なぜ「売上300万円達成」は良い目標ではないのか?
多くの店舗経営者が立てる目標:
「今月は売上300万円を達成するぞ!」
一見、明確で良い目標に見えますが、実は大きな問題があります。
売上は、あなたが100%コントロールできますか?
売上は、お客様がお金を払って初めて成立します。つまり、お客様の行動に依存する結果なのです。
今日は、確実に達成できる「コントロール可能な行動目標」の立て方をお伝えします。
「コントロール不可能な目標」で失敗する店舗の典型例
ケース1:ラーメン店オーナーの挫折
ラーメン店「麺屋 太郎」のオーナー・佐藤さん(仮名)の失敗例:
立てた目標:「今月の売上400万円達成」
1週間後の現実:
- 大雨で3日間客足が激減
- 近隣で工事が始まり、アクセスが悪化
- 競合店が新規オープン
佐藤さんの心境: 「頑張っているのに、なぜ達成できないんだ…自分はダメな経営者なのか?」
問題の本質: 売上は天候、工事、競合など、自分ではコントロールできない要因に大きく左右される
「コントロール可能」vs「コントロール不可能」の判別法
判別の基準:「自分一人で100%実行できるか?」
コントロール不可能な目標(結果目標)
- 売上300万円達成
- 客数500名達成
- ⭐⭐⭐⭐⭐評価獲得
- テレビ取材を受ける
- 行列のできる店になる
特徴: 他人(お客様、メディア、評価者)の行動に依存
コントロール可能な目標(行動目標)
- チラシ1,000枚配布
- Instagram毎日投稿
- スタッフ研修週2回実施
- 新メニュー3品開発
- 店舗清掃毎朝30分実施
特徴: 自分の意志と行動だけで100%実行可能
美容室オーナーの目標設定変革ストーリー
美容室「Hair Studio M」のオーナー・山田さん(仮名)の目標設定変革例:
変革前:結果目標中心
目標:「新規客50名/月獲得」
結果:
- 目標未達成(実績32名)
- 達成感なし
- スタッフのモチベーション低下
- 「何をすればいいかわからない」状態
変革後:行動目標中心
目標:「新規客獲得のための8つの行動を毎月実行」
- Instagram投稿:毎日19時に施術写真投稿
- ポスティング:近隣マンション500枚/月
- 紹介カード配布:既存客に月100枚配布
- Googleマイビジネス更新:週2回写真・情報更新
- ホットペッパー最適化:月1回写真・文章更新
- 地域イベント参加:月1回のヘアアレンジ実演
- 他業種連携:月3件の相互紹介協定締結
- 口コミ対応:全レビューに24時間以内返信
結果:
- 8つの行動すべて達成
- 3ヶ月後、新規客数が65名/月に増加
- 達成感とモチベーション向上
- スタッフも「何をすればいいか」が明確に
山田さんの感想: 「目標を行動に変えただけで、こんなに変わるとは思いませんでした。毎日達成感があるし、結果として新規客数も目標を大幅に超えました。」
行動目標設定の5つのステップ
ステップ1:最終的に達成したい結果を明確にする
まず、あなたが本当に達成したい結果を明確にしましょう。
例:
- 月商300万円達成
- 常連客200名獲得
- 顧客満足度90%以上
- 地域No.1の認知度
ステップ2:結果に影響する要因を書き出す
その結果に影響を与える要因を、思いつく限り書き出します。
例:月商300万円達成の要因
【客数に関する要因】
・認知度、立地、看板、チラシ、SNS、口コミ、
・天候、季節、競合店、地域イベント、工事...
【客単価に関する要因】
・メニュー構成、価格設定、おすすめ提案、
・接客品質、店内環境、商品説明...
【リピート率に関する要因】
・商品品質、接客品質、清潔感、記憶に残る体験...
ステップ3:コントロール可能な要因だけを抽出
書き出した要因を「コントロール可能」「コントロール不可能」に分類します。
コントロール可能な要因:
- チラシ作成・配布
- SNS投稿
- メニュー開発
- 接客研修
- 店内清掃
- 商品説明の改善
コントロール不可能な要因:
- 天候
- 競合店の動向
- 地域の工事
- 経済状況
- お客様の気分
ステップ4:具体的な行動目標に変換
コントロール可能な要因を、具体的な行動目標に変換します。
変換の基準:
- 数字が入っている
- 期限が明確
- 誰が見ても同じ行動ができる
- 1週間以内に完了できる
例:変換前後
【変換前】チラシで集客する
【変換後】毎週火曜日に駅前で朝7:30-8:30にチラシ200枚配布
【変換前】SNSを活用する
【変換後】Instagram毎日19時に料理写真を1枚投稿
【変換前】接客を改善する
【変換後】お客様との会話時間を1人あたり30秒延ばす
ステップ5:測定方法を決める
各行動目標の実行状況を測定する方法を決めます。
測定方法例:
- チェックシートによる○×記録
- 写真による実行証拠の記録
- 数量・時間の記録
- スタッフによる相互チェック
業態別コントロール可能な行動目標例
カフェの場合
最終目標: 客数20%増加
コントロール可能な行動目標:
- 認知度向上行動
- 店舗前看板を毎朝9時に設置
- Instagram週5回投稿(完成写真+製作過程)
- 近隣オフィス50社にショップカード配布
- 魅力度向上行動
- 月2品の新メニュー開発・試作
- 店内BGMを月1回季節に合わせて更新
- 毎朝30分の店内清掃・装飾チェック
- 接客品質向上行動
- 「おかえりなさい」挨拶の統一実施
- お客様の名前を覚える(週5名目標)
- オーダー時に必ず「他にいかがですか?」の声かけ
居酒屋の場合
最終目標: 常連客100名獲得
コントロール可能な行動目標:
- 常連客コミュニケーション行動
- 来店時に必ず名前で挨拶
- 好みメニューの記録・提案
- 誕生日・記念日の事前把握・サービス
- 店舗環境維持行動
- 毎日閉店後30分の清掃・整理
- 週1回のトイレ・厨房の徹底清掃
- 月1回の店内装飾・季節感の演出
- コミュニティ形成行動
- 月1回の常連客限定イベント開催
- お客様同士の紹介・引き合わせ
- 地域情報の積極的な提供・共有
ラーメン店の場合
最終目標: 行列のできる店(平均待ち時間15分)
コントロール可能な行動目標:
- 品質向上行動
- 毎朝6時からのスープ仕込み(3時間)
- 麺の茹で時間を秒単位で統一管理
- 月1回の新メニュー試作・改良
- 話題性創出行動
- Instagram毎日投稿(製作過程+完成品)
- 月1回の限定メニュー企画・実施
- お客様との会話内容を記録・改善
- オペレーション改善行動
- 提供時間の計測・記録(目標5分以内)
- 席回転率向上のための動線改善
- スタッフ連携の練習(週2回30分)
行動目標設定でよくある失敗と対策
失敗1:まだ結果目標が混じっている
悪い例:「お客様に喜んでもらう」 問題: お客様の感情はコントロールできない 改善例:「笑顔で挨拶し、30秒の会話時間を作る」
失敗2:抽象的すぎて測定できない
悪い例:「接客を改善する」 問題: 何をどう改善するかが不明確 改善例:「注文時に必ず『他にいかがですか?』と声をかける」
失敗3:大きすぎて1週間で完了できない
悪い例:「ホームページを全面リニューアル」 問題: 時間がかかりすぎて継続できない 改善例:「トップページの写真を3枚更新」
失敗4:数字・期限が入っていない
悪い例:「チラシを配る」 問題: いつ、どのくらい配るかが不明確 改善例:「毎週金曜17時に駅前でチラシ100枚配布」
デジタルツールを活用した行動目標管理
Excel・Googleスプレッドシートでの管理
日付 | 行動目標 | 実行 | 数値記録 | 備考
4/1 | チラシ100枚配布 | ○ | 98枚 | 雨で2枚不足
4/1 | Instagram投稿 | ○ | 19:05投稿 | いいね15件
4/2 | 新メニュー試作 | × | - | 材料準備忘れ
専用アプリの活用
Habitica:
- ゲーム感覚で習慣化
- 達成するとポイント獲得
- チーム機能でスタッフと共有
Way of Life:
- 色分けで行動記録
- 一目で継続状況がわかる
- シンプルで使いやすい
行動目標の効果を最大化する3つのコツ
コツ1:「Why(なぜ)」を明確にする
各行動目標に「なぜこれをやるのか」の理由を明記します。
例:
- 行動: 毎朝30分店舗清掃
- Why: 清潔な環境でお客様に気持ちよく過ごしてもらうため
コツ2:「If-Then(もし〜なら)」ルールを設定
予想される障害に対する対処法を事前に決めておきます。
例:
- If: 雨でチラシ配布ができない
- Then: 店内でPOP作成に時間を使う
コツ3:小さな成功を積み重ねる
最初は確実に達成できる小さな行動から始めます。
段階的拡大例:
- 週1回Instagram投稿 → 達成
- 週3回Instagram投稿 → 達成
- 毎日Instagram投稿 → 挑戦
今日から始める行動目標設定3ステップ
ステップ1:1つの結果目標を決める
あなたが最も達成したい結果目標を1つ決めてください。
ステップ2:3つの行動目標に変換
その結果目標を達成するために、コントロール可能な行動目標を3つ作ってください。
ステップ3:明日から1つ実行
3つの行動目標のうち、最も簡単なものを明日から実行してください。
まとめ:コントロールできることに集中する力
行動目標設定の真の価値は、「自分の影響力の範囲」を明確にすることです。
結果は天候や競合他社など、様々な外部要因に左右されます。
でも、行動は100%自分でコントロールできます。
コントロールできることに100%集中する。 コントロールできないことは気にしない。
この考え方が身につくと、
- 達成感が得られやすくなる
- ストレスが減る
- 継続しやすくなる
- 結果として、最終的な成果も向上する
大谷翔平選手も、この原則で世界トップの成果を出し続けています。
今日から、あなたもコントロール可能な行動目標で、確実な成長を積み重ねていきましょう。
3ヶ月後には、「こんなに着実に前進できるとは思わなかった」と実感するはずです。
次回は「売上目標を行動目標に変換する方法」について、具体的な変換テクニックとフォーマットをお伝えします。
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