モチベーション維持のための中間目標設定法

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はじめに:なぜ最初の情熱は3日で冷めるのか?

「よし!今度こそお店を変えるぞ!」

そう決意して新しい取り組みを始めたものの、1週間後には「あれ?なんで始めたんだっけ?」となってしまった経験はありませんか?

実は、これは意志の力が弱いからではありません。最終目標までの道のりが長すぎて、途中で迷子になってしまうからなのです。

今日は、マラソンランナーが給水所を目指して走るように、あなたのモチベーションを最後まで維持する「中間目標設定法」をお話しします。

そもそも、なぜモチベーションは下がるのか?

脳科学で解明された「やる気の正体」

私たちの脳は「報酬」を期待する時に最も活発に働きます。しかし、その報酬があまりにも遠い未来にあると、脳は「本当にもらえるの?」と疑い始めます。

遠すぎる目標の例

  • 「1年後に売上を2倍にする」→ 365日後の報酬
  • 「いつか有名店になる」→ いつかわからない報酬
  • 「将来安定した経営をする」→ 具体性のない報酬

これでは脳が「やる気スイッチ」を入れてくれません。

モチベーション低下の「3つの坂」

目標達成までの道のりには、必ず通る3つの難所があります。

第1の坂:「現実の壁」(開始から1週間後)

症状

  • 「思ったより大変だった」
  • 「こんなはずじゃなかった」
  • 「やっぱり自分には無理かも」

具体例 美容室オーナーのDさんは「お客様一人ひとりと深く会話する」という目標を立てました。しかし実際にやってみると、忙しい時間帯は会話どころではなく、「理想と現実は違う」と感じて意欲が低下してしまいました。

第2の坂:「マンネリの谷」(開始から1ヶ月後)

症状

  • 「なんとなく慣れてきた」
  • 「最初の新鮮さがなくなった」
  • 「このまま続けて意味があるのか?」

具体例 居酒屋オーナーのEさんは「毎日新しいおつまみを1品考える」という目標で1ヶ月続けました。しかし、ネタが尽きてきて、「同じようなものばかりになってきた」と感じ、やる気が急降下しました。

第3の坂:「成果の霧」(開始から3ヶ月後)

症状

  • 「頑張ってるけど成果が見えない」
  • 「本当に正しい方向に進んでるの?」
  • 「もっと効率的な方法があるのでは?」

具体例 カフェオーナーのFさんは接客改善を3ヶ月続けましたが、売上の大きな変化が見られず、「努力が報われていない」と感じて迷いが生じました。

中間目標設定法:モチベーションの「給水所」を作る

マラソン選手が42.195kmを一気に走らず、5km地点、10km地点の給水所を目指して走るように、私たちも小さな達成感を積み重ねていく必要があります。

基本原則:「1-3-7-30-90の法則」

この法則に従って中間目標を設定すると、モチベーションが途切れることなく続けられます。

  • 1日目標:今日できること
  • 3日目標:3日で達成できること
  • 7日目標:1週間で達成できること
  • 30日目標:1ヶ月で達成できること
  • 90日目標:3ヶ月で達成できること

実例:美容室の客単価アップ目標

最終目標:1年後に客単価を6000円→8000円にアップ

90日目標(3ヶ月):6000円→6800円にアップ 30日目標(1ヶ月):6000円→6300円にアップ 7日目標(1週間):新メニューの提案を5人に実施 3日目標:新メニューの説明話法を3パターン作成 1日目標:今日1人のお客様に新メニューを提案

実例:飲食店の回転率向上目標

最終目標:1年後にランチタイムの回転率を現在の1.2倍に向上

90日目標(3ヶ月):平均提供時間を15分→12分に短縮 30日目標(1ヶ月):厨房オペレーションを1工程短縮 7日目標(1週間):提供時間の測定と分析完了 3日目標:現在の提供時間を全メニューで測定 1日目標:今日のランチタイム、時間を意識してオペレーション

効果的な中間目標設定の5つのポイント

ポイント1:「数字」で具体化する

曖昧な目標では達成感が得られません。必ず数字で表現してください。

ダメな例(曖昧)

  • 接客を良くする
  • 売上を伸ばす
  • お客様に喜んでもらう

良い例(具体的)

  • 1日3人のお客様の名前を覚える
  • 月末までに客単価を200円アップ
  • 週5回以上お客様から笑顔をもらう

ポイント2:「行動」にフォーカスする

結果ではなく、自分がコントロールできる行動を中間目標にします。

結果フォーカス(コントロール不可)

  • 「今月新規客を10人獲得する」
  • 「今週リピート客を5人増やす」

行動フォーカス(コントロール可能)

  • 「今月チラシを500枚配る」
  • 「今週既存客に5回フォロー連絡する」

ポイント3:「階段式」で難易度を上げる

いきなり高い目標を設定せず、徐々に難易度を上げていきます。

階段式目標の例:お客様との会話時間延長

  • 第1週:挨拶に一言付け加える(+30秒)
  • 第2週:お客様の名前を覚えて呼ぶ(+1分)
  • 第3週:趣味や仕事について質問する(+2分)
  • 第4週:前回の会話内容を覚えておいて話題にする(+3分)

ポイント4:「御褒美」を設定する

中間目標を達成したら、自分にご褒美をあげる仕組みを作ります。

ご褒美の例

  • 7日目標達成→好きなコーヒーを飲む
  • 30日目標達成→欲しかった本を買う
  • 90日目標達成→1日休暇を取る

チーム全体のご褒美

  • 目標達成→スタッフとちょっと良いランチ
  • 大目標達成→みんなで打ち上げ

ポイント5:「見える化」で進捗を実感する

目標の進捗状況を目で見てわかるようにします。

見える化の方法

  • カレンダーにシールを貼る
  • グラフで進捗を記録する
  • 写真でbefore/afterを比較する
  • スタッフルームに進捗表を掲示する

実践例:3ヶ月で常連客を倍増させたカフェの中間目標設定

地方の小さなカフェが、中間目標設定法を使って3ヶ月で常連客を見事に倍増させた実例をご紹介します。

最終目標の設定

大目標:3ヶ月後に常連客を30人→60人に倍増

中間目標の分解

90日目標(最終):常連客60人

  • 測定方法:顔と名前が一致するお客様の数
  • ご褒美:スタッフ全員で焼肉パーティー

30日目標:常連客40人(+10人)

  • 具体的行動:新規客のリピート促進強化
  • ご褒美:新しいコーヒー豆を試す

7日目標:5人の新規客の名前と顔を覚える

  • 具体的行動:接客時に必ず名前を聞く
  • ご褒美:おいしいケーキを食べる

3日目標:お客様情報カードを10枚作成

  • 具体的行動:名前、好み、来店理由をメモ
  • ご褒美:好きなドリンクを無料で飲む

1日目標:今日来店したお客様1人と5分以上会話

  • 具体的行動:注文以外の話題を振る
  • ご褒美:残業なしで早く帰る

1ヶ月目の実際の取り組み

第1週:基盤作り

  • 月曜:お客様との会話ネタ帳を作成
  • 火曜:常連候補リストを作成開始
  • 水曜:スタッフ全員で接客方法を統一
  • 木曜:お客様の好みメモシステム導入
  • 金曜:1週間の振り返りと改善点洗い出し
  • 土日:忙しい中でも名前を覚える練習

第2週:実践強化

  • 新規客への積極的な声かけ開始
  • お客様の来店理由を必ず聞く
  • 好みの飲み物や食べ物をメモ
  • 次回来店時の楽しみを提案

第3週:関係深化

  • 前回の会話内容を覚えて話題に
  • お客様の誕生日や記念日をリサーチ
  • 季節のおすすめを個人の好みに合わせて提案
  • 常連客同士の紹介も積極的に

第4週:システム化

  • 常連客管理システムの改善
  • スタッフ間での情報共有ルール確立
  • 次月の改善点洗い出し
  • 成果測定と祝福

結果と学び

1ヶ月目の成果

  • 常連客:30人→37人(目標40人に対して93%達成)
  • 新規客のリピート率:20%→35%に向上
  • 客単価:680円→750円に自然増
  • スタッフのモチベーション大幅向上

2ヶ月目、3ヶ月目も同様のサイクルを継続 最終的に3ヶ月後には常連客65人を達成し、当初の目標を上回る成果を得ました。

モチベーション維持の心理テクニック

テクニック1:「小さな勝利の積み重ね」

大きな成功よりも、小さな成功をたくさん経験する方がモチベーションは維持されます。

小さな勝利の見つけ方

  • 今日できたことを3つ挙げる
  • 昨日より少しでも良くできたことを認める
  • お客様からの小さな喜びの声を記録する
  • スタッフの小さな成長を見つけて褒める

テクニック2:「進歩の可視化」

人間は進歩を実感できると、自然とやる気が湧いてきます。

可視化の具体例

  • 週次売上グラフを壁に貼る
  • お客様からのお礼メッセージを掲示
  • 新しく覚えた技術やメニューのリスト作成
  • ビフォー・アフターの写真を比較

テクニック3:「仲間との共有」

一人で頑張るより、周りの人と目標や進捗を共有する方が継続しやすくなります。

共有の方法

  • スタッフとの週次ミーティングで進捗報告
  • 同業者仲間との情報交換
  • 家族に目標を宣言
  • SNSでの進捗報告(適度に)

テクニック4:「失敗の再定義」

失敗を「学習の機会」として捉え直します。

再定義の例

  • 「失敗した」→「うまくいかない方法を1つ発見した」
  • 「目標未達成」→「次回への改善点が明確になった」
  • 「お客様に断られた」→「お客様のニーズがわかった」

中間目標設定の実践ワークシート

以下のワークシートを使って、あなたの目標を中間目標に分解してみてください。

ステップ1:最終目標の明確化

最終目標:_________________________ 達成期限:_________________________ 測定方法:_________________________

ステップ2:90日目標の設定

90日後に達成したいこと:_________________________ 具体的な数値:_________________________ 測定方法:_________________________ 達成時のご褒美:_________________________

ステップ3:30日目標の設定

30日後に達成したいこと:_________________________ 具体的な行動:_________________________ 1日あたりの行動量:_________________________ 達成時のご褒美:_________________________

ステップ4:7日目標の設定

今週達成したいこと:_________________________ 毎日の具体的行動:_________________________ 進捗確認方法:_________________________ 達成時のご褒美:_________________________

ステップ5:今日の目標設定

今日やること:_________________________ 所要時間:_________________________ 完了の基準:_________________________ 達成時のご褒美:_________________________

よくある質問と解決法

Q: 中間目標を立てるのが面倒です A: 最初は「今日」「今週」「今月」の3つだけでも十分です。慣れてから詳細化してください。

Q: 中間目標を達成できなかった時はどうすれば? A: 目標が高すぎた可能性があります。次回はもう少し小さな目標に修正してください。

Q: ご褒美にお金をかけたくありません A: お金をかけないご褒美でも効果的です。「早く帰る」「好きな音楽を聞く」「散歩する」など、時間的なご褒美も有効です。

Q: スタッフが中間目標設定に協力してくれません A: まずは一人で始めて成果を見せてください。効果が見えればスタッフも自然と参加したくなります。

まとめ:モチベーションは「管理」できる

モチベーションは気分や感情に左右される不安定なものだと思われがちですが、実は適切な中間目標設定によって「管理」することができます。

今日から始められること

  1. 最終目標を90日、30日、7日、1日に分解する
  2. 各段階でご褒美を設定する
  3. 進捗を見える化する
  4. 小さな勝利を積み重ねる
  5. 仲間と共有する

モチベーションが維持できるようになると、どんな目標でも達成できるようになります。そして何より、日々の仕事が楽しくなり、お客様にもスタッフにも、その活気が伝わっていくでしょう。

マラソンランナーが給水所を楽しみに走るように、あなたも中間目標という「給水所」を楽しみに、理想のお店作りを続けていってください。

6ヶ月後、1年後のあなたは、「あの時中間目標を設定して本当に良かった」と心から思えるはずです。さあ、今日からあなたの「給水所」作りを始めましょう!

※本サイトに記載された店舗名と店主名は、個店情報のため仮名とさせていただいております。

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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