社長がいるからスタッフが育たない真実

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~なぜあなたがお店にいると、スタッフが成長しないのか?~

「うちのスタッフ、いつまでたっても自分で考えて行動してくれないんです…」

多くの店舗経営者から、こんな悩みを聞きます。でも実は、スタッフが育たない本当の原因は、あなた自身がお店にいることかもしれません。

今日は、多くの経営者が気づいていない「スタッフ成長の妨げになる社長の行動パターン」と、その解決策をお話しします。

「できる社長」ほどスタッフが育たない理由

あなたは「便利屋社長」になっていませんか?

まずは、こんな場面を思い浮かべてください:

場面1:忙しいランチタイム

  • スタッフ:「店長!お客様からクレームです!」
  • あなた:「分かった、すぐ行く!」

場面2:新メニューの説明

  • スタッフ:「このメニュー、どう説明すればいいですか?」
  • あなた:「こう言うんだよ。次からはこうして」

場面3:トラブル発生

  • スタッフ:「機械の調子がおかしいです!」
  • あなた:「また?しょうがないな、見てくる」

これらの場面で、あなたは「頼りになる店長」として問題を解決しています。でも実は、この行動がスタッフの成長を止めているのです。

スタッフが成長しない本当の理由

理由1:考える必要がなくなる

スタッフにとって、あなたは「困ったときの答えを知っている人」です。自分で考えるより、あなたに聞いた方が早くて確実。だから、考える習慣が身につきません。

理由2:失敗する機会がない

あなたがすぐに解決してくれるので、スタッフは失敗を経験できません。失敗から学ぶ機会を奪われているのです。

理由3:責任感が育たない

「最終的に店長がなんとかしてくれる」という安心感があるため、スタッフは深刻に問題を考えません。

「社長依存症」のお店の特徴

チェックリスト:あなたのお店は大丈夫?

以下の項目に当てはまるものはありませんか?

□ スタッフから「店長!」と呼ばれることが1日10回以上ある □ あなたがいない日は、スタッフが不安そうにしている □ 同じ質問を何度もされる □ スタッフが自分で判断することを避けている □ 新しいアイデアや改善提案がスタッフから出ない □ あなたが休むと、お客様対応のレベルが下がる

3つ以上当てはまったら、あなたのお店は「社長依存症」の可能性があります。

実際にあった失敗事例

美容室A店の場合

店長のAさんは、技術もセンスも抜群。お客様からの評判も良く、売上も順調でした。しかし…

  • スタッフは常にAさんに確認を求める
  • Aさんがいない日は予約を断ることが多い
  • 新しいスタッフが入っても、すぐに辞めてしまう
  • 3年たっても、スタッフが一人前にならない

結果的に、Aさんは1日も休めない状況になり、体調を崩してしまいました。

スタッフが自立するために必要な3つのこと

1. 失敗しても大丈夫な環境

スタッフが成長するためには、安心して失敗できる環境が必要です。

具体的な方法:

  • 「失敗は成長のチャンス」と明言する
  • 失敗したときは責めるのではなく、一緒に原因を考える
  • 小さな失敗から学べるよう、段階的に責任を与える

2. 判断基準の明確化

スタッフが自分で判断できるよう、明確な基準を示しましょう。

例:クレーム対応の判断基準

・お詫びだけで済む場合:スタッフ対応OK
・商品交換が必要な場合:リーダーに相談
・返金が必要な場合:店長判断

3. 段階的な権限移譲

いきなり全てを任せるのではなく、少しずつ権限を移譲していきます。

権限移譲のステップ例:

  1. 報告→判断→実行(すべて店長)
  2. 報告→判断(スタッフ)→実行確認
  3. 判断→実行(スタッフ)→事後報告
  4. 完全移譲(事後報告のみ)

「いなくても回る店」を作る具体的ステップ

ステップ1:現状の「社長依存度」を測定する

まずは、1週間の記録を付けてみましょう。

記録項目:

  • スタッフから質問された回数
  • あなたが解決した問題の種類
  • スタッフが自分で解決できそうだった案件

ステップ2:「よくある質問」をリスト化

スタッフからの質問パターンを整理し、それぞれに対する答えをマニュアル化します。

よくある質問例:

  • 「○○の在庫がない時はどうする?」
  • 「お客様が怒っている時の対応は?」
  • 「予約が重複した時は?」

ステップ3:「ミニ店長」を育てる

スタッフの中から、段階的にリーダーシップを取れる人を育てます。

ミニ店長の役割:

  • 他のスタッフからの最初の相談窓口
  • 簡単な判断は自分で行う
  • 本当に必要な時だけ店長に相談

失敗を恐れるスタッフへの対処法

「失敗OK文化」の作り方

多くのスタッフは、失敗を恐れて行動できません。この恐怖心を取り除くことが重要です。

効果的なアプローチ:

  1. 失敗事例を共有する 「私も昔、こんな失敗をしました」と自分の体験談を話す
  2. 小さなチャレンジから始める いきなり大きな判断を求めず、リスクの小さなことから任せる
  3. 失敗から学んだことを褒める 結果ではなく、学習プロセスを評価する

実際の声かけ例

❌ 「なんでこんな簡単なことができないの?」 ⭕ 「今度同じことが起きたら、どうしたらいいと思う?」

❌ 「私がやった方が早い」 ⭕ 「最初は時間がかかるけど、慣れれば大丈夫」

❌ 「失敗しないよう気をつけて」 ⭕ 「失敗してもいいから、まずやってみよう」

スタッフの「考える力」を引き出す質問術

答えを教えるのではなく、考えさせる

スタッフから質問されたとき、すぐに答えを言わずに、逆に質問で返しましょう。

具体例:

スタッフ: 「お客様が『前回と味が違う』と言ってるんですが…」

悪い対応: 「分かった、私が行く」

良い対応: 「そうなんだね。あなたならどう対応する?」

スタッフ: 「う〜ん、まずはお詫びして…」

あなた: 「それはいいね。その後は?」

このように、スタッフ自身に考えさせることで、次回同じことが起きても自分で対応できるようになります。

「なぜ?」を3回繰り返す習慣

問題が起きたとき、原因を一緒に考える習慣をつけましょう。

例:料理の提供が遅れた場合

  1. なぜ遅れたの?→注文が重なったから
  2. なぜ注文が重なったの?→ピーク時間の準備ができていなかったから
  3. なぜ準備ができていなかったの?→準備チェックリストがないから

この過程で、スタッフは問題の本質を理解し、今後の改善策も自分で考えられるようになります。

成功事例:3ヶ月でスタッフが変わった店舗

居酒屋「○○亭」の変化

Before(3ヶ月前)

  • 店長が1日12時間労働
  • スタッフは何でも店長に確認
  • 店長がいない日は売上30%ダウン

取り組み内容

  1. よくある質問20項目をマニュアル化
  2. 副店長を1名任命
  3. 毎週1回「考える練習」の時間を設定
  4. 段階的に店長の不在時間を延長

After(現在)

  • 店長の労働時間が8時間に短縮
  • スタッフが自主的に改善提案をする
  • 店長不在日でも売上は変わらず

店長の感想: 「最初は心配でしたが、スタッフは思っていた以上に成長してくれました。今では、私がいない方がスタッフが生き生きと働いているように見えます」

今日から始められる3つの行動

行動1:今日から「すぐに答えない」

スタッフから質問されたとき、まず「あなたはどう思う?」と聞いてみましょう。

行動2:1日30分の「不在時間」を作る

事務作業でも外出でも構いません。スタッフだけで対応する時間を意図的に作ってください。

行動3:失敗を褒める

スタッフが失敗したとき、責めるのではなく「挑戦してくれてありがとう」と言ってみましょう。

まとめ:スタッフの成長が店舗の未来を決める

スタッフが育たない理由は、能力不足ではありません。成長する機会を与えていないことが原因です。

あなたがお店から少し距離を置くことで:

  • スタッフは自分で考える習慣がつく
  • 失敗から学ぶ経験ができる
  • 責任感と自信が育つ
  • あなたの労働時間が減る
  • お店の将来が安定する

最初は不安かもしれません。でも、スタッフを信じて任せることで、あなたの店舗は「社長がいなくても回る強い組織」に変わります。

明日から、スタッフへの接し方を少しだけ変えてみませんか?その小さな変化が、大きな成長につながります。

※本サイトに記載された店舗名と店主名は、個店情報のため仮名とさせていただいております。

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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