなく「仕組み」で勝負

優秀な人の能力に頼るのではなく、誰がやっても一定の結果が出る「仕組み」を作ることが重要です。

2. 「80点主義」を採用

100点の人を1人雇うより、80点の人を3人雇う方が安定します。しかも、80点の人は成長の余地があるので、やりがいを感じてくれます。

3. 「教える文化」を作る

「俺だけができる」ではなく「みんなができるようになる」ことを評価する文化を作りましょう。

4. 「バックアップ体制」を必須に

どんな作業にも、必ず2人以上ができる状態を保つ。これが安心経営の鉄則です。

今日からできる3つのチェック

チェック1:依存度診断

各スタッフについて考えてみてください:

  • この人が1週間休んだら、お店は正常運営できる?
  • この人の仕事を、他の誰かができる?
  • この人にしか知らない情報やスキルがある?

1つでも「No」があれば、依存状態です。

チェック2:引き継ぎテスト

「明日から1週間海外旅行に行く」と想定して、各スタッフの仕事を他の人に説明できるかチェックしてみてください。

チェック3:売上シミュレーション

主力スタッフが1人ずついなくなった場合の売上への影響を計算してみてください。50%以上下がるなら、危険信号です。

まとめ:「依存」から「自立」へ

特定の人への依存は、短期的には楽に見えますが、長期的には経営の大きなリスクになります。

理想の状態は:

  • 誰が休んでも、お店が正常に回る
  • スタッフ全員が成長し続けている
  • 経営者が安心して休暇を取れる
  • 新人でも一定レベルの仕事ができる

これが実現できれば、あなたは本当の意味での「経営者」になれます。

次回は「優秀なスタッフへの依存が生むリスク」について、より具体的な事例とともに解説します。

「うちにも優秀すぎて困るスタッフがいる…」という方は、ぜひお楽しみに!


今すぐできるアクション 今日、帰宅前に5分だけ時間を取って、あなたのお店で「この人がいないと困る」人をリストアップしてみてください。それが改善の第一歩です。

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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