「集中している時に限って邪魔が入る」の法則
ポップ作成に集中していたら、スタッフから「店長、これどうしたらいいですか?」 新メニューのレシピを考えていたら、業者から電話… 重要な書類を作成していたら、お客様から質問…
「なぜ集中している時に限って邪魔が入るんだろう?」
実は、これは偶然ではありません。集中している人ほど、周りから頼られやすくなるのです。
今日は、この「割り込み業務」を上手にコントロールして、集中時間を確保する「時間ブロック法」をお伝えします。
割り込み業務の正体を知る
まず、あなたの集中を妨げる割り込み業務を分類してみましょう。
タイプ1:緊急度高・重要度高(真の緊急事態)
- お客様からのクレーム対応
- 機械の故障・停電
- スタッフの急病
- 食中毒などの安全問題
対処法: 即座に対応(全体の5%程度)
タイプ2:緊急度高・重要度低(偽の緊急事態)
- スタッフからの些細な質問
- 営業の電話
- 急ぎでない書類の確認依頼
- 「ちょっといいですか?」系の相談
対処法: 時間を指定して後回し(全体の60%程度)
タイプ3:緊急度低・重要度高(計画的対応が必要)
- 来月のメニュー改定の相談
- スタッフの人事評価
- 設備投資の検討
- 年間計画の見直し
対処法: 専用時間を確保(全体の25%程度)
タイプ4:緊急度低・重要度低(時間の無駄)
- 無関係な雑談
- 必要性の低い会議
- 過度な書類整理
- SNSの確認
対処法: 極力避ける(全体の10%程度)
カフェオーナーの割り込み地獄脱出ストーリー
カフェ「Beans & Dreams」のオーナー・佐藤さん(仮名)の1日は、割り込み業務の連続でした。
改善前の悲惨な1日
9:00 新メニュー企画書作成開始 9:05 スタッフ:「コーヒー豆の在庫確認をお願いします」→10分中断 9:15 企画書再開 9:20 業者から電話:「今月の支払いについて」→15分中断 9:35 企画書再開 9:40 お客様:「WiFiのパスワードを教えて」→5分中断 9:45 企画書再開 9:50 スタッフ:「新人の指導方法を相談したい」→20分中断 10:10 企画書再開…
結果: 2時間で実作業時間はわずか40分、企画書は未完成
時間ブロック法導入後
9:00-10:30 集中ブロック(90分)
- 新メニュー企画書作成
- スマホは事務室の引き出しに
- 「集中中 10:30まで」の札をデスクに
- スタッフには「緊急事態以外は10:30以降に」と事前通知
10:30-11:00 対応ブロック(30分)
- 溜まった質問にまとめて回答
- 業者からの電話対応
- スタッフとの簡単な相談
11:00-12:00 集中ブロック(60分)
- 次の重要タスクに集中
結果: 企画書完成+余裕で他の仕事も進行
時間ブロック法の3つの基本原則
原則1:集中ブロックは絶対に守る
集中ブロック中のルール:
- 電話に出ない(緊急連絡先は別途設定)
- メール・LINEを見ない
- スタッフからの質問は「後で」と答える
- 「集中中」の表示を必ず出す
原則2:対応ブロックで積極的に対応
対応ブロック中のルール:
- 溜まった質問にまとめて答える
- 返答が必要な連絡をまとめて処理
- スタッフとの相談時間に充てる
- 「今なら時間あります」と声をかける
原則3:緊急事態の基準を明確にする
真の緊急事態の定義(例):
- お客様の安全に関わること
- 営業継続に支障をきたすこと
- 法的問題に発展する可能性があること
- 当日中に対応しないと大きな損失になること
業態別時間ブロック設計例
居酒屋の場合
朝の部(8:00-12:00)
- 8:00-9:30:集中ブロック(仕込み計画・発注)
- 9:30-10:00:対応ブロック
- 10:00-11:30:集中ブロック(仕込み作業)
- 11:30-12:00:対応ブロック
昼の部(12:00-17:00)
- 営業時間のため、30分単位のミニブロック制
- 14:00-14:30:ミニ集中ブロック
- 16:00-16:30:ミニ集中ブロック
美容室の場合
午前(9:00-12:00)
- 9:00-10:30:集中ブロック(企画・計画業務)
- 10:30-11:00:対応ブロック
- 11:00-12:00:集中ブロック(技術指導・準備)
午後(13:00-18:00)
- 営業中心のため、15分単位のマイクロブロック制
- 15:00-15:15:マイクロ集中(事務処理)
- 16:30-16:45:マイクロ集中(翌日準備)
割り込み対応の魔法のフレーズ集
スタッフや関係者に時間ブロックを理解してもらうための、効果的なコミュニケーション術です。
集中ブロック中の対応フレーズ
レベル1(軽い割り込み): 「今、集中して作業しているので、10:30に時間を取りますね」
レベル2(相談事): 「大切な話ですね。11時から30分時間を取るので、その時に詳しく聞かせてください」
レベル3(しつこい場合): 「申し訳ないんですが、この作業を完了させることで、後でもっと良いアドバイスができます。○○時まで待っていただけますか?」
対応ブロック中の積極フレーズ
スタッフへ: 「今時間あるので、何か相談や質問がある人はどうぞ」
業者へ: 「お忙しい中ありがとうございます。今お時間いただけるので、詳しくお聞かせください」
デジタルツールを活用した割り込み防止策
スマホ設定の最適化
集中ブロック用設定:
- おやすみモード:指定時間は通知オフ
- VIP設定:本当の緊急連絡先のみ通知許可
- 自動返信:「集中作業中です。○○時以降に返信します」
アプリ活用法
Forest(集中アプリ):
- 設定時間は木が成長
- 途中でスマホを触ると木が枯れる
- ゲーム感覚で集中時間を確保
RescueTime(時間追跡):
- 実際の集中時間を測定
- 割り込み頻度を数値化
- 改善効果を客観的に確認
小さな店舗でも実現できる時間ブロック術
「スタッフが少なくて、時間ブロックなんて無理」という方のための工夫です。
15分ミニブロック法
原理: 短時間でも集中すれば、意外と多くのことができる
実践例:
- 15分で簡単なPOP 1枚作成
- 15分で翌日の段取り整理
- 15分で売上データの確認
早朝・夜間ブロック法
原理: 営業時間外の静かな時間を活用
早朝ブロック(7:00-8:30):
- 誰もいない静かな環境
- 最も頭がクリアな時間
- 重要な企画・計画業務に最適
夜間ブロック(閉店後30分):
- 1日の振り返りと翌日準備
- データ分析と改善計画
- スタッフ評価と指導計画
よくある失敗パターンと対策
失敗1:「ちょっとだけなら」で集中が途切れる
対策:「ちょっとだけ」は存在しない。5分の中断が30分の集中力低下を招く
失敗2:緊急事態の基準が甘すぎる
対策:「本当に今じゃないとダメか?」を必ず自問
失敗3:対応ブロックを作らず、集中ブロックだけ作る
対策: 溜まった対応を処理する時間も必ず確保
失敗4:完璧主義で挫折する
対策: 週3日でも時間ブロックが守れれば大成功
今日から始める時間ブロック3ステップ
ステップ1:明日の集中ブロックを1つ設定
明日の朝一番に60分の集中ブロックを設定してみてください。
ステップ2:「集中中」サインを作る
デスクに置く「集中中」の札を今すぐ作りましょう。
ステップ3:緊急事態の基準を決める
本当の緊急事態の定義を3つ書き出し、スタッフと共有してください。
まとめ:時間をコントロールする者が成功する
時間ブロック法は、単なる時間管理術ではありません。
「時間をコントロールする」という経営者としての重要なスキルです。
割り込み業務に振り回される経営者と、時間をコントロールできる経営者。
この差が、店舗の成長速度を大きく左右します。
今日から時間ブロック法を実践して、「集中できる時間」を確実に確保していきましょう。
1週間後、あなたの作業効率は間違いなく向上しているはずです。
次回は「月初・月半・月末のチェックポイント設定」について、月単位での効果的な振り返りシステムをお伝えします。
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