売上ベースではなく利益ベースで考える重要性

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売上ベースではなく利益ベースで考える重要性

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なぜ売上1000万円でも手元にお金が残らないのか?

美容室経営者のAさんは、毎月の売上報告を税理士に渡すたびに不思議に思っていました。

「今月も売上800万円でした。去年より100万円もアップです!」

しかし、税理士からの返事はいつも同じでした。

「売上は良いですが、利益はほとんど出ていませんね…」

売上と利益の決定的な違い

多くの経営者が勘違いしているのは、売上が多い=儲かっているという考え方です。

実は、これは大きな間違いです。

売上とは

お客様からいただいた金額の「総額」

利益とは

売上から経費を差し引いて「実際に手元に残る金額」

例:美容室の場合

  • 売上:500万円
  • 経費:人件費250万円+家賃50万円+材料費100万円+その他80万円
  • 利益:500万円−480万円=20万円

売上500万円でも、実際に残るのはたった20万円なのです。

売上思考の罠にハマる経営者の典型例

ケース1:ランチタイムの罠

飲食店のB店長は、平日のランチタイムに500円ランチを始めました。

結果

  • 客数:1日50人→80人(30人増加)
  • 売上:25,000円→40,000円(15,000円増加)

「売上が1.6倍になった!」とB店長は大喜び。

しかし、利益を計算してみると…

500円ランチの利益計算

  • 売上:500円
  • 原価:200円
  • 人件費(時給換算):150円
  • 光熱費等:50円
  • 利益:100円

30人増えても利益は3,000円しか増えていません。

一方、同じ時間でディナーの準備をしていれば…

ディナーメニューの利益計算

  • 売上:2,000円
  • 原価:600円
  • 人件費:150円
  • 光熱費等:50円
  • 利益:1,200円

ディナー客3人分の利益(3,600円)の方が、ランチ客30人分より多いのです。

ケース2:忙しいのに儲からない美容室

美容室のCオーナーは、朝から晩まで予約でいっぱいです。

1日のスケジュール

  • カット:10人×3,000円=30,000円
  • カラー:5人×8,000円=40,000円
  • パーマ:2人×12,000円=24,000円
  • 合計売上:94,000円

「今日も忙しかった〜」と満足感いっぱい。

しかし、利益で見ると…

利益計算

  • カット利益:10人×2,500円=25,000円(仕込み時間ほぼなし)
  • カラー利益:5人×4,000円=20,000円(仕込み・待ち時間込み2時間)
  • パーマ利益:2人×6,000円=12,000円(仕込み・待ち時間込み3時間)

時間効率を見ると

  • カット:1人30分→時給5,000円
  • カラー:1人2時間→時給2,000円
  • パーマ:1人3時間→時給2,000円

同じ忙しさでも、カットの方が圧倒的に効率が良いことがわかります。

利益ベース思考に変わる3つのステップ

ステップ1:すべてのメニューの利益を計算する

まず、あなたのお店の全メニューについて、以下を計算してください。

計算式

利益 = 売上 - 原価 - 人件費(時間換算) - その他経費

飲食店の例

  • ハンバーグ定食:売上1,200円 – 原価400円 – 人件費200円 – その他100円 = 利益500円
  • 刺身定食:売上1,800円 – 原価800円 – 人件費200円 – その他100円 = 利益700円

ステップ2:時間あたり利益を算出する

次に、「1時間でどれだけ利益が出るか」を計算します。

美容室の例

  • カット(30分):利益2,500円 → 時間あたり5,000円
  • カラー(2時間):利益4,000円 → 時間あたり2,000円

ステップ3:優先順位を決める

利益率と時間効率の両方を考慮して、力を入れるべきメニューを決めます。

判断基準

  1. 時間あたり利益が高い
  2. 材料費・手間が少ない
  3. お客様の満足度が高い
  4. リピートにつながりやすい

利益思考で経営が変わった実例

実例1:焼肉店の大転換

焼肉店のDオーナーは、売上重視でメニューを増やし続けていました。

Before(売上思考)

  • メニュー数:80品目
  • 1日の売上:15万円
  • 月の利益:30万円
  • オーナーの労働時間:1日12時間

利益ベース分析の結果、驚愕の事実が判明。

利益分析結果

  • 高利益メニュー(20品目):月利益25万円
  • 低利益メニュー(60品目):月利益5万円

つまり、60品目で月5万円しか稼げていなかったのです。

After(利益思考)

  • メニュー数:25品目(高利益メニューに特化)
  • 1日の売上:12万円(3万円減少)
  • 月の利益:45万円(15万円増加)
  • オーナーの労働時間:1日8時間

売上は下がったのに、利益は1.5倍、労働時間は3分の2になりました。

実例2:美容室の席単価革命

美容室のEオーナーは、回転率を上げるためカットの時間短縮に必死でした。

Before

  • カット30分:3,000円
  • 1日の客数:20人
  • 売上:60,000円
  • 利益:35,000円

利益分析で「カット+トリートメント」の組み合わせが高利益だと判明。

After

  • カット+トリートメント60分:6,000円
  • 1日の客数:12人
  • 売上:72,000円
  • 利益:50,000円

客数は減ったのに、売上も利益も大幅アップしました。

よくある勘違いと対策

勘違い1:「売上を下げるのは怖い」

真実:売上が下がっても利益が上がれば成功

売上500万円・利益50万円より、売上300万円・利益100万円の方が良い経営です。

勘違い2:「お客様に申し訳ない」

真実:利益が出なければ良いサービスを続けられない

利益が出ないメニューを続けても、結局は品質低下やサービス悪化につながります。

勘違い3:「競合より安くしないと負ける」

真実:価値に見合った価格設定が重要

安売りして利益を削るより、付加価値を高めて適正価格を維持する方が長期的に成功します。

今すぐできる利益ベース経営の始め方

1週間チャレンジ

月曜日:現状把握

  • 全メニューの売上・原価・利益を一覧表にする

火曜日:時間分析

  • 各メニューの提供時間を正確に測定する

水曜日:時間あたり利益計算

  • 利益÷時間で時間効率を算出する

木曜日:優先順位決定

  • 高利益メニューと低利益メニューを分類する

金曜日:改善案作成

  • 低利益メニューの値上げ・改善・廃止を検討する

土曜日:実験開始

  • 1つだけ改善案を試してみる

日曜日:効果測定

  • 1週間の結果を数字で確認する

まとめ:売上の奴隷から利益の主人へ

売上ばかりを追いかけていると、いつまでも忙しいだけで豊かになれません。

しかし、利益ベースで考えることで:

  • 働く時間が減る
  • 手元に残るお金が増える
  • 精神的な余裕が生まれる
  • より良いサービスを提供できる

あなたのお店も今日から「利益ベース思考」に変えてみませんか?

きっと、同じ努力でも全く違う結果が手に入るはずです。


次回予告 次の記事では「余計なものを捨てる勇気を持つマインドセット」について、断捨離経営術を詳しく解説します。利益の出ないものを勇気を持って手放す具体的な方法をお伝えします。

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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