蕎麦の出汁取り実例に学ぶ作業分解の威力

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蕎麦の出汁取り実例に学ぶ作業分解の威力

「私にしかできない仕事だから…」

そう思い込んで、すべての作業を一人で抱え込んでいませんか?実は、多くの経営者が「自分にしかできない」と信じている仕事の90%以上は、実際には他の人でもできる作業なのです。

今日は、富山の蕎麦屋さんの実例を通じて、あなたの時間を劇的に生み出す「作業分解」の威力をお伝えします。

目次

「蕎麦の出汁は自分にしかできない」という思い込み

富山のお蕎麦屋さんの店主Aさん(仮名)は、長年こう思っていました。

「蕎麦の出汁取りは、この店の命。微妙な火加減や絶妙なタイミングは、長年の経験がないとできない。パートさんには絶対に任せられない」

そのため、毎朝必ず自分で出汁を取り、休むこともできずにいました。売上を伸ばしたい気持ちはあるものの、「時間がなくて販促活動ができない」と悩んでいたのです。

作業分解で見えた驚きの真実

そんなAさんに、私はこう提案しました。

「一度、蕎麦の出汁取りという『大分類』を、小さな作業に分解してみませんか?」

最初はAさんも「そんなことをしても変わらない」と半信半疑でしたが、実際に分解してみると…

蕎麦の出汁取り作業の分解例

従来の認識:「蕎麦の出汁取り」(大分類)実際の作業工程(小分類)

  1. 寸胴をコンロに乗せる
  2. 寸胴に水を10リットル入れる
  3. 寸胴に鰹節を1キロ入れる
  4. 弱火で10分間煮る(※写真参照:メモリ3の火力)
  5. 沸騰しないよう気をつけながら鰹節をザルで残らず取る

分解してみて分かった衝撃の事実

Aさんは各工程を見て、こう呟きました。

「あれ?『寸胴をコンロに乗せる』って、パートさんでもできるよね…」 「『水を10リットル入れる』も、計量カップがあれば誰でも…」 「『鰹節を1キロ入れる』も、計りがあれば…」

そうです。分解してみると、すべての工程がパートさんでもできる作業だったのです。

唯一気をつけるべきは「弱火」の定義でしたが、これも火力のメモリに「3」と書いたシールを貼り、「この位置で」という写真を撮ることで解決しました。

1時間以上の自由時間を獲得

この作業分解により、Aさんは以下の成果を得ました:

毎朝1時間以上の時間を創出
エビの仕込みもパートさんに移譲し、さらに30分を確保
合計1時間半を販促活動に投入可能に
3ヶ月後、売上が前年同月比で18%アップ
初めて家族旅行を実現

「なんで今まで気づかなかったんだろう…」 これがAさんの率直な感想でした。

あなたの店にも必ず存在する「分解可能な作業」

この「思い込み」は、蕎麦屋さんだけの話ではありません。

飲食店でよくある例

  • 「仕込みは私にしかできない」
  • 「盛り付けは私でないと品質が…」
  • 「接客は私じゃないとお客様が…」

美容室でよくある例

  • 「カットは私にしかできない」
  • 「カラーの調合は私でないと…」
  • 「お客様との会話は私じゃないと…」

実際に分解してみると…

美容室の例:「ヘアカット」の分解

  1. お客様の席への案内
  2. カウンセリング(要望の聞き取り)
  3. シャンプー
  4. ベースカット(大まかな形作り)
  5. 細かな調整カット
  6. スタイリング
  7. 仕上がりの確認
  8. 次回予約の案内

このうち、実際に店主がする必要があるのは「4.ベースカット」と「5.細かな調整カット」だけ。他の工程は、適切な訓練でスタッフに任せることができます。

作業分解を成功させる5つのポイント

1. 大分類の思い込みを捨てる

「◯◯は私にしかできない」という大分類での判断をやめ、小さな工程に分けて考える

2. 工程を時系列で書き出す

作業の流れを順番通りに、できるだけ細かく書き出す

3. 人による差が出る部分を特定する

「弱火」「少々」「お好みで」など、人によって解釈が異なる部分を見つける

4. 基準を数値化・写真化する

火力はメモリで、分量は重さで、色は写真で具体的に示す

5. 段階的に移譲する

いきなり全工程を任せず、1つずつ確認しながら移譲していく

今日からできる作業分解ワーク

あなたも今日から、以下の手順で作業分解を始めてみてください:

Step1:「私にしかできない」作業を3つ書き出す

例:

  • 仕込み作業
  • 接客対応
  • 売上集計

Step2:1つ選んで工程を分解する

選んだ作業を、5分刻みの小さな工程に分ける

Step3:各工程の難易度を評価する

  • A:スタッフでも十分可能
  • B:少し練習すれば可能
  • C:高度な技術・経験が必要

Step4:AランクとBランクの移譲計画を立てる

いつまでに、誰に、どうやって教えるかを決める

Step5:実際に移譲してみる

完璧を求めず、まずは「70点でOK」の基準で始める

時間創出の先にある本当の価値

作業分解で得られるのは、単なる時間の節約だけではありません。

経営者が本来やるべき仕事に集中できる

  • 新メニュー開発
  • マーケティング戦略
  • スタッフ育成
  • 店舗改善企画

スタッフの成長機会を提供できる

  • 責任感の向上
  • スキルアップの実感
  • 仕事へのやりがい向上

家族との時間を確保できる

  • 定期的な休日取得
  • 家族旅行の実現
  • 子どもとの時間増加

「完璧主義」という名の足かせを外そう

多くの経営者が作業移譲に踏み切れない理由は「完璧主義」です。

「私がやれば100点だけど、スタッフだと70点になってしまう…」

しかし、考えてみてください。あなたが70点の仕事を人に任せて、空いた時間で新規集客に取り組み、売上が20%アップしたとしたら?

100点の作業 × 1人 = 100点
70点の作業 × 1人 + 売上20%アップ = 170点

どちらが経営者として正しい選択でしょうか?

まとめ:思い込みを捨てて自由な時間を手に入れよう

蕎麦の出汁取りの事例が教えてくれることは、私たちの多くが「思い込み」によって自分自身を縛っているということです。

「自分にしかできない」と信じている仕事の大部分は、適切な分解と仕組み化により、他の人でも十分に対応可能です。

今日からぜひ、あなたの店舗でも作業分解を始めてみてください。きっと、思いもよらない時間の余裕と、新しい可能性が見えてくるはずです。

そして生まれた時間で、あなたが本当にやりたかったこと、経営者として本来やるべきことに集中してください。

その先に、理想の店舗経営と、充実した人生が待っています。


次回の記事では、「『自分にしかできない』思い込みを打破する5つの質問法」について詳しく解説します。あなたの思い込みを根本から変える実践的な内容をお届けしますので、お楽しみに!

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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