ワンコインランチをやめるべき利益計算の真実

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ワンコインランチをやめるべき利益計算の真実

「ワンコインランチで集客して、他のメニューで利益を出そう…」 「安いランチで話題になれば、夜の売上も上がるはず…」 「みんなやってるから、うちもワンコインランチを始めないと…」

経営をしていると、こんな風に「目玉商品で集客」を考えることはありませんか?

実は、多くの飲食店が失敗する最大の理由の一つが、**「ワンコインランチのような低価格戦略の罠」**にはまることです。まるで甘い蜜で虫をおびき寄せる植物のように、一見魅力的に見える低価格戦略が、実は店舗経営を蝕んでいく毒になってしまうのです。

成功する経営者は違います。彼らは**「利益計算の真実」**を理解し、目先の集客より長期的な収益性を重視しています。まるで熟練の会計士が隠れたコストまで見抜くように、表面的な売上の裏にある本当の損益を正確に把握して判断するのです。

ワンコインランチの利益計算を正しく理解することで、あなたは「忙しいのに儲からない」状態から脱却し、確実に利益を積み上げる健全な経営を実現できます。

この記事では、飲食店・美容室経営者でも今すぐ理解できる「ワンコインランチをやめるべき利益計算の真実」を、具体的な数字例とともに分かりやすく解説します。

目次

ワンコインランチが「利益の罠」である理由

罠1:見た目の売上と隠れた赤字

表面的な数字に騙される危険性

ワンコインランチの「見た目」の成果:

【1日の売上例】
・ワンコインランチ:500円×80人=40,000円
・その他メニュー:平均1,200円×20人=24,000円
・合計売上:64,000円

【経営者の錯覚】
「ワンコインのおかげで売上が6万円超えた!」
「お客さんもたくさん来てくれてる!」
「話題になって良い感じ!」

隠れた真実の計算:

【ワンコインランチの真のコスト】
・食材費:350円/食×80食=28,000円
・人件費:時給1,000円×2人×3時間=6,000円
・光熱費:3時間分=1,500円
・その他経費:家賃・減価償却等=2,000円
合計コスト:37,500円

【ワンコインランチの損益】
売上40,000円 - コスト37,500円 = 利益2,500円
利益率:わずか6.25%!

【その他メニューとの比較】
その他メニュー利益率:約45%
→ ワンコインランチは7分の1の効率

実例:定食屋「安心亭」のワンコインランチ地獄

【ワンコインランチ導入前】

・平均客数:1日50人
・平均客単価:900円
・1日売上:45,000円
・平均利益率:40%
・1日利益:18,000円
・月利益:54万円(30日営業)

【ワンコインランチ導入後】

・平均客数:1日120人(ワンコイン80人+通常40人)
・平均客単価:650円
・1日売上:78,000円(73%増加!)
・加重平均利益率:15%(大幅悪化)
・1日利益:11,700円(35%減少)
・月利益:35万円(35%減少)

【店主の混乱】
「売上は上がったのに、なぜか利益が減った...」
「お客さんは増えたのに、生活が苦しくなった...」

【詳細な利益分析】

【ワンコインランチ(80人)】
売上:500円×80=40,000円
食材費:320円×80=25,600円
人件費追加:1時間×2人×1,000円=2,000円
その他コスト:1,500円
利益:40,000-29,100=10,900円(利益率27%)

【通常メニュー(40人)】
売上:950円×40=38,000円
食材費:380円×40=15,200円
人件費:通常業務内
その他コスト:1,000円
利益:38,000-16,200=21,800円(利益率57%)

【結論】
通常メニューの方が圧倒的に利益効率が良い
ワンコインランチは「忙しくて赤字」の典型

罠2:機会コストの巨大な損失

限られた時間・場所・人員をより利益の高いことに使えたはず

機会コストとは:

「Aをやることで、Bができなくなる損失」

ワンコインランチの機会コスト:
・その時間で通常メニューを提供していたら?
・その席で利益率の高いお客さんが座れたのでは?
・その人員で付加価値の高いサービスができたのでは?

機会コスト計算の実例

【ワンコインランチ客80人の場合】

占有リソース:
・テーブル:40席×2時間=80席時間
・調理スタッフ:2人×3時間=6人時間
・ホールスタッフ:1人×3時間=3人時間

実際の利益:10,900円(前述の計算)

【同じリソースで通常営業した場合】

80席時間で通常客なら:
・収容可能客数:50人(ゆとりある配置)
・平均客単価:950円
・売上:47,500円
・利益率:55%
・利益:26,125円

機会コスト:26,125円-10,900円=15,225円
→ 1日15,225円の損失
→ 月30日なら45万円の機会コスト!

【年間での機会コスト計算】

1日の機会コスト:15,225円
年間営業日:300日
年間機会コスト:15,225円×300日=456万円

これは経営者の年収に匹敵する巨大な損失!

罠3:ブランド価値の下落

「安い店」というイメージの定着による長期的損失

ブランド価値下落のメカニズム:

ワンコインランチ開始
↓
「安い店」というイメージ定着
↓
価格に敏感な客層の増加
↓
利益率の高いメニューが売れにくくなる
↓
全体的な客単価の低下
↓
利益率の慢性的悪化

実例:カフェ「Beans & Books」のブランド価値下落

【ワンコイン戦略前】

・ブランドイメージ:「質の高いコーヒーと落ち着いた空間」
・主要客層:30-50代の会社員・主婦
・平均客単価:1,200円
・利用目的:リラックス、打ち合わせ、読書
・リピート率:70%

【ワンコインコーヒー導入後】

・ブランドイメージ:「安いコーヒーが飲める店」
・主要客層:価格重視の学生・フリーター
・平均客単価:650円(46%減少)
・利用目的:とりあえず安く休憩
・リピート率:40%(従来客の離脱)

【従来の優良客の声】

「前はゆっくりできたのに、今は混雑しすぎ」
「雰囲気が変わってしまった」
「安い客ばかりで落ち着かない」
「質より量の店になった感じ」
→ 結果:優良客の多くが他店に移動

【ブランド回復の困難】

ワンコインコーヒーをやめて元の価格に戻しても:
・「値上げした店」というネガティブイメージ
・新しい客層は価格重視なので離脱
・従来の客層は既に他店に定着
・信頼回復に2-3年かかる
・その間の売上・利益の大幅減少

罠4:競合との消耗戦への突入

価格競争の泥沼から抜け出せなくなる

価格競争エスカレーションの典型例:

【競合A店】
ワンコインランチ500円開始

【自店】
対抗してワンコインランチ500円開始

【競合B店】
「うちは450円!」と価格下げ

【競合A店】
「じゃあうちは400円!」

【自店】
「負けずに380円!」

【結果】
全店舗が採算割れで疲弊
誰も得しない消耗戦

実例:商店街の定食屋戦争

【価格競争前の状況】

A店:家庭的定食専門、客単価900円
B店:ボリューム重視、客単価800円
C店:健康志向メニュー、客単価1000円
D店:老舗の味、客単価1100円

→ 各店が特色を活かして共存

【ワンコイン戦争勃発】

A店:ワンコインランチ500円開始
B店:対抗して480円ランチ開始
C店:「健康ワンコイン」500円開始
D店:「老舗の味500円」開始

6ヶ月後:
A店:客単価650円、利益率8%
B店:客単価600円、利益率5%
C店:客単価700円、利益率12%
D店:ワンコインやめて従来路線復帰

【1年後の結末】

A店:赤字経営で閉店
B店:赤字経営で閉店
C店:何とか黒字だが利益微少
D店:一人勝ち、客単価1200円に向上

【教訓】
価格競争に参加した店は全て苦境
差別化を貫いた店だけが生き残り

罠5:スタッフのモチベーション低下

忙しいのに給料が上がらない状況による悪循環

スタッフへの悪影響:

【労働強度の増加】
・客数増加で忙しさ倍増
・回転率重視で休憩時間減少
・クレーム対応増加(安い客の要求)
・疲労蓄積による離職率上昇

【待遇改善の困難】
・利益率低下で昇給困難
・忙しいのに残業代も出せない
・ボーナスも減額
・「頑張っても報われない」感覚

実例:家族レストラン「みんなの食卓」の人材流出

【ワンコインランチ導入前】

・スタッフ:5人(パート4人+アルバイト1人)
・平均勤続年数:3年
・平均時給:1,100円
・離職率:年1人程度
・スタッフ満足度:普通

【ワンコインランチ導入後6ヶ月】

・客数:2倍増加
・労働強度:1.8倍増加
・スタッフ疲労度:限界レベル
・時給:利益減少で据え置き1,100円
・残業:サービス残業増加
・スタッフの不満:「忙しいのに給料変わらない」

【1年後の人材状況】

・離職者:4人(80%が退職)
・新規採用:6人(経験者採用困難)
・教育コスト:大幅増加
・サービス品質:低下
・お客さん満足度:低下
・悪循環:品質低下→客離れ→売上減→待遇悪化

【人材コストの隠れた増加】

・求人広告費:月5万円
・面接・教育時間:月30時間
・教育期間の生産性低下:20%
・ベテランスタッフの知識・技術喪失:計算不可能
・サービス品質低下による客離れ:月売上5%減

年間追加人材コスト:120万円以上
ワンコインランチの利益:年80万円
→ 完全に赤字!

ワンコインランチの「真の利益計算」

総合損益計算書の作成

【表面的な損益(多くの経営者が見ている数字)】

ワンコインランチ売上:500円×80人×30日=120万円/月
通常メニュー売上:900円×40人×30日=108万円/月
合計売上:228万円/月

「売上が228万円もあるから成功!」

【真の損益計算(隠れたコストを含む)】

【売上】
ワンコインランチ:120万円
通常メニュー:108万円
合計:228万円

【直接原価】
ワンコイン食材費:350円×80人×30日=84万円
通常メニュー食材費:350円×40人×30日=42万円
合計:126万円

【人件費(追加分)】
ワンコイン対応:2人×3時間×30日×1,000円=18万円
教育・採用コスト:月10万円
合計:28万円

【その他コスト増】
光熱費増加:月3万円
設備維持費増加:月2万円
消耗品費増加:月2万円
合計:7万円

【機会コスト】
同じリソースで通常営業なら:150万円の利益
実際の利益:67万円
機会コスト:83万円

【真の利益】
売上228万円 - 原価126万円 - 人件費28万円 - その他7万円 = 67万円
機会コストを考慮すると:67万円 - 83万円 = -16万円(赤字!)

時間当たり利益率の比較

【ワンコインランチの時間当たり利益】

営業時間:3時間
利益:2.5万円(直接利益のみ)
時間当たり利益:8,333円

実際の総合利益:マイナス
時間当たり実質利益:マイナス

【通常営業の時間当たり利益】

営業時間:3時間
客数:30人
売上:900円×30人=2.7万円
利益:2.7万円×50%=1.35万円
時間当たり利益:4,500円

【さらに高利益メニューに特化した場合】
平均客単価:1,200円
客数:25人
売上:3万円
利益:3万円×60%=1.8万円
時間当たり利益:6,000円

【結論】 ワンコインランチ:時間当たり8,333円(見た目のみ、実際は赤字) 通常営業:時間当たり4,500円(確実な利益) 高利益特化:時間当たり6,000円(理想的)

→ 通常営業や高利益特化の方が遥かに健全


## ワンコインランチをやめるべき5つの理由

### 理由1:数字で見える赤字体質

**利益率の比較:**

ワンコインランチ:利益率6-15% 通常メニュー:利益率45-60% 高付加価値メニュー:利益率70%以上

同じ労力で4-10倍の利益差


### 理由2:持続可能性の欠如

**長期的リスク:**

・価格競争の激化 ・利益率の慢性的悪化 ・設備投資・改善の困難 ・人材確保の困難 ・事業継続の危機


### 理由3:ブランド価値の毀損

**ブランドイメージの変化:**

変更前:「質の良い店」 変更後:「安い店」

「安い店」イメージの回復は極めて困難


### 理由4:スタッフの疲弊と流出

**人材への悪影響:**

・労働強度増加 ・待遇改善困難 ・モチベーション低下 ・離職率上昇 ・サービス品質低下


### 理由5:競合優位性の喪失

**差別化の消失:**

価格競争参加 → 特色の消失 → 競合優位性なし → 価格でしか選ばれない → 利益率悪化の悪循環


## ワンコインランチの代替戦略

### 代替戦略1:高付加価値ランチの開発

**付加価値向上のアプローチ:**

・地域食材を使った特色ランチ ・健康・美容に特化したランチ ・手作り感・特別感のあるランチ ・季節限定・数量限定のプレミアムランチ

価格:800-1,200円 利益率:50-70% 差別化:明確


### 代替戦略2:時間帯別差別化

**時間帯戦略:**

11:30-12:00:早割ランチ(700円、利益率40%) 12:00-13:00:通常ランチ(900円、利益率50%) 13:00-14:00:ゆったりランチ(1,200円、利益率60%)

各時間帯で異なる価値を提供


### 代替戦略3:会員制優遇システム

**ロイヤリティ戦略:**

・新規客:通常価格 ・会員客:10%割引 ・VIP会員:15%割引+特典

価格競争ではなく、関係性による差別化


### 代替戦略4:セット商品による客単価向上

**セット戦略:**

・ランチ+ドリンク:1,000円(単品計1,200円) ・ランチ+デザート+ドリンク:1,300円(単品計1,600円)

お得感を演出しながら客単価向上


## まとめ:利益計算の真実を見抜く力

ワンコインランチは、**表面的な売上の裏に隠れた巨大な損失を抱える危険な戦略**です。

**ワンコインランチの5つの罠:**
1. **見た目の売上と隠れた赤字** - 低利益率による実質的損失
2. **機会コストの巨大な損失** - より利益の高い活動の機会を失う
3. **ブランド価値の下落** - 「安い店」イメージによる長期的損失
4. **競合との消耗戦への突入** - 価格競争の泥沼
5. **スタッフのモチベーション低下** - 人材流出による品質悪化

**真の利益計算で見える現実:**
- 表面的利益率:6-15%
- 機会コストを含む実質:赤字
- 年間機会コスト:400万円以上
- 人材コスト増加:年120万円以上
- ブランド価値毀損:計算不可能

**ワンコインランチをやめるべき5つの理由:**
1. 数字で見える赤字体質
2. 持続可能性の欠如
3. ブランド価値の毀損
4. スタッフの疲弊と流出
5. 競合優位性の喪失

**代替戦略:**
- 高付加価値ランチの開発
- 時間帯別差別化
- 会員制優遇システム
- セット商品による客単価向上

**実践のポイント:**
- 表面的な売上に騙されない
- 隠れたコストまで含めた真の利益計算をする
- 機会コストを必ず考慮する
- 短期的集客より長期的利益を重視する
- ブランド価値を守る価格戦略を選ぶ

**今日から始められること:**
まずは現在のワンコインメニューがあれば、隠れたコストまで含めた真の利益計算をしてみてください。きっと思っていたよりも利益が少ない(または赤字)ことがわかるはずです。

利益計算の真実を理解することで、あなたは「忙しいのに儲からない」状態から脱却し、確実に利益を積み重ねる健全な経営を実現できます。目先の売上に惑わされず、真の利益を追求する経営者になりましょう。

---

**今日のアクション:**
今すぐ以下の利益計算分析を実行してください:
1. **現状分析**:ワンコインメニューの表面的売上・利益を計算
2. **隠れコスト算出**:人件費・光熱費・その他コストを詳細計算
3. **機会コスト計算**:同じリソースで通常メニュー提供した場合の利益
4. **真の損益確認**:隠れコスト・機会コストを含めた実質損益
5. **代替戦略検討**:より利益率の高い戦略を3つ考案
6. **改善実行**:最も損失の大きいワンコインメニュー1つの見直し開始

あなたの正確な利益計算が、今日から表面的な売上の罠を回避し、真の利益を生み出す健全な経営への転換を始めさせます。
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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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