大分類を小分類に分ける具体的手順

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大分類を小分類に分ける具体的手順

前回の「思い込み打破の5つの質問法」で、多くの作業が実は他の人でもできることに気づいていただけたでしょうか?

今日は、その次のステップです。「やっぱり細かく分けるって言われても、どうやって?」という疑問にお答えする、具体的な作業分解手順をお伝えします。

業種別の豊富な実例とともに、あなたの店舗でも今日から使える実践的な内容をご紹介しましょう。

目次

なぜ「大分類思考」が時間泥棒になるのか?

まず、なぜ作業を細かく分解する必要があるのでしょうか?

大分類思考の罠

飲食店の例:「料理を作る」

  • この大分類で考えると→「私にしかできない高度な技術」
  • お客様への責任感も相まって→「絶対に人には任せられない」
  • 結果→毎日12時間厨房に立ちっぱなし

美容室の例:「ヘアカット」

  • この大分類で考えると→「芸術的センスが必要な専門技術」
  • プロとしてのプライドも相まって→「代替不可能な仕事」
  • 結果→休みも取れず、新規顧客開拓もできない

小分類思考の威力

しかし、同じ作業を小さく分解してみると…

「料理を作る」の小分類例

  1. 材料の準備・洗浄(5分)
  2. 野菜のカット(10分)
  3. 下味付け(3分)
  4. 火入れ(8分)
  5. 盛り付け(2分)
  6. 最終チェック(1分)

気づき 「本当に私がやる必要があるのは4番と6番だけ。1〜3番と5番は、きちんと教えればスタッフでもできる!」

作業分解の5ステップ手順

では、具体的にどのような手順で作業を分解すればよいのでしょうか?

Step1:作業の全体像を時系列で書き出す

まず、その作業を開始から完了まで、時系列で大まかに書き出します。

実例:カフェの「朝の開店準備」

大分類での認識 「朝の開店準備は、すべて私がやらないとお店が開けられない」

時系列での書き出し

  • 8:00 店舗到着
  • 8:05 店内の照明・音響をつける
  • 8:10 レジの準備
  • 8:20 コーヒーマシンの準備
  • 8:30 食材の仕込み
  • 9:00 メニューボードの更新
  • 9:10 店内清掃の最終チェック
  • 9:15 ドアオープン

Step2:各工程をさらに細分化する

次に、各工程を「5分以内の作業単位」まで細かく分解します。

実例:「8:20 コーヒーマシンの準備」の細分化

  1. マシンの電源を入れる(30秒)
  2. 水タンクの水量をチェック(30秒)
  3. 必要に応じて水を補充(2分)
  4. 豆の残量をチェック(30秒)
  5. 必要に応じて豆を補充(2分)
  6. エスプレッソマシンの温度確認(1分)
  7. 試し抽出を1杯実行(1分)
  8. 味と温度の確認(30秒)

Step3:各作業の難易度と重要度を評価する

分解した各作業について、以下の基準で評価します。

難易度評価

  • ★☆☆:説明書を読めば誰でもできる
  • ★★☆:1〜2回練習すればできる
  • ★★★:経験と技術が必要

重要度評価

  • A:品質・安全に直結する重要作業
  • B:重要だが、一定の基準があれば対応可能
  • C:重要度は低い、または定型的作業

コーヒーマシン準備の評価例

  1. 電源を入れる(★☆☆・C)
  2. 水量チェック(★☆☆・B)
  3. 水の補充(★☆☆・C)
  4. 豆の残量チェック(★☆☆・B)
  5. 豆の補充(★☆☆・C)
  6. 温度確認(★★☆・A)
  7. 試し抽出(★★☆・A)
  8. 味と温度の確認(★★★・A)

Step4:移譲可能性を判定する

評価結果をもとに、移譲の可能性を判定します。

即座に移譲可能(★☆☆・C)

  • 電源を入れる
  • 水の補充
  • 豆の補充

研修後に移譲可能(★☆☆〜★★☆・B)

  • 水量チェック
  • 豆の残量チェック
  • 温度確認
  • 試し抽出

当面は自分が継続(★★★・A)

  • 味と温度の確認

Step5:移譲計画と基準を設定する

移譲可能と判定した作業について、具体的な計画を立てます。

移譲計画例

  • 第1週:★☆☆・C作業の移譲(電源、補充作業)
  • 第2週:★☆☆・B作業の移譲(各種チェック)
  • 第3週:★★☆・A作業の移譲(温度確認、試し抽出)
  • 第4週:独立実行、結果チェックのみ

業種別:作業分解の実例集

ここからは、各業種での具体的な分解例をご紹介します。

【飲食店】パスタ料理の作業分解

大分類:「パスタ料理の調理」(20分)

小分類への分解

A工程:準備作業(移譲可能度:高)

  1. パスタ麺の計量(1分・★☆☆・C)
  2. 塩水の準備(1分・★☆☆・C)
  3. 野菜のカット(3分・★★☆・B)
  4. ソース材料の準備(2分・★★☆・B)

B工程:調理作業(移譲可能度:中) 5. パスタの茹で開始(30秒・★★☆・B) 6. フライパンでソース作り(5分・★★★・A) 7. パスタの茹で上がり確認(30秒・★★☆・A) 8. パスタとソースの合わせ(2分・★★★・A)

C工程:仕上げ作業(移譲可能度:低〜中) 9. 盛り付け(1分・★★☆・B) 10. 最終的な味の確認(30秒・★★★・A) 11. 提供前チェック(30秒・★★☆・A)

移譲結果

  • 即座移譲:1,2番(2分短縮)
  • 研修後移譲:3,4,5,7,9番(9分短縮)
  • 本人継続:6,8,10,11番(8分)

効果:20分作業→8分作業(60%の時間短縮)

【美容室】カット技術の作業分解

大分類:「ヘアカット」(45分)

小分類への分解

A工程:準備・相談(移譲可能度:高)

  1. お客様の席への案内(2分・★☆☆・C)
  2. カルテの確認(1分・★☆☆・C)
  3. 基本的な要望ヒアリング(5分・★★☆・B)
  4. 髪質・頭の形の確認(3分・★★☆・B)
  5. ケープの装着(1分・★☆☆・C)

B工程:カット準備(移譲可能度:中) 6. ブロッキング(髪の区分け)(5分・★★☆・B) 7. 長さの大まかな設定(3分・★★★・A)

C工程:カット技術(移譲可能度:低) 8. ベースカット(15分・★★★・A) 9. レイヤーカット(8分・★★★・A) 10. 毛量調整(5分・★★★・A)

D工程:仕上げ(移譲可能度:中) 11. ブロー・スタイリング(8分・★★☆・B) 12. 最終チェック(2分・★★★・A) 13. 次回予約の案内(3分・★★☆・B)

移譲結果

  • 即座移譲:1,2,5番(4分)
  • 研修後移譲:3,4,6,11,13番(19分)
  • 本人継続:7,8,9,10,12番(33分→22分)

効果:45分→22分(51%の時間短縮)

【小売店】レジ業務の作業分解

大分類:「レジ業務」(5分/1客)

小分類への分解

A工程:接客開始(移譲可能度:高)

  1. お客様へのあいさつ(10秒・★☆☆・C)
  2. 商品のバーコード読み取り(1分・★☆☆・C)
  3. 合計金額の確認(10秒・★☆☆・C)

B工程:決済処理(移譲可能度:中) 4. 支払い方法の確認(10秒・★☆☆・B) 5. 現金/カード決済処理(1分・★★☆・B) 6. お釣り・レシートの準備(30秒・★★☆・B)

C工程:付加価値提供(移譲可能度:低〜中) 7. 商品説明・おすすめ(1分・★★★・A) 8. ポイントカード確認(20秒・★★☆・B) 9. 袋詰め・お渡し(40秒・★☆☆・C) 10. お見送り(10秒・★☆☆・C)

移譲結果

  • 即座移譲:1,2,3,9,10番(3分)
  • 研修後移譲:4,5,6,8番(2分)
  • 本人継続:7番(1分)

効果:接客の質を保ちながら、オーナーは付加価値提供に集中

作業分解を成功させる7つのコツ

コツ1:完璧を求めない

「70点でOK」の基準で開始。100点を目指すと移譲が進まない。

コツ2:写真・動画を活用する

言葉で伝えにくい「感覚的」な部分は、視覚的資料で補完。

コツ3:チェックリストを作成する

各工程でのチェックポイントを明文化し、品質を担保。

コツ4:段階的に移譲する

いきなり全工程ではなく、簡単なものから順番に移譲。

コツ5:失敗を学習機会にする

ミスが起きたら責めるのではなく、マニュアル改善のチャンス。

コツ6:定期的に見直す

移譲後も月1回は作業を確認し、さらなる改善点を探す。

コツ7:スタッフの意見を聞く

現場で作業するスタッフからの改善提案を積極的に採用。

分解作業の効果測定方法

作業分解の効果を数値で測定することで、継続的な改善が可能になります。

測定指標1:時間短縮効果

計算式:(分解前の作業時間 – 分解後の作業時間)÷ 分解前の作業時間 × 100

目標値:30%以上の短縮

測定指標2:品質維持率

計算式:移譲後のクレーム数 ÷ 移譲前のクレーム数

目標値:1.0以下(品質低下なし)

測定指標3:スタッフ満足度

評価方法:月1回のヒアリングで「仕事のやりがい」を5段階評価

目標値:平均4.0以上

測定指標4:経営者の時間創出

計算式:創出時間数 × 時給単価 = 時間創出の金銭価値

目標値:月20時間以上の創出

まとめ:小さな分解が大きな変化を生む

作業の分解は、一見地味で面倒な作業に見えるかもしれません。しかし、この小さな一歩が、あなたの経営に革命的な変化をもたらします。

分解の効果まとめ時間創出:日々の作業時間を30〜60%短縮
品質安定:属人的技術から標準化された品質へ
スタッフ成長:責任と技術習得による成長実感
リスク分散:特定人物への依存から脱却
事業拡大:創出した時間で新しい挑戦が可能

今日から、あなたも5ステップの手順に従って、「自分にしかできない」と思っている作業を分解してみてください。

きっと、思いもよらない改善可能性が見つかるはずです。

そして生まれた時間で、経営者として本当にやるべき「未来を創る仕事」に集中してください。


次回の記事では、「誰でも同じ結果が出るマニュアル作成法」について、実際のマニュアル例とともに詳しく解説します。分解した作業を確実に移譲するための実践的なノウハウをお楽しみに!

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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